
この記事のまとめ
- 認知症ケア専門士の仕事内容は、職員の指導や利用者さんの精神的なケアなど
- 認知症ケア専門士の主な職場は、グループホームや特別養護老人ホームなど
- 認知症ケア専門士になるには、受験資格を満たして試験に合格する必要がある
認知症ケア専門士の仕事内容が気になる方もいるのではないでしょうか?認知症介護を行うスタッフの指導や、利用者さんの精神的なケアなどが、認知症ケア専門士の業務です。この記事では、認知症ケア専門士の役割や、活躍する職場を解説します。資格取得のメリットや給与事情、認知症ケア専門士認定試験の概要もまとめました。「資格を取得して、認知症ケアのスキルを磨きたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
認知症ケア専門士とは
認知症ケア専門士は、一般社団法人 日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。認知症ケアを行う職員のスキルアップのために設けられました。認知症ケア専門士認定試験に合格して資格登録を行うと、認知症ケア専門士になることが可能です。
資格取得の流れや受験要件は、「認知症ケア専門士になる方法」で後述します。
出典
一般社団法人 日本認知症ケア学会「認知症ケア専門士公式サイト」(2025年4月18日)
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認知症ケア専門士の仕事内容
認知症ケア専門士は、認知症ケアの介護現場において、ほかの介護スタッフに適切なアドバイスを行ったり指導したりするのが仕事です。 認知症ケア専門士の資格を持っている人は、その専門性を活かして、職員の指導や介護計画の作成などを行います。
以下で仕事内容を確認してみましょう。
認知症ケアを行う職員の指導やアドバイス
前述のとおり、認知症ケア専門士は、認知症の方の介護を行う職場で、スタッフにアドバイスや指導を行います。
認知症の利用者さん一人ひとりに適切な支援が行きわたるよう、認知症ケアのエキスパートとして、正しい知識と技術を介護現場に浸透させていくことが役割です。特に、認知症ケアを専門とするグループホームでのニーズが高いでしょう。
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認知症の利用者さんやご家族の精神的なケア
自身の変化や状況を理解できないことに不安を感じる認知症の利用者さんに寄り添い、穏やかに生活できるようサポートするのも、認知症ケア専門士の仕事です。一人ひとりに合わせたコミュニケーションを取ることで、認知症の利用者さんと信頼関係を築き、安心して介護を受けられるよう支援します。
また、利用者さんの認知機能の低下に戸惑ったり、認知症ケアに負担を感じていたりするご家族の精神面のケアをすることもあるでしょう。ご家族が利用者さんとの関わりのなかで何に困っているのかを聞き、解決策の提案や介護のアドバイスを行います。
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アセスメント・介護計画の立案
認知症ケア専門士は、スキルを活かして介護計画の作成に携わることもあるようです。認知症の症状や利用者さんが抱える課題を理解していれば、適切なアセスメントができます。
利用者さんの状況に応じた介護計画を立てるスキルがあれば、訪問介護のサービス提供責任者や、デイサービスの生活相談員などの仕事に活かせるでしょう。
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認知症ケア専門士の活躍の場
ここでは、認知症ケア専門士の活躍の場をご紹介します。資格取得を検討している方は、認知症ケア専門士の職種や職場をチェックしてみましょう。
認知症ケア専門士の保有資格・職種
認知症ケア専門士公式サイトの「認定試験合格状況」によると、認知症ケア専門士の保有者のなかには、介護福祉士や介護支援専門員、看護師といった資格も持っている方が多いようです。
このことから、介護職のほかに、ケアマネジャーやリハビリ専門職の方なども、認知症ケア専門士の資格を仕事に活かしていると分かります。
出典
認知症ケア専門士公式サイト「認定試験合格状況」(2025年4月18日)
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認知症ケア専門士の主な職場
認知症ケア専門士の資格を取得した方は、主に次のような職場で活躍しています。
