介護報酬の改定は介護サービスを提供する事業所に大きな影響を与えるため、介護業界では毎回その動きが注目されています。
今回のコラムでは、過去の改定の動きと改定率、2018年の改定内容について解説。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年に向けて、政府はどのような方針を打ち出しているのでしょうか?
目次
介護報酬とは?
介護報酬とは、事業所が利用者に介護サービスを提供した際に支払われる報酬で、その価格は国が決めることになっています。
介護報酬は、介護サービスごとに設定された「基本報酬」に加え、提供体制や利用者の状況によって加算・減算される仕組み。
介護サービスを受けた利用者(被保険者)は、サービス事業者に介護報酬の1割を支払い、残りの9割を保険者である市町村が支払います。
介護報酬は2000年に介護保険制度がスタートして以来、原則として3年に1度改定を実施。引き下げられることも引き上げられることもあります。
今までの改定では、以下のような方針と改定率が示されてきました。
【2003年】
〈改定にあたっての方針〉
・自立支援の観点に立った居宅介護支援の確立
・自立支援を助ける在宅サービスの評価
・施設サービスの質向上と適正化
〈改定率〉
-2.3%
【2006年】
〈改定にあたっての方針〉
・中重度者への支援強化
・介護予防、リハビリテーションの推進
・地域包括ケア、認知症ケア確立
・サービスの質向上
・医療と介護の機能分担、連携の明確化
〈改定率〉
-2.4%
【2009年】
〈改定にあたっての方針〉
・介護従事者の人材確保と処遇改善
・医療との連携、認知症ケアの充実
・効率的なサービスの提供、新たなサービスの検証
〈改定率〉
+3.0%
【2012年】
〈改定にあたっての方針〉
・在宅サービスの充実と施設の重点化
・自立支援型サービスの強化と重点化
・医療と介護の連携、機能分担
・介護人材の確保とサービスの質の評価
〈改定率〉
+1.2%
【2014年】
〈改定にあたっての方針〉
・消費税の引き上げ(8%)への対応
〈改定率〉
+0.63%
【2015年】
〈改定にあたっての方針〉
・中重度の要介護者や認知症高齢者への対応強化
・高齢者への対応強化
・ サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築
〈改定率〉
-2.27%
【2017年】
〈改定にあたっての方針〉
・介護人材の処遇改善
〈改定率〉
+1.14%
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アドバイザーに相談する(無料)2018年の介護報酬改定、4つの軸とは?
2018年、厚生労働省は団塊の世代が75歳以上を迎える2025年を前に、以下の目的で介護報酬の改定を行いました。
「団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民1人1人が状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、平成30年度介護報酬改定により、質が高く効率的な介護の提供体制の整備を推進。」
2018年度の改定率は+0.54%で、改定は次の4つを軸に行われました。
1.地域包括ケアシステムの推進
2.自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
3.多様な人材の確保と生産性の向上
4.介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
次項目からは、それぞれの具体的な改定内容を確認していきましょう。
地域包括ケアシステムの推進
地域包括ケアシステムとは、要介護者が住みなれた地域で自分らしく暮せるよう、介護や医療、住まい、生活支援、予防のサービスを一体的に提供する仕組みのこと。
今回の改定では中重度の要介護者も含めて、どの地域に住んでいる人にも適切な支援が行き届く体制の整備が強化されています。
下記では、改定によって推進される動きや新たな加算の創設について、その一部をご紹介します。
【ターミナルケア推進】
改定ではターミナルケアを重視する方針で、ターミナルに力を入れている訪問看護事業所、グループホームなどに対し、従来にない加算区分が新設されました。
ターミナル期の利用者の状態を主治医などに情報提供するケアマネ事業所に対しても、「ターミナルケアマネジメント加算」として新たな評価が設けられています。
また、高まる医療ニーズに対しては、一定の医療提供体制のある特養に対し、見取りへの評価を充実させるなどの対応がとられることになりました。
【医療と介護の役割分担、連携の推進】
地域包括ケアシステムを構築する上での重要な課題の1つが、介護と医療の連携です。今回の改定では、訪問介護事業所と医療機関の情報共有が義務化される、医療機関との連携に積極的なケアマネ事業所に新たな加算が創設されるなどの変更がありました。
通所リハビリテーションにおいては、医療保険でリハビリを行う病院が介護保険でのリハビリサービスを提供する際、面積や人員の要件が緩和される方針が打ち出されており、医療から介護への移行がスムーズになると思われます。
【介護医療院の創設】
2018年の介護報酬改定を機に、同年4月から介護医療院が創設されることになりました。
施設は長期的な医療と介護を必要とする高齢者を対象とするもので、医療機能と生活施設しての機能を併せ持つのが特徴です。
【ケアマネジメントの質の向上】
ケアマネ事業所での人材育成を促進するため、管理者の要件が「主任ケアマネジャーであること」と見直されました。
また、利用者に「複数の居宅サービス事業所の利用が可能である」旨を説明することが義務化され、違反した場合は報酬減額になります。
【認知症の人への対応を強化】
看護職員の配置が手厚いグループホームへの評価が設けられました。
ショートステイや小規模多機能型居宅介護などの現在加算がないサービスについても、認知症高齢者への専門的なケアや、若年性認知症の方の受け入れを評価する加算が創設されています。
自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
