【認知症の食事介助の事例】高齢者が食べないときの対応や介護のポイント

介護のアイデア 2026年8月17日
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認知症の食事介助の事例を紹介

「認知症の利用者さんが食事を食べない」とお悩みの介護職の方もいるのではないでしょうか?食事を食べない理由は、「集中力の低下」「食べ物を認識できない」などさまざまで、状況に応じた対応が必要です。この記事では、認知症の利用者さんの食事介助の事例をご紹介。「食事を途中でやめる」「食べ物を口から吐き出す」「水分摂取量が足りない」という3つのケースの原因や対応方法をまとめたので、ケアの参考にしてください。

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目次

食事介助で食べない…認知症ケアの事例

グループホームにおける認知症の利用者さんの食事介助の事例として、「食事を途中でやめる」「食べ物を口から吐き出す」「水分摂取量が足りない」という3つのケースをご紹介します。

【事例1】食事を途中でやめるケース

69歳女性・要介護3のAさんは、60歳ぐらいのときに医師から若年性アルツハイマーの診断を受け、5年前からグループホームで生活しています。

Aさんは基本的に食事の動作は自立していますが、食事を途中でやめることがあります。介護職員が食事の状況を確認すると、手前にあるご飯とみそ汁は飲んでいるものの、奥のおかずにほとんど手を付けていない状況です。また別の日には、反対にご飯だけ残していることもありました。
食事を中断したAさんは、食べ終わったお椀に箸を運んだり、机の上のティッシュを触ったりしています。

【事例2】食べ物を口から吐き出すケース

Bさんは、血管性認知症を患う81歳の女性です。歩行は可能ですが、日常生活全般に支援が必要で、要介護4の認定を受けています。また、感覚性失語(ウェルニッケ失語症)があり、発語はあるものの言葉を理解して会話をすることは難しい状況です。

Bさんは、以前は介護職員が介助すると食事を完食できていました。しかしある時期から、食事介助をしても食べ物を口から「ペッ」と勢いよく吐き出し、食事が進まないことが増えました。

【事例3】水分摂取量が足りないケース

80歳男性のCさんは、アルツハイマー型認知症を患っており、要介護2の認定を受けています。記憶障がいなどの認知症の症状があり、生活に支援が必要なものの、食事や排泄の基本的な動作は自立している状況です。

Cさんは食事は介助なしで完食されますが、飲み物を提供して声をかけてもあまり水分を摂らず、水分摂取量が不足しています。

高齢者の食事・水分拒否はなぜ起こる?認知症との関係

介護に携わっていると、「食事を食べない」「水分を摂らない」という状況に困ることがあるのではないでしょうか?食事は健康に直接関わるものなので、支援がうまくいかないと焦ってしまいますよね。

以下では、高齢者の食事や水分拒否の理由として考えられることを、認知症の影響とあわせて解説します。食事拒否の理由は利用者さんや状況によって異なりますが、一つの参考としてチェックしてみてください。

食事を途中でやめる理由

認知症の利用者さんが食事に集中できない場合、注意力や集中力の低下が原因かもしれません。脳機能の低下に伴う注意力・集中力の低下は、認知症の初期から現れやすい症状の一つです。
集中力がないと、一つの行動を最後まで続けることが難しくなるでしょう。また、注意力が散漫になると、ほかのことが気になって食事を途中でやめる可能性があります。

さらに、食事を中断した結果、食事の方法が分からなくなる「失行」や、食べ物を食べ物だと認識できない「失認」が起こることも。食べ始めは、声かけを受けたり周囲の食べる様子を見たりして自分で食事ができても、途中でやめたことで「何をしていたのか」を忘れ、「どうすれば良いのか」が分からなくなる場合があると考えられます。

食べ物を口から吐き出す理由

食べ物を口から吐き出して食事を拒否する場合、利用者さんの状況によって理由はさまざまです。利用者さんの様子の観察や他職種との連携を通じて、状況を把握・分析することで、原因を特定できる可能性があります。

