訪問介護(ヘルパー)の認知症ケアの事例!拒否やトラブルの対応、自立支援

介護のアイデア 2026年8月17日
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「訪問介護の事例を知って勉強したい」というヘルパーの方もいるのではないでしょうか?訪問介護に関わるなかで、在宅介護ならではの難しさを感じる方は少なくありません。この記事では、ヘルパーの認知症ケアの事例として、「デイサービスの送り出しの介護拒否」「認知症初期の物盗られ妄想」「一緒に調理を行う自立支援」をご紹介します。トラブルの原因やクレームへの対応方法もまとめたので、ぜひご一読ください。

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目次

ホームヘルパーの認知症介護の事例

ここでは、訪問介護における「介護拒否」「クレーム」「自立支援」の事例をそれぞれご紹介します。「事例を知って訪問介護の仕事に活かしたい」という方は、ぜひチェックしてみてください。

【事例1】デイサービスの送り出しの介護拒否

1つ目の事例は、90歳女性・要介護3のAさん。歩行は自立していますが、食事の提供や排泄介助などの支援が必要です。
Aさんは50代後半の娘さんと二人暮らしで、娘さんは仕事で朝から不在となります。Aさんは過去に数回ひとり歩き(徘徊)で保護されたことがあり、デイサービスや訪問介護の利用により、日中の安否確認やケアを行っている状況です。

Aさんがデイサービスに通う日の朝は、ヘルパーが起床介助から外出の準備までの支援を行い、送り出しをしています。しかし、Aさんは朝が苦手で、特に冬の寒い日はなかなか起床の声かけに応じられません。8時半にヘルパーが訪問し、デイサービスの送迎車が来る9時半までに準備をする予定が組まれていますが、介護拒否があります。

【事例2】利用者さんからのクレーム

2つ目の事例は、82歳女性・要介護1のBさんです。Bさんは公営住宅で一人暮らしをしており、キーパーソンである娘さんと定期的に連絡を取りながら生活しています。
デイサービスと訪問介護をそれぞれ週に1回利用していますが、基本的にその他は自立して生活している状況です。

週に1回の訪問介護では、生活援助として掃除の支援を実施。特に動作の負担が大きい浴室やトイレの掃除はヘルパーが行いますが、掃除機をかける際の物の移動などは手伝ってくださいます。

訪問を2年ほど続けていたなかで、ある日Bさんから事務所に電話があり、「クローゼットにしまっていた腕時計がなくなった。ヘルパーさんが盗ったのではないか?」というクレームを受けました。

【事例3】自立支援の援助

3つ目の事例は、80歳女性・要介護2のCさんです。Cさんはご主人と同居しており、娘さんと二世帯住宅で暮らしています。訪問介護の内容は、認知症を患うCさんの「自立支援の援助」として、一緒に家事を行うことです。訪問は週2回で、火曜日に掃除、金曜日に調理を実施しています。

とある金曜日、一緒に調理をする予定で訪問すると、食材がほとんどありませんでした。また、調理の際に、食べられない生ゴミをまな板に置こうとしてしまい、家事のサポート自体の難しさもあります。

訪問介護で認知症の利用者さんとトラブルが起こる理由

訪問介護におけるトラブルや支援の難しさには、さまざまな理由があります。特に、認知症の利用者さんは、訪問の日程に合わせて予定を立てるのが難しいことから、支援を大変に感じるときもあるのではないでしょうか?

以下では、実際の訪問介護の事例に触れながら、介護拒否・物盗られ妄想の理由と、自立支援の課題について解説します。すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、利用者さんの気持ちを知るための参考としてご覧ください。

【事例1】介護拒否の理由

Aさんは「まだ起きないよ…」「寒いから」と言って起床を拒否されるので、朝起きることや冬の寒さが苦手なようです。

高齢になると、身体機能の変化によって寒さを感じやすくなることも。筋肉量や基礎代謝の低下で熱を作れなくなったり、体温調節機能や皮膚感覚の低下から寒さに敏感になったりする場合があります。
また、「見当識障がいで季節が分からない」「判断力が低下している」など、認知症が原因で気候に合った服装ができないときは、適切な装いができるように支援が必要です。

