日本では高齢化に伴い、必要な介護従事者数は増加する一方、少子化により労働人口は減少しています。厚生労働省によると、2025年には55万人分の介護人材が不足する見通しであり、「介護人材の確保」は多くの事業所にとって共通の課題だといえるでしょう。介護事業所が人材を確保するための方法は1つではありません。単に採用を強化するだけではなく、制度を充実させることで、離職率の低減や新たな人材の採用につながることもあります。この記事では、人材確保に成功した他事業所の事例を「若手職員が採用活動に携わった事例」「制度の充実で人材確保につながった事例」「人材育成や教育により人材確保につながった事例」「新型コロナウイルス感染拡大の状況に合わせた人材確保の事例」の大きく4つの分野に分けてご紹介します。
若手職員が採用活動に携わった事例
まずご紹介するのは、若手職員が採用活動に携わった事例です。特に新卒採用の場合、学生と年齢の近い若手職員に採用活動に参加してもらうことで、入職後の姿を具体的に描いてもらいやすくなる、というメリットがあります。また、副次的効果として、若手職員自身の成長も促せるでしょう。
【事例1】YouTube動画を活用した採用戦略 若手職員のアイデアで採用活性化-社会福祉法人すこやか福祉会-

社会福祉法人すこやか福祉会では、若手職員ならではのアイデアを採用活動に活かす「ケアワーカー魅力発信委員会」を発足。特に、YouTubeを活用した情報発信に力を入れています。1分間の動画は、HP100ページ分の情報量に相当すると言われており、一度に多くの情報を伝えられるのがメリットです。これまでには、実際の介護現場での取り組み事例紹介や各施設の紹介ムービーなど、学生や求職者に介護や事業所の魅力を伝えられるような内容の動画を公開しました。実際、取り組みを始めてから、面接に来た学生や求職者から「YouTubeを見ました」との声がよく挙がるようになり、採用活動にもプラスの効果があったと言います。
【POINT】
- 若手ならではのアイデアを活かした企画や取り組みが生まれるような仕組みづくり
- 時代に合わせたツールを取り入れるため、採用活動にYouTubeを活用
- 学生や求職者に介護業界の魅力を知ってもらえるような内容の動画を制作
- 自分たちで動画を編集することで細かいニュアンスまで調整可能に
- 制作した動画を研修にも活用することで、職員の教育にもメリットが
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YouTube動画を活用した採用戦略 若手職員のアイデアで採用活性化-社会福祉法人すこやか福祉会-
【事例2】新卒採用の質が向上!求める人材確保につながる魅力発信チームの活動とは-社会福祉法人南山城学園-

南山城学園では、若手職員の育成を目的として、新卒採用に携わる魅力発信チームを結成しました。魅力発信チームのメンバーは、就職説明会や座談会への参加、大学の講義でのゲストスピーカーとしての講演、映像制作、内定者フォローなど入職から採用までの幅広いプロセスに携わっています。就職説明会や内定者フォローでは、学生と属性の近い職員を引き合わせることで、一人ひとりの学生により合ったサポートを実現できていると言います。こうした活動により、法人の方向性に共感した学生が応募してくるようになり、応募者の質が向上。ミスマッチが少なくなり、入職後の定着率も上がったそうです。
【POINT】
- 幅広い層の学生に対応できるようにバックグラウンドの異なる若手職員を集めてチームを構成
- 説明会だけではなく、映像も用いてさまざまな角度から学生にアプローチ
- 学生と属性の近い若手職員と話ができる機会を作り、個別性の高いサポートを実現
- 若手職員の母校の先生に卒業後の活躍を知ってもらえるというメリットも
- 法人の方向性を明確にして伝えることでマッチング精度の高い採用が可能に
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新卒採用の質が向上!求める人材確保につながる魅力発信チームの活動とは-社会福祉法人南山城学園-
【事例3】たった2年間で集客数62倍に 地域のハンデに負けない採用マーケティングの極意-みねやま福祉会-