自立支援と重度化防止は改定の2つ目の軸で、リハビリテーションの強化に力が入れられています。
【医師によるリハビリテーションへの関与の推進】
リハビリテーションにおいて、医師の詳細な指示にもとづくマネジメントが手厚く評価されることになりました。
要支援者に関しては、リハビリテーション計画の策定とプロセス管理の充実などへの加算評価が新設され、質の高いリハビリテーションの実現が目指されています。
【アウトカム評価の充実】
アウトカムとは「結果」「成果」という意味で、アウトカム評価では要支援者の状態維持や改善率が評価されます。
従来、アウトカム評価は介護予防通所リハビリテーションに対するものでしたが、2018年の改定からは、介護予防訪問リハビリテーションも評価の対象。
また、通所リハビリテーションに設けられていた生活行為向上リハビリへの評価が、介護予防通所リハビリテーションにも導入されることになりました。
【訪問介護における自立支援の強化】
過剰な生活援助を防ぐため、生活援助と身体介助の報酬に差をつけ、身体介護に重点を置く方針が明確化されました。
生活援助の基本報酬は引き下げとなり、「自立生活支援のための見守り的援助」が打ち出されています。
多様な人材の確保と生産性の向上
人材の有効活用をはかるため、ロボットを利用した負担軽減や、各種基準の緩和などが打ち出されました。
特に訪問介護においては、生活援助の担い手を確保するための新研修カリキュラムが導入され、人材の裾野を広げていく方針です。
【生活援助の担い手を確保】
訪問介護の生活援助において、他業種や就職していない女性など、従来にない多様な人材の参入促進をはかる方針となりました。
今後は訪問介護員の条件であった130時間の研修が求められないかわりに、生活援助に必要な知識を学べる短時間の研修を受けるのが流れ。身体介護は介護福祉士などが担当していく予定です。
【介護ロボットの活用】
特別養護老人ホームなどの夜勤に関して、見守り機器を導入して効率的に介護が行われた場合に、夜勤職員配置加算への見直しが行われます。
従来の夜勤時間帯の職員配置加算の条件は、「夜勤職員の最低基準+1名分の人員を多く配置してい ること」でしたが、見守り機器を導入した場合は、「夜勤職員の最低基準+0.9名分の人員を多く配置してい ること」が条件に。
合わせて、見守り機器を入所者数の15%以上に設置していることも加算の条件となっています。
【ICTの活用】
リハビリテーション会議では、医師や介護職員、理学療法士などが集まり、本人や家族に対してリハビリ内容についての説明を行います。
改定では、医師からの「会議への参加が難しい」という声を受けて、テレビ電話などを使っての会議への出席が認められることになりました。
介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
今までも収益性の高いサービスについては基本報酬が引き下げられてきましたが、2018年の改定においても同様の方針がとられています。
【福祉用品貸与の価格上限を設定】
2018年10月から、商品ごとの平均貸与価格の公表と上限価格の設定がルール化されるようになりました。
同時に、利用者が自分に合った用品を選択できるよう、機能や価格帯が異なる商品を複数紹介すること、貸し出す商品の貸与価格と全国平均貸与価格のどちらもを説明することが義務化されています。
【集合住宅減算の拡大】
これまでも訪問系サービスは、事業所と同じ敷地内の建物の住居者にサービス提供する場合、減算される仕組みでした。
改定では従来の減算がさらに拡大され、訪問介護や訪問看護、訪問リハビリテーションなどでは、10%減算から15%減算への変更となっています。
また、今まで減算となる建物は有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などでしたが、改定後はそれ以外の建物も対象となりました。
【その他の引き下げ】
訪問看護と介護予防訪問看護において、基本報酬の引き下げが行われました。
通所介護では2時間ごとの設定だった基本報酬が1時間ごとの設定になり、大規模型の事業所では基本報酬が引き下げに。
加えて、通所リハビリテーションでも長時間サービスの基本報酬が引き下げられています。
2018年度の改定率は全体で+0.54%でしたが、中には基本報酬が引き下げられたサービスもあり、介護従事者によって賛成・反対意見はさまざまです。
今回の改定では介護職員の処遇改善にはあまり言及されませんでしたが、今の働き方を変えたいなら転職を検討されてはいかがですか?
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介護報酬に関するよくある質問
介護報酬に関するよくある質問に回答します。「介護報酬って何なの?」と気になる方は、ぜひご覧ください。
介護報酬の1点って何円なの?
介護報酬の1点は、10.00円〜11.40円程です。利用した介護サービスの種類の点数に応じて、サービス料が決定。利用者さんは、サービス料の1~3割を負担し、残りを介護保険が負担します。
「介護報酬とは?」で、これまでの介護報酬改定の際の方針を詳しく解説しているので、介護報酬に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
介護職員の給料は安いの?
介護職員の平均給与(常勤・月給)は、31万6,610円です。この金額を安いと感じるかどうかは人それぞれですが、一般的な生活は送れるでしょう。介護職員の給料は、介護報酬から支払われており、介護報酬の金額は定められているので、施設側の一存で給料を上げることが難しいのが実情です。「実際の負担に見合っていない」「なかなか昇給しない」という理由で給料が安いと思う方もいるようです。
給料は、施設や保有する資格によって異なるので、あくまで参考としてご覧ください。
出典
厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2022年9月14日)
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