【認知症ケア事例】高齢者の暴言・暴力はなぜ起こる?介護における対策とは

介護のアイデア 2026年9月27日
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認知症の高齢者の暴言・暴力の事例のタイトル画像

「認知症の方の暴言・暴力はなぜ起こる?」と気になる方もいるのではないでしょうか?認知症を患う方から暴言や暴力がある場合、「状況が分からず不安」「痛みを言葉にできない」などさまざまな理由が考えられるため、状況に応じた対策が求められます。この記事では、グループホームにおける利用者さんの暴言・暴力の事例を3つご紹介します。原因として考えられることや実際の対策もまとめたので、ケアの参考にしてみてください。

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目次

【認知症ケア事例】介護現場での暴言・暴力

ここでは、グループホームにおける暴言・暴力の事例を3つご紹介します。「利用者さんの対応に悩んでいるのは私だけ?」とお悩みの方は、チェックしてみてください。

事例1:夜間に不穏になり暴力的な言動が見られる

90歳女性のAさんは、アルツハイマー型認知症により要介護2の認定を受けており、1ヶ月前にグループホームに入居しました。うつ病の既往歴があり、穏やかなときと不穏なときの波があります。

夜勤中の午前3時ごろにリビングに人影が見えて確認すると、Aさんがトイレに向かって歩いていました。Aさんはリハビリパンツを使用しており、トイレは一部介助することがありますが、動作は自立しています。しかし、夜間はふらつきがあるため、声をかけて近づくと、「触るな!こっちに来るな!」と大きな声でおっしゃいます。介護職員を突き飛ばした拍子に軽く尻もちをついたAさんは、その場に座り込みました。

事例2:急な感情の変化による暴力がある

85歳女性のBさんは、血管性認知症により要介護4の認定を受けています。感覚性失語(ウェルニッケ失語)があり、言葉はよく話すものの意思疎通は難しい状況です。

また、普段から感情の起伏があり、穏やかに笑っているときもあれば、急に怒り出すこともあります。食事などの介助をしていると、急にムッとした表情になって「お前…」と何か言いながらつねったり殴りかかったりするときがあり、介護職員は対応に悩んでいました。

事例3:これまではなかった暴力・噛みつきがみられる

88歳男性のCさんは、アルツハイマー型認知症により要介護4の認定を受けています。声かけは理解している様子でたまに簡単な発語はあるものの、話してコミュニケーションを取るのは難しい状況です。身体機能については、車いすを使用しており、介助があれば手すりを持って立ち上がることができます。

Cさんはグループホームに入居して4年以上で、これまで穏やかに生活していました。しかし、ある日声かけをすると、「あー」と声を出しながら突然介護職員を殴ろうとしたのです。次の日の夜、入れ歯を外すために声をかけると噛みつくような動きをしました。

認知症で暴言・暴力が起こるのはなぜ?考えられる原因

認知症の方に暴言・暴力がみられる場合、その原因として考えられることは複数あるため、個々に応じた対策が求められます。

厚生労働省の「認知症を理解する」によると、認知症に伴う直接的な症状(中核症状)は、記憶障がいや見当識障がいなどです。中核症状に環境といった要素が絡んで、不安や暴力、妄想、うつ状態といった行動・心理症状(BPSD)が発生することがあります。

記憶障がいでは特に最近の記憶が薄れやすく、見当識障がいでは時間や季節を正しく認識することが難しくなります。このような中核症状から「自分の状況が分からない」と不安を感じると、暴言や暴力につながる場合があるようです。
言語機能の障がいがあると、心身の不調などを相手に伝えるのが難しく、痛みや不安を分かってもらえないつらさから暴力が起こることも考えられます。

また、脳機能の低下が原因で判断力が損なわれたり、脳の感情を司る部分に病変があったりして、暴言や暴力がみられるケースも少なくありません。
社会福祉法人恩賜財団 済生会の「血管性認知症」では、血管性認知症の症状として、感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」や、感情の表出が乏しくなる「感情鈍麻」、抑うつ、不安などを挙げています。感情失禁は、多くの場合突発的かつ一時的です。

出典
厚生労働省「認知症を理解する」(2026年9月25日)
社会福祉法人恩賜財団 済生会「血管性認知症」(2026年9月25日)

【認知症ケア事例】介護現場での暴言・暴力への対策

介護現場で利用者さんに暴言や暴力がみられたときは、感情的にならず冷静に対応し、ご本人・ほかの利用者さん・職員の安全を確保する必要があります。
相手を否定したり身体を押さえつけたりすると、反動で拒否反応が大きくなる可能性があるので、無理に抑圧するのはできる限り避けましょう。また、「自分のケアが悪いのかも…」と1人で抱え込まず、チームで連携して原因を探ることも対応のポイントです。

事例1:介護拒否と暴言があるAさんの対応

Aさんに「大丈夫ですか?」と声をかけると、「何でこんなひどいことするの!」「警察を呼んで!」と高い声で叫びます。手を付きながら座り込む形で尻もちをつき、大きなケガをしている様子はなかったため、声をかけながら様子を見ました。
Aさんは「やめろ!」と繰り返しおっしゃり、深く関わるとさらに不穏になりそうと感じたので、少し離れて見守りを継続したのです。

少し時間をおくと、Aさんから「助けて」と声がしました。手を伸ばしていたので、「大丈夫ですか?立ち上がりましょうか」と声をかけて介助。そのままトイレの声かけをしてトイレ介助を行いました。介護拒否をした際にゆっくり尻もちをついたので、介助の際に皮ふ状態を確認しましたが、目立った外傷はありませんでした。

