
この記事のまとめ
- 認知症を患う方とのコミュニケーションのコツは、信頼関係の構築など
- 認知症の症状によって、コミュニケーションの取り方を変えてみよう
- 認知症を患う方の自尊心を傷つける対応は、どのような場面においてもNG
介護現場で働くなかで「認知症の方とのコミュニケーションが難しい」と感じる介護職員も多いのではないでしょうか?本記事では、認知症の方との上手なコミュニケーションのコツや、不穏な状態になってしまったときの対処法などを解説します。本記事を読み、認知症の方とのコミュニケーションに対する不安をなくしていきましょう。
目次
認知症の主な症状と原因
認知症は、老化などに伴って脳に特殊なタンパク質が蓄積することで発症するとされている病気です。認知症に罹ると見当識障害や記憶障害などが起こります。これを認知症の中核症状と呼びます。そして、中核症状が原因となる介護抵抗や徘徊、暴力、奇声などによって、介護をする側が非常に悩む症状を、BPSDと呼びます。
認知症の方の見当識障害や記憶障害だけでなくBPSDも影響し、コミュニケーションに支障が生じる場合があるため、認知症の方とのコミュニケーションが「難しい」と感じることがあるのです。
認知症の利用者さんとコミュニケーションを図る場合、利用者さんの性格や出現している症状を見極めながら進めていく必要があります。
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認知症の方とのコミュニケーションのコツ
認知症の利用者さんとのコミュニケーションのコツを7つ紹介します。
信頼関係の構築を目指す
認知症の方へのケアは信頼関係が非常に重要です。信頼関係が構築できていない状態で強引なケアに臨んでしまうと、介入を拒否されることも少なくありません。
認知症の方とコミュニケーションを取る際は、自尊心やプライドを傷つけてしまわないよう、否定せず共感することを基本姿勢として信頼関係の構築を意識しましょう。否定的な言動や高圧的な態度は、信頼関係が崩れるきっかけになってしまう可能性があるため、十分に注意が必要です。
プラスの感情を蓄積させる
認知症の利用者さんは、誰とどのような内容を話したかは覚えていないことが多いですが、会話をした際の感情は覚えていることが多くあります。そのため、コミュニケーションを図る際は、なるべくプラスの感情を残すように心がけましょう。
たとえば、見当識が間違っていたり意味不明な言動があったりした場合でも、相づちは欠かさず行うなどして、不安や不快感を残さないような工夫が必要です。
ストレスを溜めない
認知症の対応は、繰り返し同じ話をされたり、忙しい時間帯にケアを拒否されたりすることも珍しくありません。介護職員にとっても非常にストレスを感じることも多いでしょう。そのようなときは、複数人で対応するなど対策を講じることが大切です。
介護職員のストレスから、放置や無視といった対応をとってしまうと、それがトラブルのきっかけになることも少なくありません。ストレスをコントロールできる環境を整え、利用者さんにもストレスを与えない対応を心がけましょう。
本人のペースを大切にする
認知症の進行に伴って、動作が遅くなったり、理解できないことが増えたりします。利用者さんそれぞれのペースを見極め、そのペースに合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
ゆっくり・短く・目を見て会話する
認知症の方と会話をするときは、理解しやすい言葉でゆっくりと話すのが鉄則です。早口は理解が追いつきにくいため、なるべく避けましょう。
短い単語で簡潔に話すことを心がけ、目を見て「あなたと会話をしている」と伝わるように話すのがポイントです。
相手の表情に注目する
認知症の進行度合いによっては、言葉がうまく発せない場合もあります。そのため、表情に注目しながらコミュニケーションを取るように心がけると良いでしょう。
表情から感情ややりたい行動を読み取れるとスムーズなコミュニケーションが可能になります。
適度なスキンシップを図る
距離感には十分な配慮が必要ですが、自然で適度なスキンシップは、安心感を与える効果が期待できます。背中にそっと触れるなど、感覚が鈍感なところから始めるのがポイントです。利用者さんの性格や関係性に応じて、適度なスキンシップも織り交ぜながらコミュニケーションを図りましょう。
認知症の症状別のコミュニケーション方法
認知症ケアでよくある症状を例に、より具体的なコミュニケーションの取り方の解説をしていきます。
徘徊があるとき
徘徊は、不安な気持ちが原因で出現することの多い症状です。そのため不安を受け止め、解消するための対応が求められます。無理やり徘徊を止めようとするなど、行動を抑制しようとすると、かえって悪化を招くことになりかねません。徘徊が出現したときは、落ち着くまで可能な限り行動を止めずに見守るのが鉄則です。
可能であれば、話を傾聴しながら一緒に歩くなどすると、落ち着く声かけのきっかけを掴みやすくなります。また、疲れが見えたら、いつも座っている席などに誘導し、水分を提供するなどして適宜休憩を促すことも忘れないようにしましょう。
攻撃的な言葉や行動があるとき
不穏状態のときは、攻撃性が高まってしまうことも珍しくありません。攻撃的な言動や行動が見られたときは、しつこく声をかけたり、強引にケアに入ろうとしてしまうと行動がエスカレートしてしまう恐れがあるので充分に注意しましょう。攻撃的な言動が見られるときは、しばらく距離を取り、見守りを行うことをおすすめします。
