
この記事のまとめ
- 失語症とは、大脳の言語中枢の損傷が原因で起こる言語障害の一つ
- 失語症には、運動性失語や健忘失語などの種類があり、それぞれ特徴が異なる
- 失語症を患う方との会話では、ジェスチャーをつけたり、物を使ったりしよう
「失語症の原因や症状って?」「失語症を患う方のリハビリ方法やコミュニケーションの取り方が知りたい」といった疑問やお悩みをお持ちの方もいるでしょう。失語症とは言語障害の一つで、症状の現れ方や程度には個人差があります。本記事では、失語症の原因や症状だけでなく、種類やほかの言語障害との違いも解説。また、リハビリ方法やコミュニケーションの取り方についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
失語症とは
失語症とは、脳梗塞や脳出血などによって、大脳の言語中枢が損傷することが原因で起こる言語障害の一つです。「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能に何かしらの影響が見られるのが特徴で、症状の現れ方やタイプ、程度には個人差があります。
以下で、失語症の具体的な症状をチェックしてみましょう。
失語症の具体的な症状
失語症の具体的な症状は、以下のとおりです。
- 相手の話す言葉が理解できない
- 思っていることをうまく話すことができない
- 言葉を言い間違える
- 相手が言った言葉を真似することができない、うまく発音できない
- 書いてある文字や文章が理解できない
- 文字を書くことができない
このように失語症では、「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能にさまざまな障害が生じるため、日常生活やコミュニケーションが困難になりやすいといえます。
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失語症の原因は大脳の言語中枢の損傷
先述したとおり、失語症は大脳の言語中枢の損傷が原因で起こります。以下で、詳細についてまとめているので、チェックしてみましょう。
脳梗塞や脳出血などによるもの
言語中枢が損傷してしまう原因の一つは、脳梗塞や脳出血などによるものです。これらの病気は中高年の発症ケースが多く、失語症を患う方の大半が中高年以上となっています。
交通事故や転倒などによるもの
言語中枢が損傷してしまうもう一つの原因は、交通事故や転倒などによるものです。この場合、頭部外傷や脳腫瘍などによって若い人でも発症してしまうケースがあります。
失語症の種類(タイプ)
ここでは、失語症の種類(タイプ)とそれぞれの特徴についてご紹介します。症状の現れ方や程度には個人差があり、正確に分類できない場合も多いため、あくまで参考程度としてご覧ください。
運動性失語(ブローカ失語)
運動性失語(ブローカ失語)とは、言葉の理解に問題はありませんが、実際に喋ろうとするとうまく話せなかったり、言葉が出ずらかったりする失語症です。
運動性失語(ブローカ失語)には、以下のような特徴があります。
- 話す量が少なく、短い単語や言葉だけが話せる
- 相手が言った言葉を繰り返すことが難しい
- 漢字よりも仮名文字を読んだり、書いたりすることが困難になりやすい
感覚性失語(ウェルニッケ失語)
感覚性失語(ウェルニッケ失語)とは、話し言葉や書き言葉の理解が困難になってしまう失語症です。
感覚性失語(ウェルニッケ失語)では、以下のような特徴があります。
- 支離滅裂で意味の分からない言葉が多くなるため、会話が成立しづらい
- 本人に自覚がないことが多い
- 誤字が多くなりやすい
健忘失語
健忘失語とは、話を聞いて理解したり、会話したりすることはできますが、物や人などの名前が出てこない症状です。
健忘失語では、以下のような特徴があります。
- 物や人などの名前が出てこないため、回りくどい話し方になりやすい
- 「あれ」「それ」「これ」などの指示代名詞が多くなる
伝導失語
伝導失語とは、相手の話を理解することはできますが、自分が言いたい言葉や単語をうまく話せず、何度も言い直してしまう症状です。
伝導失語では、以下のような特徴があります。
- 自分が言っている言葉や単語が間違っているという自覚はある
- 復唱がうまくできなくなる
全失語
全失語とは、「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能のすべてに重度の障害がみられる失語症です。
全失語では、以下のような特徴があります。
- 相手が話す言葉はほとんど理解できない
