高齢者介護のあるべき姿とは?

介護の知識 2022年12月16日
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ソファーに座る高齢者の女性と談笑している男性介護士のイメージ

介護が必要な状態になっても、尊厳をもってその人らしい暮らしを送れるようサポートするのが高齢者介護の仕事。介護といっても、ただ単に身の回りのお世話をすれば良いというわけではありません。高齢者が本当に必要としている介護とは何か? 高齢者それぞれが人間らしく充実した生活を送るための介護のあり方について考えます。

目次

高齢者介護の間違い ~あるべき高齢者介護とは~

寝たきり高齢者は本当に寝たきり?

介護の間違いの例のひとつが、“寝たきり”の高齢者に対する誤解です。プロの介護士であっても、一度寝たきりになってしまった高齢者は、もう起き上がることはできないと考えがち。寝たきり高齢者の中には、実は起きて動作する力があるのに、寝たきりを前提とした介護の仕方によって寝たきり状態が続いてしまっている人もいるのです。
そんな寝たきり状態のきっかけとして多いのが、病気や怪我の手術とその後の処置です。若年の人であれば手術の後比較的すぐに体力を回復し普段の生活に戻れますが、高齢者が元の生活に戻るのは若い人ほど簡単なことではありません。そのために、つい寝かせたままの介護をしてしまい、寝たきりの生活が定着してしまいます。手術後、病気は治っても寝たきりになったという人は多いのです。

廃用症候群とは?

人を寝かせたままにしておくと、本来備わっていた体の機能が衰え“廃用症候群”を招いてしまいます。廃用症候群とは、必要以上の安静を続けることで筋肉が痩せ衰えたり、身体機能が低下してしまうことです。高齢者の場合は、自分でも気づかないうちに「起きられない」「歩けなくなった」といった状態に陥ることも。身体能力の低下を防ぐためにも、必要のない寝たきり生活は避けたいものです。

寝たきり状態にしないために

介護士の中には寝たきりの高齢者を座位にするのは危険と考える人もいますが、手術直後や特別な疾患を抱えている場合を除いて、高齢者が座位をとることは可能だといわれています。食事をテーブルに座って食べてもらったり、週何回かは排泄をポータブルトイレで行うなどの適切な工夫をすれば、完全な寝たきり生活を防ぐことができます。
また、寝たきりを防止するためには精神面でのサポートも大切です。趣味や家庭での役割などの生きがいを持つことは、高齢者自らが体を動かすモチベーションになりますね。
寝たきりで手厚い介護を受ける生活と、自分でできる限りのことをする生活。このどちらが人間らしく充実した生活か、高齢者介護を実践にするにあたって改めて考え直してみたいですね。

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高齢者介護はどこから必要?

リハビリテーションや介護の分野で使われている用語に、「日常生活動作(ADL)」(Activities of Daily Living)と「手段的日常生活動作(IADL)」(Instrumental Activities of Daily Living)というものがあります。高齢者介護の必要性を考えるにあたって、このふたつについてみていきましょう。

日常生活動作(ADL)

人が日常生活を送るために繰り返す基本的な動作で、食事・更衣・移動・排泄・入浴などがこれにあたります。近年、ADLは高齢者の生活機能の規準として用いられることが多く、介護が必要であるかどうかの判断基準のひとつとなります。ADLができていれば、基本的には介護はいらないと考えます。逆にADLができない時には、介護が必要ということです。
介護の目標は高齢者によって個別に設定されますが、ADLが回復する可能性があるならばそれを目指します。不要な介護や過度な介護は高齢者のADLを低下させてしまう恐れがあるので注意が必要です。たとえば、歩行能力があるのに車椅子での移動を続け、筋力低下を招いてしまったというケースがあります。
ADLの回復が難しい・ADLが極めて低い状態にある高齢者に対してできることは、本人の気持ちを尊重すること。その人が希望する介護を提供することで、高齢者が自分自身の意思で生活を送れるようにサポートします。

手段的日常生活動作(IADL)