たとえば、認知症の症状である失認で食べ物を正しく認識できない場合、「口に異物が入った」と感じて吐き出すことが考えられます。
口腔内の痛みや、飲み込みにくさ・噛みにくさがあり、食事が苦痛で拒否するケースも。失語症の影響で自分の気持ちを言葉にできないと、「吐き出す」という行動による意思表示につながります。

いずれの場合も、「口に食べ物が入ったこと」にストレスを感じる利用者さんなりの理由があり、「吐き出して食事を拒否する」という行動が起こるといえるでしょう。

水分を摂らない理由

高齢者が水分摂取に消極的になる理由は多様で、老化に伴う身体機能の低下や心情が関係している場合も少なくありません。「認知症だから水分摂取を拒否する」と決めつけるのではなく、生活状況から原因を分析することが重要です。
なお、体型や疾患の状況などによって必要な水分量は異なりますが、一般的な水分摂取量の目安は1,000~1,500ml程度(食事を除く)となっています。

水分拒否の理由の一つが、「水分摂取量が不足しているのを自覚していないこと」です。高齢になると、筋肉量が減って体内に溜められる水分が少なくなります。また、感覚機能が低下して暑さを感じにくかったり、口腔機能が低下してのどの渇きを感じにくかったりすることも。

上記のような理由から、高齢者は脱水に陥りやすい傾向にあります。しかし、「これまでもあまり飲んでなかったから大丈夫」と水分を積極的に摂らない方もいるかもしれません。認知症の利用者さんの場合、短期記憶障がいによって直近のことを忘れ、どのぐらい水分を摂っているのか自分で把握するのが難しいことがあります。

このほか、トイレが心配で水分を控えるケースも。「失禁が恥ずかしい」「処理させるのが申し訳ない」と感じていたり、下痢でお腹に不快感があったりして、水分を摂らない方もいます。

食事・水分拒否の認知症ケアの対応事例

ここでは、認知症の利用者さんの食事拒否と水分拒否の事例について、施設が実際に行った対応をまとめました。「利用者さんがご飯を食べていないときはどうしたら良い?」「食事介助のポイントや声かけのコツは?」という疑問がある方は、ぜひご覧ください。

【事例1】途中で食べるのをやめるAさんの食事介助

Aさんは、おかずが残った状態で、食べ終わったご飯のお椀に箸を運び、食べる動作をしています。介護職員は「今日のおかずは煮魚と卵焼きですよ。おいしそうですね」と声をかけ、空になったご飯とみそ汁のお椀を下げました。そして見守っていたら、自分で食事を再開されました。

また別の日、今度はご飯のみを残して食事を終えていることがありました。Aさんはご飯が残っていることに気づいていない様子です。視力に問題がなくても、白米とお皿の色を見分けられず、ご飯を認識できない場合があります。
「まだご飯が残っていますよ。お腹いっぱいですか?」と声をかけてもそのままだったので、ご飯にふりかけをかけて再度声かけをすると、ご飯を完食されました。

ほかの日も同様に対応し、声かけをしても難しいときは少し食事介助をすると、続きは自分で食べてくださいました。また、食事の際は、机にティッシュなどの物を置かないよう環境整備をすることで、食事に集中できる状況をつくりました

上記は、Aさんに合わせた環境整備・声かけと、状況に応じた介助により、栄養摂取を支援した事例です。食事の状況や対応方法を職員で共有し、ご飯を残す状況が続くようであれば、お椀を白米が見えやすい濃い色の食器に変えることを検討しています。

【事例2】食べ物を吐き出すBさんの食事介助

食事の際に食べ物を口から吐き出すBさんは、口腔内の状態や飲み込みなどには問題がみられなかったため、食べ物を認識できていない可能性があります。そのため、食事を感覚的に理解しやすいよう「今日のご飯は〇〇ですよ」と最初に伝え、Bさんの目線で見せてから食事介助をすることをマニュアル化しました。

