服薬介助のポイント!医療行為とのボーダーラインとは?

介護の知識 2023年4月5日
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この記事のまとめ

介護士さんは、「服薬介助」という利用者さんが処方薬を服用する際のお手伝いを任されることがあります。しかし、服薬介助はただ薬を飲むよう促せば良いというものではありません。また、介護士さんが服薬介助をする際は医療行為との線引きも把握しておくことも大切です。この記事では、介護士さんにもできる服薬介助やその際に注意すべきことなどをご紹介します。

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目次

服薬介助とは

服薬介助とは、介護士さんが利用者さんの服薬をお手伝いする行為を指します。ただ薬を飲ませればいいというわけではなく、薬の種類や個数、服薬の時間帯を正確に把握して介助をしてあげなければいけません。特に高齢者の方は薬の飲み忘れや、過剰摂取などの間違いが起こりうるため、しっかりと確認しなければならないのです。

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服薬介助は医療行為?介護士はどこまでやって良い?

介護現場で介護士さんが悩むことのひとつに、医療行為との線引きがあります。特に、訪問介護では、利用者さまやご家族から禁止されていることをやってほしいと頼まれてしまい、困ってしまう介護士さんも多いようです。ここでは、介護士さんができる服薬介助とやってはいけない服薬介助の違いを見ていきましょう。

介護士ができる服薬介助

介護士ができる服薬介助は、一包化された薬の準備、服薬の声がけ、飲み残しがないかの確認をして利用者さまが薬を正しく飲めるようお手伝いをすることです。また、内服薬の介助のほか、軟膏の塗布・湿布の貼付・坐薬挿入・点眼は原則として医療行為にあたらないとされています。

介護士が服薬介助をしてはいけないケース

介護士さんが服薬介助をしてはいけないケースは以下のとおりです。

  • 患者さんが入院・入所して治療する必要があり、容態が安定していない場合
  • 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師または看護師による連続的な容態の経過観察が必要な場合
  • 服薬において専門的な配慮が必要な場合
  • PTPシートから薬を取り出すこと

以上のケースでは、介護士さんが薬に関する業務を行うことは禁止されています。体調が急変する可能性が高い人に関しての服薬介助は、看護師が行う領域です。また、PTPシート(パッケージ)から薬を取り出すことについては「ただ薬を出すだけ」と思われるかもしれませんが、禁止されている医療行為にあたるので注意しましょう。

服薬介助のやり方

では、実際に服薬介助はどのように行えば良いのでしょうか?内服薬の場合、外用薬の場合をそれぞれ見てみましょう。

内服薬の服薬介助

錠剤やカプセルを飲ませる際には、薬をひとつずつ舌に乗せます。たとえ小さな薬でも、複数個を同時に飲もうとすると誤嚥が起こりやすいので、焦らずひとつずつ飲んでもらいましょう。粉や顆粒剤は、量の多さや薬の苦みによって飲みづらいものもあります。その場合は、オブラートに包んで苦みを軽減させたり、何回かに分けたりして飲ませてあげるようにすると良いでしょう。また、服用ゼリーを使うのも効果的です。

液体の薬の場合は、中身を均一にするために容器を軽く振ってから付属の容器またはコップで飲んでもらいます。こちらも量が多い場合は少しずつ飲ませるのが良いでしょう。舌下剤の場合は唾液で溶かして口腔内から吸収する薬なので、舌の下に薬を置いたら飲み込まないよう注意してあげてください。

外用薬の服薬介助

貼り薬や塗り薬の服薬介助はさほど難しくありませんが、坐薬と目薬の服薬介助については少し注意が必要です。坐薬を挿入する場合、ご利用者には横向きで寝てもらいましょう。坐薬の先端にワセリンなどの保湿剤や潤滑剤を塗って滑りやすくしたら、指の第二関節が隠れる程度まで挿入します。その後薬が中から出てこないように、約10秒間ティッシュで肛門を押さえましょう。目薬の場合、頭を支えつつ下まぶたを軽く押さえて粘膜が見えたら、そこに目薬を落とします。液が流れ出ないよう、すぐに目をつぶってもらってください。もし液が流れてしまったり目からあふれてしまったりしたら、口や耳に入らないようすぐにティッシュで拭き取りましょう。また、点眼の際に薬が皮膚やまつ毛との接触で雑菌に感染してしまう場合があるため、スポイトの先端は皮膚やまつ毛に触れないように気を付けてください。

誤薬に注意!服薬介助で気を付けること

医療行為にあたらない服薬介助は介護士でもできるといっても、飲み方を間違えると命に関わる場合も。ここでは、服薬介助を行う際に気を付けなければならない4つのポイントを紹介します。

誤嚥に気を付ける

内服薬の場合、薬を飲む際はできるだけ体を起こして飲んでもらうようにしましょう。起き上がって薬が飲めない方には、頭を持ち上げてあげたり、姿勢を横向きにしてあげたりすることで飲みやすくなります。薬と水を口に含んだら、少し下を向いてもらって飲むように声をかけてあげましょう。あごが上がった状態で薬を飲もうとするとむせやすくなってしまい、誤嚥の原因になります。

飲み間違いに気を付ける

食後の薬を飲み忘れてしまった、薬を指定された数より多く飲んでしまったなどの誤薬によって、体調が著しく悪化してしまうこともあります。介護士さんが薬をパッケージから開けてひとまとめにするなどの手助けは禁止されているため、薬局や看護師さんに薬を一包化してもらうのが良いでしょう。ただし、薬局で一包化するのは若干の費用がかかる場合もあります。その点も説明しつつ、飲み間違いを防ぐ利点をご利用者やご家族に提案してみてはいかがでしょうか。