また、特定の職員にのみ攻撃性を示す場合は、対応する職員を変えるなどの対策も有効です。
物盗られ妄想があるとき
利用者さん自身の世界観を否定する声かけは避けましょう。物取られ妄想が出現しているときは、大切にしていたものや持ってきたはずのものがなくなり、不安な気持ちや取られたことへの憤りを感じていることが多いものです。その気持ちに共感を示し、一緒に探すなどの行動が有効でしょう。このとき、すぐに見つけてしまうと、対応した職員がモノを盗った犯人にすり替わってしまうことがあるため、しばらく一緒に探す素振りを見せるなどの工夫も重要です。
また、自分が取られた犯人となってしまっているときは、他の介護職員に対応を代わってもらうと、症状が落ち着きやすくなります。
夕暮れ症候群が出現したとき
夕暮れ症候群が出現する時間帯は、介護職員も夕食前の準備などで忙しい時間帯です。気持ちに余裕がなく、否定的な対応をしてしまいがちな環境になりやすいため、介護をする側もストレスを溜めない工夫をすると良いでしょう。
夕暮れ症候群が出現している場合でも、否定的な対応はNGです。不安な気持ちを尊重し、傾聴しましょう。夕暮れ時に、外の暗さが分かることで不安が増強してしまう場合は、カーテンや照明で外の様子が分かりづらくなるような工夫をするのも効果的です。
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食事をしたことを忘れているとき
食事がすでに済んでいるにも関わらず、食事をしたことを忘れてしまうことは珍しくありません。このようなときでも、決して叱らずに対応しましょう。気持ちを受け止め、否定したり、バカにするような態度はNGです。空腹感を訴える場合は、飲み物や軽食を出して対応し「食べたい!」という気持ちが落ち着くのを待ちましょう。
認知症の方へのNGなコミュニケーション・対応
認知症の方とコミュニケーションを取る際のNGな対応は、認知症の程度や出現している症状によりさまざまですが、どのような場面においてもNGとされる代表的な対応を覚えておきましょう。
それは次の6つです。
- 頭ごなしの否定
- 大声や命令など威圧的な態度
- 細かい指摘や指示
- 行動制限
- 過剰な介助
- 子供扱い
上記6つは認知症の方の自尊心や自信を傷つけてしまい、スムーズなケアが行えなくなる可能性が非常に高いため注意が必要です。介護をする側に余裕がないと、上記のようなNG対応を無意識のうちに行ってしまうこともあるため、余裕を持ったケアが提供できる環境を整えるなどの工夫も大切です。
認知症に効果的なコミュニケーション技法
認知症の方とのコミュニケーションに活用できる技法を2つ紹介します。各技法のポイントを抑え、必要に応じて使えるようにしておくとケアの幅が広がるのでおすすめです。
バリデーションとは?
1つ目はバリデーションという技法です。
バリデーションとは本来、日本語で「検証・実証・証明」などを意味する言葉であり、介護業界以外でもさまざまな業界で使われています。介護業界においては認知症に対するコミュニケーション技法の1つとして知られていますが、無意識に実践できている方も多いかもしれません。
認知症の方の言葉や行動の根底には、それぞれ想いや記憶が隠れているとする考え方であり、その想いや記憶を上手く引き出すことを目的とするコミュニケーション技法です。否定を避け、寄り添って共感することを基本姿勢としており、認知症に対するコミュニケーション技法として非常に効果的なものであると言えるでしょう。
ユマニチュードとは?
2つ目はユマニチュードです。バリデーションと比べると、こちらの方が知名度は高いかもしれません。
ユマニチュードは、認知症の有無に関わらず、看護や介護の現場で広く知られているケアの技法の1つです。言葉でのコミュニケーションが難しい場合に特に重視される技法であり、尊厳や人間らしさを大切にすることに重きを置いた技法といえます。認知症の進行によって言葉でのコミュニケーションが難しくなった場合であっても尊厳を大切にし、人間らしさを思い出してもらうための方法であるため、認知症高齢者と関わることの多い介護職員は理解しておくべき手法です。
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まとめ
本記事では、認知症の方とのコミュニケーションのコツを中心に解説しました。認知症の方とのコミュニケーションは、難しいと感じることも少なくないかもしれません。しかし認知症の特性や症状の特徴を理解し、関わり方のコツを掴むことで徐々に関わり方が分かってくるでしょう。本記事で紹介した7つのコツを1つずつ実践して、認知症の方との関わりを多く持つことができれば、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
認知症の方とスムーズなコミュニケーションを図る技術は、介護職員として必須のスキルになりますが、その習得スピードは環境に大きく左右されます。そのため、より早く技術を深めたい場合は認知症の方と多く関わる職場で経験を積むべきと言えるでしょう。
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執筆者

椿るい
介護福祉士ライター
現役介護福祉士。認知症専門病院で看護助手として勤務した後に介護福祉士を取得し、現在は特養に勤務している。食事・排泄・入浴等、利用者さんの生活に係る介護全般に従事。派遣社員として勤務していた経験や副業経験もあり、介護職として柔軟な働き方を目指す。


