食事介助とは?介護職員がおぼえておきたい準備や姿勢などの注意点

介護の知識 2024年6月12日
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食事介助について「自分がやっているやり方って合ってるのかな」「こういう状況になったとき、どう対応したらいいんだろう」などと悩んだことはありませんか?この記事では、食事介助を行う際に必要な準備、確認しておきたいことや注意点、食事介助を行う際に遭遇しやすいシーンで役立つ対応方法を解説しています。介護の仕事を始めたばかりの方や、食事介助についてあらためて理解を深めたいと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

高齢者に食事介助が必要となる要因

高齢者に食事介助が必要となる要因は、大きく分けて3つです。ここではその3つの内容についてご紹介します。

身体的な衰え

高齢になると身体機能が衰え、ひとりでの食事が困難になります。たとえば、視力の低下によって食べ物の場所を正確に認識できなくなったり、筋力が衰えることで箸やスプーンが上手く持てなくなってしまいます。こうした身体機能の様々な変化の影響により、食事をする動作が困難になることで、食事介助が必要になります。

認知機能の低下

高齢になると、身体的な変化だけに限らず、認知機能の低下も目立つようになってきます。認知症などの影響により、食べ物を食べ物と認識できず、味覚や空腹感も感じづらくなってしまいます。

嚥下や咀嚼機能の低下

高齢による影響で、食べ物を飲み込む力(嚥下力)や食べ物を噛む力(咀嚼力)もだんだんと低下していきます。食事をする際に必要な力が弱くなってしまうことで、食欲だけではなく、自分で食事を摂ろうという意欲も低下してしまいます。また、嚥下力や咀嚼力がさらに低下してしまうと、栄養失調や誤嚥などのリスクを招くこともあります。

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食事介助を行う目的と理由

ここでは、食事介助をなぜ行うのか「目的と理由」について解説します。

生命を維持するため

「食べること」は、人が生きていくために欠かせない行動のひとつです。

自分で食べるという行為が難しくなってしまっても、介護職員が食事介助を行うことによって必要な栄養を摂ることが可能になり、生命の維持につながります。

楽しみを持つため

食事介助は、利用者さまに食事をする楽しみを持っていただくためにも行われます。食事をする楽しみは、気持ちを明るくし、レクリエーションやリハビリなどへの活動意欲の向上につながります。また、食感や味覚を感じることで脳への刺激にもつながるため、食べることがより一層楽しくなり、大きな満足感を得られます。

味覚、嚥下、咀嚼力の低下を防ぐため

食事をすることで、味覚や嚥下、咀嚼機能への刺激につながり、それぞれの力の低下を防ぐことができます。

【参考】味覚、嚥下、咀嚼について

味覚とは

味覚とは、食事をした時に感じる味の感覚(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)のことを指します。味覚には、食欲を刺激し、唾液の分泌を促す役割があります。また、食べることが可能なものなのか判断する役割もあります。

嚥下とは

嚥下とは、噛んだ食べ物を飲み込み、口から胃へと運ぶ動作のことです。嚥下を行うことで、体内に食べ物が行き届き、それぞれの器官で栄養が吸収されます。

咀嚼とは

咀嚼とは、食べ物を噛み砕くことです。咀嚼は、嚥下を行いやすくするだけではなく、脳(満腹中枢)や味覚への刺激、口の周りの筋肉の発達などに大きな影響を及ぼします。

食事介助を行う前の準備

ここでは、介護職員が実際に「食事介助を行う前に必要な準備」を解説します。

準備①声かけを行う

椅子に座ったまま眠っている利用者さまもいるため、はじめに「これから食事の時間になりますよ」などと声かけをします。事前に食事が始まることを伝え、「今から食事をする」という認識を持ってもらうことで誤嚥のリスクを減らし、しっかりと目が覚めた状態で食事をすることができます。

準備②排泄を済ませる

食事の前にトイレの声かけをして、排泄を済ませてもらいましょう。食事中に席を離れると、自分が食事の途中であったことを忘れて「これは私のじゃない!」と混乱されてしまう利用者さまもいます。混乱を防ぎ、落ち着いて食事を摂っていただくためにも、トイレは事前に済ませておきましょう。

また、食事前にトイレ誘導を行うことで、排泄の状態から体調の異変に気づけることもあります。

準備③体調の確認

排泄誘導をしたときだけではなく、食事前にも体調確認を行うことは大切です。気分は悪くないか、食欲はあるか、バイタルサイン(血圧や体温等)は正常か判断することで、安心・安全な食事を提供できます。

