介護のリスクマネジメント!ヒヤリハット事例と対処法

介護の知識 2020年10月22日
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介護のリスクマネジメントは、ご利用者に安全なサービスを提供するうえで欠かせない考え方です。高齢の方が生活する介護施設は事故リスクが高く、事前の対策が欠かせません。このコラムでは、介護現場でありがちな事故や、ヒヤリハットの事例をご紹介します。予測される事故に対してどのように対処すれば良いのか、具体的な方法を考えていきましょう!

目次

介護のリスクマネジメントとは?

介護の現場におけるリスクマネジメントとは、よくある介護事故の原因を分析し、予防方法を考えること、あるいは事故が発生した際の対応を検討することを指しています。介護事故は100%防ぐことはできないので、発生した際の準備も必要です。

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介護現場でのリスクマネジメントの目的

介護現場におけるリスクマネジメントは、利用者さんに良質な介護サービスを提供するために必要であるのはもちろん、介護職員が活き活きと働くためにも欠かせません。介護現場でのリスクマネジメントの目的を整理しましょう。

利用者の安全を確保する

介護サービスを利用する高齢者は、加齢のために心身機能が低下しており、高い事故リスクを抱えています。介護事故は利用者さんの生命に関わる問題であり、事故防止には細心の注意を払わなくてはなりません。

訴訟になるのを防ぐ

介護業界では、転倒などの事故に対する訴訟が頻発しています。特に、高額な訴訟は事業所の経営にも影響し、最悪の場合倒産に追い込まれることもあるようです。また、訴訟が起こると事業所の信頼性が薄れる、というダメージも考えられます。

介護スタッフが働きやすい環境づくりのために

介護事故は介護職員の心の傷になることも考えられます。事故が起こる原因はスタッフ個人によるものとは限りません。たとえば、必要な箇所に手すりがついていないなど、設備に問題がある場合もあるでしょう。リスクマネジメントは、介護職員が安心して働くためにも不可欠な要素です。

介護現場でありがちな介護事故・ヒヤリハット

介護事故を未然に防ぐには、介護現場でありがちな事故やヒヤリハット事例を知ることが必要です。ヒヤリハットとは、重大な事故には至らないものの、仕事中に「ヒヤリ」「ハッ」とする経験を指す言葉です。介護現場では、一歩間違えば介護事故につながりかねない経験を言い、多くの介護士がヒヤリハットを体験しています。

介護事故・ヒヤリハットの事例

  • 利用者が入れ歯をつけ忘れたまま食事をしていた
  • ふらつきのある利用者に後ろから声をかけたら転倒してしまった
  • 誤嚥リスクを把握せずに食事介助し、利用者が激しくむせてしまった
  • 利用者が椅子から立ち上がるときに転倒してしまった
  • 利用者が手洗い用の液体石鹸を飲料と間違えて飲んでしまった
  • 車椅子のブレーキをかけ忘れ、利用者が立ち上がるときに転倒しそうになった
  • 車椅子を押したら段差があり、利用者の体が落ちそうになった
  • 排泄介助で目を離したときに、利用者が便器から落ちそうになった
  • 誤ってほかの利用者の薬を飲ませそうになった
  • 入浴介助中に利用者に冷たい水をかけてしまった

介護事故の中でもよくあるのが、転倒や転落、誤謬、誤飲、誤薬などです。転倒は、移乗介助や入浴介助、利用者さんの歩行中、リハビリ中などさまざまな場面で起こる可能性があり、打撲や骨折などの怪我につながります。ベッドや車椅子からの転落もよくある事故で、就寝中に寝返りを打った際、ベッド柵がなかったために事故が起きるケースもあるようです。

薬を飲み忘れたり飲み間違えたりするのは、服薬時の確認不足が主な原因と考えられます。グループホームなど、集団生活を送る施設は他人の薬を飲ませるリスクが高いため、十分な注意が必要です。

介護のリスクマネジメント・事故防止編

では、介護事故を防止するためには具体的にどのようなリスクマネジメントが必要なのでしょうか?

防げる事故を対策する

リスクマネジメントの基本は、現場で起こる事故をあらかじめ予測し、その対策を考えることです。とはいえ、人が生活する場ですべての事故を防ぐことはできません。リスクマネジメントを行う際は、防げる事故と防げない事故を分けて考え、防げる事故を優先的に対策していきます。

情報を収集する

事故リスクを把握する情報収集の1つとして、まずは利用者の心身状態を確認しましょう。利用者さんにサービスを提供する前に、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)、飲んでいる薬や疾病、生活習慣や趣味などについてアセスメントを行います。利用者さんの情報は介護職員の間で共有したうえで、リスクを想定していきましょう。

