
介護現場では、弄便(ろうべん)行為を目の当たりにすることは珍しいことではありません。しかし、弄便はケアをする側にとって非常に負担のかかる症状であるといえるでしょう。本記事では、弄便の原因と対策などについて解説します。つなぎ服の取り扱いについても解説していますので、介護現場で弄便の対応に悩んでいる介護職の方はぜひ参考にしてください。本記事を読んで弄便についての対策を知り、介護現場で活用しましょう。
目次
弄便(ろうべん)とは
弄便とは認知症を患う方に見られる、BPSD(行動・心理症状)の1つです。具体的な症状としては、便を素手でつかんでいじってしまったり、衣類や壁など部屋全体を便で汚染してしまったりする行為などが挙げられます。場合によっては、便を口に含んでしまうこともあるでしょう。
介護をする側にとっては、少々ショッキングな光景に感じたり、ストレスを感じたりすることもあるかもしれませんが、弄便行為をしてしまう原因は明確に存在します。原因を知り、対策を講じることで、症状を緩和することも可能です。
「認知症」という病気が原因で起こる症状であり、本人が望んで行う行為ではないことを念頭に置き、むやみに叱らないよう心がけましょう。
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認知症を患う方の弄便(ろうべん)の原因
弄便の原因はさまざまですが、主に5つの原因が考えられます。
便意が低下・喪失する
便が出そう、トイレに行きたいという感覚がなくなり、トイレでの排泄が難しくなることで失禁が増え、弄便につながってしまうことがあります。
おむつの中に便があることに不快感がある
おむつやリハビリパンツ内への排便は、便意がなく、トイレに行けない方や便意を感じてもトイレで排泄するということの理解が難しくなった場合に考えられる状態です。トイレで排泄をすることが難しくなった場合でも、便がおむつの中にあることで「なんとなく気持ち悪い」という不快感を覚えることはあるでしょう。
その不快感をなんとか自分で無くそうとして、弄便につながることが考えられます。
自分できれいに処理をしようとする
便が出てしまったことは認識できるが、それを自分で処理するための有効な行動がわからないという状態です。弄便を発見した状況で本人の思いを傾聴するのは非常に難しいことではありますが、弄便にいたるまでの思いや思考を鑑みて対応する心がけは大切です。
便を認識できない
認知症の症状が進行すると、便がどういうものであるかを正しく認識できない状態であることも十分に考えられます。便が何かわからず触ってしまい、その状態でまた別の所に触れる…その繰り返しで部屋全体が汚れてしまうこともあるかもしれません。
失禁に対する羞恥心がある
失禁したことを認識できる方の場合、失禁に対する羞恥心から弄便につながる場合も考えられます。失禁してしまったことを恥ずかしく思い、自分で何とか処理しようとしたり、隠そうとしたりするケースです。
タンスやフタつきのごみ箱の中に便が付着したものを隠すなどの行為がある場合は、この理由の可能性が高いでしょう。
介護施設で弄便(ろうべん)が起きたときの対応方法
介護施設において、弄便を発見したときに行う対処法とそのときに心がけるべきことについて紹介します。
手や身体の汚れをきれいに拭く
まずは、汚れを拭き取る・シャワーで洗い流すなどして本人の清潔保持を優先して行いましょう。便があちらこちらに付着している状況では、本人も不快な気持ちになります。また、便が付着した手で目をこすってしまうなどした場合、感染症にかかる恐れもあるでしょう。
不快感の軽減や改善、感染症予防の観点から、弄便行為を発見したら、すぐに着替えやシャワーなどで汚れを取り除く対応を行いましょう。
認知症の症状だと理解し叱らずに共感する
弄便行為があったことで、介護をする側は、業務の負担が増えてしまいます。しかし、そのことでイライラしたり、叱ったりしないよう注意が必要です。
認知症の症状の1つであり、介護をする側が対策を講じることのできる症状であると理解して、冷静な対応を心がけましょう。また、弄便に至るまでの気持ちを汲み取り、共感の声掛けを行う意識も大切です。
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介護施設で行う弄便(ろうべん)への対策と予防
介護をする側の気持ちとして「弄便をやめてほしい」と考えるのは当然です。しかし、やみくもに叱ったり、強い口調で威圧したりしてもあまり効果はありません。それどころか、利用者さんはストレスを感じて、さらにBPSDがひどくなることもあるでしょう。
弄便が繰り返される場合は、冷静に原因を考え、職員同士で意見を出し合って対策を講じましょう。有効な対策を立てることで、職員の負担軽減にも直結するので、本記事の対策内容もぜひ業務の参考にしてください。
排泄パターンを把握しトイレに誘導する
介護施設では、排泄のタイミングや回数を記録しています。排泄記録を活用し、便が出やすい時間帯にトイレ誘導を行うと失禁の回数を減らすことができるため、弄便予防に効果的です。また、おむつやリハビリパンツの中ではなく、トイレに誘導することで自然な排泄を促す効果もあります。排泄に介助が必要になった場合でも、できるだけ自然な排泄を促す意識はとても大切です。
排便後は早めにおむつ交換を行う
トイレ誘導が難しい利用者さんの場合は、排泄パターンを把握して、おむつ・パット交換の時間を早めたり、交換の回数を増やしたりするなどの対策が有効です。早めに交換を行うことで、不快感を与えずに済み、弄便の予防・防止につながります。
