
この記事のまとめ
- 介護報酬改定などにより、2025年も介護職員の給料は上がる見込み
- 常勤で働く介護職員の平均給料は、5年で2万4,000円ほど上がっている
- 2024年は介護職員の賃上施策として「処遇改善加算の一本化」が行われた
「2025年に介護職の給料は上がるの?」と、最新情報が気になる方もいるでしょう。これまでも介護職員の賃金を改善するための施策は行われており、実際に介護職員の平均給与は上昇傾向にあります。この記事では、2025年に給料は上がるのかや介護職員の平均給与推移をまとめました。2024年に行われた賃上げ施策についても解説しているので、今後の介護職員の給料の動向が気になる方は、チェックしてみてください。
目次
介護職員の給料は2025年も上がる?
介護職員の給料は、2025年も上がる見込みです。2024年の介護報酬改定では、処遇改善加算の一本化と加算率の引き上げが決まり、2024年の6月から施行されています。また、同年の補正予算案では、介護職の賃金引き上げの補助として806億円が計上されました。このような状況から、今後も介護職員の賃金を上げるための施策は継続されると予測され、介護職の給与の上昇が期待できるでしょう。
ただし、介護職員の処遇改善加算などは、施設や事業所が要件を満たしたうえで申請しないと支給されません。給与を上げるには、勤め先が処遇改善加算を取得しているかが重要です。
2024年の介護報酬改定や補正予算案については、この記事の「2024年に行われた介護職員の賃上げ施策」で解説します。
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介護職員の平均給与推移
厚生労働省の「介護従事者処遇状況等調査」を参考に、月給・常勤で働く介護職員の平均給与の推移を下記にまとめました。
調査を実施した年 | 常勤で働く介護職員の平均給与 |
---|---|
2022年(介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所) | 317,540円 |
2021年(処遇改善加算(I)~(V)を取得している事業所) | 316,610円 |
2020年(処遇改善加算(I)~(V)を取得している事業所) | 315,850円 |
2019年 | 資料なし |
2018年(加算(I)~(V)を取得している事業所) | 300,970円 |
2017年(加算(I)~(V)を取得している事業所) | 293,450円 |
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.119)」「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.144)」「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.128)」「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.62)」「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.133)」
常勤で働く介護職員の平均給与をみると、2017年は29万3,450円で、2022年は31万7,540円でした。5年ほどで、介護職員の給与は2万4,000円ほど上がっていることが分かります。施設や事業所によって差はありますが、介護職員の平均給与は上昇傾向にあるようです。
出典
厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査:結果の概要」(2025年2月12日)
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2024年に行われた介護職員の賃上げ施策
2024年は「介護報酬改定による賃上げ」や「介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策」「月額平均6,000円程度の賃上げ」が行われました。ここでは、2024年に行われた介護職員の賃上げに関する施策について解説します。
介護報酬改定による賃上げ
「介護報酬改定」とは、介護需要や経済状況などの変化に合わせて介護保険サービスなどを見直す制度で、3年に一度行われます。2024年の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善を目的に、「処遇改善加算の一本化」と「処遇改善加算の加算率の引き上げ」が行われました。
処遇改善加算の一本化
処遇改善加算の一本化では、これまで3つに分かれていた「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が、「介護職員等処遇改善加算」に統一されました。

引用:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
以前の介護職員処遇改善加算は、運用のルールが細かいことと、事務処理にかかる負担が大きいことから、加算の取得を見送る事業所もあり、処遇改善加算の恩恵を受けられない介護職員もいたようです。処遇改善加算の一本化は、これまで複雑だった要件を簡略化し、加算を取得する施設や事業所を増やすために設定されました。
