ICFとは?生活機能って?構成要素や介護への活かし方について解説!

介護の知識 2022年9月7日
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ICFとは、「国際生活機能分類」のこと。人が生活するために使っている機能やその背景を分類する世界共通の医療基準で、介護の現場にも大いに役立ちます。とはいえ、正しく仕組みを理解していないと活用するのは難しいもの。この記事では、ICFの概要や分類の項目について解説します。あわせて、介護の現場にどのように活かせるのかもご紹介しますので、より質の高いサービス提供のため、参考にしてみてください。

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目次

ICFとは?簡単に言うとどんなこと?

介護業界に関わっているとたびたび目にする「ICF」という言葉。何の略なのか、何を指しているのか分からないという方も少なくないはずです。ここでは、ICFの概要や目的などについてご紹介します。
利用者さまの全体像を把握することで、ケアプランの作成や自立支援サービスに活用できるICF。正しく理解し、活用できれば、より質の高い介護ができるはずです。

概要の説明

ICFは「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略語。日本では「国際生活機能分類」と呼ばれています。2001年5月にWHO(世界保健機関)によって採択された、すべての人間の生活機能を分類する医療基準です。
人間が生活するために使っている機能やその背景を、「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の要素に分類して明らかにします

ICFの目的

ICFの目的は「“生きることの全体像”(生活機能モデル)を示す“共通言語”」といわれています。病気や障がいの有無にかかわらず、すべての人が生きていく中で関わる健康上の問題を、ICFによって理解しようというわけです。
ICFという「共通言語」により、立場や専門分野が異なる人同士でも共通理解が深められたり、国やサービス分野などの違いを超えてデータの比較ができたりするようになるとも考えられています。

活用される分野

ICFは、保険や社会保障、労働、教育、経済などさまざまな分野で活用されています。個人の生活機能向上を図るためのサービスのほか、社会的参加促進や社会的支援などのシステム構築にも役立てられるのです。

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ICFの生活機能とは?

ここでは、ICFにおける「生活機能」について解説します。生活機能はICFの中心概念ともいわれる、重要な要素です。

「生きること全体」

ICFにおいて「生活機能」とは、「生きること全体」を指します。具体的には、以下の3つのレベルを包括する言葉です。

1.心身機能・構造(生命レベル):生命を維持する心と体の働き
2.活動(生活レベル):日常生活や文化的な生活、社会生活を行うための動き
3.参加(人生レベル):家庭内や仕事、地域組織での役割

以上の3つをまとめて「生活機能」と呼びます。まさに「生きること全体」を表していることが分かるでしょう。

3つのレベル:「心身機能・構造」「活動」「参加」

次に、上記で紹介した3つのレベルについて、詳しくご紹介します。

心身機能・構造(生命レベル)とは

生命の維持に直接関わるもので、「心身機能」と「身体構造」の2つに分けられます。
心身機能は、手足の動きや視覚・聴覚、内臓、精神など、心身が持つ機能のことです。また、身体構造は、指の関節や胃・腸、皮膚など身体を組み立てる構造を指します。

活動(生活レベル)とは

人が何らかの目的を持って行う、あらゆる生活行動を指します。歩行や食事など日常生活に必要な動作はもちろん、家事や仕事、余暇活動(趣味など)を行う動作も対象です。つまり、社会生活を送るうえで必要な行動はすべて「活動」に含まれます。
ICFではさらに「できる活動」と「している活動」の2つに分類されます。

参加(人生レベル)とは

家庭や社会に関わり、何らかの役割を持つことです。文化や政治、宗教など広い範囲が対象になります。たとえば、家庭において主婦の役割を持つこと、職場で従業員の役割を持つこと、地域の趣味サークルに集まることなどは、すべてこの「参加」に含まれるというわけです。

これら3つのレベルは互いに影響しあい、一方で独立性があるのも特徴です。たとえば、歩けるようになることで仕事に復帰できた場合は、生活レベルが人生レベルに影響を及ぼしたといえます。また、手足が動かせないままでも仕事に復帰できたという場合は、生命レベルの影響を受けず、人生レベルが独立して変化したということになります。

ICFの背景因子とは?

ここでは、ICFにおける「背景因子」について解説します。

背景因子は生活機能に影響を与える

背景因子は、先ほどご紹介した生活機能に影響を与える要素です。背景因子の働きによっては生活機能が向上したり、逆に低下したりすることも。逆に生活機能が背景因子に影響を及ぼすこともあり、これらには相互作用があるといえます。

背景因子:「環境因子」「個人因子」

背景因子は「環境因子」と「個人因子」の2つからなるのもです。それぞれ詳しくご紹介します。

環境因子とは

人の生活を取り巻く、すべての人的・物的・社会的な環境を指します。
人的環境の例としては、家族や友人、職場の同僚、介護サービス提供者などの存在が挙げられます。また、その人たちがどのような態度で接するのかも人的環境に含まれるのです。
また物的環境には、天候や交通、福祉用品などが含まれ、社会的環境には医療・福祉サービスやそれらを利用するうえで適用される保険制度などが含まれます。

個人因子とは

個人が持つすべての特徴が個人因子です。年齢や性別から、民族、宗教、価値観まで、その人を形成する個性はすべて含まれます。

背景因子は、個人によって大きく内容が異なります。同じ障がいや病気を持つ人でも、背景因子に着目することで、より個別性を持った存在として捉えることができるでしょう。

ICFの健康状態とは?