さらに、介護拒否の原因として、記憶障がいも関係している可能性があります。Aさんは娘さんからデイサービスの説明を受けたうえで定期的に通っているものの、そのことを覚えていません。
そのため、「どうして起きなければいけないのか分からない」「デイサービスに行く必要性が分からない」と感じることもあると考えられます。

上記を踏まえてAさんの視点で状況を見ると、急に誰かが来て「起きて出かけましょう」と言っている状態なので、拒否を示すのも無理はないでしょう。

【事例2】物盗られ妄想の理由

介護現場で利用者さんから「物がなくなった」とクレームがある場合、認知症の初期に多くみられる「物盗られ妄想」の可能性があります。ただし、介護職に非があるケースもゼロではないため、事業所側は冷静に状況を分析して対応する必要があるでしょう。

物盗られ妄想は、「自分で物をしまったり捨てたりした事実を忘れていること」が原因で起こる場合が多いです。該当の物品が「あるはずの場所にない」ため、「誰かに盗られたのではないか?」と考えます。
Bさんは、「ヘルパーが来た後にあったはずの物がなくなっている」という状況から、「あの人が盗ったのでは?」という疑念を抱いたのかもしれません。

認知症の初期の段階では、「記憶障がいで自身が最近のことを忘れている」と認めたくない気持ちが大きく、他者を否定する言動につながることも。認知機能の低下を自覚し、不安感から感情的になってしまう場合もあります。また、相手との信頼関係が不十分だと、不信感を抱きやすいでしょう。

【事例3】調理に課題が発生する理由

訪問介護で認知症の利用者さんと調理を行う際に、食材不足や衛生的な問題はなぜ生じるのでしょうか?

調理の支援で訪問しても食材がない

訪問介護では、Cさんの事例のように物品不足が発生することは珍しくありません。利用者さんごとに生活の場が異なるからこそ、「支援に必要な物品や環境が整っていない」という状況が起こります。

認知症の利用者さんが、約束の曜日に向けて計画的に食材を準備をしておくのは、ハードルが高い場合があるでしょう。同居家族がいても、訪問の予定を把握していなかったり、高齢で協力が難しかったりするかもしれません。
また、食材を用意したものの、それまでに利用者さんが予定を忘れて食べてしまうことも考えられます。

生ゴミをまな板に置こうとする

調理支援におけるもう1つの課題である「生ゴミをまな板に置こうとする」という行動には、認知症の中核症状である「失認」や「判断力の低下」が関係しています。生ゴミをゴミだと認識できなかったり、食べられるものと食べられないものの判断ができなかったりすることが主な原因です。

失認や判断力の低下がみられる場合、「失認がもとで食べられないものを口にする異食が起きる」「判断力の低下で食材の腐敗に気づけず傷んだ物を食べる」といった状況に発展する懸念があります。

出典
厚生労働省「認知症を理解する」(2026年7月28日)
政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」(2026年7月28日)

訪問介護における認知症ケアの問題への対応方法

ヘルパーは、介護拒否やイレギュラーな状況に遭遇すると「次の仕事もあるのに…」と焦ってしまいますよね。
訪問介護で困ったことがあった際は、サービス提供責任者(サ責)に相談することが大切です。独断で行動すると、利用者さんのケアに支障が出たり信用に関わったりするおそれがあるので、連携して対応しましょう。

訪問介護において、認知症の利用者さんの「介護拒否」「物盗られ妄想」の対応や、「自立支援」はどのように進められるのでしょうか?対応方法の事例を下記にまとめました。

【事例1】介護拒否があるAさんの支援

訪問介護でデイサービスの送り出しを拒否された場合の支援について、「声かけやケア方法の検討」「予定通り進まなかったときの対応」に分けて解説します。

介護拒否が起きない声かけや対応の工夫

事業所内で、Aさんを担当するヘルパーは主に3人います。まずは、声かけのコツをつかめるよう、ヘルパーが集まる研修の時間を使ってケア方法の共有・検討を行いました。

そのなかで、「冬で居室が冷えている場合は最初に暖房をつける」「起床の声かけの際にホットタオルで顔を拭いてもらうと穏やかに起きてくれることがある」という情報が出てきました。また、声かけに拒否があれば先に食事の用意を行い、少し時間を空けて再度声かけをしている人もいます。

