
この記事のまとめ
- 介護職員同士のコミュニケーションでは、相手を否定せず共感することが大切
- ミラーリングなど、介護の仕事に役立つコミュニケーション技術がある
- 新人の介護職員は、自分から挨拶することや周囲との連携を心掛けると良い
「スタッフとのコミュニケーションが上手に取れない」とお悩みの介護職もいるかもしれません。職場で円滑にコミュニケーションを取るには、否定せずに共感することや、相手の立場になって考えることが大切です。この記事では、介護職員同士のコミュニケーションのコツや、仕事に役立つコミュニケーション技術をご紹介します。コミュニケーションスキルを向上させる方法にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
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介護職員同士のコミュニケーションで大切なこと
介護職にとって、コミュニケーションは非常に重要です。介護施設の利用者さんとのコミュニケーションだけでなく、介護職員同士のコミュニケーションも欠かせません。以下で、介護職員同士のコミュニケーションで大切なことを確認してみましょう。
否定はせず共感する
相手の言葉や考えを否定せず、共感することが大切です。考え方や価値観は、人それぞれ異なります。そのため、自分とは価値観が違う相手の意見も、「そういう考え方もあるのか」と受け入れることが大切です。自分の考えを押し付けたり、相手の価値観を否定したりすることは避けましょう。
他人の考え方や気持ちを想像して受け入れるのは難しいと感じるかもしれません。しかし、相手の価値観の背景を想像して配慮することができれば、うまくコミュニケーションが取れるはずです。
相手の立場に立って考える
職員同士のコミュニケーションでは、相手の立場に立って考えることも大切です。たとえば、看護師とケアの方針で意見が合わないときは、相手の気持ちが分からなかったり納得できなかったりする場合も、一度冷静になって考えてみましょう。相手の立場に立って、「どうしてそうしたのか」「どうしてそう言ったのか」を考えてみれば、意見が合わない理由に気づけるかもしれません。
視野を広げて相手の気持ちをくみ取ることができれば、コミュニケーションをスムーズに行えるようになるでしょう。
非言語コミュニケーションを大切にする
良好な人間関係を築くためには、非言語コミュニケーションを活用することも大切です。コミュニケーションには、言葉だけではなく表情や身振り手振りなども含まれます。目線の高さを合わせたり、落ち着いた穏やかな声で話したりするだけでも、相手に与える印象は大きく変わるでしょう。
言葉以上に重要になることもある非言語コミュニケーションは、ビジネスシーンでも重要なコミュニケーション技術の一つです。介護職員同士で密にコミュニケーションを取るために、非言語コミュニケーションも意識してみましょう。
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介護に役立つコミュニケーション技術
コミュニケーション技術とは、相手と意思疎通を行うための技法です。ビジネスシーンで日常的に活用される基本スキルの一つで、介護現場でも重要な役割を担っています。ここでは、介護の現場で活用できる4つのコミュニケーション技術をご紹介するので、ぜひ日ごろのコミュニケーションにお役立てください。
1.開かれた質問・閉じられた質問
質問には、「開かれた質問」と「閉じられた質問」があります。
開かれた質問は「オープン・クエスチョン」ともいい、質問された相手が「はい」「いいえ」だけでは答えられない質問のことです。人は会話するとき、多くの質問や問いかけを使います。特に初対面のとき、人はお互いに質問しながら理解を深めていくものです。「はい」「いいえ」だけで答えられる質問の場合、交換できる情報の量が限られるため、十分な意思疎通が図れないこともあります。
開かれた質問は、相手が自由に回答できるように聞くコミュニケーション技術なので、会話の広がりを期待できるでしょう。
一方、閉じられた質問は「クローズド・クエスチョン」ともいい、「はい」「いいえ」で済んだり短い回答で終わったりする問いかけのことです。閉じられた質問は、自分で答えを考えるのが難しい方と話す際や、短時間で疑問を解消したいときの質問方法として適しています。相手の性格や状況に応じて、開かれた質問と閉じられた質問を使い分けましょう。
2.ミラーリング
ミラーリングとは、相手と同じ動作や姿勢を真似するコミュニケーション技術です。人間関係を構築する際によく使われる技法で、介護現場やビジネスの場でも活用できます。たとえば、相手が身を乗り出して話しているのなら自分も乗り出して話を聞く、相手が楽しそうな表情をしているときはこちらも楽しそうな表情で話を聞くなどが該当するでしょう。人は自分と同じ感情を共有されたり、似たような動作をされたりすると、相手に親近感や安心感を抱く心理があります。
ただし、あからさまに真似をすると逆効果になることも。相手の動作を観察し、タイミングを少しずらすなど、わざとらしくならないように気をつけながら自然に行うのがポイントです。
3.マッチング
マッチングとは、声やテンポなどの目に見えない部分を相手に合わせるコミュニケーション技術です。話すときに声のトーンやボリューム、テンポ、リズムを相手に合わせることで、会話をスムーズに行えます。