準備④環境作り

利用者さまが、落ち着いて食事ができるような環境作りも重要です。テレビを消して、音楽を流すと良いでしょう。ただし、歌詞のある音楽は集中力が途切れてしまう可能性があるので、メロディーだけの音楽がおすすめです。

また、車いすの利用者さまは、両足が足台や床につくようにしておきましょう。寝たきりの利用者さまは、ベッドの頭側をギャッジアップして食事しやすい態勢にしておくなど、食べやすい姿勢を作ることも大切です。

準備⑤嚥下体操

食事をする前に「ぱたから体操」や「舌を動かす体操」などの嚥下体操をし、唾液の分泌を促すと、誤嚥防止につながります。

嚥下体操を行ったあとは、水分摂取を促し、口腔内を潤して食事がしやすいようにしておくと良いでしょう。

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食事介助を行う際に確認することと注意点

食事介助は、命に直接つながる行為です。食事介助を行う際に「確認しておきたいことと注意点」をまとめたので、参考にしてみてください。

姿勢、体調の確認

姿勢や体調の確認をしっかり行うことで、未然に誤嚥のリスクなどを回避できます。体調が悪いときには、食事量の調節や食事摂取の可否などの判断が必要になるため、医療担当者との連携が大切です。しっかりと様子観察を行うことで、顔色などの小さな変化に気づき、緊急時に備えられるようになります。また、認知機能や身体機能の低下を予防するためのさまざまな対応をとることも可能になります。何か気になることがある際は、医療担当者への報告や相談を行い、判断を仰いでから対応すると良いでしょう。

食事形態は適切か確認する

利用者さま一人ひとり、噛む力や飲み込む力は違うため、力の弱い方には水分にとろみ剤を使用し、食事はペースト食で対応すると良いでしょう。特別な対応が必要な利用者さまに間違った食事形態のものを提供してしまうと、大きな事故につながりかねません。それぞれに合った適切な食事形態か、確認することが重要です。

口腔内(義歯)のチェック

高齢者のなかには義歯を使用されている方もいらっしゃるため、食事の前には装着ができているか確認しましょう。認知症の方や、義歯に強い違和感のある方の場合、自分で外してしまうことがあります。食事をするときに装着ができていないと、食事がしづらいだけではなく、誤嚥のリスクも高まってしまうことがあるので、義歯の装着がされているかしっかりと確認しましょう

また、食後は口腔ケアを行い清潔に保つことで、虫歯や歯周病などの予防にもつながります。

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食事介助の際に役立つ対応方法

食事介助を行う際に遭遇しやすいシーンをいくつか挙げてみました。それぞれで「役立つ対応方法」をまとめたので、参考にしてみてください。

食事介助時の声かけ方法

食事介助の拒否がある、食事を認識できない、食事が進まない方などへの声かけは、誰もがどう対応したら良いのか悩むシーンでしょう。声かけについて「こう伝えるのが一番良い!」というものはなく、利用者さまによってさまざまな対応の仕方があります。

「食べない!」と頑なに拒否しているのにも関わず、無理やり食べてもらおうとすることは利用者さまにとって大きな負担になってしまいます。「少し時間を置きますね」「ゆっくりで大丈夫ですよ」などと伝え、一度食べてもらうことをやめて、様子を見てからもう一度コミュニケーションを取るように意識してみましょう。もし、自分ひとりでは対応できない場合には、周りの人に助けてもらいながら対応すると解決することもありますよ。

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コミュニケーションの取り方

食事介助のときだけではなく、介護をするなかでコミュニケーションをしっかり取ることは信頼関係を築く上でもとても重要なことです。食事中は「今日のメニューは〇〇ですよ、お好きなものはありますか?」「これは〇〇です、おいしいですか?」など会話を適度にしながら、利用者さまの食事ペースや集中力を切らさない程度にコミュニケーションを取ると楽しく食事を摂ってもらうことができます。コミュニケーション不足が原因で食事介助の拒否をされてしまうこともあるので、普段から利用者さまの表情一つひとつを読み取り、ときどき質問や会話も交えながらコミュニケーションを取るようにしておくと良いでしょう。

スプーンのテクニックや選び方

食事介助時にスプーンを使う際は、顎が上がらないようにしながら口元へ運び、舌の中央あたりに置きます。その後は、少し上の方に引きながらスプーンを抜くとスムーズに介助が行えます。

また、介助の際に使用するスプーンは、介護する側が介助しやすいスプーンをその人の身体機能の状況などを配慮した上で選ぶことが大切です。たとえば、握力の弱い方やリウマチなどにより手の指の形が変形してしまっている方は柄が太くすべり止めがあるようなスプーンが望ましく、口が開きにくい方は口の大きさに合ったスプーンを使用すると食事が摂りやすくなります。

