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九州産業大学 理工学部 機械工学科 ヒューマンロボティクス研究センター 教授 榊 泰輔先生にインタビューしました!

その他 2021年7月2日
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目次

◆はじめに

『介護・福祉の現場で働く方に、いつもとは違った視点でその分野を研究している人を知ってもらいたい』という想いで始まったこちらの大学の研究室紹介。
第24回目は九州産業大学 理工学部 機械工学科 ヒューマンロボティクス研究センター 教授 榊 泰輔先生にお伺いしました。
主に『在宅向けリハビリロボット等の実用化』を研究されています。

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研究の概要について教えてください

わたしたちは超高齢社会などの社会ニーズにむきあいながら研究をすすめています。
日本の高齢者は2065年に4000万人弱に、高齢化率は現状30%弱から40%弱に増え、医療介護費用も約100兆円超と予測される一方、介護従事者は人手不足が続いています。そこで脳卒中や虚弱の高齢者には機能回復・維持と介護を、健常高齢者には転倒・要介護状態の予防に資する研究をしています。そのために、①九州の産業の活性化、医療介護の現場・地域社会に貢献、②ロボット技術など様々な技術をうまく組合せる、③コストパフォーマンス(価格・人手・負荷と回復や介護の効果のバランス)を意識してすすめます。
わたしはメーカ・大学で医療介護ロボットに30年間携わってきました。大学では総合せき損センター・産業医科大学・香椎原病院から助言と協力を得、ロボフューチャー社、HyACT Intelligent Technology 社と高齢の脊損患者向け歩行リハビリロボットを開発してきました。しかし一方、わたしは医療介護ロボット研究の難しさもたくさん経験してきました。最大の問題は医療介護コストの制約です。ロボットの機能だけが課題ではなく、人手とコストに対する効果が厳しく問われます。こうした経験をふまえながら、2013年から本学でヒューマンロボティクス研究センターを立ち上げ、在宅向けリハビリロボット等の実用化にむけ研究を進めています。

研究の詳細について教えてください

研究センターの成果を2つご紹介します。
①立位保持訓練ロボット (写真1) 

高齢者に多い脳卒中や脊髄損傷などのリハビリを助けるロボットです。病院・自治体・企業、学内では理工学部(機械・情報)・芸術学部のコラボで進めてきました。歩くときの基本である、左右への重心移動と遊脚の動きを訓練します。モータを1個のみ使ったシンプルな構造と高齢者にも簡単な操作パネルを備え、車いすからの移乗も容易な小型低コストの装置に仕上げました。近赤外光による脳血流計測装置(NIRS)を用いた研究により、重心移動を意識して訓練するとき脳が活発に働いているのを確認できました。近い将来、在宅での訓練とケアセンターとを結び、脳の活動を活性化する動きのレシピをリモートでうながす仕組みをめざします。なお、このロボットは歩行リハビリ訓練の一連のシリーズ(臥位、座位、立位、立位保持=基本動作、歩行の支援)のうちの一つです。他にも廊下を歩く患者の後をついて体幹を支持し安全に訓練できる歩行支援ロボットなども開発してきました。(写真2)

写真1

写真2


②全身性麻痺患者が自分で運転・移動できるロボット・ストレッチャー (写真3)

脊髄性筋委縮症(SMA)のある一人のユーザに特化して開発しました。ユーザにはショッピングセンターを自分一人で移動してまわり買い物を楽しみたいという希望があります。右手人差し指のみわずかに曲がり右側臥位で視野が狭い状態です。軽い力で押せるスイッチを選定、押すごとに移動する方向をきめる仕組みを、試行錯誤の末開発しました。またロボットのボディに配置した6個の小型カメラ画像をタブレットに提示します。実験の結果、みごと指示した通り移動方向をコントロールできました。北九州市、理工・芸学のコラボで開発に15年をかけ技術的には完成、移転先企業を探索中です。(日本リハビリテーション工学協会福祉機器コンテスト2017最優秀賞)
そのほか、研究センターからは、せき損患者がコップや箸またペットボトルなどの複雑な形をしっかり持てるロボット的な器具(ドラえもんの手)、起立と着席を健常者のような自然な動作で訓練できるリハビリロボット、立位姿勢で重心を片側にぐっとかける訓練を助けるロボットなどの成果をだしており、病院にて検証中のものもあります。

写真3

今後の研究の展望を教えてください!

今後の展望について3つお話します。
一つはシリーズ化・システム化です。機器を単独で提供しても、医療介護現場には既に作業の流れができあがっており、そこに割り込むのは困難です。そこで発想を転換し、現場をまるごとロボット化する、つまり各ステップの作業においてロボットを使うのを前提にかんがえ、そこから逆にその現場にあったロボットを設計することです。現場の作業の流れをトータルで効率化することが目的です。歩行リハビリのシリーズ化はそれをめざしています。ただし、単独でも現場に受け入れられそうなら逐次、企業に技術移転したいとおもいます。
二つ目は地域包括ケアシステムです。この在宅ユーザを自治体・病院・地域社会が一体になってケアする仕組みは優れた考え方だと思います。ただしコストパフォーマンスを上げるにはロボットとデジタルを組合せ、うめこんでいく作業が必至です。具体的には、自治体が取り組んでいるポピュレーションアプローチ、すなわち要介護者、患者などのハイリスク層だけでなく、健常者をふくめた全体に適切な働きかけをすることで、全体のリスクとコストを下げるわけですが、その実現にロボット、デジタルの導入をすすめたい。例えば転倒の確率をビッグデータとAIで予測、適切な訓練メニューを提供し在宅でロボット訓練、または介護の準備をすれば、全体の医療介護予算の管理が可能になってきます。
三つ目はアジア、中国、インドへの新市場開拓です。ロボットは日本で数少ない国際競争力のある分野です。この強みを生かし国内だけでなく海外市場も広く探索すべきです。私たちも九州の産業支援と市場開拓のため、国内ベンチャーとともに韓国・中国の企業とコラボを始めています。
これらはいずれも地域に根差す大学の使命と考えます。研究センターでは今後も研究を進めてまいります。

◆九州産業大学 ヒューマンロボティクス研究センターの基本情報

榊先生、お話ありがとうございました!
最後に、九州産業大学 ヒューマンロボティクス研究センターの基本情報を記載します。

九州産業大学
https://www.kyusan-u.ac.jp/
九州産業大学(教員紹介)
http://ras.kyusan-u.ac.jp/professor/0003840/profile.html
ヒューマンロボティクス研究センター
http://www.kyusan-u.ac.jp/J/hrrc/center.html

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