介護事故を防ぐには?ありがちな事例と対処方法

介護の知識 2021年10月7日
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介護事故は、介護サービスの提供中に利用者側に起こる事故を指しています。よくあるのは、転倒や転落、誤嚥、誤薬などです。介護職員のみなさんもヒヤッとした経験があるのではないでしょうか。全てが介護職員の責任であるというわけではありませんが、実際に介護事故が発生しそうになるとヒヤッとしますし、介護事故の現場に遭遇すると自分を責めてしまいそうになりますよね。この記事で、介護事故の種類や事故が起こった際の対応を確認して事故を未然に防ぐ方法を確認してみましょう。

目次

介護事故の定義とは

「介護事故」に明確な定義はありませんが、一般的には介護サービスの提供中に起こる事故を指しています。あくまでサービスを受ける利用者さまに起こる事故を指し、介護を提供する側のスタッフに起きた事故は労災として分けて考えるのが普通です。

全国社会福祉協議会が作成した『福祉サービス事故事例集』では、福祉サービスにおける事故を次のように定義しています。

「社会福祉施設における福祉サービスの全過程において発生する全ての人身事故で身体的被害及び精神的被害が生じたもの。 なお、事業者の過誤、過失の有無を問わない。」

厚生労働省「「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について」

介護事故には、利用者さま本人に原因がある事故や防止が困難な事故もあり、全ての責任が介護事業者にあるわけではありません。夜勤帯等にご自身で動かれた際など、スタッフがそばについていないときに事故が起こることもあります。
ただ、事業者は質の高い介護サービスを提供するうえで、起こりうる事故を予測し、事故発生の確率を最小限にするための対策を考えることが求められます。

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介護事故の種類と事例

介護事故には、転倒や転落、誤薬などいくつかの類型がありますが、特に多い事故は転倒だといわれています。ここでは、介護サービス中に起こりやすい代表的な介護事故の種類と事例をご紹介します。

転倒

利用者さまは加齢により筋力や視力、バランス感覚が低下し、若い人に比べて転倒リスクが高くなります。転倒時に足を骨折し、歩行が困難になって車いすや寝たきりになるケースも少なくありません。

転倒事故の事例

  • 利用者さまが自分で立ち上がろうとしたとき
  • 利用者さまが杖を忘れて歩行しようとしたとき
  • 施設内の曲がり角で人とすれ違うとき
  • 方向転換の際にバランスを崩したとき
  • 後ろから声をかけられ、振り返ろうとしたとき

転落

ベッドや椅子、車いす、便座などから転落する事故です。

転落事故の事例

  • 利用者さまの体に合わない車いすを使い、ずり落ちたとき
  • トイレでの排泄介助中、利用者さまが1人で便座から立ち上がろうとしたとき
  • 利用者さんが1人でベッドから降りようとしたとき
  • 入浴中にシャワー椅子から立ち上がろうとしたとき

誤嚥

誤嚥は、食べ物や飲み物が気管に入ってしまう現象で、窒息や誤嚥性肺炎に至る危険があります。利用者さまは、加齢による唾液の減少や歯のトラブルなど、自覚がなくても軽度の嚥下障害を持っていることがあるので注意が必要です。

誤嚥事故の事例

  • 施設のイベントで通常とは違う食事を提供したとき
  • 利用者さまに合わない食事形態(刻み食など)を提供したとき

誤薬

誤薬は、誤った量や指定外の時間で薬を飲んでしまう、もしくは他人の薬を飲んでしまう事故です。誤薬をすると、薬の種類や量によっては命に関わるため、十分な注意が必要です。人為的なミスによって起こりやすい事故なので、服薬前・服薬中の確認を徹底することで防止できます。

誤薬事故の事例

  • 看護師や介護職員が誤った薬を提供したとき
  • 介護スタッフが目を離したすきにほかの利用者さまの薬を飲んでしまった
  • 服薬忘れ
  • 薬が飲めずに床に落ちていた

介護事故の原因

介護事故が発生する背景には、介護をする側と介護を受ける側それぞれの要因があります。

介護職員・事業所側が原因の場合

事業所の教育体制が十分でないことにより、知識と技術が不足することに起因する事故があります(例:車いす移乗の際の皮膚剥離など)。手すりなどの設備が整っていないことが原因で事故が起こることがあります。介護職員同士や他職種との連携が不十分で事故を招くこともあるでしょう。

また、経験を積んでくるうちに慣れが発生し、思い込みや確認不足による事故や、多忙や人手不足により事故発生のリスクが高まるケースもあります。

利用者側が原因の場合

利用者さまは、加齢に伴って足が不自由になっていたり、自分で食事や排泄をするのが困難になっていたりするなど、さまざまな症状を抱えています。若い人に比べて日常生活でトラブルが起こる可能性が高く、介護現場には常に事故の危険があるといえます。