対応方法を工夫しながら介護職員が食事介助をしていますが、Bさんは食事を食べるときと吐き出すときがあります。
血管性認知症は、脳が感情のコントロールをするのが難しく、感情が不安定になりやすいのが特徴。怒っているときは介護拒否が起きやすいので、少し時間を空けて落ち着いたら食事を再開するなど、食べられるときに食べてもらうようにしています。

介護職員が施設でできる対応をすると同時に、医師に相談して経腸栄養剤のドリンクを使用することになりました。食事を半分以上残したときは経腸栄養剤を飲んでいただき、経腸栄養剤を吐き出す場合は、複数回に分けて時間を空けて介助を行います。

上記のルールを決めるとともに、Bさんの食事に課題が発生している状況をご家族にも共有。現状Bさんの栄養状態に問題はありませんが、医療職の配置がない施設のため、今後食事を口から摂取することが難しくなると今の生活の継続は困難です。

Bさんの事例では、介護職員が現場で利用者さんを支援しつつ、多職種連携して対応をマニュアル化することで責任の集中を防いでいます。介護職員が対応できることには限界がありますが、職員間でのケア方法の検討や記録の記入、医療職やご家族との連携によって、利用者さんに適切な支援ができるでしょう。

【事例3】飲み物を飲まないCさんの水分摂取の支援

Cさんは、「今はそんなにのどが乾いてないから」のように水分摂取を拒否するので、水分摂取量が不足している自覚がないのかもしれません。

水分摂取が必要だと伝えるために、天気予報や温度計を見ながら「今日は気温が30度まで上がるので、しっかり水分を摂りましょうね」「今日は暑いのでCさんも汗をかきましたね」のような声かけをしてみました。すると、「じゃあ飲まないと干からびるか」と水分摂取に応じてくれることが増えました。

一度にコップ1杯分飲めないときは、複数回に分けてこまめに水分を提供する対応も行っています。こまめに水分を摂れるよう、昼食までに400~500ml以上、夕食までに600~700ml以上、寝るまでに1,000mlという水分摂取量の目標を設定しました。

また、Cさんはスープやゼリーを提供するとあまり残さないので、飲み物を飲まない日は、食事から水分を摂れるよう支援します。水分摂取量が少ないときはスープの量を多めにしたり、食事にゼリーをつけたりすることで、安定して水分を摂れるようになりました

「水分を摂ってください」とただ要求を伝えるのではなく、どうして必要なのか理由が分かる声かけにすることで、利用者さんが納得して応じてくれる可能性があります。どの程度の会話を理解できるかは利用者さんによって異なりますが、認知症で短期記憶を忘れても、その場の話を理解できることは少なくありません。

特に介護することに慣れていない時期は、「認知症だから」と身構えてしまいがちですが、病名で区別するのではなく、利用者さん一人ひとりを見てコミュニケーションを図る姿勢が大切です。

まとめ

食事介助は健康に直結する重要なケアなので、「利用者さんが食べない」と悩む介護職の方は珍しくありません。認知症の方に食事や水分摂取の拒否があるときは、状況を把握して原因を分析しましょう。

たとえば、途中で食事をやめる場合は、集中力・注意力の低下によって気が散っている可能性があります。食事に集中してもらうためには、机の上を片づけて環境を整えると良いでしょう。「食事の何が残っているのか」が分かるような工夫も有効です。

食べ物を口から吐き出すケースでは、「口腔内に不快感がある」「食べ物を正しく認識できない」などの原因が考えられます。初めにしっかり食事介助の声かけをしたり、利用者さんに見せながら食事を口に運んだりすることで、安心してもらえるかもしれません。
もしも、食事の摂取量が減ってしまった場合は、医師と連携したりご家族に状況を伝えたりする必要があります。

また、水分摂取の支援では、1日の目標摂取量を時間帯で区切り、こまめに水分を提供する方法があるでしょう。水分拒否がある場合は、水分摂取が必要な理由が分かるような声かけをしたり、ゼリーを取り入れて摂取方法の選択肢を増やしたりするのも対処法です。


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執筆者

  • 元介護士ライター

グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。

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※この記事の掲載情報は2026年8月17日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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