
「認知症の幻視はなぜ起こる?」「対応方法を知りたい」という方もいるのではないでしょうか?認知症の幻視(幻覚)の原因はさまざまで、特にレビー小体型認知症では、比較的初期からリアルな幻視を見ることも珍しくありません。この記事では、認知症ケア事例として、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の幻視の事例をご紹介します。原因として考えられることや対応方法もまとめたので、ぜひチェックしてみてください。
目次
【認知症ケア事例】利用者さんからの幻視の訴え
ここでは、「レビー小体型認知症」と「アルツハイマー型認知症」における幻視の事例を紹介します。
事例1:レビー小体型認知症の幻視
レビー小体型認知症を患う83歳女性のAさんは、要介護2の認定を受けており、ご主人と二人暮らしです。最近介護サービスを使い始めたばかりで、訪問介護で入浴介助のサービスを利用しています。
Aさんはレビー小体型認知症に伴うパーキンソン症状があるため、安全に入浴するために介助が必要なものの、生活動作はおおむね自立している状況です。また、はっきりと話してコミュニケーションが取れます。
入浴介助の際にAさんが「うちはいろんな人がお風呂に入りに来るからね」とおっしゃっていたため、ヘルパーは知り合いがよく来るのかと思って聞いていました。
しかし、入浴後にAさんがご主人に「昨日も来てたわよね」と言うと、ご主人はヘルパーのほうを見て首を横に振り、「いつものことだから」とおっしゃいます。ご主人に話を聞くと、普段から幻視や幻聴の訴えがあるとのことでした。
事例2:アルツハイマー型認知症の幻視
86歳女性のBさんは、アルツハイマー型認知症により要介護4の認定を受けており、グループホームで生活しています。車いすを使っており生活全般に支援が必要ですが、介助があれば手すりを持って身体を起こしたり立ったりすることが可能です。
Bさんはときどき発語があるものの、はっきりと文章を話すことは難しい失語の症状があります。しかし、声かけはおおむね理解している様子で、頷いたり首を横に振ったりして意思表示をしてくださいます。
介護職員が「Bさんどうされましたか?まだ3時ですが、眠れませんか?」と声をかけると、Bさんは何もない場所を指差したままゆっくり「おばあちゃん」とおっしゃいます。
認知症で幻視が起こるのはなぜ?考えられる原因とは
幻視や幻聴などの幻覚がある場合、要因はさまざまなので一概に特定できるわけではありません。以下では、幻視の原因として考え得ることの例を挙げるので、参考としてチェックしてみてください。
レビー小体型認知症の幻視の原因と特徴
政府広報オンラインの「知っておきたい認知症の基本」によると、レビー小体型認知症とは、脳などにレビー小体という異常なタンパク質が溜まることで発症する認知症です。代表的な症状の一つに幻視を含む幻覚があり、比較的初期から出現しやすい傾向にあります。脳機能の低下が視覚情報の処理に影響し、幻視につながると考えられています。
レビー小体型認知症研究会の「レビー小体型認知症とは」によると、レビー小体型認知症の幻視は、具体的でありありとしているのが特徴です。幻視のほか、身体のこわばり・動作の緩慢といったパーキンソン症状が現れることや、認知機能の変動が大きいことなどもレビー小体型認知症の特性です。
なお、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」は三大認知症とも呼ばれます。レビー小体型認知症は認知症のなかでは多い疾患ですが、アルツハイマー型認知症と比べると患者数は少ないようです。
出典
公益財団法人長寿科学振興財団「レビー小体型認知症」(2026年9月15日)
レビー小体型認知症研究会「レビー小体型認知症とは」(2026年9月15日)
アルツハイマー型認知症の幻視の原因と特
アルツハイマー型認知症を患う方の幻視は、症状が進行してから起こる傾向にあり、初期にはあまりみられません。中核症状(認知症の直接的な症状)としてではなく、記憶障がいや見当識障がいなどと環境因子が絡み合うことで幻視が起こると考えられています。
たとえば、過去に見た景色を現在の状況に重ねたり、目覚めたばかりで夢から現実に切り替わっていなかったりして、幻視の訴えにつながることがあるようです。
ただし、アルツハイマー型認知症における幻視は、レビー小体型認知症と比べて珍しく、特に多い症状ではありません。突然これまでと違う様子で幻視や興奮状態がある場合、認知症の症状ではなく、せん妄など別の原因が潜んでいる可能性も考えられます。
せん妄は意識障がいの一種で、病気や脱水、薬の副作用などの特定の原因から発生します。もしも、認知症を患う方に急激な変化がみられたときは、「認知症の影響だろう」と決めつけず、医師や看護師に状況を共有して医療につなげることも大切です。
出典
政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」(2026年9月15日)
厚生労働省「認知症を理解する」(2026年9月15日)