介護職の方のなかには、「忙しさから時間に追われて、相手のペースを考えずにコミュニケーションを取ってしまった」という経験がある方もいるかもしれません。話す速度がゆっくりな方の声を遮ってしまったり、早い口調で喋ってしまったりすると、会話が成立しなくなってしまいます。忙しいときは、「○○が終わったら聞きに来ます」などの声掛けをして、落ち着いたときにしっかり話を聞くようにしてみると良いでしょう。
4.バックトラッキング
バックトラッキングとは、いわゆる「オウム返し」に近いコミュニケーション技術です。相手の言葉をそのまま繰り返すのではなく、会話のなかで相手が使用した単語をさりげなく使い、そのまま相手に返しながら会話を進めていきます。そうすることで、話をしっかりと聞いていることを伝えられます。
ただし、同じ言葉を返し続けると、真剣に聞いていないと思われてしまったり、不快感を与えてしまったりする場合もあるでしょう。不自然にならないためには、同じ意味合いを持つ別の言葉に置き換えるなど、工夫することも大切です。
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介護職員は人間関係の悩みが多い
業界や職種を問わず、仕事の悩みとして人間関係の問題を挙げる方は少なくありません。介護職は、幅広い年齢層の職員が一緒に働くことや、ケアのために密なコミュニケーションが必要なことから、人間関係の悩みが生じやすい環境にあります。ここでは、介護現場でよくある人間関係の悩みと対処法を解説します。
1.職員同士の人間関係
同僚や上司、後輩など、職員同士の人間関係に悩む介護職は少なくありません。「仕事に対する考え方が違う」「上司や先輩から高圧的な対応をされた」「非協力的な態度を取られた」「派閥があって雰囲気が悪い」など、コミュニケーションに悩む理由はさまざまです。
職場の人間関係が悪いと、質の高い介護ができないだけではなく、精神的に追い詰められてしまうリスクもあります。人間関係に悩んでいるときは、問題点を整理して、自分で解決できるかを把握することが大切です。原因がはっきりすれば、誰かに相談したり、異動希望を出したりして対処できるでしょう。
2.利用者さんとの人間関係
介護現場では、利用者さんとの人間関係に悩むこともあるでしょう。利用者さんとの意思疎通がうまくいかないと、自分のケアや接し方が間違っているのかと悩み、ストレスを感じてしまう場合があります。利用者さんによって性格は異なるので、話すのが苦手だったり、一人で過ごすのが好きだったりする方もいるかもしれません。利用者さんとの関係性に悩んだときは、一人ひとりに合ったコミュニケーションを考えてみることで、適切な対応ができます。
また、介護現場で長く働いていると、利用者さんから暴言を吐かれたりセクハラを受けたりすることもあるかもしれません。利用者さんからのハラスメントを我慢して一人で悩む必要はないため、暴言や暴力などがあれば早めに上司に相談することが大切です。
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3.利用者さんのご家族との人間関係
介護現場では、利用者さんのご家族との人間関係に悩むこともあるでしょう。たとえば、ご家族が理想とする介護と実際の介護の差に文句を言われたり、現実的に難しい要望を押し付けられたりすることがあるようです。利用者さんのご家族からの無理な要求やクレームがある場合、うまく意思疎通できていない可能性もあります。「なぜ希望する介護と異なる介護をしているのか」「どうしてそんな要望を言ってくるのか」など、お互いが状況を理解できていないのかもしれません。
利用者さんのご家族とのコミュニケーションでは、きちんと相手の希望に耳を傾けたうえで、できることとできないことをはっきりと伝えると良いでしょう。もしも、理由を伝えても理解してもらえない場合は、ほかの職員やリーダーから話してもらうなど、対応を代わってもらうことをおすすめします。
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4.他職種との人間関係
他職種の職員との人間関係に悩む介護職員の方もいるようです。介護施設では、ケアマネジャーや生活相談員、看護師、理学療法士など、さまざまな専門職が働いています。介護職員は専門職と連携しながら利用者さんのケアを行いますが、ときにはケアの仕方や意見が合わないこともあるでしょう。
他職種と意見が衝突したときは、自分の主張を押し通すのではなく、相手の考えを受け入れることも大切です。たとえば、医療的なケアに関しては看護師の意見を尊重する、リハビリに関しては理学療法士の意見を尊重するなどして、介護職員の専門外のことは他職種に判断を任せましょう。それぞれの役割を理解して協力し合うことが、他職種と良好なコミュニケーションを取るためのポイントです。
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新人職員が人間関係で悩む前に知っておくべきこと
介護の仕事を始めるにあたって、人間関係に不安を感じている方もいるでしょう。下記では、新人職員が介護現場の人間関係で意識すべきことをご紹介します。
元気に挨拶をする
入職したら、まずは元気に挨拶することから始めましょう。介護職は、他職種や利用者さん、ご家族、地域、医療機関などと関わります。これから密接に関わる方には、しっかり挨拶することを心掛けましょう。