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- デイサービス
- 訪問介護事業所
- 訪問看護事業所
- 医療機関
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
- 認知症疾患医療センター
- 自治体の福祉課
認知症ケア専門士の職場は、グループホームや特別養護老人ホーム、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、病院などです。介護や福祉、医療といった幅広い分野で、認知症ケアのスキルを活かして仕事をしています。
認知症ケア専門士のキャリア
高度なスキルがある認知症ケア専門士は、介護現場における指導者として重要なポストに就くことが多いでしょう。資格取得後は、同じ職場でキャリアアップする人と、別の認知症ケアを行っている職場へ転職する人がいるようです。
認知症ケア専門士のお給料
認知症ケア専門士に対して資格手当が支給される職場もあります。そのため、資格を取得すると、お給料が一般的な介護職員よりも高くなるかもしれません。
認知症ケア専門士への資格手当の金額は職場によって幅が広く、手当が出ないところもあれば、10,000円以上支給されるところもあります。資格取得を給与アップに活かしたい方は、認知症ケア専門士の資格を正当に評価してくれる職場への転職を検討する選択肢もあるでしょう。
認知症ケア専門士の資格を取得するメリット
認知症ケア専門士を取得するメリットは、利用者さんに適切なケアを行えることや、給与アップを狙えることです。
適切な認知症ケアを行える
認知症ケア専門士の資格があれば、医学的なメカニズムを理解したうえで、根拠を持って認知症の方に対応できます。認知症の利用者さんに対して、自信を持って介護を行えるようになるのが、資格取得のメリットです。
資格手当や役職手当による給与アップを狙える
前述したように、認知症ケア専門士を取得すると、資格手当が支給されて給与がアップする職場もあるようです。また、認知症ケアの分野において、リーダーといった責任のあるポジションに就きやすくなるため、役職手当による昇給も狙えます。
介護・福祉業界での就職や転職に有利になる
認知症ケア専門士の資格があると、認知症介護についての深い知識と高い技術が備わっていることを証明できます。認知症ケアの高度なスキルは、介護や福祉に関する幅広い仕事に役立つので、資格を持っていると就職や転職に有利に働くでしょう。
認知症ケア専門士になる方法
ここでは、認知症ケア専門士の資格取得の流れをご紹介します。試験の受験資格についても解説するので、確認してみましょう。
認知症ケア専門士の資格取得の流れ
認知症ケア専門士認定試験公式サイトの「制度のながれ」を参考に、資格取得の流れを以下にまとめました。
- 認知症ケア専門士認定試験の受験資格を満たす
- 一次試験の申し込み・受験
- 一次試験の結果発表
- 二次試験の申し込み・受験
- 二次試験の結果発表
- 研修動画の視聴
- 資格登録申請
- 資格証の交付
認知症ケア専門士認定試験の一次試験と二次試験に合格して、研修動画の視聴と資格登録を行うことで、認知症ケア専門士を取得できます。なお、認知症ケア専門士の取得後は、5年ごとに資格更新が必要です。
出典
認知症ケア専門士認定試験「制度のながれ」(2025年4月18日)
認知症ケア専門士認定試験の受験資格
認知症ケア専門士認定試験を受験するには、認知症ケアの実務経験が必要です。介護施設や介護事業所、医療機関などで3年以上の実務経験を積めば、受験資格を得られます。認知症ケアに携わっていれば、職種や勤務形態に関係なく実務経験として算定が可能です。
ただし、受験する年から10年以内に、3年以上の実務経験を積んでいることが要件となります。たとえば、2025年に受験する場合、2015年4月1日から2025年3月31日までの期間に、3年以上の実務経験が必要です。
出典
認知症ケア専門士認定試験「試験概要:受験資格」(2025年4月18日)
認知症ケア専門士認定試験の概要・難易度
認知症ケア専門士認定試験の概要と難易度を以下にまとめました。試験の日程や受験にかかる費用が気になる方は、ぜひご覧ください。
認知症ケア専門士認定試験の一次試験の概要
2025年の認知症ケア専門士認定試験の一次試験の概要は、以下のとおりです。
試験日程 | 2025年7月13日(日曜日)午前9時30分~午後3時15分 |