社会福祉法人恩賜財団 済生会「せん妄」(2026年9月15日)
すみだブレインハートクリニック「アルツハイマー型認知症の症状」(2026年9月15日)
認知症の利用者さんに幻視があるときの対応方法
幻視の訴えがあるときは頭ごなしに否定せず、寄り添った声かけをして安心感につなげると良いでしょう。暗かったり散らかったりしていると、物や影を人などに見間違えることがあるので、周囲の環境を整えるのもポイントです。
また、せん妄や症状の進行といった原因も考えられるので、いつもと様子が違うと感じるときは、医師や看護師と連携して対応しましょう。
レビー小体型認知症で幻視があるAさんの対応
Aさんは誰もいない布団を指差して女の人がいると訴え、「朝からずっとなのよ」と顔をしかめます。「じゃあ早くに目が覚めたんですか?」などと声をかけながら話を聞くと、徐々に安心したようでした。
落ち着いた様子のAさんに「一緒に確認してみませんか?」と伝え、たたんであった掛け布団をゆっくりめくりました。布団を確認したAさんは、「やっといなくなったわ」とおっしゃいます。Aさんは幻視が消えてホッとした様子で、予定通り入浴の声かけに応じてくださいました。
幻視を訴える方に不安やストレスがうかがえるときは、安心できるようまずは傾聴します。落ち着いている様子なら、「一緒に確かめましょう」と声をかけて幻視に近づいたり触れたりすると、幻視が消えることも少なくありません。
Aさんに幻視があると知ったヘルパーは対応方法を本で調べ、実際に幻視の訴えに遭遇したときに「幻視に触れる」という方法を試してみました。レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症に比べて患者数が少ないので、ケアの経験が少ない場合は、専門書で調べたりセミナーに参加したりすると知見を深める助けになるでしょう。
また、経験の長い先輩が身近にいる場合、実際の事例や対応方法を教えてもらえるかもしれないので、積極的に相談してみるのがおすすめです。
アルツハイマー型認知症で幻視があるBさんの対応
夜中に誰もいない場所を指差して「おばあちゃん」と言ったBさんに、「おばあちゃんが会いに来たんですかね?」と言うとうれしそうに頷きました。指を差して何か話しかけている様子だったので、そのまま近くで見守りを実施。少しすると自らベッドに横になり、そのまま入眠されました。その後は変わった様子はありませんでした。
Bさんの言動は、記録に記入したうえで職員間で共有しました。後日娘さんがいらっしゃった際に、「おばあちゃん」と言っていた話をすると、「同居していた祖母(Bさんの母親)のことだと思う」とのことです。娘さんがBさんに「おばあちゃんが来たの?」と聞いてから思い出話をすると、Bさんは笑顔で娘さんの話に耳を傾けていました。幻視の訴えが一時的なもので、特に危険な行動がなければ、大きな問題につながることは少ないでしょう。Bさんの場合、もしベッドから1人で移動しようとしたら転倒リスクがあるため、近くで見守って様子をうかがいました。
Bさんの事例の具体的な原因は特定できませんが、夢を見ていて現実と勘違いした可能性があります。また、幻視の訴えがあった日は、お昼に久しぶりに妹さんが面会に来ていたので、昔のことを思い出したのかもしれません。
普段とは違う行動があったため、状況を記録・共有して経過を見ましたが、Bさんが幻視を訴えたのはそのときだけでした。
まとめ
認知症を患う方に幻視がある場合、その理由はさまざまで一概に特定はできません。レビー小体型認知症では、比較的初期の段階からリアルな幻視が見えることがあるようです。アルツハイマー型認知症の場合、記憶障がいや見当識障がいなどが影響して幻視が現れることがありますが、初期にはあまりみられません。
突然「あそこに人がいる」といった訴えがあると戸惑うかもしれませんが、相手にはそう見えているという事実をまず受け止めて、安心感を与えられるような声かけができると良いでしょう。相手の言動を否定せず寄り添うことに加え、環境を整備することや必要に応じて医師に相談することも、幻視への対応として重要です。
介護の仕事をしていて、利用者さんにいつもと違う言動がみられたときは、周囲と連携しながら最適なケア方法を考えましょう。
「介護職として頑張りたいけど職場環境が悪い…」「認知症の正しい知識を身につけたい!」など、介護業界での働き方を見直したい方は、レバウェル介護(旧 きらケア)を利用してみませんか?
レバウェル介護(旧 きらケア)は、介護業界に特化して転職支援を行っています。求人紹介はもちろん、キャリア形成に関する質問や仕事の不満なども伺い、納得して働けるようお手伝いいたします。「今の仕事を続けるべきか分からない」といった相談も歓迎です。専任のキャリアアドバイザーが無料で手厚くサポートするので、介護業界で転職を検討する際はぜひご活用くださいね。
登録は1分で終わります
執筆者

実
元介護士ライター
グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。