充実した福利厚生や働きやすい環境がありながら、京都府北部という立地がネックになり、採用活動に苦戦していたみねやま福祉会。法人の認知度向上のために、若手職員の採用強化チーム「SKIPPA」を結成しました。「SKIPPA」では、HP・パンフレット・SNSのコンテンツを刷新したほか、合同就職説明会での企画運営を行っています。「SKIPPA」の活動により、2015年に4人だった合同就職説明会のブースの来訪者が、2017年には250人に増加。さらに、合同就職説明会の参加者から施設見学や採用試験に移行する人の割合も上昇しています。
【POINT】
- 学生に仕事を身近に感じてもらうため、年齢の近い若手職員を動員
- 「SKIPPA」メンバーのプレゼンテーション能力を高めるためにトレーニングを実施
- アイデアの実現にあたり、若手職員と法人内の施設長の間に事務局が入ることでコミュニケーションエラーを防止
- 人材育成を兼ねて定期的にメンバーの入れ替えを実施
- 若手職員に役割を与えて自由な発想を尊重しつつサポート
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【事例3】たった2年間で集客数62倍に 地域のハンデに負けない採用マーケティングの極意-みねやま福祉会-
制度の充実で人材確保につながった事例
働きやすい環境を整備することで、既存の職員の離職率が低下したり、新たに入職者が増加したりする例もあります。特に女性職員の多い介護業界において、出産後の働き方は重要です。子育て支援制度の充実により、人材確保につながった事例を紹介します。
【事例4】出産後の退職をなくしたい!『夫婦応援制度』で子育て中の職員をサポート‐社会福祉法人みささぎ会‐

社会福祉法人みささぎ会では、同じ職場で働いている夫婦への子育て支援対策として「夫婦応援制度」を導入しました。職場結婚する職員の割合が高い同法人。育休後に夫婦のどちらかが退職してしまうケースが年に1~2回あり、問題となっていました。そこで、金銭的なサポートとして、夫婦のどちらかが育休後に非常勤になった場合、毎年年度末に最大30万円を現金支給することで、給与が下がらないようにサポートする仕組みとして考案したのが「夫婦応援制度」です。制度を開始してからは育休後に退職する職員がゼロになり、入職者も増加。後からパートナーが入職して夫婦応援制度を利用するケースも増えています。
【POINT】
- 育休後の退職を防ぐための仕組みづくり
- 夫婦どちらかが非常勤に転換した場合に減少する収入の差額を埋めるために手当の額を「30万円」に設定
- 「夫婦応援制度」の対象となる職員以外にも理解を得るために職員全体へ目的や考えを共有
- 職員の紹介で家族が入職する場合はミスマッチをなくせるように事前に職場体験を実施
- 人材確保のための手段とだけ考えて制度を構築するのではなく、子育て中の職員を応援したいという気持ちを大切に
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出産後の退職をなくしたい!『夫婦応援制度』で子育て中の職員をサポート‐社会福祉法人みささぎ会‐
【事例5】子育て世代が活躍する 従業員3,000人を抱えるグループの人材確保方法とは -日の出医療福祉グループ-