申し込み期間 | 2025年3月10日(月曜日)~ 4月10日(木曜日) |
受験票の送付日 | 2025年5月26日(月曜日)に郵送 |
結果発表 | 2025年8月18日(月曜日)に郵送 |
試験方法 | 五肢択一の筆記試験。インターネットで行うWeb試験 |
出題数 | 各分野50問×4分野の計200問 |
受験料 | 1分野3,000円、全4分野で12,000円 |
参考:認知症ケア専門士認定試験「第1次試験概要」
一次試験は4分野に分かれており、設問数は1分野あたり50問です。試験時間は1分野につき1時間となっています。受験の申し込みには、申請書や実務経験証明書が必要です。受験の手引が願書になっているので、受験の際は早めに取り寄せて準備をしましょう。
認知症ケア専門士認定試験の二次試験の概要
認知症ケア専門士認定試験の二次試験を受験できるのは、一次試験の4分野すべてに合格した人と、受験資格を満たしている認知症ケア准専門士です。
二次試験の概要を以下でチェックしてみましょう。
論述試験の答案の提出期間 | 2025年8月25日(月曜日)~9月25日(木曜日) |
結果発表 | 2026年1月13日(火曜日)に郵送同日午後1時にWebサイトで合格者発表 |
試験方法 | 論述試験。答案と申請書類を郵送で提出 |
受験料 | 8,000円 |
参考:認知症ケア専門士認定試験「第2次試験概要」
二次試験は事例に対する論述試験で、3題の出題です。試験会場での受験ではなく、郵送で答案を送る方法で実施されます。
認知症ケア専門士認定試験について詳しく知りたい方は、「認知症ケア専門士とは?認定試験の合格率と難易度、資格の取得方法を解説!」をご一読ください。
認知症ケア専門士認定試験の難易度
認知症ケア専門士認定試験の一次試験に合格するには、4分野すべてで7割以上の得点が必要です。二次試験は認知症ケアの理解を問われる論述試験となっています。合格率は例年50%前後です。
認知症ケア専門士認定試験は、認知症ケアに特化した専門的な内容なので、難易度は高めと感じるかもしれません。
出典
認知症ケア専門士認定試験「第1次試験概要」(2025年4月18日)
認知症ケア専門士認定試験「第2次試験概要」(2025年4月18日)
認知症ケア専門士公式サイト「認定試験合格状況」(2025年4月18日)
認知症ケア専門士の資格についてよくある質問
ここでは、認知症ケア専門士の資格についてよくある質問に回答します。「資格を取得するか迷っている」という方は、参考にしてくださいね。
認知症ケア専門士の資格は取得しても意味ないの?
認知症ケア専門士は民間資格ですが、取得するメリットはあります。具体的には、認知症ケアの高度なスキルが身につくのがメリットです。また、研修などに参加する機会を得られるので、資格取得後も専門性を磨いてスキルアップできるでしょう。
認知症ケア専門士を取得するメリットは、「認知症ケア専門士は意味ない資格?取得するメリット・デメリットを解説」の記事にもまとめています。
認知症介助士と認知症ケア専門士の違いは?
認知症介助士と認知症ケア専門士の違いは、認定する機関や受験の対象者です。認知症介助士は、公益財団法人 日本ケアフィット共育機構が認定する民間資格で、要件がなく誰でも受験できます。認知症介助士の資格は、介護職だけではなく、認知症の方のご家族や、高齢者と接する機会がある接客業の方なども対象としているのが特徴です。一方の認知症ケア専門士は、認知症ケアの現場で働く職員を対象としています。
認知症介護の資格について詳しく知りたい方は、「【認知症介護の資格一覧】取得方法や試験の難易度、習得できるスキルを解説」をご覧ください。
まとめ
認知症ケア専門士は、認知症ケアの現場で働く介護スタッフのために設けられた、プロ向けの認定資格です。認知症ケア専門士認定試験に合格して、資格登録を行うことで取得できます。
認知症ケア専門士の仕事内容は、認知症ケアを行う職員へのアドバイスや、利用者さんの精神的なサポートなどです。認知症の方に直接関わる業務を行うだけではなく、支援体制を整える役割も担っています。認知症ケア専門士を取得した方は、グループホームをはじめ、特別養護老人ホームやデイサービス、医療機関などさまざまな職場で活躍しているようです。
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働きながら資格を取る方法教えます
執筆者
実
元介護士ライター
グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。