- 意味が通じにくい言葉や発声になりやすい
- 読み書きが難しい場合が多い
- 本人だけではなく、聞き手側もコミュニケーションを取るのが難しい
失語症とほかの言語障害との違い
ここでは、失語症と似ているほかの言語障害との違いについてご紹介します。
運動障害性構音障害(構音障害)
運動障害性構音障害(構音障害)とは、口や舌などの機能不全によってろれつが回らない状態になり、発音がしにくくなる言語障害のこと。発音は不明瞭になるものの、話の内容や話を理解する能力、読み書きなどは問題ない場合が多いのが特徴です。
失語症と構音障害の大きな違いは、大脳が損傷を受ける部位にあります。
失語症は大脳の言語中枢が損傷することで、「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能にさまざまな障害が生じますが、構音障害では大脳の運動中枢が損傷するため、「話す」という言語機能にのみ障害が生じます。
「言語中枢が損傷されると現れる言語障害が失語症」「運動中枢が損傷されると現れる言語障害が構音障害」と覚えておくと良いでしょう。
失声症
失声症とは、言葉のとおり声が出なくなる言語障害です。喉や器官、声帯などの病気によって起こりやすいとされています。しかし、これらの部位に明らかな原因がないにも関わらず失声症がみられる場合は、精神的な強いストレスが原因で起こる「心因性失声症」が考えられます。
失声症は「話せなくなってしまう」という症状が失語症と似ているため、間違われやすいとされています。前の項目でも述べましたが、失語症は大脳の言語中枢の損傷によって起きるため、喉や器官、声帯などの病気や精神的なストレスが原因で起こる失声症とは異なる言語障害です。
認知症
ほかの言語障害と同様に失語症とよく間違われやすいのが認知症です。認知症は新しいことが記憶できなかったり、自分の名前や季節などが分からなくなったりする認知機能障害のこと。一方で、失語症は脳の認知機能に問題はなく、うまく話せなかったり、話の内容を理解できなかったりする症状が特徴です。
コミュニケーションがうまく取れなくなることで認知症と誤解されやすいですが、失語症とは上記のような違いがあることを覚えておきましょう。
学習障害
学習障害とは、「聞く」「読む」「話す」「計算する」といった特定の学習能力に障害がある発達障害のことです。学習障害の原因は明確になっていませんが、先天的な脳の機能障害によって起きると考えられています。一方で、失語症は大脳の言語中枢が損傷して起きる後天的なものであり、学習障害との違いはこの部分にあるといえます。
失語症を患う方のリハビリ方法の例
ここでは、失語症を患う方のリハビリ方法について例を挙げてご紹介。リハビリを行ううえでの大切なポイントについてもまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
会話をして言葉を話す・聞く機会を作る
会話をして言葉を話す・聞く機会を作ることは、失語症の症状の進行を遅らせたり、改善させたりする効果が期待できます。主なリハビリの内容としては、カードに書いてある絵の名前を言ってもらったり、テレビのニュースを聞いて内容について答えてもらったりするなどです。このようなリハビリを繰り返し行うことで、少しずつ言語機能の回復を感じることができます。
また、相手が答えるのを待つことや言葉に詰まった際にサポートを行うといった姿勢も大切です。失語症を患う方の表情や動きなどをしっかり観察し、簡単な質問をして「声を出す」という機会を作ることも意識できると良いでしょう。
挨拶などで毎日コミュニケーションを取る
「おはよう」「こんばんは」「ありがとう」「いってきます」のような挨拶は、失語症を患う方の発話や発声のリハビリになるだけではなく、コミュニケーションのきっかけにもなります。コミュニケーションが円滑になれば、周囲との人間関係も良好になりやすくなるため、自然と声を出す機会も増えるでしょう。
文字を書いてもらう
文字を書いてもらうことも、失語症の症状の進行を遅らせたり、改善させたりするのに効果的です。具体的なリハビリの内容としては、簡単に書ける文字を書いたり、書き写したりすることなど。少しずつ書ける文字が増えてきたら、日記や手紙、はがきを書くことに挑戦し、難易度を上げていきます。このとき、自身が書いた文章を読み上げてもらうと発声の練習にもなるので、声かけをして促すことが大切です。
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失語症はリハビリをすれば回復するの?
