
この記事のまとめ
- 訪問介護で利用者さんの自宅に行きたくないと思うのは、介護拒否などが理由
- 訪問介護の業務が大変でつらいときは、サービス提供責任者に相談してみよう
- 仕事を続けるのがきついと感じる訪問介護員は、転職するという選択肢もある
「利用者さんの自宅に行きたくない…」と思ったことがある訪問介護員(ホームヘルパー)の方もいるのではないでしょうか。利用者さんからの介護拒否やご家族との人間関係などを理由に、「自宅に行きたくない」と感じる場合があるようです。この記事では、訪問介護員が抱える悩みと具体的な対処法を解説します。訪問介護で介護拒否に対応した体験談も紹介するので、利用者さんの対応に難しさを感じている訪問介護員はご覧ください。
ホームヘルパー(訪問介護員)とは?仕事内容や必要な資格、給料を解説目次
訪問介護員が「利用者さんの自宅に行きたくない」理由
訪問介護員(ホームヘルパー)が「利用者さんのところに行きたくない」と思うときには、次のような理由があると考えられます。
- 利用者さんに介護拒否がある
- 利用者さんやご家族から無理な要求をされる
- 介護するための環境や物品が整っていない
- 利用者さんやご家族との相性が悪い
訪問介護員が抱える悩みについて以下で解説するので、「どんなところが大変なの?」と気になる方はチェックしてみましょう。
利用者さんから介護拒否がありきつい
訪問介護員のなかには、利用者さんから介護拒否を受けて自信をなくしたり対応に困ったりするなどして、「仕事に行きたくない」と思う人もいるでしょう。
入浴や排泄などのケアを受けることに抵抗を感じる利用者さんは少なくありません。初めて介護サービスを利用する方の場合、「こんなことまで手伝ってもらうなんて情けない…」といった気持ちから介護拒否することも考えられます。また、認知症を患う方の場合、「状況が分からない」「今はやりたくないけどうまく伝えられない」などの理由で介護拒否することがあるかもしれません。
状況改善に努めているのに介護拒否が何度も続くと、仕事がうまくいかないストレスから「行きたくない」と感じることがあります。
訪問介護計画にない援助を要求されて困る
訪問介護員は、介護保険法に基づく援助を行うため、訪問介護計画にない業務には対応できません。サービス提供にはルールがありますが、利用者さんやご家族から理解を得られず、訪問介護の範囲内でできないことまで頼まれると、対応に困ってしまいます。たとえば、利用者さんのご家族の居室の掃除や、たばこやお菓子といった嗜好品の買い物は、訪問介護では行えません。
断っても何度も要求されたり、「こんなこともやってくれないの?」と言われたりすると、訪問介護員は精神的な負担を感じるでしょう。このように、無理な要求への対応に困って、仕事に行きたくないと感じる訪問介護員もいます。
環境が整っておらず適切な介護ができないのがつらい
「家が汚い」「冷房が効いていなくて暑い」「介助に必要な物品がない」など、介護を行う環境が整っていないことを、きついと感じる場合もあります。たとえば、「オムツ交換に行ったのに替えのオムツがない」といった状況だと、予定どおりに仕事をするのが難しいでしょう。
訪問介護は施設介護とは異なり、利用者さんごとに生活環境が違うため、「思うように介護ができなくてつらい」と思う場合があるようです。
利用者さんやご家族との人間関係が悪く仕事に支障がある
利用者さんやご家族との人間関係に悩む訪問介護員もいます。訪問介護では、利用者さんと1対1で仕事をすることが多いので、相性が悪い利用者さんのケアは「きつい」と感じやすいようです。また、「高血圧に配慮して調理したら、味が薄いと言われた」「買い物の品を見て、メーカーが違うと言われた」など、利用者さんの好みやこだわりによって不満を言われることも。気疲れからストレスを感じるときもあるでしょう。
訪問介護員は、利用者さんの自宅で業務を行うので、ご家族との人間関係に悩むことも少なくありません。利用者さんとご家族の関係性が悪く、訪問介護員が巻き込まれることもあるようです。頑張って仕事をしているにもかかわらず、利用者さんやご家族からきつい言葉を掛けられると、「訪問介護に行きたくない」と思ってしまうのかもしれませんね。
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訪問介護の業務が大変なときの対処法
ここでは、前述した訪問介護員が抱える悩みへの対処法を解説します。「対応が難しい利用者さんに困っている」という訪問介護員の方は、ぜひ参考にしてください。
利用者さんに介護拒否されたときの対処法
介護を拒否するのには、「声掛けが不十分」「利用者さんの体調が悪い」「信頼関係ができていない」などの理由があります。拒否が続くときは、利用者さんが介護を受けたくない理由を考えて対処しましょう。
それでも介護拒否に困ったときは、サービス提供責任者や同じ利用者さんを担当している訪問介護員と話し合い、原因を探るのがおすすめです。どのような声掛けや手順で介護を行うとスムーズなのかを相談することで、利用者さんにとって快適なケアを行えるでしょう。
