フランス生まれのケア技法 “ユマニチュード”について知ろう

介護の知識 2022年11月2日
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話をする介護職員とシニア女性のイメージ

認知症の方との意思疎通は時に難しく、暴言や徘徊などの症状(BPSD)に苦慮している介護士の方も少なくないのではないでしょうか。適切なケアで快適に過ごして欲しいが、なかなか思うようにいかない・・・。そう悩む介護士も多いことでしょう。今回はそんな認知症介護の現場に新たな道を開く認知症ケアの手法“ユマニチュード”をご紹介します。

目次

ユマニチュード(Humanitude)って?

ユマニチュードはフランス語の造語で、「人間らしくある」「人間であることを尊重する」といった意味。フランス生まれのケア技法で、認知症介護への活用が期待される方法です。認知症の方は自分が受ける治療や介護の目的がわからないために恐怖や不安を感じ、その結果、認知症の方へのケアは困難を抱えてしまいます。知覚や聴覚、言語による包括的なコミュニケーションを実践するユマニチュードは、そんな介護現場の新しい光として今注目を集めています。

ユマニチュードの考案者であるイブ・ジネスト氏はもともと体育学の教師でした。彼は病院職員の腰痛対策に取り組んでいた時に、腰痛の一因が認知症患者への無理なケアを行わざるを得ない状況にあると気がつきました。「患者がケアを拒否するのには理由があるはず」という考えから生まれたのが、“ユマニチュード”でした。

イブ・ジネストともう1人の開発者であるロゼット・マレスコッティの名を冠した「ジネスト・マレスコッティ研究所」は長年にわたってユマニチュードの研究・教育を行っており、日本には国立病院機構東京医療センターの医師がジネスト・マレスコッティ研究所を訪れたことをきっかけにユマニチュードが導入されました。

研究所の日本支部が開設されたのは2014年のことで、ロゼット・マレスコッティ研究所日本支部はベルギー・スイス・ポルトガル・ドイツ・カナダに次ぐ6番目の支部となりました。現在フランスでは600を超える医療・介護機関がユマニチュードを導入、日本でも支部による講習や研修会が多数開催され、ユマニチュードの知識は徐々に広がりを見せています。

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ユマニチュードの方法と考え方

ユマニチュードは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つを基本要素とし、150の技法からなります。そしてそのほとんどは、知識を身につければ家庭でも実践することが可能です。ここではユマニチュードを理解していくために、4つの基本要素についてご紹介していきます。

見る

ユマニチュードでは、認知症の方と接する時に相手を見下ろすことをしません。ベッドで寝ている相手や座っている相手に対し、ベッド脇から立ったまま話しかけたりすることは避けましょう。見下ろすという動作には、介護をしている側にそのつもりがなくても相手を「支配されている」という気持ちにさせてしまいます。

それから認知症の方は視野が狭いため、会話をする時は相手の正面から近づき視野の中心に入るようにします。アイコンタクトをする際のポイントは「長く」「近く」で見つめること。こうすることで顔を覚えてもらいやすくなります。

話す

もくもくと機械的な介護を行うと、相手は「自分の存在が忘れられている・否定されている」と感じてしまいます。ケアを行う際には、最初から最後までの声かけを忘れないようにしましょう。「右手をあげますよ」などとやっていることを説明しながら介護をすることで、利用者の方は安心して相手に体を任せられるようになります。

触れる

相手の体を起こす時、あるいは動かす時に手首や腕をつかんでしまうこと、ありませんか? ユマニチュードでは腕をつかむのではなく、利用者の方が自分の力で起き上がるのを腕の下から“触れる”ようにして支えます。

私たちが日常生活のなかで他人に腕をつかまれる場面はそう多くはありませんよね。そんなことをされたら、どこかに連行されるような気分になってしまいます。腕を“つかむ”のではなく優しく“触れる”、あるいは手を握るなどの方法で、利用者の方の自分で動く意思を尊重します。

立つ

寝たきりのままにさせない、というのもユマニチュードの重要な考え方です。立って歩くことによりその人らしさを大切にし、本人が“人間としての尊厳”を自覚できるように働きかけます。

ユマニチュードの主眼は、以上のようなケアを通して、その人が「人間である」「そこに存在している」、そして「人間として他の人たちと出会える」ことを伝える点にあります。

認知症がかなり進行している状態であっても、その人がかけがえのない存在であることを相手に理解できる形で伝えるのがユマニチュードの方法です。認知症が進行し数分の記憶を保つのが難しいという方でも、感情的な記憶は長く残ります。ユマニチュードでは感情的な記憶をとどめることを重視し、触覚や視覚、聴覚に対して「あなたはかけがえのない存在である」という前向きなメッセージを伝えていきます。優しい言葉をかけながらもアイコンタクトが取れていなければ不十分で、言語・非言語の双方からメッセージを伝えましょう。

ユマニチュードの効果

ユマニチュードを実践することで、機械的な介護や本人が望まない強制的なケアを避けることができるでしょう。ユマニチュードの理論に基づいた介護をした結果、認知症を患ってから怒りっぽく攻撃的になった人が、その人本来の性格を取り戻したという報告もあります。

ユマニチュードのメリットは、介護を受ける本人のみならず、介護にあたる人や家族などの周りの人も穏やかに過ごせるようになること。入浴などの介護がスムーズに行えるようになったり、フランスでは認知症の方への向精神薬使用が削減できたという結果が報告されています。

認知症の方には、介護をする側の思いや優しさが伝わりづらいと感じることがあるのではないでしょうか。介護する側の優しさを「相手が理解できる形」で伝えるのがユマニチュードの最大の特徴。技術と哲学が一体となったユマニチュードの普及が進めば、日本における認知症介護のあり方が変わる日もそう遠くはないはずです。

介護のユマニチュードに関するよくある質問

介護のユマニチュードに関するよくある質問に回答します。「ユマニチュードって何なの?」と疑問に思う方は、ぜひご覧ください。

ユマニチュードをする目的は何?

ユマニチュードをすると、利用者さんの攻撃的な行動が治まり、穏やかに過ごせるようになります。また、穏やかになることでコミュニケーションが取りやすくなれば、職員との会話が増えるため、認知症の症状が緩和する可能性も。
職員側も、スムーズにケアを行えるようになり、仕事の負担を軽減することができます。

ユマニチュードをする際に注意すべき点は?

ユマニチュードをする際に大切なのは、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つのポイントです。利用者さんと目線を合わせて話したり、掴まず、支えながら触れたりするようにしましょう。また、話し方も命令口調にならないように意識し、積極的に声掛けをすることが重要です。寝たきりにせず、立つ訓練を行い、人間としての尊厳を自覚するように働きかけるのもユマニチュードのポイントといえます。

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