自分の状態や気持ちを言葉で伝えることが難しい方であっても、不快感を覚えることはあります。その不快感を軽減したい思いから、落ち着きがなくなったり、興奮状態になったりする場合も少なくありません。排便したサインを見逃さないよう、よく観察する意識を持つと良いでしょう。
掃除しやすい住環境を整える
万が一弄便してしまった場合を考え、掃除がしやすい環境にしておくことも大切です。
弄便のあとの掃除や着替えは介護をする側にとって非常に負担となるため、少しでも負担を軽減するための対策をしておきましょう。
皮膚を保護して不快感を軽減する
おむつでの排泄が多い方や尿・便の量が多い方などは、でん部の皮膚が荒れやすくなる傾向があります。皮膚が荒れていることでかゆみや痛みを感じ、弄便につながる可能性も考えられるでしょう。皮膚が荒れている場合は、薬を塗布するなどして皮膚を保護することも大切です。
介護施設の場合は、看護師などと相談して対策を考えていくと良いでしょう。
どうしても改善しないならミトンの使用を検討する
どうしても弄便行為が続いてしまう場合、ミトンの使用を検討する場合もあるかもしれません。ただし、ミトンの使用は行動制限にあたり、身体拘束に該当することを理解しておきましょう。基本的に介護施設では、身体拘束は禁止とされており、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの条件が重なる場合のみ、医師の許可を得て可能となるものです。
とはいえ、「切迫性」「非代替性」「一時性」の定義は現場の状況によって柔軟に解釈されることが多く、必要な手順を経て、ミトン等の使用を可能としている介護現場もあります。
原則、身体拘束は禁止であるという認識を忘れずに、現場の方針にしたがって対策を立てるようにしましょう。
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弄便(ろうべん)対策としてつなぎ服を使うのは適切?
つなぎ服は上下がつながっており、オムツに触れられない構造になっています。そのため、つなぎ服の着用は弄便防止には非常に効果的です。実際、病院や一部の介護施設などでは使用している場合もあるでしょう。しかし、ミトン同様、行動制限・身体拘束につながる可能性があることを留意しておく必要があります。
介護施設では基本的に身体拘束を行えないため、看護師や家族に相談し、よく検討したうえで使用するのが原則です。家族の要望等で使用することもありますが、基本的にはNGと考えておいた方が良いでしょう。つなぎ服など行動制限につながる対策は、介護をする側にとってはストレスや負担を大きく軽減するものになり得ます。しかし、利用者さんにとっては、苦痛が増大してしまう危険性があることを忘れてはいけません。
弄便(ろうべん)に関するよくある質問
ここでは、弄便に関するよくある質問にお答えします。「なぜ弄便をするの?」「利用者さんの弄便に対策方法はある?」など、疑問や悩みのある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
なぜ弄便をするの?
弄便とは、認知症を患う方に見られる便を弄ぶ行為です。便を手で掴んでしまったり、壁や衣類に擦りつけてしまったりするため、初めて目の当たりにすると驚いてしまうかもしれません。しかし、前述のとおり弄便は認知症に見られる症状の一つ。弄便をする本人にとっては、「おむつの中が不快だった」「便を処理したかった」といった理由があるはずなので、様子を観察しながら見守ることが大切です。
弄便の対策方法は?
弄便の対策方法は、「排泄パターンを把握しトイレに誘導する」「排便後は早めにおむつ交換を行う」などが挙げられます。ポイントは、排泄物を長時間そのまま放置しないことです。弄便は、排泄物の不快感や綺麗にしたいという気持ちが原因になっているケースも少なくありません。できるだけ不快感を軽減することが、弄便の対策として効果的といえるでしょう。詳しくは、この記事の「介護施設で行う弄便(ろうべん)への対策と予防」を参考にしてみてください。
まとめ
本記事では、弄便の原因と対策について解説しました。弄便は、認知症のBPSDの1つですが、介護をする側にとって非常にストレスや負担がかかる行為です。そのため、原因を正しく理解して、有効な対策を取る必要があります。対策を講じることで、介護をする側の負担を減らすだけでなく、利用者さんが感じる不快感やストレスを軽減する効果も期待できます。
利用者さんの状態や施設の状況に応じて、有効な対策を話し合い、双方にとって快適な環境を整えていきましょう。
とはいえ、「有効な対策を講じれない」「その余裕がない」と感じる場合もありますよね。より大きなストレスや苦痛を感じてしまう前に、働く環境を変えてしまうのも有効な手段の1つです。落ち着いた利用者さんの対応ができる職場も多くあるため、一度レバウェル介護(旧 きらケア)にご相談ください。レバウェル介護(旧 きらケア)では、介護業界に特化した転職支援を行っています。介護業界に精通したアドバイザーが一人ひとりの希望に合わせたご提案をさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。ご登録・ご利用は全て無料です。
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執筆者

椿るい
介護福祉士ライター
現役介護福祉士。認知症専門病院で看護助手として勤務した後に介護福祉士を取得し、現在は特養に勤務している。食事・排泄・入浴等、利用者さんの生活に係る介護全般に従事。派遣社員として勤務していた経験や副業経験もあり、介護職として柔軟な働き方を目指す。