新人職員は、初めて会う先輩職員や利用者さんに自分から挨拶に行き、自己紹介することが大切です。元気な挨拶は好印象を与えるだけでなく、相手の気持ちを明るくさせる効果もあります。
他人の陰口や仕事の愚痴を言わない
職場において、仕事の愚痴や職員同士の陰口を耳にすることもあるかもしれません。介護現場でそんな場面に遭遇してしまったときは、同調するのは避け、聞き流すのが正しい対処法です。相手の愚痴や陰口を否定したり、同意したりしないようにしましょう。陰口や愚痴で盛り上がると、いつの間にか自分が言ったことになっていたり、自分が陰口の対象になったりする可能性もあります。
報・連・相を大切にする
介護現場では、こまめな報連相を大切にしましょう。特に、利用者さんに関する報告・連絡・相談は、介護職にとって欠かせません。毎日接する利用者さんの異変に気づいたら、必ずほかの職員に報告しましょう。
介護の仕事はチームで進めるため、自分一人で判断すると、ほかの職員に迷惑をかけてしまったり、利用者さんを危険にさらしてしまったりするリスクがあります。そのため、気づいたことや分からないことがあるときは、必ず報連相を行いましょう。
また、報連相を徹底することは、コミュニケーション能力を鍛えることにもつながります。日々の仕事を通してコミュニケーション能力をアップさせましょう。
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コミュニケーション研修はどこで受けられる?
コミュニケーション技術を向上させるには、研修やセミナーを受ける方法があります。ここでは、コミュニケーション技術の向上を目的とした研修について解説するので、参考にしてみてください。
介護職員初任者研修のカリキュラムに含まれている
介護職員初任者研修の学習内容として、「介護におけるコミュニケーション技術」のカリキュラムが組まれており、介護現場で求められるコミュニケーション技術の習得が可能です。このカリキュラムでは、「専門職として取るべき行動・取るべきでない行動への理解」「チームケアにおけるスタッフ同士のコミュニケーションの有効性・重要性の理解」などを深められます。
初任者研修を受けることで、利用者さんやご家族とのコミュニケーションはもちろん、職員同士のコミュニケーションの取り方や介護記録の書き方なども理解できるでしょう。
初任者研修のカリキュラムについては、「介護職員初任者研修の内容を解説!筆記試験や実技テストの難易度、取得方法」でご説明しているので、あわせてご覧ください。
出典
厚生労働省「介護職員・介護支援専門員」(2025年1月20日)
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レバウェル介護の資格スクールコミュニケーション技術を向上させるための研修もある
コミュニケーション技術を向上させるために、「セミナーや通信講座でコミュニケーションに関する研修を受ける」という方法もあります。たとえば、日本コミュニケーション能力認定協会のコミュニケーション能力認定講座、ユーキャンのコミュニケーション・スキルアップ講座など、探せばさまざまな講座やセミナーが見つけられるでしょう。
講座やセミナーは、座学形式や実習形式、ディスカッション形式、複合形式などがあり、最近ではオンラインで受講できるコミュニケーション研修も増えてきています。働き方やライフスタイルを考慮したうえで、自分に合った講座やセミナーに参加しましょう。
介護職員同士のコミュニケーションに関するよくある質問
ここでは、介護職員同士のコミュニケーションに関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。職場の人間関係に不安や悩みを抱えている介護職員の方は、ぜひ参考にしてくださいね。
コミュニケーションを取るうえで大切なことは何ですか?
コミュニケーションを取るうえで大切なことは、相手の立場に立ち、否定をせずに共感することです。また、会話の内容だけではなく、表情や声なども相手への印象に影響を与えるので、意識して接しましょう。
この記事の「介護に役立つコミュニケーション技術」では、介護現場で役立つコミュニケーション技術をご紹介しているので、あわせてチェックしてみてください。
介護職員は人間関係の悩みが多いって本当?
介護職員は人との関わりが多い仕事のため、人間関係に悩む場合があるようです。利用者さん・ご家族の対応はもちろん、施設長・看護職員・ケアマネジャーなどの他職種との連携も必要です。関わる人の多さから人間関係が複雑になり、ストレスを抱える介護職員の方もいるようです。
「介護職員の人間関係が悪いのはなぜ?改善方法や転職先選びのポイントを解説」では、介護職員が人間関係に悩む理由や対処法を解説しているので、参考にしてみてください。
まとめ
介護職員にとって、利用者さんとのコミュニケーションだけでなく、職員同士のコミュニケーションも非常に重要です。否定せずに共感し、相手の立場に立って物事を考えることを大切にしましょう。身振り手振りを活用することもポイントです。
コミュニケーションにはミラーリングやマッチングという技法があり、身につければ仕事にも役立てられます。介護職員が人間関係の悩みを抱えないためには、コミュニケーションの方法を意識して良好な人間関係を築くことが大切です。
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