また、利用者さんと信頼関係を築くためには、適切な距離感や方法でコミュニケーションを取ることが大切です。訪問時は、利用者さんに目線を合わせて笑顔で挨拶をしましょう。話しかけるときは、相手に合わせた声のボリュームや速度を心がけることも必要です。
利用者さんが介護拒否に至る理由を考えて対応するためには、介護の知識を身につけたり、日々の観察を行ったりするのが有効といえます。介護拒否への対処法を詳しく知りたい方は、「介護拒否が起きる状況や原因とは?無理のないケアと対応方法を解説!」もあわせてご覧ください。
訪問介護計画にない援助を要求されたときの対処法
訪問介護計画にない援助を頼まれたら、「規則なので対応できない」とはっきり伝えることが大切です。断るときは、語気が強くならないようにして、決まりだからできないということを伝えましょう。
一度断ったにもかかわらず、対応できない業務を要求されるときは、サービス提供責任者に報告してください。サービス提供責任者やケアマネジャーから対応できない旨を説明してもらうことで、角を立てずにトラブルを防げるでしょう。
訪問介護員が対応できる業務の範囲は、「【ヘルパーができないこと一覧】どこまでが業務の範囲なのか」の記事で解説しています。
介護業務を行う環境や物品が整っていないときの対処法
利用者さんの自宅に訪問して適切な介護ができない環境だと感じたら、サービス提供責任者に相談しましょう。たとえば、物品がそろっていない場合、ご家族に購入を依頼したり、買い物の援助を追加したりしなければいけません。訪問時にご家族がいれば直接伝えることもありますが、基本的に連絡はサービス提供責任者を通して行いましょう。
訪問介護員が働く環境を整えるのもサービス提供責任者の役割なので、何か困ったことがあれば早めに相談することが重要です。
利用者さんとの人間関係に悩みがあるときの対処法
利用者さんとの人間関係の悩みがあるときは、改善できるところはないか考えてみましょう。「何度も同じことを指摘されていないか」「利用者さんやご家族に失礼な部分はなかったか」などを思い返してみてください。
自身に改善できるところはないか考えてもうまくいかないときは、サービス提供責任者に相談するのがおすすめです。利用者さんの性格は一人ひとり異なるため、接し方を変えることでコミュニケーションがうまくいく場合も。ほかの人の対応を聞くと参考になるかもしれません。
適切なコミュニケーション方法を復習したい方は、「高齢者とのコミュニケーション方法!相手に寄り添う上手な会話のコツとは」をご一読ください。
どうしても相性が合わない利用者さんがいるときは、担当者を変えたり、複数の訪問介護員で交代で対応したりする方法もあります。仕事がつらいと感じるときは、どのような悩みがあるのかをサービス提供責任者に伝えてみてくださいね。
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訪問介護員として介護拒否を受けたときの体験談
ここでは、筆者が訪問介護の仕事をしていたときの体験談をご紹介します。実際にどのような介護拒否があったのかと、どのように対応したのかをまとめたので、参考にしてみてください。
デイサービスへの送り出しで介護拒否があった
介護拒否があった利用者さんは、ご家族が仕事で不在の日中にデイサービスを利用している認知症の方です。訪問介護員は、利用者さんがデイサービスに行くまでの準備を担当していました。
その利用者さんは朝が苦手で、「起きたくない」「出掛けたくない」と拒否することが頻繁にありました。利用者さん自身は「家で過ごしたい」と思っているようでしたが、徘徊で警察に保護されたこともあり、1人で長時間過ごすのは難しい状況です。声掛けやケアを工夫しましたが、デイサービスの送り出しがうまくいく日といかない日がありました。
サービス提供責任者と解決策を話し合った
利用者さんが気持ち良くデイサービスに通うためにはどう対応したら良いのか、サービス提供責任者やほかのスタッフと何度も情報を交換。「起床時は温かいタオルで顔を拭いてもらう」「居室は寒くないよう調節しておく」など、ケアのコツを話し合い、訪問時に実践してみました。
利用者さんに「どこにも行きたくない」という意思があるため、介護を拒否された場合の対応も相談しました。そして、「ご家族に電話して利用者さんを説得してもらう」「サービス提供責任者に連絡して指示をもらって従う」などの対処法が決まりました。また、複数の訪問介護員でその利用者さんを担当することで、訪問介護員一人ひとりの負担を減らすよう配慮がありました。
利用者さんから介護拒否を受けたときは、1人で抱え込まないことが重要になります。訪問介護員は1人で仕事を行いますが、ご家族やサービス提供責任者、ケアマネジャーなど、利用者さんの在宅生活を支援するチームの一員です。介護拒否に向き合った経験によって、訪問介護の仕事を続けていくには周りに頼る必要があることがよく分かりました。
