
介護に関する勉強をしていると「社会福祉士及び介護福祉士法」という言葉を目にします。社会福祉士及び介護福祉士法は、介護に関わる法律の1つです。現場で働く介護職員にも深く関わる施行規則について書かれているので、介護職として働くなら1度は目を通しておいたほうがよいでしょう。「でも、法律をそのまま読むのはちょっと…」という方のために、この記事で内容や法改正についてやさしく解説します。
目次
社会福祉士及び介護福祉士法とは
社会福祉士及び介護福祉士法とは、その名のとおり、国家資格である社会福祉士と介護福祉士の資格に関する法律のことです。第一章から第五章まであり、全56条で構成されています。簡単にいうと、社会福祉士と介護福祉士に生じる義務や名称の使用制限、義務違反に対する罰則などが記載されており、業務が正しく行われるために存在する法律です。
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社会福祉士及び介護福祉士法ができた理由
社会福祉士及び介護福祉士法が成立したのは、1987年のことです。なぜこの法律ができたのかというと、深刻な少子高齢化が影響しています。日本は年々少子化が進み、高齢者の人口も大幅に増加したことから、高齢者をお世話する、専門的な知識と技術を持った人材を確保する必要が出てきました。そこで、国は、それまで家庭内で行われていた介護を誇りある仕事として社会に認知させ、医師や看護師などに劣らない専門性を証明するために、社会福祉士及び介護福祉士法を成立させたのです。
なお、日本はこの法律によって、ケアワーカーとソーシャルワーカーに対する資格認定制度をいち早く設けた国の1つと言われています。
社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の内容
社会福祉士及び介護福祉士法には何が書いてあるの?と気になっている方もいるでしょう。しかし、行政のサイトや法令の原文を見ても、わかりづらい点も多いかもしれません。こちらでは、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の内容をわかりやすく解説します。
第一章
総則について記載されている項目です。1条から3条までを構成し、社会福祉士と介護福祉士はどのような仕事をする資格なのか、社会福祉士または介護福祉士の欠格事由(相応しくない方等)について書かれています。
第二章
社会福祉士の資格について記載されている項目です。4条から38条まであり、受験資格や受験手数料、試験機関の指定について細かく明記されています。
第三章
介護福祉士の資格について記載されている項目です。39条から44条の1まであり、受験資格や試験機関の指定について書かれています。
第四章
社会福祉士及び介護福祉士の義務等について記載されている項目です。44条の2から49条まであり、誠実義務や信用失墜行為の禁止、秘密保持義務といった資格保有の義務等について明記されています。
第五章
罰則について記載されている項目です。50条から56条までを構成しており、秘密保持義務を破ったり、社会福祉士・介護福祉士の資格を保持していないのに社会福祉士・介護福祉士という名称を使用したりすると、罰金などの罰則を受ける可能性がある等、明記されています。
社会福祉士と介護福祉士の義務
すでに社会福祉士もしくは介護福祉士の資格を持っている方は、社会福祉士及び介護福祉士法の第四章が気になったのではないでしょうか。社会福祉士及び介護福祉士の義務とは一体どのような義務なのか、こちらで解説します。
誠実義務
誠実義務の項目では「社会福祉士もしくは介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない」と記載されています。つまり、介護サービスのご利用者が個人の尊厳を保ち、自立した日常生活が送れるよう誠実に業務を行わなければならないということです。
信用失墜行為の禁止
この項目には「社会福祉士及び介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない」と記載されています。信用を傷つける行為とは、例えば交通事故や飲酒運転、窃盗、万引き、地位を利用した不法行為などです。社会福祉士や介護福祉士の仕事とは関係のないことも含まれているため、仕事に関連していようといなかろうと「社会福祉士及び介護福祉士の信用を傷つけるまたは社会福祉士及び介護福祉士全体の不名誉となる」ような行為はしてはならない、とされています。
秘密保持義務
この項目には「社会福祉士または介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士または介護福祉士でなくなった後においても同様とする」と記載されています。簡単にいうと業務上、知り得た利用者さんやご家族の秘密など業務を通して知った秘密を守らなくてはならないということです。なお、この秘密保持義務は、介護職を辞めた後も継続されます。
連携
この項目には「社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連するその他(保健・医療・福祉)のサービスが総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者との連携を保たなければならない」また「介護福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に認知症であることなどの心身の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者との連携を保たなければならない」と記載されています。簡単にいうと保健・医療・福祉サービスを提供する関係者との連携を保たなければならない、ということです。他職種との連携が欠かせない介護職にとっては、とても重要といえます。
資質向上の責務
この項目には「社会福祉士または介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助または介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」と記載されています。社会福祉と介護を取り巻く環境は、日々変化していくものです。最新の介護技術や新しいルールに対応していくために、知識や技能の向上に努めなくてはなりません。
名称の使用制限
この項目には「社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならない」「介護福祉士でない者は、介護福祉士という名称を使用してはならない」と記載されています。つまり、資格を取得していない人が社会福祉士や介護福祉士を名乗ってはいけないということです。有資格者のみが名乗れることを「名称独占」ともいいます。
社会福祉士及び介護福祉士法改正では何が変わった?
