
私達の身の回りにあるさまざまな製品は、各企業が時代や人々のニーズを汲み取り、企画・製造しています。なかには、経営者自身の経験が反映されている製品もあり、その細やかさには目を見張るものがあります。
当記事では、そのような経営者自身の想いや優しさが込められた介護用品を提供している企業を紹介します。関係者全員に笑顔をもたらす環境づくりに、ぜひお役立てください。
目次
株式会社猫舌堂
株式会社猫舌堂は、健康な方からデリケートな症状をお持ちの方まで、誰もが使えるスプーンやフォーク、箸などのカトラリーを企画・販売している企業です。
代表の柴田氏が、自身の罹患体験から感じた困りごとを機に発足。当事者ならではの視点を活かし、「ぴあメイド(同じ境遇の仲間がデザイン)」という新たな価値を提供しています。
スプーン&フォークセット「iisazy spoon & fork set 揃-soroi-」

私達にとって食事というのは、日々の活動や健康維持のために必要な栄養を摂取すること、というのは言うまでもないでしょう。それに加えて、多くの人が無意識のうちに求めていることに「食を楽しむ」という要素が挙げられます。
みんなでワイワイと話しながら食卓を囲む、大切な人との食事で豊かな時間を過ごす、誰にも気兼ねせず一人でゆっくりと味わうなど、食に伴う光景や情感は人々の心を潤してくれます。多くの人にとって食事は、栄養摂取のみならずさまざまな充足感をもたらすものと言えるでしょう。
しかし、疾病や後遺症、加齢などにより、食事を楽しめない方も多くいます。同社の代表である柴田氏も、そのひとりだったそうです。看護師として活躍していたあるとき、耳下腺がんに罹患し、手術と化学放射線治療を経験。自身の闘病を機に、食べることへのバリアを実感したといいます。
柴田氏によると、疾病や加齢により口が大きく開けづらい方にとって、一般的なスプーンやフォークは食を楽しむのに十分ではないとのこと。厚みや角度、幅があるため、口から引き抜くときに上唇や歯にガチッと当たったり、すくう量が多く口からこぼれ落ちたりして不快感があるといいます。
これは、食事の介助を行う介護士にとっても気になるところでしょう。食べこぼしは、高齢者本人の自信や尊厳を損ない兼ねません。また、口に入れる量の多さから誤嚥を招くことも懸念されます。
このような高齢者本人のみならず、介護士の心までもすり減らす心配事の払拭に挑んでいるのが同社の「iisazy」 (イイサジ―)シリーズです。食べやすく口当たりがよいスプーン・フォーク・箸などの商品を展開しており、なかでも、スプーン&フォークセット「iisazy spoon & fork set 揃-soroi-」は、多くの方から好評を得ています。
このスプーンとフォークの特徴は、薄い・平たい・小さいということ。口を開けづらい高齢者でも食べやすい分量だけをすくえ、上唇や歯に引っかからずスッと抜け、口当たりも良いという使用感を実現しました。これにより、食べこぼしや誤嚥の心配も軽減され、多くの方が、食事の時間を楽しめるようになったそうです。
「唇が感動する」「食べ方がきれいになった」との声が多数寄せられている「iisazy」 シリーズ。施設での普段使いに適しているのはもちろん、セット商品の「iisazy spoon & fork set 揃-soroi-」をプレゼントとして贈るのも喜ばれそうですね。

詳細情報
iisazy spoon & fork set 揃-soroi-
株式会社okeys.ai
株式会社okeys.aiは、医療・介護における研究と開発を行う企業として2021年に設立されました。
代表の沖氏は、介護職や訪問看護師、施設開設などの経験があり、介護業界の実状に深い知見があります。その経験に基づき、現場の課題を解決すべく邁進しています。
高齢者運動支援AIアプリケーション「exer-kun」
多くの介護施設では、入居者やサービス利用者の身体機能促進を図るため、さまざまなレクリエーションが行われています。その実施にあたっては、施設に勤務する介護士やスタッフが考案・準備したうえで指導するというケースが大半です。
一方で、より良い効果を期待するため、もっと個々人の状態に寄り添ったプログラムを組みたいという介護士の声もあるといいます。施設利用者さんやご家族にとっても、活動の効果が実感できるレクリエーションのほうが、やり甲斐や安心感があるでしょう。
しかし、実際に一人ひとりに適した活動プログラムを組んで実施するとなると、その準備だけで大幅な時間を要するのが明白です。ただでさえ人手不足が問題視されている介護業界において、さらに業務負担が増えるのは現実的ではないでしょう。
そこで同社では、このジレンマを解消すべく、高齢者運動支援AIアプリケーション「exer-kun」を開発しました。これは、高齢者の身体機能・生理機能に沿って、その人に最適な運動プログラムを提案し、タブレット端末で3Dアバターによる直感的でわかりやすい運動支援を行うというAIアプリケーションです。