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訪問介護に行きたくないなら転職する解決方法もある
利用者さんの援助に行きたくない理由を、サービス提供責任者に相談しても解決しない場合は、ほかの訪問介護事業所に転職する選択肢もあります。また、訪問介護の仕事自体にストレスを感じる方は、介護施設に転職することで悩みが解決するかもしれません。
介護業界専門の転職エージェント「レバウェル介護(旧 きらケア)」では、訪問介護や介護施設の求人を豊富に取り揃えています。介護の仕事に詳しい専任のアドバイザーが、今の職場の不満や悩みをヒアリング。あなたにとって働きやすい転職先をご提案いたします。「サ責や管理者に相談しやすい」「教育体制や研修が充実している」など、実際に転職した方から聞いた情報もお伝えできるので、気軽にご相談くださいね。
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訪問介護に行きたくない理由に関するよくある質問
ここでは、訪問介護に行きたくない理由に関する質問に回答します。「ホームヘルパーって大変なの?」「訪問介護の仕事で困ったときの対処法は?」と疑問に思っている方は、チェックしてみてください。
訪問介護のトラブルにはどんな事例がありますか?
訪問介護のトラブル事例には、「来るときに買い物を済ませてほしいと言われた」などがあります。買い物代行の援助では、利用者さんの自宅に訪問してお金を預かってから買い物を行うのが基本です。金銭トラブルを防ぐためにも、ルールを守って買い物を行う必要があります。利用者さんに「先に買って来てほしい」と頼まれても、きちんと説明して断りましょう。また、訪問介護では、利用者さんからお礼の品をあげると言われ、断るのに苦労するといったこともあるようです。
訪問介護員が抱える悩みの内容は、この記事の「訪問介護員が「利用者さんの自宅に行きたくない」理由」にもまとめています。
訪問介護で利用者さんがわがままを言って困っています…
訪問介護は援助の内容や頻度が決まっていますが、「これもやってほしい」「今日は気分じゃない」など、自身の希望を重視する利用者さんもいます。時間や対応できる業務を説明して、無理な要求は断りましょう。ただし、利用者さんの体調不良といった理由で、予定どおりに援助を行えない場合は、臨機応変な対応が必要になります。訪問していて判断に迷うことがあれば、サービス提供責任者に確認を取って対応しましょう。
「訪問介護の業務が大変なときの対処法」では、訪問介護の仕事で困ったときの対処法を解説しているので、参考にしてくださいね。
訪問介護の提供拒否が可能な正当な理由って何?
訪問介護事業所は、正当な理由がない限り、サービスの提供を拒否できません。厚生労働省の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」によると、訪問介護サービスの提供を拒否できる正当な理由は、下記の3つです。
- サービス提供のための人員が不足しており、利用申し込みに応じられない
- 利用者さんが事業所のサービス提供地域外に住んでいる
- 利用者さんに対して適切な指定訪問介護を提供することが困難である
利用者さんから、ハラスメントなどの信頼を損ねる行為があった場合は、改善の余地がないかを一度検討することになります。理不尽な対応をされると、「もう行きたくない!」と思う気持ちも理解できますが、即刻サービス提供を拒否することはできません。訪問介護サービスを提供するうえで問題があるときは、サービス提供責任者や管理者に相談して対応を決めましょう。
出典
厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」(2025年4月25日)
まとめ
訪問介護員は、介護拒否や利用者さんとの人間関係などに悩んで、「仕事に行きたくない」と思う場合があります。もし、利用者さんから介護拒否を受けたときは、原因を考えてコミュニケーションを取ることが大切です。訪問介護の仕事で困ったときは、早めにサービス提供責任者に相談しましょう。
「訪問介護に行きたくない」と感じてつらいなら、転職する選択肢もあります。転職の際は、訪問介護の仕事自体を辞めたいのか、今の職場がきついのか、しっかりと考えてから職場を選びましょう。
「もっと働きやすい職場に転職したい」「訪問介護のほかにも日勤のみの求人はあるの?」など、転職を検討している方は、レバウェル介護(旧 きらケア)をご活用ください。「日勤のみの求人」「週2、3日~OKの求人」など、さまざまな働き方の転職先をご紹介できます。サービスは無料なので、今の職場で悩みがある方はぜひ相談してみてください。
今の職場に満足していますか?
執筆者
実
元介護士ライター
グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。