背景因子とともに、生活機能に影響を及ぼすもう一つの要素が「健康状態」。疾患や外傷のほか、加齢や妊娠なども健康状態を判断する要素です。また、精神面の健康もこの項目に含まれます。

介護現場でのICFの活用

ICFは保険・医療や介護の現場にも導入されています。ICFの分類項目に照らし合わせて個人を分析することで、それまで見えてこなかった課題や改善法が浮かび上がることもあるのです。
ここでは、介護の現場において、ICFがどのように活用できるのかご紹介します。

ICFにもとづく個人データから、必要な介護が分かる

ICFは、アセスメントやケアプランの作成に大いに役立つでしょう。
ICFの分類項目に照らし合わせれば、利用者さま個人のデータはより詳細なものになるはずです。そのため、利用者さまにとって本当に必要な介護が見えてきやすくなります。
たとえば、ご利用者さま自身ができることまで過剰に介護していたという問題や、自分でやりたいという意思や潜在的な能力があるのにリハビリ不足だったという問題が、ICFによって見つけられることも。できなかったことができるようになるケースも出てくる可能性があります。

ICFで「生きること全体」を捉える

ICFは、他職種のサービス提供者やご家族との情報共有にも大いに活用できます。
ICFの目的は生きること全体を捉えるための「共通言語」。そのため、分野や立場が異なる人とも、利用者さまの状況や介護の満足度を上げるための対策を相違なく把握できるようになるでしょう。このことから、チームケアにも大変役に立つといえます。

ICIDHについて

ICFと似たようなものとして「ICIDH」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。ここではICIDHの概要や、ICFとの違いについて解説します。

ICFはICIDHを改定したもの

ICIDHは「International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps」を略した言葉で、「国際障害分類」と和訳されます。1980年にWHOが発表したもので、ICFの前身となった医療基準です。
障がいだけに着目するICIDHを、人間の生活機能全体を分類できるように改定したのがICFなのです。

ICIDHは障害のマイナス面に注目している

ICIDHは、「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3つのレベルから成ります。障がいを病気や変調の結果として捉えた分類をしており、できないことや不利なことなどマイナス面にだけ注目しているのが大きな特徴です。
「外形的・客観的な障がいしか扱っておらず、個人の主観や内面が無視されている」「人それぞれの個性や強みなどプラス面が評価されない」といった批判を受け、新たに改訂されたのがICF。使用する用語が中立的になったことで、障がいのある方に限らずすべての人間が対象になり、また、背景因子の観点が加えられ個人に寄り添った分類ができるようになりました。

現場の介護職にもICFの視点を持ってほしい

ケアプラン作成の際のインテーク時やアセスメントの際にも、ICFの視点は大いに役立ちます。そして、現場でケアをする介護職1人1人がICFの視点を持つことは非常に重要です。
忙しい現場の中では目に見える身体的なマイナス面にどうしても着目してしまいがちです。普段の支援や会話の中、ご家族との関わりの中で、その方のプラス面に着目すること、参加、環境因子、個人因子を知ろうとする姿勢でアセスメントを行うことで、より良いケアに向かっていくことが期待できます。

ICFに関する質問

ここではICFに関する質問をQ&A形式でお答えします。

ICFのいいところとは?

ICFを活用すれば、必要とされる介護を判断できたり、職員全体が症状への共通理解を深められたりするメリットがあります。職員がICFに基づいた考え方をもってケアに取り組めば、利用者さん一人ひとりに求められるアセスメントやケアプランの作成に有効的です。詳細は本記事の「介護現場でのICFの活用」をチェックしてみてください。

ICFに含まれる「活動」とは?

ICFの活動(生活レベル)は、一連の動作からなる生活行為を指します。具体的には、実用歩行や家事行為、職業上の行為、余暇活動など、社会生活上における必要な行為が該当。本記事の「ICFの生活機能とは?」の項目では、ICFの活動について詳しく解説しています。

まとめ

介護現場においてICFは、利用者さまの「できること」「人生そのもの」に着目し、プラス面を重視したケアプランやサービス提供に活用できます。ICFの概念を正しく理解し、サービス提供者にとっても、利用者やそのご家族にとっても、質の高い介護を目指しましょう!

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監修者

  • 小森 敏雄

    合同会社小森塾代表 介護講師

実務者研修等資格取得講座の運営兼講師。介護アドバイザーとして各施設にて研修実施。「現場を変える小森塾」オンラインサロン運営。著書「介護のプロを育てたい」出版。YouTube随時配信。「小森敏雄」で検索。

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※この記事の掲載情報は2022年9月7日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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