身体状況に応じた食事介助

利用者さまのなかには、片麻痺がある方や寝たきりの方、認知症が進行し意思疎通が困難な方などがいらっしゃいます。そのような方々への介助方法について説明していきます。

片麻痺がある方

麻痺のある方(患側)からではなく、麻痺のない方(健側)から介助をしましょう。麻痺のある方から介助を行ってしまうと口を上手く動かせず、食べ物が口から出てしまったり、口内に食べ物が溜まってしまい誤嚥の危険が伴います。

必ず麻痺のない方から介助を行い、介助中も食べ物がきちんと噛めているか、飲み込みができているかを確認しながら行いましょう。

寝たきりの方

まずは、ベッドの頭側を約60度くらいにギャッジアップし、介助者と同じくらいの目線に高さを調節します。膝下や腕の下、足の底などにクッション等を当てて、なるべく利用者さまが楽な姿勢で食事が摂れるようにしましょう。寝たきりの方のほとんどが身体機能のレベルが低下してしまっていることが多いため、食事中のペースや量の調節を意識しながら、バランスよく摂取していただくようにすることが大切です。食事を終えたあとは、口腔ケアを行い入れ歯は外しておきましょう。すぐに横になってしまうと、食べ物が逆流してしまったり、むせこみの原因になったりするため、食後1時間程度は頭を上げた状態で楽な姿勢を保つことが重要です。

認知症が進行し意識疎通が困難な方

認知症が進行してしまうと、意思疎通が困難になってしまう方もいらっしゃいます。

そうするとこちらの問いかけに対しても反応が得られなかったり、利用者さま自身もどうしたら良いのか分からなくなってしまいます。そのような場合は、無理に口に運んだりせず、まずはスプーンの上に食べ物を乗せた状態で利用者さま自身にスプーンを持っていただきましょう。口に運んでもらうよう促したり、好きな食べ物から召し上がっていただくようにするのがおすすめ。上手くコミュニケーションを取りながら、様子観察をし、利用者さまのペースに合わせて介助を行うことが大切です。

食事介助についてよくある質問

ここでは、利用者さんへの食事介助について、よくある質問に回答します。

食事介助で大切なことは何ですか?

食事介助で大切なことは、「利用者さんが正しい姿勢を保っているか」「利用者さんと目線が合っているか」「水分がしっかり取れているか」「食事のサイズや形態が適切かどうか」などを確認することです。食事介助は、誤嚥を起こす可能性があるので、利用者さん一人ひとりに合わせて食事のサポートを行う必要があります。

食事介助の注意点は、「食事介助を行う際に確認することと注意点」で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

食事介助の目的は?

食事介助の目的は、利用者さんが生きていくために必要な栄養が取れるようにサポートすることと、日々の食事を楽しんでもらうことです。食事介助では、単に食感や味覚を感じてもらうだけでなく、行事食や旬の食材を採り入れることで、視覚や嗅覚などからも四季を感じてもらうことが可能です。また、食事をすることで嚥下・咀嚼能力の維持にも役立ちます。

嚥下の仕組みについて知りたい方は、「食事介助の基本!摂食・嚥下の仕組みを理解しよう」の記事も参考にしてみてください。

まとめ

食事介助におけるコミュニケーションや様子観察などからは、利用者さまの小さな変化に気づくことができます。身体機能や認知機能の低下を予防するためのさまざまな対応をとることや緊急時に備えることも可能です。

身体機能や認知機能を低下させないために、食事前には嚥下体操や体調確認、環境作りなどを適切に行いましょう。誤嚥や事故につながるリスクを軽減し、しっかり対策をすることも大切です。

また、普段からコミュニケーションをとることや様子観察をしっかり行うことは、利用者 さまのケアを行う上で、とても重要な役割を持ちます。食事介助をする側もされる側も、安全で楽しく食事の時間を楽しんでもらえるよう意識しながら、介助をしていきましょう。

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執筆者

  • おいもッコ

    元介護士ライター

グループホームを中心に、有料老人ホームやデイサービスなどの施設で約7年半ほど介護士として勤務。リーダー業務なども経験しながら、多くの認知症高齢者や介護業務に携わる。2021年に介護福祉士を取得。現在は今までの経験を活かし、「元介護福祉士ライター」として介護士さんに共感してもらえるような、お役立ち情報などを発信している。

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※この記事の掲載情報は2024年6月12日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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