電話の対応や買い物、乗り物の利用、食事の支度、家事、服薬管理など、自立して生活を送るために必要な、ADLと比べて複雑な活動のことを指します。高齢になると日常生活動作はできても、手段的日常生活動作が難しいという人が増えてきます。介護施設等に入っていれば問題は少ないですが、自宅で生活したり一人暮らしをする場合にはIADLは必須の能力となります。

高齢者介護の前にできること

高齢者介護を考える上で欠かせないのが「介護予防」の視点です。介護予防とは、

「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」

厚生省発行PDFより引用「第一章 介護予防について」介護予防の定義と意義(1頁目)

と定義されるもので、「最近物忘れがひどくなった」「移動が面倒になった」等、加齢による衰えに気づいた段階で、それ以上身体能力を低下させないように対策を講じることです。介護予防では、栄養の改善や軽運動を通して身体機能を回復させることによって、高齢者の生活機能や社会参加を向上させ、将来的に介護の対象とならないことを目指します。介護予防における個々のサービスは、要介護状態を防ぐという目標を達成するためにあるので、サービス自体が目的化しないように注意します。

これからの日本と高齢者介護の課題

超高齢化社会の到来

65歳以上の高齢者人口が3,300万人に達する超高齢化社会となった日本(平成26年10月1日現在)。総人口が減少するなかで*高齢化率は上昇を続け、内閣府の推計によると、2015年に26.8%だった高齢化率は、2060年には36.9%に達すると見込まれています。そして2060年には2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上の高齢者となる社会が到来すると予想されます。
*総人口に占める65歳以上の割合

内閣府「平成27年版高齢社会白書 全体版

高齢者介護の果たすべき役割と課題

今や高齢者の介護は重要な社会的課題となり、高齢者介護は日本社会が抱える問題への取り組みであるといえます。高齢者介護の使命は、公的機関・民間機関の行う施設・在宅系サービスを通し、高齢者が安心してよりよく暮らせる生活環境づくりを行うことです。
近年の高齢者介護にあたっては、リハビリテーションや介護予防を充実させ、介護を必要とする場合もその期間をできるだけ短くできるように、その人らしい生活を続けるための取り組みに重点が置かれるようになっています。施設で暮らす方に向けた介護では、日々の生活をできるだけ自宅での生活に近づけられるような工夫も必要とされています。
現在の高齢者介護が抱える課題のひとつは、認知症の高齢者に対する介護です。要介護認定者のほぼ半数は認知症の老人といわれていますが、認知症への介護は遅れているのが現状です。認知症に対するケアはまだ発展途上で方法論、標準化は確立されておらず、ケアモデルの構築が急がれています。

介護士は、介護を必要とする高齢者が安心して暮らせるように個々人に合わせた適切な介護、介護予防を実践し、最終的に高齢者のQOL(生活の質=quality of life)を向上させていく役割を担っています。超高齢化社会を迎えた日本で、高齢者介護の果たす役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。

介護のあり方に関する質問

ここでは、介護のあり方に関する質問に回答します。

これからの介護のあり方とは?

これからの介護は、利用者さまが住み慣れた地域で自立し、自分らしく過ごせるように支援することがいっそう大切になります。価値観やライフスタイルの多様化により、求められる介護も多様化しているため、個人を尊重した介護のあり方が必要です。また、高齢化による介護職の人手不足が進行することからも、できるだけ自立した日常生活が送れるよう介護予防への取り組みがこれまで以上に重要になるでしょう。詳しくは「高齢者介護の前にできること」で解説しているので、ご参照ください。

介護で大切なことは?

介護で大切なのは、常に利用者さまへの思いやりをもって対応することです。ご高齢者や認知症の方の中には、自分の気持ちをうまく伝えられない状態の方もいます。相手に寄り添い、自分に求められていることを的確に読み取ろうとする姿勢が必要です。また、介護現場では事故を防ぐために周囲の状況に注意を払うことが欠かせません。食事が喉につかえたり、転倒しそうになったりしないか、危険を予測した上での気配りが大切です。

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