日の出医療福祉グループでは、職員が子どもと一緒に勤務することができる「子連れ出勤制度」を導入しました。新規事業所オープンにあたって、同性介助の観点から女性職員の採用が急務となっていた同法人。地域の女性の力を得るための策として、「子連れ出勤制度」が有効だと考えました。世代間交流も子連れ出勤の目的の一つとしているので、基本的には託児所は設けずに各職員が仕事中に子どもの面倒を見ていますが、事業所によっては託児スペースを設置しています。利用者様と子どもの交流は盛んで、利用者様が子どものお世話をしてくれることも。職場の雰囲気が明るくなったと言います。さらに、「子連れ出勤制度」のおかげで、約120名の新規採用者のうち、30名ほどの採用が叶い、採用目標も達成しました。
【POINT】
- 採用したい層にターゲットを絞った対策を実施
- 行政や利用者様の理解を得るために、子連れ出勤の実施前の説明を徹底
- 新規採用時には「子連れ出勤制度」を利用しない職員にも制度の目的や内容を共有
- 人材確保以外にも利用者様と子どもの世代間交流を実現
- 「子連れ出勤制度」以外に短時間正職員制度の適用期間の延長など子育て支援を強化
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子育て世代が活躍する 従業員3,000人を抱えるグループの人材確保方法とは -日の出医療福祉グループ-
人材育成や教育により人材確保につながった事例
入職後、どのような教育が受けられるか、どんなキャリアパスが描けるかは求職者が気にしやすいポイントの1つです。人材育成に投資することで、人材確保につながった事例をご紹介します。
【事例6】介護福祉士の離職率を半減させた教育研修部の取り組みとは-船橋市立リハビリテーション病院-
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船橋市立リハビリテーション病院では、介護福祉士のみの採用にこだわり、高い定着率を実現しています。中でも同院の強みは教育制度で、教育研修部を主体として介護福祉士に特化した養成カリキュラムを整備。研修を多数用意しているほか、キャリアが長いスタッフには年度初めに個人目標と部門目標を立ててもらい、半期に一度、進捗確認や振り返りを行いPDCAを回すことで、スキルアップや教育につなげています。さらに、教育の質を担保するために、月に2回、教育研修部と各職種のサブマネージャーとの会議を実施し、現状の課題の把握と改善に努めています。こうした施策により、同院の介護福祉士の定着率は高い水準を維持。また、同時に採用につなげる取り組みも実施しており、毎年千葉県内を中心に10校ほど回り、各校の教職員と話をしたうえで、教育カリキュラムをまとめた資料を渡して強みをアピールしています。
【POINT】
- 採用から研修まで教育研修部が関わることで、職員への一貫した教育、サポートを実現
- 教育カリキュラムを整備し、特に入職3年目までの教育に注力
- キャリアの長い職員向けにも半期に一度、進捗確認や振り返りを実施
- 現場から各職種のサブマネージャーの声を汲み取り、教育に反映
- 教育研修部の職員が自ら現場に足を運び、介護福祉士と信頼関係を構築
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【事例7】最高教育責任者(CLO)が考える 介護職員が自信を持って働けるキャリアパスとは -株式会社グリーンケア らくゆう会 メープルコートまつばら-