新設された介護職員処遇改善加算の加算率は4段階。条件が厳しい「新加算I」は加算率が高く、算定要件が緩い「新加算IV」は加算率が低くなっているのが特徴です。
処遇改善加算の加算率の引き上げ
厚生労働省の「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)(p.2)」には、「2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引き上げを行う」と記載されています。同資料(p.5)によると、提供サービスによって処遇改善加算の加算率は、0.5~2.1%ほど上がっているようです。
国は介護サービスを提供する施設や事業所に対して、「加算処置や賃上げ促進税制を活用し、介護現場で働く職員のベースアップを行うように」としています。この施策により、今後も介護職員の賃上げが期待できるでしょう。
出典
厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」(2025年2月12日)
介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策
厚生労働省の「令和6年度 補正予算案の主要施策集(p.7)」によると、「介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策」として、806億円が計上されました。これは、介護職員1人に対して、5万4,000円の一時金が支給できる金額といわれています。
補助対象は、「介護職員等処遇改善加算を取得している事業所のうち、生産性を向上し、更なる業務効率化や職場環境の改善を図り、介護人材確保・定着の基盤を構築する事業所」です。支給される補助金は、人件費や職場環境改善費に当てることが可能なため、介護従事者の給料アップや職場環境改善などが期待できるでしょう。
出典
厚生労働省「令和6年度厚生労働省補正予算案の概要」(2025年2月12日)
月額平均6,000円程度の賃上げ
2024年の2~5月には、「介護職員処遇改善支援補助金」として、介護職員の収入を2%程度(月額平均6,000円相当)引き上げるための措置が行われました。これは、介護職員一人ひとりに6,000円が支給されるのではなく、介護職員ベースアップ等支援加算を取得している事業所を対象に、常勤換算した介護職員数と提供サービスに応じて補助金が支給される制度です。賃上げの主な対象は介護職員ですが、施設や事業所の判断で職種間の柔軟な運用も可能としています。
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介護職員の処遇改善は2025年問題に関係している
介護職の賃上げが積極的に行われている主な理由は、介護業界の人手不足を解消するためです。厚生労働省の「我が国の人口について」によると、2025年には団塊の世代が75歳以上となり、日本の人口の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になると推測されています。福祉や介護などの支援が必要になる人が増えていくと予測され、介護のニーズはさらに高まる見込みです。
これまでも介護職は、慢性的な人手不足が問題になっていましたが、2025年以降は高齢化も相まって、よりいっそう人材不足が深刻化するといわれています。国は介護従事者の人材の確保と定着に向けて、今後も介護職員の処遇改善は続くでしょう。
出典
厚生労働省「我が国の人口について」(2025年2月12日)
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介護職員が給与アップを狙う方法
「給与を上げたい」と思っている介護職員もいるでしょう。以下では、介護職員が給与を上げる方法を紹介します。
資格を取得する
介護職員は、資格を取得することで資格手当の支給や昇給などによって、給与がアップすることがあります。以下では、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.157)」を参考に、常勤・月給で働く介護職員の保有資格別の平均給与をまとめました。
保有資格 | 平均給与 |
保有資格なし | 268,680円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 |
介護福祉士実務者研修 | 302,430円 |
介護福祉士 | 331,080円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 376,770円 |
社会福祉士 | 350,120円 |
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.157)」
介護資格のなかでも上位資格である介護福祉士の平均給与は、無資格の介護職員よりも約6万円高くなっています。また、ケアマネジャーや社会福祉士など、より専門性が高い資格を保有している場合、平均給与は高くなる傾向にあるようです。
資格を取得すると、給料を上げられるだけでなく、業務に役立ったりキャリアアップにつながったりするメリットもあります。介護系の資格を取得していない方は、資格取得を目指してみると良いでしょう。
