
この記事のまとめ
- 介護における「自立」は強みを活かすことで、「自律」は自己決定を行うこと
- 介護職員が行う「自立支援」とは、利用者さんのできることに着目した支援
- 介護職員が行う「自律支援」とは、利用者さん自身の希望を重視した支援
介護の勉強をしていて、「自立と自律の違いが分からない」という方もいるのではないでしょうか?介護における自立とは、サポートを受けながらも、自身の強みを活かし生活すること。自律とは、自らの意思に基づいた支援を受けることです。この記事では、自立と自律の違いを解説。介護職員が行う「自立支援」と「自律支援」の必要性や具体例もご紹介します。介護福祉士試験の自立に関する過去問にも触れているので、ご覧ください。
目次
介護における自立と自律の違いとは?
一般的に「自立」とは、他者の支援がなくても自分の力で行動できる状態であること。「自律」とは、自分の規範や気持ちに従い、自分自身を管理・コントロールすることです。
自立は身体的な機能に依存する場合が多いのに対して、自律は精神的な活動が基盤となるという違いがあります。
また、「介護における自立」とは、支援を受けながら、自分の持つ能力を活かして生活することで、「身体的自立」「経済的自立」「社会的自立」「精神的自立」の4つに分けることができます。
一方、「介護における自律」とは、自分の意思に基づいたサービス内容やケアの方法で介護を受けることで、「精神的自立」と同じ意味をもつのが特徴です。つまり、介護における自立には、利用者さんの自己決定である「自律」も含まれます。
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介護職員が行う自立支援
介護職員が行う自立支援とは、利用者さんのできることやADL(日常生活動作)に着目した支援です。ここでは、自立支援の必要性やポイントを解説します。
自立支援の必要性
自立支援は、利用者さんが役割を持って生活するために重要です。利用者さんが自分でできる部分を見極め、必要に応じた支援をすれば、自立してできることが増える可能性があります。高齢者の方は、老化によって心身機能が低下する場合が多いので、できないことを増やさないためにも、自立支援は必要です。
また、自分のことを自分でできるようになることだけが、自立支援の目的ではありません。利用者さんが自身の強みを活かして行動し、日常生活を充実させることも、自立支援を行う目的の一つです。利用者さんご本人の希望を理解し、それを叶えるために何が必要なのかという視点をもちつつ、生活の質を向上させるような支援を行うことが大切といえるでしょう。
介護職員が自立支援を行う際のポイント
介護の現場で自立支援を行う際は、利用者さんのペースに合わせることが大事です。利用者さんの心身機能を把握したうえで、適切な声掛けを行いましょう。
無理してすべてを自分でやってもらう必要はないので、難しい部分は介助します。「できない」「難しい」という印象が残らないよう、できた部分を肯定すると、前向きに行動するきっかけになるでしょう。
動機づけを行ってモチベーションにつなげる
利用者さんから介護拒否があるときは、動機づけを行い、利用者さん本人のモチベーションを上げることも大事です。
たとえば、「着替えたくない」と更衣の拒否があった場合、「着替える意味が分からない」「面倒くさい」などの理由が考えられます。これに対して、「パジャマから着替えれば外出できる」など、利用者さんの意欲を引き出す声掛けを行うことで、自立を強制しない尊厳を保った支援が可能です。
分かりやすい声掛けを意識する
自立支援を行う際は、分かりやすい声掛けを意識するのもポイントです。認知症の方が手順を忘れて困っている場合、一つひとつの手順を順番に伝えることで、自分で行動できることがあります。
たとえば、自分が初めての料理を作るときに、「〇〇を作る」という説明だけでは難しいと感じることがあるでしょう。それと同じように、認知症の利用者さんは、「着替えましょう」というだけでは手順が分からないことも。そのようなときは、「まずはこの服を脱ぎましょう」「シャツは右腕から袖を通しましょう」など、細かく伝えるとできる可能性があるので、丁寧な声掛けを試してみてくださいね。
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介護職員が行う自律支援
自律支援とは、利用者本位のサポートを行うことです。「自立」のなかでも特に精神的自立を重視して行う支援を指します。以下で介護職員が行う自律支援について確認してみましょう。