介護事故を防ぐためのリスクマネジメント

介護の現場では事故が起こりやすく、原因によっては全ての事故を未然に防ぐことは難しいでしょう。しかし、なかにはルールや仕組みを変えることで防ぐことができる事故もあります。そのような事故を未然に防ぐためには、「リスクマネジメント」の考え方がとても重要です。リスクマネジメントとは、現場で起こる事故をあらかじめ予測し、その対策を考え、事故の発生を未然に防ぐ、確率を最小限に抑える取り組みのことを指します。対策は、成果が出なくては意味がありません。ここでは、介護事故を防ぐための対策の一例をご紹介します。

ミスをする原因を探り、対策を考える

介護事故の原因は、「注意散漫だったから」「慎重さが足りなかったから」「知識と技術の不足」といった介護職員の気持ちの問題だけではなく、施設の設備や使用している器具などの外的な要因も考えられます。そういった場合、「これからは注意深く介護を行う」と決めたところで、再度同じミスを繰り返してしまうでしょう。
また、業務の流れや人員配置等、組織のシステムエラーが事故発生の確率が上げていることもあります。

介護事故の原因をあらゆる角度から探り明確にすることで、事故を繰り返さない対策を講じることができるのです。

ヒヤリハットを記録し共有する

重大な事故を防ぐには、ヒヤリハット事例を記録し予測される事故の対策を考えるのが有効です。ヒヤリハットとは、事故にはならなかったものの、介護中に「ヒヤリ」「ハッ」とする体験のことで、多くの介護職員が経験しています。

ヒヤリハットは報告書などにまとめ、スタッフ全員で事例と予防策を共有しましょう。ヒヤリハットの記録を残しておくと、事故が起きやすい介助や時間帯が分かり、事例ごとの対策をとれます。スタッフ同士で情報共有する際は、起こりやすい事例や対策について話し合いの場を設けることも効果的です。

介護事故の対策を見直す

介護事故防止の対策は、一度決定して終わりというわけではありません。ご利用者の状態が変わる度に、見直しをしていく必要があります。 その際に、PDCAサイクルの考え方を用いて、対策を更新していくことが有効です。PDCAとは、計画(Plan)、実行(Do)、点検(Check)、見直し(Act)のサイクルを繰り返し行うことによって、業務を改善する手法です。

介護の現場では、ヒヤリハット報告や利用者さま・ご家族からのクレーム、スタッフからの提案などから情報を収集し、施設が抱えるリスクをあぶり出します。集めた情報は事業所内の安全管理委員会などで分析を行い、対策やマニュアルを考案するのが流れです。対策はスタッフ全員に周知し、リスクを最小限に抑えます。ただ、1度リスクを回避する体制を整えても、その後当初は予想していなかったリスクが見えてくる場合もあります。その際は改めて運用を見直し、継続的に改善をはかりましょう。

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介護のリスクマネジメント!ヒヤリハット事例と対処法

もし介護事故が起こってしまったら

介護職員がいくら気を付けていても、事故の可能性をゼロにすることはできません。介護事故が発生した場合は、以下のような対応をとります。

利用者さまの安全を確保する

まずは利用者さまの状態を確認し、安全を確保したうえで応急処置を行います。状態によっては救急車の手配も必要です。経過を見守る場合は、急変した際に備えて緊急連絡体制を整えましょう。

ご家族に連絡し、状況説明と謝罪を行う

事故発生時はすみやかにご家族に連絡し、事故の状況と現在の利用者さまの状態を説明します。ご家族への謝罪は後回しにせず、誠意を持って行うことが大切です。ご家族に必要な情報を分かりやすく伝えましょう。

事故の状況によって関係機関に連絡する

重大な事故の場合は警察や自治体、食中毒や感染症の際は保健所や自治体など、関係機関に連絡します。

事故の記録を行う

事故が起きた現場の写真を撮ったり、担当スタッフに聞き取りを行ったりして、事故の状況を記録しましょう。「介護スタッフが適切なサービスを提供していたか」「教育体制に問題はなかったか」「事業所がスタッフの健康状態を把握できていたか」といった点を把握することが大切です。

事故の記録は再発防止のための材料にもなり、また、利用者さまやご家族から損害賠償を求められた際に、事業所側に落ち度がなかったことを示す資料になります。事故を検証した後は再発防止策を考え、マニュアルに反映してスタッフに周知しましょう。

まとめ

どれだけ対策を講じていても介護事故をゼロにすることは難しいと思います。 しかし、ご利用者一人ひとりに起こりうるリスクの予測を、ヒヤリハット等を用いてチームで共有し、事前に対応していくことが必要です。

事故を防止するには、ヒヤリハット事例を集めて起こりうる事故を予測し、対策を立てるのが基本です。万一事故が発生した際は、すみやかに救急車を手配する、ご家族に正確な説明を行うなどの対応をとり、事故後は再発防止策を検討しましょう。

監修者

  • 小森 敏雄

    合同会社小森塾代表 介護講師

実務者研修等資格取得講座の運営兼講師。介護アドバイザーとして各施設にて研修実施。「現場を変える小森塾」オンラインサロン運営。著書「介護のプロを育てたい」出版。YouTube随時配信。「小森敏雄」で検索。

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