介護職員の人手不足や、超高齢化社会が問題となっている日本。海外の介護サービスと比べて遅れをとっているのか気になる方もいるでしょう。世界に目を移していろいろと比較してみると、実は日本の介護サービスはとても充実していることが分かります。本記事では、アメリカやスウェーデン、中国など、海外における介護事情についてまとめました。世界から見る日本の介護事情が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
海外の介護はどうなっているの?
当然のことながら、国や文化が違えば価値観や考え方は異なるもの。海外の介護事情は、日本と全く同じものではありません。たとえば、介護に密接に関係する平均寿命を見てみると、日本の平均は男性約81歳、女性約87歳ですが、海外の平均は国によって違いがあることが分かります。
国名 | 男性の平均寿命 | 女性の平均寿命 |
日本 | 81.47歳 | 87.57歳 |
アメリカ合衆国 | 74.2歳 | 79.9歳 |
スウェーデン | 81.21歳 | 84.82歳 |
中国 | 73.64歳 | 79.43歳 |
フランス | 79.26歳 | 85.37歳 |
オーストラリア | 81.19歳 | 85.34歳 |
南アフリカ | 62.5歳 | 68.5歳 |
引用:厚生労働省「平均寿命の国際比較」
日本は、平均寿命が長いうえに、年々進んでいく少子高齢化により介護人材不足が深刻化しています。そのため、国を挙げて介護人材の処遇改善や介護ロボットの開発支援など、対応策を講じているところです。一方海外では、日本と同じような平均寿命であっても、少子高齢化がそれほど深刻化していない国もあります。フランスや北欧諸国では、仕事と子育ての環境を整備する「両立支援」へのシフトを行い、少子化対策に成功しているため、高齢化率は日本よりも緩やかに推移しているようです。
介護保険制度の在り方や保険料の税率なども国によって異なります。日本と海外における介護事情の違いは、平均寿命の長さや少子高齢化の進行度、介護保険制度の有無だけから推し量ることはできません。海外の介護事情を知りたい場合は、それぞれの国について詳しく調べてみる必要があるでしょう。
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出典
厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」(2022年10月7日)
内閣府「選択する未来-人口推計から見えてくる未来像-」(2022年10月7日)
内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」(2022年10月7日)
アメリカの介護事情
アメリカの介護保険は、まだまだ発展途上であるといわれています。連邦政府や州政府によって設けられている公的保険はあるものの、日本のように年齢によって加入が義務付けられている介護保険制度はありません。
アメリカは公的な介護保険制度が整備されていない
アメリカの保険制度のなかには、65歳以上の高齢者や障害のある方向けの医療保険「メディケア」というものがあります。あくまで医療保険のため、日本の介護保険とは別物であると考えたほうが良いでしょう。
また、アメリカでは公的な介護保険制度が整備されていない分、民間の介護保険が発達しています。介護サービスが必要になれば、民間の介護保険に加入することになるでしょう。ただし、民間の介護保険は、サービス内容が充実しているものの、費用が高額なのが特徴。十分な収入や貯蓄がない場合は、加入が難しい場合もあるようです。
このような背景から、アメリカでは在宅で生活を送る高齢者も比較的多く、家族が協力して介護をする傾向にあります。
スウェーデンの介護事情
スウェーデンといえば、福祉大国のイメージを持っている人も多いでしょう。日本の介護保険制度が導入される際も、先進的な介護制度のモデルとして影響を与えています。
スウェーデンは高負担高福祉モデルの代表的存在
スウェーデンは高負担高福祉の代表的な存在といわれています。標準消費税は25%で食料品消費税は12%と税率が高い国であるものの、その分医療費や福祉サービス、育児休暇などの社会保障制度が充実しているのが特徴です。医療費の自己負担は最大で年間1万円程度、18歳以下は無料となっています。税金の負担が大きい分だけ大きな保証を得られるのが、スウェーデンを代表とする北欧モデルの特徴といえるでしょう。
高齢者福祉分野では、老後に安心して自宅で過ごせるよう、在宅介護サービスが普及しているのが特徴です。具体的には、ホームヘルプサービスやデイケア、ナイトパトロールといった介護サービスや、住宅改造資金手当制度などがあります。高齢者が在宅で暮らし続けるために徹底した介護支援を行うことで、高い在宅生活率を維持しているようです。
デンマークの介護事情