介護拒否や暴言の状況に加え、床に座り込むように尻もちをついたことも記録に残し、朝になって管理者と日勤の職員に共有。そして管理者から、ご家族と訪問看護に状況が共有されました。介護職員の報告に対して管理者は、「何かあったらいつでも連絡して良いからね」とのことでした。

夜間にイレギュラーな事案が発生したことで、緊急時の対応に不安を感じたため、管理者に伝えて職員全体で事故や急変時のマニュアルを確認しました。
また、Aさんは夜間や午前中のふらつきが大きく、主治医に状況を話すと「寝る前に飲んでいる睡眠薬の影響が考えられる」とのこと。朝まで薬が残っている様子があるため、医師の判断で睡眠薬の量を減らすことになりました。さらに、移動における転倒防止策として、夜間は居室のベッドサイドにポータブルトイレを設置することも決まったのでした。

暴言や暴力があって不穏な様子が続くときは、利用者さんの安全を確保したうえで少し距離を取るのも対策の一つです。暴言がある場合は、ずっと正面から受け止めると気分の落ち込みや苛立ちで冷静さを保てなくなるリスクがあるので、周囲と連携しながら無理せず対応することも重要といえます。

特に、夜間は人員配置が少なく、施設によっては介護職員1人で対応する時間帯があるので、転倒や体調の急変などがあった際の対応を事前に確認しておくと良いでしょう。ケース別に、連絡先や連絡すべきかの判断基準を相談しておくと、目線合わせができて精神的な負担を減らせます。

また、利用者さんが精神的に安定して過ごすためには、転倒などのリスクを減らす環境整備も必要です。状態の急変や薬の副作用が考えられる場合など、医療的な判断が求められる状況のときは、医師や看護師と連携して対応しましょう。

事例2:感情失禁による暴力と考えられるBさんの対応

Bさんの介助中に暴力があることを管理者に報告し、職員全体で対応を話し合いました。主な対策として挙がったのは、「歩行は比較的安定しているため、暴力があるときは少し距離を置いて見守りをする」「自然に居室や脱衣所など1人になれるところに先導する」の2点です。

暴力があると焦って「危ないですよ」のように声をかけて対応していましたが、気持ちを落ち着けるためには、あえて物理的に距離を置く方法もあると分かり、少し気持ちが楽になりました。暴力や暴言がみられたときは、少し時間を空けてから関わるようにしたところ、感情が落ち着いてケアに応じてくれることが多くなりました。

Bさんは血管性認知症の影響で感情失禁があり、突然不穏になっている可能性があります。感情失禁は突発的で短時間の傾向があるので、時間を置くのは効果的な対策です。

ご本人の安全や気持ちに配慮しつつ、ほかの利用者さんや職員の心身の安全を確保するのが対応のポイント。ただ言葉で伝えるよりも、苛立ちや不安といった不安定な感情が収まるような環境を整えるほうが、利用者さんにとってもケアをする職員にとっても負担は少ないでしょう。

事例3:暴力や噛みつきが急に現れたCさんの対応

暴力があったときの対応については、動作が緩慢で身をかわすことができたので、Cさんの安全を考慮しつつ物理的に避ける方向性になりました。

これまでになかった暴力がみられたCさんは、最近食事が途中で止まったり、足のむくみが悪化したりといった変化があり、涙ぐんで声を上げたこともありました。体調の変化については主治医に伝えていましたが、精神面を含めた現在の様子を改めて報告。ご家族にも、伝え方に配慮しつつ最近の様子を共有しました。

Cさんは精神的に不安定な様子のため、寄り添って「大丈夫ですよ」と声をかけるなど精神面のケアを継続したところ、暴力はみられなくなったのでした。
その後1ヶ月ほど経過を見ていると、傾眠の増加や食事量の減少など身体機能の低下がみられ、主治医から終末期の診断を受けました。ご家族の意向で施設にて看取ることになり、Cさんは最期のときを穏やかに過ごされました。

認知症に伴う失語がある場合、身体的な痛みや不快感といった体調の変化を言葉で伝えることが難しく、暴力という形で感情を表現する場合も。体調不良から不安な気持ちになり、精神面の変化が行動に現れることも考えられます。

Cさんの場合は、終末期が近づき体調面や精神面の変化があり、その混乱が暴力につながった可能性があるでしょう。暴力に対して介護職員を守る行動を取ったことに加え、心身の変化を医師やご家族に共有したことで、利用者さんに寄り添った適切な対応ができた事例といえます。
もちろん、上記の事例がほかの人にそのまま当てはまるわけではありませんが、利用者さんの様子が普段と違うときは、痛みや不安などの違和感のサインかもしれません。

まとめ

認知症ケアの現場で働く介護職員が、利用者さんから暴言や暴力を受けて悩むことは珍しくありません。暴言や暴力の原因はさまざまなので、画一的なケアではなく状況に応じた対策が必要です。
たとえば、記憶障がいや見当識障がいで状況を理解できず、不安感から暴言や暴力が現れることが考えられます。ほかにも、脳の損傷などが感情のコントロールに影響し、突発的に怒りや不穏な感情が生じる場合もあるようです。

利用者さんに暴言や暴力が見られるときは、ご本人だけではなくほかの利用者さんや職員の安全も確保する必要があります。転倒などのリスクが低い状況の場合、一時的に利用者さんが1人になれる環境をつくり、物理的に距離を取ることも有効な対策です。
また、体調の変化や不安感を言葉にするのが難しく、暴力など普段と違う行動につながるケースもあるので、周囲と状況を共有しながら原因を探って対応すると良いでしょう。


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執筆者

  • 実

    元介護士ライター

グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。

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※この記事の掲載情報は2026年9月27日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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