結論から述べると、失語症はリハビリをすれば回復する可能性が高まります。
リハビリには、急性期・回復期・維持期という3つの段階があります。急性期は、病気になり始めたり、症状が出始めたりする時期のことで、回復期は病気の症状が落ち着いて発症から1~2カ月後の状態のこと。維持期は、急性期や回復期で得た機能や能力を維持・向上させる目的でリハビリを行う時期のことを指します。
急性期におけるリハビリのポイントは、上記の項目で述べた「挨拶などで毎日コミュニケーションを取る」ことです。一方で、回復期・維持期では、「会話をして言葉を話す・聞く機会を作る」「文字を書いてもらう」など、「聞く、読む、話す、書く」のリハビリを組み合わせて行います。
言語聴覚士の指導のもと、これらのリハビリをそれぞれの段階に合わせて行うことで、失語症が回復する可能性が高まります。しかし、回復の度合いは、普段の会話ができる程度にまで回復する人や社会復帰が可能になる程度にまで回復する人など、さまざま。年齢や脳の損傷の程度などによって個人差があることを覚えておきましょう。
失語症を患う方へのコミュニケーションの取り方
ここでは、コミュニケーションを取る際に意識したいことや注意したいことをまとめました。「失語症を患う方への関わり方が分からない」「どんなことに注意すれば良いの?」という方は、ぜひチェックしてみてください。
症状や状態を正しく理解する
失語症を患う方とコミュニケーションを取る際は、その方の症状や状態を正しく理解することが大切です。どの失語症の種類(タイプ)に当たるかを理解したうえで、一人ひとりに合わせた適切な対応を取りましょう。また、「コミュニケーションを取りたいけど、思うように伝えられない…」といった失語症を患う方が感じるストレスに寄り添うことも大切です。
思考能力は低下していないため子ども扱いはNG
失語症を患う方とコミュニケーションを取る際は、簡単な言葉を使うケースが多いため、子どもと話しているときのような会話の仕方になってしまうことがあります。しかし、失語症では、言語機能に障害が生じているだけで思考能力は低下していないため、子ども扱いするのはNGです。コミュニケーションを取る際は、その点に留意しましょう。
焦らず時間をかけて会話する
リハビリを行い、症状が徐々に回復傾向に向かうと会話もスムーズにしやすくなります。しかし、リハビリをし始めたころやスムーズに会話ができないときなどは、どうしても焦りや不安を感じやすくなってしまうもの。失語症を患う方が焦らず時間をかけて会話できるよう、周囲の人たちが配慮することが大切です。
先回りして次の言葉を言ってしまうのはNG
「早く回復してほしい」という思いから、本人の意志や気持ちを無視し、先回りして次の言葉を言ってしまうのはNGです。本人が次の言葉を考える時間を作ったり、質問や選択肢から簡単に選べる質問をしたりすると答えやすくなるので意識してみましょう。
言葉だけでなくジェスチャーもつける
会話をするときにうなずいたり、体全体を使って動きを表現するなど、言葉にジェスチャーもつけるとコミュニケーションが取りやすくなることがあります。なかなか思い出せなかった言葉が思い出せることもあるので、活用してみましょう。また、その際に表情も意識できるとコミュニケーションがより円滑になりやすくなるので、ぜひ試してみてください。
イラストや写真など物を使って話す
失語症を患う方へのコミュニケーションでは、イラストや写真など物を使って話すことも有効です。イラストや写真を見ながら話すことで、頭の中でイメージしていたものがより理解しやすくなるため、事前に準備しておくと良いかもしれません。
また、イラストや写真を見て単語を言ってもらったり、どのような様子か短い文章で説明してもらったりすると、発話のリハビリにもつながるのでおすすめです。
ひらがなよりも漢字を使う
失語症を患う方は、ひらがなよりも漢字の方が読み書きや理解がしやすいという特徴があります。円滑なコミュニケーションを図るためにも、文字でのやり取りを行う際は、なるべくひらがなよりも漢字を使うことを意識しましょう。
答えやすい質問の仕方をする
失語症を患う方に質問をするときは、「はいorいいえ」で答えられる質問や「AとBどっち?」と聞いて選択肢から選んでもらうなど、答えやすい質問の仕方をしましょう。
たとえば、「はいorいいえ」で答えられる質問の場合、「お腹は空いていますか?」「お部屋で休みますか?」といった聞き方をします。一方で、「AとBどっち?」と聞いて選択肢から選んでもらう場合は、「体調は良い?悪い?」「フルーツは好き?嫌い?」といった聞き方です。