起床の声かけは、「出かけるので起きましょう」ではなく、「朝ごはんの用意ができましたよ」のように、起きる理由が伝わるような内容にするのがポイントです。

介護拒否でデイサービスに行けないときの支援

気持ちよく起床していただけるのがベストですが、ヘルパーが工夫して声をかけても、Aさんの気分や体調によっては起床が難しい場合もあります。そのため、起床や外出の支援がうまくいかないときの対応をサ責と話し合い、ご家族やケアマネジャーとの連携方法を決めました。

もしも、Aさんに何度か声かけをしても起きないときや、外出を拒否されるときは、娘さんに電話をしてAさんと話してもらいます。Aさんは、娘さんの声を聞くと安心して声かけに応じてくれることがあるので、連携することになりました。

それでも送り出しができず通所が難しいときは、デイサービスはキャンセルし、代わりに昼と夕方に訪問介護が入り、食事や排泄の支援を行います。デイサービスに行けなかった場合、サ責からケアマネジャーに報告して訪問を調整する流れです。
Aさんは2つの訪問介護事業所を利用しているので、デイサービスに行けずに臨時訪問が発生した際は、2つの事業所で協力し合って訪問を調整することとなりました。

対応方法をマニュアル化するとともに、難易度の高い支援が1人に偏らないようシフトの調整も行い、ヘルパーの負担の軽減を図った事例です。介護拒否でデイサービスに行けない日も支援を行う体制を築いたことで、利用者さんの意思の尊重やご家族の安心にもつながっています。

【事例2】物盗られ妄想があるBさんの支援

利用者さんから「自宅の物を盗られた」というクレームを受けてから、訪問介護事業所がどのような対応を行ったのか、一連の流れをまとめました。

クレームの電話を受けた管理者からサ責への状況の共有

事務所で電話を受けた管理者は、Bさんから「腕時計を盗られたかも」という電話があり、物盗られ妄想が出ているかもしれないことをサ責に共有。

ヘルパーは1人で利用者さんの自宅を訪問し、利用者さんと1対1の閉鎖的な空間で仕事をします。利用者さんからクレームがあった場合、事業所側は状況を冷静に分析して「利用者さんが言っていることは本当なのか」を見極める必要があります。

Bさんを担当していたヘルパーは、いつも報連相を欠かさず勤務態度も良かったので、事業所から疑いの目を向けられることはありませんでした。
訪問介護は1人で対応するからこそ、利用者さんの気になる発言や変化を記録してサ責に共有するなど、普段から事業所側と連携することが大事です。信頼関係を十分に築けていれば、トラブルが発生した際も事業所がしっかりフォローしてくれるでしょう。

今後の支援の方向性の決定

Bさんが不安定な状況である可能性やクレームの内容を考慮し、トラブルが大きくならないよう、Bさんを担当するサ責と管理者で一緒に対応を進めました。

まずは、担当のヘルパーに状況を聞き取ったうえで、クレームの内容を整理。Bさんが「腕時計をしまっていた」というクローゼットは、浴室・トイレの扉の反対側にあります。
ヘルパーが浴室やトイレの掃除をするとき、Bさんが居室にいると死角となり、状況的にはクローゼットで作業することも可能です。そのため、「見えていない隙に盗った」と誤解を与えてしまいました。

今後の支援方針として、Bさんの自宅の浴室やトイレの掃除をする際は、死角ができにくいダイニングのイスに座ってもらうことに決定。「定期的に声をかけながら掃除する」という援助時の注意点も追加しました。
同時に、「認知症による物盗られ妄想の可能性がある」「ヘルパー側の問題ではないが、Bさんが疑っている状況なので担当者を変更する」という2点を、担当のヘルパーに伝えました。

事業所から関係者への報告

クレームの状況を整理したらすぐに、管理者から娘さんへ、サ責からケアマネジャーへ連絡して状況を共有しました。

Bさんは認知症の一歩手前といわれる「軽度認知障がい」で、「物忘れはあるけど日常生活への影響はあまりない」という状況。しかし最近、「病院を予約した日に買い物に行って通院が変更になった」と話していたこともあり、認知機能の低下が疑われます。