また、過去に施設内で起こったヒヤリハットも事故を予想する重要な材料になります。

アメリカの保険会社に勤務していたハインリッヒ氏が唱えた「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」は、「1件の重大事故の裏には、29件の軽い事故と300件の異常がある」と示しています。この法則は、ハインリッヒ氏が工場で発生した事故事例を調査して導き出したもので、介護現場のリスクマネジメントにも応用できます。

ヒヤリハットがあった際はすぐにその事例を記録し、介護職員同士で共有します。ヒヤリハットの時点で対策を考えることで、大きな事故を防げるでしょう。

対策を考える

事故のリスクを分析した後は、具体的な対策を考えていきます。想定される事故に対する対策例を挙げるので、参考にしてくださいね。

転倒事故

  • 利用者に合った高さの椅子を用意する
  • 送迎の乗降時は必ず利用者に声かけをする
  • 安全性能が高い車椅子を使う
  • 筋力アップのトレーニングを行う
  • 浴室やトイレ、階段に手すりをつける
  • 足が引っかかりやすいカーペットやマットを敷かない

誤謬事故

  • 口腔ケアを行う
  • 利用者が正しい姿勢をとっているか確認しながら食事介助を行う
  • 利用者一人ひとりに合わせた食事の形態にする
  • むせこんだときはすぐ看護師に相談する

誤薬事故

  • 薬袋の氏名を読み上げて確認する
  • 薬袋に本人の写真を入れて確認できるようにする

ここに挙げたのは一例ですが、大切なのは「仕組み」をつくって事故を予防することです。介護器具の定期的な安全点検や建物・設備の点検を行うなど、日頃から事故防止のための取り組みを心がけましょう。

事故防止の取り組みをシステム化するには、事業所内に安全管理委員会などを設立するのも有効です。委員会を中心に、ヒヤリハットの情報収集や分析、事故対策の検討を行いましょう。

なお、委員会の構成メンバーは、介護職員や看護師、相談員、リハビリ担当など、多職種にするのが理想です。多様な視点を持つメンバーを集めることで、現場に合った有効な対策を考えられます。

利用者の尊厳を守ることを忘れずに

介護事故の予防にあたっては、利用者さんの尊厳を守ることを忘れてはいけません。事故防止のためだからと、その人らしい生活を制限するのは、利用者さんの尊厳を侵すことになります。

事故防止のために身体拘束を行う施設もあるようですが、介護保険法は原則として身体拘束を禁止しており、生命や身体を保護するためにやむを得ない緊急の場合を除いて、身体拘束は許されていません。

また、利用者さんの生活を制限することで、利用者さんが抵抗しようと予測できない行動をとり、転倒などの事故が起こる可能性もあります。リスクマネジメントでは、利用者さんを管理しようとするのではなく、信頼関係を築き、その人らしい生活の実現に努めることが大切です。

介護事故が起きたときの対応方法

どんなに対策を講じていても、介護事故が起こるときもあります。もし、事故が発生した際は、どのように対応すれば良いのでしょうか?

応急処置

介護事故が発生したら、利用者さんの安全確保を最優先します。事故の状況を把握し、必要に応じて止血や人工呼吸、心臓マッサージ、場合によってはAEDを使った処置を行いましょう。また、管理者や看護師・医師に応援を頼み、状況によって救急搬送の手配を行います。

在宅サービスや送迎中に起こった事故の場合は、すぐに管理者に連絡して指示を仰ぎましょう。

関係機関への連絡

必要に応じて関係機関に連絡します。たとえば、死亡事故の場合は警察、食中毒の場合は保健所への連絡が必要です。

家族への報告

事故が起こったときは、事業所の責任者と担当職員が誠意を持って家族に謝罪します。なるべく早く家族と連絡をとり、事故の状況と利用者さんの現在の状態を説明しましょう。このとき、事業所にとって都合の良い説明をしたり、嘘の説明をしたりするのは適切ではありません。家族にとって必要な情報を、丁寧にわかりやすく伝えます。

事故の記録・原因調査

事故の状況や応急処置、現在の利用者さんの状態を記録しましょう。時系列順に起こった出来事を整理し、関係者の事故前後の行動も把握します。

事故の原因を特定した後は、個人の責任を追及するのではなく、事業所として再発防止策を考え必要な体制を整えます。再発防止策を検討する際は、必要に応じて関係機関の指導を受けましょう。

まとめ

リスクマネジメントは、良質なサービスを提供するうえで必要なのはもちろん、働く介護職員や事業所を守るためにも大切です。ヒヤリハット事例などを参考にしてリスクの高い事故を予測し、対策を考えていきましょう。

また、介護のリスクマネジメントは、安全管理委員会を設置する、設備管理を徹底するなど、事業所全体としての取り組みが欠かせません。介護施設への就職・転職を考えている方は、リスクマネジメントへの取り組みも含めて、職場選びの参考にすると良いでしょう。

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