落薬に気を付ける

錠剤やカプセルを誤って落としてしまい、そのままどこにいったかわからなくなってしまうことも起こりがちな事故のひとつです。テーブルにタオルなどを敷いたり、ふちのあるお盆の上で薬を出したりすることで、落下を防ぎましょう。

ジュースで薬を飲まない

内服薬は基本的に水かぬるま湯で飲むようにしてください。どうしても水で薬を飲めない方はお茶で服用してもかまいませんが、その場合はカフェインの含有量が少ない麦茶や玄米茶を飲むようにしましょう。しかし、中には薬の苦みをごまかすために、介護士さんに甘いジュースで飲ませてほしいと頼む方もいます。ジュースで薬を服用すると薬の効果が減少したり、副作用を引き起こしたりする可能性があるため避けてください。

服薬後の変化に気を付ける

服薬後は、様子に変化がないかを観察しましょう。薬を後から吐き出してしまう人もいるため、確実に服薬したかどうかを介護士さんが目で見て確認しましょう。咽喉や口の動きをしっかりと観察すれば、飲み込んだか確認できます。また、服薬後に副作用で体調が悪くなってしまう場合もあるので、その点にも注意して様子を見ます。もし体調に変化が見られた場合は、かかりつけの病院や医師に報告するなどの対応をしてください。

服薬拒否された時の対応

介護のご利用者から、薬を飲むことを拒否されてしまうケースもあります。原因は薬の味や量であったり、認知症による被害妄想や自分は病気ではないという間違った認識であったりするなどさまざまです。その場合の対処法を2点紹介します。

薬の味を変える

薬独特の苦みが嫌で飲みたくない、といった思いから服薬を拒否される方もいます。その場合、錠剤や粉薬を苦みのないカプセルやシロップなどに変更できることもあるので検討してみましょう。また、薬には吸入や点眼、注射や点滴などさまざまな投与方法があります。その人にとってなるべく服用しやすい形の薬を処方してあげることで服薬してくれるようになる場合もあるので、医師と相談し工夫してみましょう。

医師の指導のもとで食べ物に混ぜる

「毒を飲まされるから」「自分は病気じゃないから」といったような思い込みから、服薬を強く拒否されてしまうこともあります。そういった方を説得して薬を服用してもらうのは難しいものです。その場合は、どうしても服用してもらわなければいけない薬に限り、医師の指示のもとで食べ物に混ぜることも必要になります。

認知症の方の服薬介助のポイント

認知症になると日常のさまざまなことを忘れてしまったり、医師や家族から言われたことを拒否したりするなどの症状が現れます。時には、処方された薬を飲まない、逆に薬を飲んだのに飲んでいないと思い込むなど、対応に困るケースも。以下のことを実践してみると、認知症の方への服薬をスムーズにしやすくなるかもしれません。

お薬カレンダーを使う

日付や曜日ごとに薬を仕分けてセットしておける、お薬カレンダーというものがあります。あらかじめ飲むべき薬を整理しておくことで、飲み忘れた日や時間帯がなかったかが一目瞭然です。もし薬を飲まない時間帯がある場合には、たとえば「昼食後 薬なし」という札などを作ってカレンダーにセットしておくと更に便利になるでしょう。

声かけをする

介護士さんやご家族から服薬の声かけをするのも効果的です。本人に直接声をかけるほか、ご家族が遠方に住んでいるのであれば、服薬の時間帯を見計らって電話をするという方法をとるのも良いでしょう。

目に見えるところにメモを置く

認知症の症状には、聴覚からの情報よりも視覚からの情報の方が忘れにくいという性質があります。上記で紹介した声かけに加えて、見やすい位置に薬を飲んだか確認する内容が書かれたメモなどを置いておくと、認知症の方でも自分から服薬を思い出してくれる可能性が上がります。

介護士の服薬介助に関するよくある質問

介護士の服薬介助に関するよくある質問に回答します。「介護士って服薬介助をしても良いの?」と、疑問に思う方はぜひご一読ください。

介護職員はどこまで服薬のサポートをするの?

介護職員は、一包化された薬の準備や服薬の声がけ、飲み残しの確認、軟膏の塗布、湿布の貼付などを行うことができます。

利用者さんの容態が安定していない場合や看護師・医師の経過観察が必要な場合などは、介護職員が服薬介助を行ってはいけません。また、シートから薬を取り出すことも禁止されているので注意しましょう。「服薬介助は医療行為?介護士はどこまでやって良い?」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

服薬介助をするうえで注意すべきポイントは?

介護職員が服薬介助を行う際は、誤嚥や飲み間違い、落薬に注意しましょう。介護職員は、薬を袋から出してひとまとめにすることができないので、利用者さんが間違えないように確認することが大切です。また、薬を飲むための飲み物の種類や服薬後の体調の変化にも気を配りましょう。「誤薬に注意!服薬介助で気を付けること」で、服薬介助をするうえで注意すべきポイントを詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

まとめ

服薬介助が必要な方は高齢者に多く、病気によって処方される薬の種類も増える傾向にあります。時には誤薬により、命に関わる事態を招いてしまうことも。そうならないためにも、介護士さんは介護を必要とする方に常に寄り添い、臨機応変に必要な介助ができるよう心掛けましょう。

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監修者

  • 小﨑 有惟

    社会福祉士/ケアマネージャー/介護福祉士

大学では社会福祉学科専攻。卒業後は、デイサービスセンターや特別養護老人ホームの生活相談員、介護福祉士として勤務し、多くの認知症高齢者や終末期ケアに携わる。その後、結婚を機に退職。現在は育児をしながら、介護にまつわる記事の執筆や監修などに力を入れている。

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※この記事の掲載情報は2023年4月5日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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