社会福祉士及び介護福祉士法は、何度か改正されています。改正されたことで何が変わったのか、こちらでご紹介しましょう。
医療的ケアができるようになった!
社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、2012年からそれまではできなかった喀痰吸引や経管栄養といった、一部の医療的ケアを介護職員も行えるようになりました。法改正以前までは医師や看護師しか行うことができなかった医療行為ですが、一定の研修を受ければ介護職員も行うことができるようになったのです。また、2015年からは、実務者研修を受講すれば喀痰吸引について学ぶことができるようになりました。これから介護福祉士の資格を取得する方は、必ずしも実務者研修を修了していなくとも、喀痰吸引の実地研修を受講すれば、医師や看護師の指示のもとで医療的ケアが行えます。
ただし、勤務先が登録喀痰吸引等事業者として登録している事業所でなければなりません。
国家試験の義務化
社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、介護福祉士資格を取得するには国家試験の合格が義務付けられました。介護福祉士の受験資格を満たす方法は、大きく分けて3つあります。1つ目は介護施設などで実際に働きながら経験を積み、実務者研修を修了する実務経験ルートです。2つ目は高校や大学を卒業後、養成施設として指定を受けた福祉系の専門学校などに入学し、規定の年数を修了する養成施設ルート。3つ目は福祉科や介護福祉コースなどがある高校や特例高校を卒業する福祉系高校ルートです。
この3つのルートのいずれかを経て受験資格を満たし、国家試験を受験することで介護福祉士の資格を取得できます。養成施設ルートと福祉系高校ルートはかつて、試験を受けずに介護福祉士の資格を取得できました。しかし、介護福祉士の資質や社会的地位の向上を図るために、国家試験を義務付ける方針が固められたのです。
ところが、2012年度からとされていた国家試験の義務化は、何度も延期されています。2016年には2022年からとされていましたが、2020年1月にこの義務化がまた延期になることが明らかになりました。そのため、現在は2027年から義務化の予定です。
社会福祉士及び介護福祉士法についてよくある質問
社会福祉士及び介護福祉士法についてよくある質問に回答します。「社会福祉士及び介護福祉士法ってどんな法律なの?」と、疑問に思う方は、ぜひ参考にしてみてください
「社会福祉士及び介護福祉士法」って何?
「社会福祉士及び介護福祉士法」とは、その名のとおり、「社会福祉士」と「介護福祉士」の資格に関する法律のことです。「社会福祉士及び介護福祉士法」は、第1章から第5章(全56条)まであり、資格に伴う義務や名称の使用制限、罰則について定められています。
各章の内容は、「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の内容」で詳しく解説しているので、興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
介護福祉士に罰則はあるの?
社会福祉士と介護福祉士には、「誠実義務」「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「連携」「資質向上の責務」「名称の使用制限」の6つの義務があり、そのうち、「秘密保持義務」に違反すると罰則があります。秘密保持義務とは、社会福祉士・介護福祉士としての仕事で得た秘密を漏らしてはならないというものです。
「社会福祉士と介護福祉士の義務」で、各義務について詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
まとめ
社会福祉士及び介護福祉士法とは、国家資格である社会福祉士と介護福祉士の資格に関する法律のことを指します。少子化と高齢者の人口増加が深刻化し、高齢者の介護を行う、専門的な知識と技術を持った人材を確保するために、介護を誇りある専門職として社会に認知させるために作られました。法の内容は社会福祉士と介護福祉士に生じる義務や名称の使用制限、義務違反に対する罰則などについて書かれており、業務が正しく行われるために存在しています。この法律ができたことにより、介護職員は一部の医療的ケアができるようになりました。国家試験の義務化も定められましたが、いまだに実施されていません。社会福祉士及び介護福祉士法改正のニュースが流れたら、ぜひチェックしてみましょう。
出典
e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」(2020年1月14日)
働きながら資格を取る方法教えます
監修者

小森 敏雄
合同会社小森塾代表 介護講師
実務者研修等資格取得講座の運営兼講師。介護アドバイザーとして各施設にて研修実施。「現場を変える小森塾」オンラインサロン運営。著書「介護のプロを育てたい」出版。YouTube随時配信。「小森敏雄」で検索。
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