自律支援の必要性
利用者さんの意思決定や意思表示を支援することで、自律した生活をする権利を守れます。自分の生活を自分で選択する権利は、誰もが生まれながらに持っている基本的人権の一つ。個人として当たり前の権利を、介護を受ける方が維持するために、自律支援は重要です。
自分1人だけですべてを決めるのではなく、他人の意見や支援を受けて選択することも自律に含まれます。利用者さんが自分の意思やニーズに沿った暮らしができるよう、適切なサポートを行うのが、介護職員の役割です。
介護職員が自律支援を行う際のポイント
自律支援を行う際は、できないことに対してどのように考えるか、支援するかという視点が大切です。
まずは、「自分で考えて選択することが難しい」「自分の希望を伝えることが難しい」など、利用者さんが自律するために何が困難なのかを考えましょう。
そして、利用者さんが置かれている状況という事実だけではなく、「やりたくてもできない」という気持ちに寄り添って支援方法を検討する必要があります。
利用者さんの希望を尊重する
同じ状態の利用者さんがいたとしても、介護に対しての考え方や人生観はそれぞれです。答えやすい方法で質問したり、ご家族に意見を聞いたりして、ご本人の希望を尊重した選択につなげましょう。
言葉だけではなく、「拒否がある」「笑顔で頷いてくれる」などの態度でも、利用者さんの意向を知ることはできます。
質問に答えやすいよう声掛けを工夫する
自律支援を意識した認知症の方への声掛けとして、選択肢を提示する方法があります。
介護施設での更衣介助を例に、自律支援を意識した声掛けを考えてみましょう。クローゼットを開けて、「どの服を着たいですか?」と聞いても返答がなかった場合、介護職員が服を選ぶ前にできることがあります。言葉を話すのが難しい利用者さんであれば、「この2つだとどちらが良いですか?」などと聞くと、指差しで答えられるかもしれません。
また、服の選び方が分からない利用者さんの場合、「今は寒いですか?暑いですか?」と聞けば、快適に過ごせる服装を選べる可能性があります。
「聞いても答えられない」「分からない」と決めつけるのではなく、さまざまな方法を試して、一人ひとりに合った援助を行うことが、利用者さんの自律の支援につながるでしょう。
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介護福祉士国家試験の自立・自律の問題を見てみよう!
介護福祉士国家試験の出題範囲には、「人間の尊厳と自立」という科目があります。以下では、第37回と第36回の試験問題をご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
第37回介護福祉士試験の「人間の尊厳と自立」の問題
公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの「第37回(令和6年度)介護福祉士国家試験 試験問題 <領域:人間と社会> 人間の尊厳と自立(p.2)」によると、第37回(2024年度)介護福祉士国家試験では、次のような問題が出ました。
後遺症で左片麻痺があり,介護老人福祉施設で生活している。家族から,「できることは自分で行ってほしい」と希望があり,Aさんは自室から食堂まで車いすで自走することを日課としている。
1 週間前から,介護福祉士養成施設の学生がAさんのフロアで実習を開始した。数日前からAさんは実習生に,「今日は腕が痛いので,食堂まで車いすを押してください」と依頼するようになった。悩んだ実習生は,実習指導者に相談をした。
実習生に対する実習指導者の最初の助言として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1.「Aさんの腕は痛くないので,気にしないでください」
2.「どのようなときも,Aさん自身で行ってもらうことが必要です」
3.「ご家族から自分で行うように,言われています」
4.「それは自立につながらないので,車いすを押さないでください」
5.「Aさんが依頼する理由を,まず考えてみることが大切です」
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第37回(令和6年度)介護福祉士国家試験 試験問題 <領域:人間と社会> 人間の尊厳と自立(p.2)」
この問題の正解は、5番の「Aさんが依頼する理由を,まず考えてみることが大切です」です。