デンマークは、スウェーデンと並ぶ高負担高福祉モデル国です。消費税25%、所得税55%など高額な税率である反面、医療費や出産費、大学卒業までの教育費などが無料となっています。社会保障の充実度でいえば、日本よりも高いといえるかもしれません。
デンマークは在宅ケアに関する介護サービスが充実
デンマークの高齢者福祉分野は、1980年代に介護施設から在宅介護へ方向転換したことから、国を挙げて在宅ケアに関する政策が進められています。たとえば、24時間体制の在宅介護サポートは、日本のように要介護認定を受ける必要がなく、誰でも必要なときに受けられるのが特徴です。
なお、介護職員は公務員として扱われ、給与や待遇が安定しているため、人材不足の問題もないといわれています。介護ニーズと介護人材の供給バランスがとれているのも、デンマークの優れているところといえるでしょう。
オーストラリアの介護事情
オーストラリアでは、1985年に「在宅介護コミュニティケア法」が制定されてから、早い段階で介護の拠点を施設から自宅へと転換してきました。この点は、スウェーデンやデンマークの介護観と近いものがあります。
オーストラリアの介護財源は介護保険制度ではなく一般税
オーストラリアには、日本のような介護保険制度がありません。しかし、アメリカのように民間の介護保険が発達しているのではなく、介護保険の代わりになる「老齢年金」という年金制度があります。オーストラリアの老齢年金は税方式で、全額政府の財源から支給されています。日本のように加入者が保険料を納めるものではないため、介護サービスの利用者に金銭的な負担が掛からないのが特徴です。
また、オーストラリアでは、介護者に対する支援が充実しています。「介護者手当の支給」「介護者支援センターの利用」「レスパイトケアの推進」など、介護者の負担軽減に努めており、介護する側にも優しい国といえるでしょう。
中国の介護事情
中国では、日本と同じように急速な高齢化が進んでいます。65歳以上の高齢者人口は2020年11月時点で1億9,000万人を超えており、中国には日本の総人口よりも多い高齢者が住んでいることになります。しかし、高齢者人口の増加に対して、介護保険の整備には多くの課題があるようです。
中国の急速な高齢化に介護サービスが追いついていない
中国では、急速な高齢化に介護サービスの提供が追いついていないのが現状のようです。特に、都市部の国営老人ホームは常に空きがない状態で、人気の施設は数十年先まで予約が埋まっているといわれています。一方農村では、中国都市部に働きに出る若い人が増えた結果、高齢者の一人暮らしが目立つように。在宅での介護を望む人が多いため、在宅介護サービスの需要が高いようです。
中国の在宅サービスは大きく分けて家事援助、介護援助に分けられます。具体的には、料理や買い物、洗濯などの家事援助、リハビリやお風呂、オムツ替えなどの身体介護などがあるようです。さらに、重度の要介護者に対応する泊まり込みのサービスや夜間巡回などもあります。中国の介護需要は今後ますます高まっていくことが考えられるため、さらなるサービスの充実が望まれている状況です。
海外と比べた日本の介護のいいところとは?
日本で介護が必要になれば、当たり前のように介護サービスを利用できます。しかしそれは、介護保険がない国から見れば特別なことなのかもしれません。在宅で過ごすなら、訪問介護やデイサービス、入所を希望するなら有料老人ホームや特養など、介護施設や事業所が充実しているので、状況に合わせた介護サービスを提供できるのも、日本の介護の良いところといえるでしょう。
世界の介護事情を見ると、日本の介護福祉サービスはバランスが取れているといえます。スウェーデンやデンマークの高負担高福祉のモデルは、手厚い福祉サービスを受けられる点は理想的です。とはいえ、少子高齢化が急速に進む日本で同じことをするのは、若者に対する税負担増加などの懸念があり、いろいろな面で難しいといえます。また、平均寿命の長い日本では、アメリカのように公的な介護保険がない状態も、現実的ではありません。
日本では、介護職員の人材不足が社会問題となっていますが、介護職の処遇改善を行ったり働き手の間口を広げて教育体制を整えたりするなど、さまざまな対策を講じています。また、介護ロボットを活用した見守りシステムの導入など、新しいことにも積極的なので、日本の介護サービスは今後さらに充実していくことが予想できるでしょう。
まとめ
日本と海外では、介護保険制度の有無や介護観の違いなどがあります。介護サービスを提供するための財源も異なるので、日本でほかの国の介護の仕組みを真似しようと思っても、取り入れるのは難しいといえるでしょう。
日本と海外の介護事情を比べてみて、「もっと日本の介護について学んでみたい」という方は、介護職として従事してみるのがおすすめです。
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