娘さんに説明する際は、Bさんからの訴えの内容に加え、「一般的な認知症の初期症状」や「物盗られ妄想の原因」なども、表現に配慮しながらご説明しました。また、訪問中にBさんの死角となる場所で作業をしていた事業所側の落ち度と、今後は改善することを伝えて謝罪しました。

出典
厚生労働省「軽度認知障害」(2026年7月28日)

事業所の利用者さんへの対応

状況の確認と関係者への報告を終えたサ責は、Bさんに電話で連絡し、自宅に伺いたい旨を伝えました。そして次の日、Bさんの自宅を訪問して直接お話を聞き、腕時計を一緒に探しました。

いきなり「うちのヘルパーは盗ってません」と主張してBさんを否定せず、「腕時計がなくなってしまったんですね」「どこにしまっていたんですか」のように声をかけて対応。腕時計は見つかりませんでしたが、お話しをしているうちに穏やかな表情が見られました。

【事例3】調理の援助に課題があるCさんの支援

訪問介護で利用者さんと一緒に調理を行う際に、食材が足りなかったりスムーズに調理が進まなかったりするときは、どのように対応したら良いのでしょうか?以下で対応事例を見てみましょう。

食材の準備の支援

ヘルパーから「調理を行う予定の日に食材がほとんどない」という報告を受けたサ責は、ケアマネジャーに状況を共有。ケアマネジャーからご家族に相談したものの、「Cさんが冷蔵庫の中の物を食べるので、計画的に準備するのは難しい」とのことでした。

そこでケアマネジャーは、ケアプランの見直しを検討。火曜日に掃除で訪問した際に、冷蔵庫・冷凍庫に食材がなければ、Cさんと近所のスーパーに買い物に行けるようケアプランが変更されました。

調理を一緒に行う際の工夫

調理の際に、シンクの生ゴミをまな板やお皿に置こうとする場合、生ゴミを目に付かないところに移動させるのが効果的です。フタのあるゴミ箱にすぐ捨てると、Cさんの視界から生ゴミをなくすことができます。

Cさんはもともと毎日自炊をしており、切ったり炒めたりする作業が得意です。声をかけて見守りながら、切る・炒める・配膳といった作業を担当していただきました。ヘルパーから、次に何をするか1つずつ伝えることで、Cさんは集中して調理を進められました。

また、古い食材を腐敗に気づかず食べてしまう可能性があるため、調理の支援と同時に、冷蔵庫の整理も行うことをルール化。ご主人にも声をかけ、古い食材は処分し、誤って口にするリスクを回避しています。

まとめ

訪問介護などのサービスを利用しながら自宅で暮らす高齢者は多く、認知症を患う方も例外ではありません。ヘルパーは、利用者さんの状況に合わせた多様な支援を行います。

認知症の方は、記憶障がいの影響で状況が分からず介護を拒否したり、物盗られ妄想がみられたりする場合があるでしょう。これまでできていた家事をスムーズに進められなくなり、支援が必要になることも考えられます。

訪問介護は施設と比べて利用者さんと関わる時間が短く、支援内容が決められているため、ヘルパーが対応できる範囲は限られます。
困ったときは1人で判断せず、サ責や管理者に相談して対応しましょう。サ責に連携すると、ケアマネジャーと連携してサービス内容を検討することもできます。

「1人で訪問するから責任が大きい」「心細い」と感じるヘルパーの方もいるかもしれませんが、訪問介護事業所の職員はともに介護サービスを提供する仲間です。支援がうまくいかないときは、サ責や管理者だけではなく、同じ利用者さんを担当するほかのヘルパーとも情報交換をして、ベストな対応を探っていくと良いでしょう。


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執筆者

  • 実

    元介護士ライター

グループホームに2年、訪問介護事業所に3年勤務。多くの高齢者や、障害のある方の介護に携わる。訪問介護事業所では、サービス提供責任者の業務も担当した。2022年に介護福祉士を取得。現在は、知識や経験を活かして、介護職員の方に役立つ情報を発信している。

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※この記事の掲載情報は2026年8月17日時点のものです。制度や法の改定・改正などにより最新の情報ではない可能性があります。

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