実際の腕の痛みの程度や、実習生に介助を頼んだ理由は、利用者さん本人にしか分かりません。そのため、Aさんの身体状況や気持ちを理解したうえで、どのような支援や声掛けを行うのが適切なのかを話し合い、支援の方針を決める必要があるでしょう。
第36回介護福祉士試験の「人間の尊厳と自立」の問題
第36回(2023年度)介護福祉士国家試験では、自立に関する次のような問題が出ました。
問題2 次の記述のうち、介護を必要とする人の自立についての考え方として、最も適切なものを 1つ選びなさい。
1.自立は,他者の支援を受けないことである。
2.精神的自立は,生活の目標をもち,自らが主体となって物事を進めていくことである。
3.社会的自立は,社会的な役割から離れて自由になることである。
4.身体的自立は,介護者の身体的負担を軽減することである。
5.経済的自立は,経済活動や社会活動に参加せずに,生活を営むことである。
公益財団法人社会福祉振興・試験センター「第36回(令和5年度)介護福祉士国家試験 筆記試験問題 <領域:人間と社会> 人間の尊厳と自立(p.2)」
この問題の正解は、2番の「精神的自立は,生活の目標をもち,自らが主体となって物事を進めていくことである。」です。
前述したように、精神的自立とは、利用者さんが主体となって意思決定や選択を行う「自律」のこと。介護を受ける利用者さんが、生活の目標を持って主体的に行動することは、精神的自立(自律)に当てはまります。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]過去の試験問題」(2025年9月26日)
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「自立」と「自律」に関するよくある質問
ここでは、「自立」と「自律」に関するよくある質問に回答します。「自立がどんな意味で使われる言葉なのか確認したい」という方は、ぜひご一読ください。
看護における自立と自律の違いを簡単に教えてください!
看護における自立とは、主に利用者さんの「身体的自立」「経済的自立」「社会的自立」「精神的自立」のことです。自律はこのうちの「精神的自立」と同じ意味で用いられます。
看護における自律とは、患者さんが自身の希望する医療やケアを受けることです。たとえば、インフォームドコンセントによって病態を理解することや、セカンドオピニオンを利用して治療方法を選択することなどが、患者さんの自律といえるでしょう。
自立支援医療制度とは何ですか?
自立支援医療制度とは、特定の障がいの治療にかかる費用を公費で賄うことで、患者さんの医療費負担を軽減する制度です。主な対象者は、精神疾患を抱える方や肢体不自由の方、視覚障がいのある方、内部障がいを抱える方となっています。
障がいのある方が適切な治療を受けるための制度なので、心身の障がいに関する通院や治療を行っている方は、自身が利用できるかチェックすると良いでしょう。なお、自立支援医療制度における治療費の自己負担額は、世帯所得に応じて決まります。
出典
厚生労働省「自立支援医療制度の概要」(2025年9月26日)
介護の自立支援における考え方とは?
介護の自立支援においては、できる限り利用者さん自身の能力を活かしながら、自立した生活を送れるようにサポートする意識が重要です。また、「身体的自立」「経済的自立」「社会的自立」「精神的自立」の4つの自立の維持・改善に向けて支援します。総合的な観点で利用者さんの自立をサポートすることで、QOLの向上につながるでしょう。
まとめ
介護における「自立」とは、サポートを受けながらも自身の強みを活かして生活することです。一方、自らの意思に基づいたケアを受けることを「自律」といいます。
介護職員が行う「自立支援」の目的は、利用者さんの生活の質をより良くすることです。自立支援を行う際は、利用者さんの意欲を引き出すスキルが必要になります。
また、「自律支援」の目的は、利用者さんの自己実現をサポートすることです。介護職員は、専門的なコミュニケーション能力を活かして、利用者さんの希望を汲み取って自律を支援すると良いでしょう。
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執筆者

実
元介護士ライター
グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。