夜勤回数を増やす
夜勤に入ると、「深夜割増賃金」や「夜勤手当」がもらえます。そのため、夜勤に入る回数を増やすことで、給料アップが狙えるでしょう。介護職員には「夜勤専従」という働き方もあります。夜勤専従になると、勤務するたびに夜勤手当が付くので、少ない勤務回数でも給料アップが叶うこともあるようです。
ただし、急に夜勤を増やしすぎると、人によっては生活リズムが乱れて体調を崩してしまうこともあります。給料面でのメリットのみを取るのではなく、慎重に判断するのが良いでしょう。
同じ施設に長く勤める
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.139)」によると、常勤・月給で働く介護職員の平均給与は、「勤続1年~4年」が29万2,330円、「勤続5年~9年」が31万530円、「勤続10年以上」は34万5,610円です。
「勤続10年以上」の介護職員の平均給与は「勤続1年~4年」よりも約5万円高くなっていることが分かります。介護職員の平均給与は、勤続年数を重ねるごとに上がる傾向にあるようです。昇給が見込める職場であれば、長く働くことで給与アップが期待できるでしょう。
管理職へキャリアップする
給料を上げたい介護職員の方は、管理職へのキャリアアップを目指すのも良いでしょう。施設長や管理者といった役職に就くと、役職手当が就いたり昇給したりして、給料が上がることがあります。管理職は責任が大きい役職ですが、新人職員の教育や運営管理など介護現場だけでは得られないやりがいも感じられるでしょう。
なお、管理者には、経験年数や保有資格などの要件が設けられている事業所もあります。管理者へのキャリアアップに興味がある方は、「介護施設で管理職になるには何が必要?仕事内容や平均年収をご紹介」を参考にしてみてください。
今より給与の高い職場へ転職する
今の職場で給料が上がる見込みがない場合は、思い切って転職するのも選択肢の一つです。近年、介護業界の賃金改善は進みつつありますが、介護職員等処遇改善加算を取得していない事業所では、給与アップが難しいことも。転職の際は、応募前に処遇改善加算を取得しているかを確認しておくことが大切です。
そのほか、転職で給与アップするポイントは、「【介護】転職で年収アップは可能?給与アップのポイントとリスクを解説」を確認してみてください。
「今の自分の給料が相場より高いのか低いのか分からない」「転職で給料を上げたい」という方は、介護業界を専門とする転職エージェントレバウェル介護(旧 きらケア)を活用ください。給料や転職に関する相談に、無料で対応しています。
出典
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年2月12日)
介護職の給料に関するよくある質問
ここでは、介護職の給料に関するよくある質問を紹介します。「給与を上げたい」という方はチェックしてみてください。
介護士の給料が上がらないのはなぜですか?
介護職の給料が上がりにくい理由の一つとして、介護サービスを提供する介護施設や事業所の主な収入源が介護報酬であることが挙げられます。介護報酬額は、介護保険サービスによって決まるため、施設や事業所が独自に報酬額を決められるわけではありません。一般企業のように利益を追い求めるのは難しいのが現状です。とはいえ国は、介護職の処遇改善に向けて賃上げ施策を行っています。そのため今後、介護職の平均給料は上がっていく可能性があるでしょう。
介護職の給料については、「介護職の給料が安すぎるといわれる理由とは?年収をアップする方法も解説」をご覧ください。
パートやアルバイトの介護職員は賃上げされますか?
2024年から実施されている「介護職員等処遇改善加算」の対象者は、算定する事業所に勤める介護職員等で、雇用形態は問われません。そのため、パートやアルバイトで働く介護職員も、処遇改善加算による賃上げの対象となる可能性が高いでしょう。ただし、加算の具体的な配分方法を決めるのは事業所なので、賃上げの対象か不安な方は、上司に確認してみてください。
「介護職員等処遇等改善加算の対象職員は?配分ルールや要件、旧加算との違い」では、処遇改善加算の対象職員について解説しているので、合わせて参考にしてみてください。
まとめ
介護職員の平均給与は、5年ほどで2万4,000円ほど上がっています。施設や事業所によって、賃上げ率は異なりますが、介護職員の平均給与は上昇傾向にあるようです。
2024年の介護報酬改定では、処遇改善加算の一本化と加算率の引き上げが行われました。同年の補正予算案では、介護職員の賃上げ施策として806億円を計上。今後も介護職員の賃金は、上がっていくと予想されます。
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今の職場に満足していますか?
執筆者
「レバウェル介護」編集部
お役立ち情報制作チーム
介護職専門の転職支援サービス「レバウェル介護」が運営するメディア。現役の介護職とこれから介護職を目指す方に寄り添い、仕事や転職の悩み・疑問を解決する記事を制作している。これまでに公開した記事は1400記事(※)以上。制作チームには介護福祉士ライターも在籍し、経験をもとにリアルな情報をお届け。資格や介護技術など、スキルアップにつながる情報も発信中!(※)2023年10月時点