失語症を患う方は言葉に詰まってしまったり、単語が出てこなかったりすることがあるため、周囲の人たちが会話がスムーズに進むように配慮することが大切です。
本人の気持ちに周囲が寄り添う
失語症を患う方とコミュニケーションを取る際に有効な方法をいくつかご紹介しましたが、特に大切なのは「本人の気持ちに周囲が寄り添うこと」です。
自分の思っていることが伝わらなかったり、うまく話せなかったりすることは本人にとって大きなストレスを感じます。人によっては、積極的にコミュニケーションを取らなくなってしまうこともあるでしょう。しかし、周囲が本人の気持ちに寄り添えば、「自分の伝えたいことを理解しようとしてくれている」と感じて気持ちも前向きになるはずです。相手の伝えようとしていることが分からなかったとしても、真剣に向き合おうとする姿勢を見せることが大切ですよ。
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失語症に関するよくある質問
ここでは、失語症に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。失語症の症状やコミュニケーション方法などについて疑問をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてください。
失語症の主な症状って?
失語症の主な症状は、「相手の話す言葉が理解できない」「言葉を言い間違える」「文字を書くことができない」などです。「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能にさまざまな障害が生じるのが特徴で、症状の現れ方やタイプ、程度には個人差があります。詳細については、本記事の「失語症とは」で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
ストレスは失語症の原因になるの?
ストレスが失語症の直接的な原因になることはありません。しかし、ストレスが原因で発症する「心因性失声症」という言語障害があります。心因性失声症とは、喉や器官、声帯などの部位に明らかな原因がないにも関わらず声が出なくなってしまう言語障害のことです。直接的な原因にはならなくても、ストレスを溜めることは心身への影響が大きいため、注意しましょう。「失語症とほかの言語障害との違い」で詳細をまとめているので、ご一読ください。
失語症を患う方とのコミュニケーションの取り方は?
失語症を患う方とのコミュニケーションでは、症状や状態を正しく理解したうえで、焦らず時間をかけて会話することや本人の気持ちに周囲が寄り添うことが大切です。ほかにも、ジェスチャーをつけたり、イラストや写真などを活用したりする方法も有効なので、取り入れてみましょう。本記事の「失語症を患う方へのコミュニケーションの取り方」で詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
まとめ
失語症は、病気や事故などによって大脳の言語中枢が損傷することが原因で起こる言語障害です。「聞く」「読む」「話す」「書く」といった言語機能にさまざまな障害が生じるため、日常生活やコミュニケーションが困難になってしまうことがあります。
失語症にはいくつか種類(タイプ)があり、症状の現れ方や程度には個人差があります。ほかにも、「運動障害性構音障害(構音障害)」や「失声症」などの言語障害がありますが、これらは失語症と間違われやすいので覚えておきましょう。
失語症を患う方へのリハビリ方法では、言葉を話したり、聞いたりする機会を作ることや文字を書くことなどが効果的です。症状の状態に合わせてリハビリを行うことで、回復する可能性も高まります。また、周囲の人とのコミュニケーションを取ることも発話や発声のリハビリにつながるため、積極的に行うことが大切です。一人ひとりの症状や状態を正しく理解したうえで、本人の気持ちに寄り添いながら適切な対応を行っていきましょう。
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執筆者

おいもッコ
元介護士ライター
グループホームを中心に、有料老人ホームやデイサービスなどの施設で約7年半ほど介護士として勤務。リーダー業務なども経験しながら、多くの認知症高齢者や介護業務に携わる。2021年に介護福祉士を取得。現在は今までの経験を活かし、「元介護福祉士ライター」として介護士さんに共感してもらえるような、お役立ち情報などを発信している。