利用者さんたちの情報を「exer-kun」に入力するだけで、個別に最適化された運動プログラムを日々提案してくれるため、事前に介護士がプログラムを考案する必要はありません。
体を動かす際は、タブレットに映し出されるアバターが手足や体の動きを3Dで示してくれるので、介護士は転倒等がないよう見守るのみで大丈夫です。ときには一緒に体を動かすのも楽しいかもしれませんね。
また、運動後に運動量とバイタルサイン値を記録すると、日々の推移を確認できます。効果を数値で可視化できるため、健康管理にもモチベーション維持にも役立つでしょう。

このように自動でプログラムを組めるうえ、記録もフィードバックも可能な「exer-kun」は、利用者さんと介護士の双方に大きなメリットをもたらします。たとえば、運動時の声掛けや、記録を一緒に確認することで良好なコミュニケーションが図れます。加えて、レクリエーションの準備が不要な分、介護業務に専念でき、その質も向上するでしょう。
さらに、これまでにない新しい取り組みとして、施設のアピールポイントにもなるはずです。
多くの魅力がつまった高齢者運動支援AIアプリケーション「exer-kun」、今後の広がりが注目されます。
詳細情報
株式会社明日櫻
2015年設立の株式会社明日櫻は、両腕拘縮の方でも着脱可能な着物、車いすのように着座のままでも着脱可能な着物のレンタルや販売、撮影などを行っています。
代表の淺倉氏がこの事業を始めたきっかけは、着物が好きでおしゃれな祖母が高齢者施設に入居したとたん、ふさぎがちになったことといます。祖母への思いやりから生まれた、同サービスは、介護業界から多くの注目を集めています。
車いす用着物「早咲羅」

介護施設では、多くの方が車いすを利用し生活しています。加齢や疾病により手足の機能が衰えたり、下半身が不随になったりとさまざまな理由がありますが、生活の質や利便性を重視すると車いすを用いることが有益な面も多々あるでしょう。
しかし、車いすの状態では、存分におしゃれが楽しめるとは言い難く、人によっては日々の活力そのものが低下してしまうケースもあるようです。
同社の代表である淺倉氏も、着物が好きな祖母が入居を機に装いを楽しめなくなったことに、気がかりが生じたといいます。そこで、体が不自由な方でも簡単に身につけられる着物を作れないかと奮闘。ファッション、デザイン、医療、介護の分野の知見を統合し、ユニバーサルデザインの着物「早咲羅」を考案・製品化しました。
この着物の最大の特徴は、車いすに座ったまま3分で着用できるという点です。上半身と下半身の二部式仕立てにすることで、着付けを簡略化。下半身は、座った状態で着物を着ているように見える膝掛け式、もしくは立ち上がっても違和感のない巻き付け式の2タイプを用意しました。

※特許の取得、意匠権の登録がなされています
また、飾り衿を施してある上半身部分は、体の正面から被せるように着用。帯も巻くだけで整うというシンプルさです。このように、どなたでも簡単に着用できる仕様ながら、見た目は普通の着物と変わらないというのが「早咲羅」の魅力でしょう。
このシンプルさと美しさが評判になり、各種メディアでも多くとりあげられ、今やたくさんの方に利用されています。お孫さんのご婚礼に留袖で参列したり、自身の誕生会や施設での撮影会に小紋で臨んだりと、各地に笑顔が広がっています。
なお、同シリーズは車いすの方に特化しているのではなく、あらゆる方に対応するユニバーサルデザインとして仕立てられています。10代の若い方から、自立できるが腕が上がりづらい、腰を伸ばしづらいという高齢者の方まで、幅広く着用可能。振袖や袴、留袖、色留袖、訪問着、小紋など色鮮やかな着物が並ぶ同社のHPは見応え抜群ですよ。介護士の方は、ぜひ施設利用者さんと一緒に覗いてみてはいかがでしょう。きっと、多くの方の心を華やかにしてくれるはずです。
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