株式会社グリーンケアらくゆう会では、介護職員が確かな目標を持って働けるように独自のキャリアパス制度の制定に取り組みました。この制度は、職員のレベルをステップⅠからⅣに分け、段階ごとに習得すべきスキルや資格、参加すべき研修、就ける役職などを細かく定めたものです。キャリアパスのステップを指標として、給与や評価が決まります。経験年数だけでなく、日々の頑張りや目標達成、資格の取得により給与アップを目指せるので、モチベーションの維持に効果的です。また、次のステップに進むために設定した目標をどのくらい達成できたかを加味して評価が決まるので、「評価に対する納得感が高まった」と職員からも好評を得ています。この評価制度をホームページで紹介してから、応募者が増え、学ぶことに前向きな人材の採用につながっていると言います。
【POINT】
- 他事業所の看護師のクリニカルラダー制度と介護職のキャリアパスをもとに独自のキャリアパスを考案
- キャリアパス制定にあたっては資格の有無など介護職員のスタートラインの違いを考慮
- 次のステップに進むためのアクションは目標管理シートで管理
- 目標に対する達成度は評価にも反映
- 評価や昇格基準を可視化することで職員の納得感がアップ
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最高教育責任者(CLO)が考える 介護職員が自信を持って働けるキャリアパスとは -株式会社グリーンケア らくゆう会 メープルコートまつばら-
新型コロナウイルス感染拡大の状況に合わせた人材確保の事例
新型コロナウイルス感染拡大が続く現在、採用や研修のあり方も変わってきています。オンライン採用や未経験者向けの研修など、状況に合わせた対策を取ることで、応募者の増加や、新たな層の求職者の獲得に成功した例をご紹介します。
【事例8】Withコロナにおける採用・育成方法 感染拡大収束後も役立つノウハウ-ケアサポート株式会社-
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ケアサポート株式会社では、新型コロナウイルス感染拡大の状況に合わせ、採用や研修の方法を工夫しています。新卒採用では、説明会を全面的にオンラインでの開催に移行。選考方法については、新卒・中途ともに最終面接以前の面接はオンラインで、最終面接のみ対面で行う形に変更しました。オンラインでの説明会や選考に対応していない企業が多いためか、新卒の応募者が増加し、例年より多くの学生に内定を出すことができたと言います。また、中途採用では、オンラインでの選考に加えて介護未経験の中途入職者向けに「はじめの一歩研修」を実施したことで、飲食業・接客業・製造業など異業種から転職してくる方が増加しました。このほか、社内研修もオンラインで行うようになったことで、職員の移動が必要なくなり、受講対象者の拡大を実現するなど、採用・研修のあり方の変更により、感染拡大収束後にも役立つノウハウを得られています。
【POINT】
- 未経験の中途入職者向けの研修を開始し、研修のことを積極的に外部に発信
- オンライン説明会は一対一で実施することで、学生から疑問点や不明点を気軽に聞いてもらえるよう配慮
- 時間や場所の融通が利きやすいオンラインのメリットを活かして説明会に育成担当者も参加
- 選考では最終面接は対面で行うことで総合的に判断
- コロナ禍の状況をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブにできることを工夫
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Withコロナにおける採用・育成方法 感染拡大収束後も役立つノウハウ-ケアサポート株式会社-
【事例9】休業者・失業者に活躍の場を!withコロナの時代の採用方法とは?-社会福祉法人伸こう福祉会-
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社会福祉法人伸こう福祉会では、「業務縮小中の異業種他社からの出向者の受け入れ」と、「失業した異業種経験者の雇用」の2つの取り組みを行いました。異業種他社からの出向者の受け入れについては、法人同士の出向契約を結び、一定期間就業してもらった後、自社の勤務状況が整い次第、復職してもらう仕組みです。失業した異業種経験者の場合は、1年未満の有期雇用契約で非常勤として雇用。一定期間就業後、希望職種への転職を希望する方は、目途が立ち次第転職してもらい、伸こう福祉会への入職を希望する方に関しては面接のうえ、正規雇用しています。未経験の方には「介護技術基礎研修」を実施したうえで、配属後はOJTでの指導を行い、不安なく就業できるように努めていると言います。実際に2020年9月までに計14人の出向者を受け入れた実績があり、失業者についても非常勤で勤務した後に正規雇用で伸こう福祉会の職員になった方もいました。
【POINT】
- 雇用される側、する側双方にメリットのある仕組みを構築
- コロナ対策で増える業務量を新たな労働力でカバー
- 失業者が正規雇用を希望する場合は通常と同じルートで選考を実施
- 研修や教育制度を整え、介護未経験者の不安を払拭
- 異業種出身の方ならではの視点を業務に活かす
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休業者・失業者に活躍の場を!withコロナの時代の採用方法とは?-社会福祉法人伸こう福祉会-
【事例10】オンライン採用を実践してみたメリットとデメリット-社会医療法人杏嶺会-

社会医療法人杏嶺会では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2019年4月からオンラインでの採用に取り組みました。Zoomを利用した面接のほか、オンライン見学も実施。タブレットPCのカメラで病院内の様子を映し、求職者の希望に合わせてリアルタイムで案内しています。オンライン採用では移動せずに面接を受けてもらえるため、感染のリスクがないことや遠い場所にいる求職者にも対応できることなどメリットが多くありました。応募者も増加し、1日の面接者が60人に上ったことも。一方、選考を受けることのハードルが下がったことから、志望理由や退職理由が浅い人も見受けられたため、面接官は求職者の話をじっくり深掘りする必要は出てきたと言います。
【POINT】
- 人材確保のためにスピード感をもってオンライン採用を導入
- オンライン見学では事前に録画した動画ではなく、求職者の配属先の病棟に合わせてリアルタイムで案内
- オンライン見学では患者様を映さないように配慮
- 求職者の質問に柔軟に回答するために、場合によっては面接官以外のスタッフにも協力を要請
- 役職者の採用の場合は、対面での面接も実施するなど求める人物像に合わせた採用方法を検討
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オンライン採用を実践してみたメリットとデメリット-社会医療法人杏嶺会-
まとめ
人材確保に成功したさまざまな事業所の例を紹介してきました。自事業所に取り入れられそうな方法もあったのではないでしょうか。人材確保は取り組み始めてすぐに効果が出るとは限らないため、早めの対策を打つことが必要です。長期的に定着率を向上させるためにも、ミスマッチの少ない採用を行い、人材を確保した後は離職の防止に努めることも大切だといえるでしょう。
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