「何となく先が見えないので違うところで働きたい」「あの人の評価がなぜ高いの?」職員からのこんな声に頭を悩ませる施設責任者の方も多いのではないでしょうか。株式会社グリーンケア らくゆう会では、キャリアパス制度の設計により職員から評価への不満が減っただけでなく、キャリアの見通しが立てやすくなったことから求人応募数も増加しています。最高教育責任者としてキャリアパスの設計を担当されている吉田様に、制度の内容についてお伺いしました。

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プロフィール

最高教育責任者(CLO)が考える 介護職員が自信を持って働けるキャリアパスとは -株式会社グリーンケア らくゆう会 メープルコートまつばら-
吉田 直人様

株式会社グリーンケア らくゆう会 CLO(最高教育責任者) 兼 施設長 公益社団法人 大阪介護福祉会 理事 公益社団法人 日本介護福祉会 代議員

介護・福祉養成校卒業後、介護職として15年ほど病院にて勤務。ケアワーカー長として介護サービス全般のマネジメントや法人独自の教育システムの設計をご担当。その後、施設長及びCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)として住宅型有料老人ホームメープルコートまつばらへ着任し、キャリアパスや教育制度の設計に携わっている。

学んできた環境に関係なく、介護スキルが標準化できる環境を目指して

——キャリアパスを設計しようとしたきっかけは何ですか?

介護職として現場で勤務するなかで、介護専門学校で習ったことと実際の職場でギャップを感じたことがきっかけです。今でこそ介護業界でも根拠に基づいたケアが重視されるようになりましたが、医療と比べると介護は「生活」を対象としているがゆえに、どんな対応が求められているか明確な答えがないと感じることが多かったですね。当時の教育といえば、おむつ交換や移乗といった技術に関することくらいしかなかったので、私と同じように現場に出て自信をなくす人が多かったです。そんな人を少しでも減らし、目指す方向や学ぶものが明確になればいいなと考えていました。

——どのようにしてキャリアパスを設計しましたか?

看護師のクリニカルラダー制度と介護職のキャリアパスをすでに導入している事業所を参考にしました。もともとは私が病院に勤めていた際に設計したシステムなのですが、今のらくゆう会のキャリアパスの原点でもあります。

国家資格である看護師とは違い、介護職は資格取得までのルートが一人ひとり異なります。たとえば、介護福祉士であれば、養成校ルートと実務経験ルートがあります。同じ未経験の新人にしても全く何も知らない人もいれば、実務経験はないものの、専門学校や大学で介護について学んでいる人もいます。それぞれの経験値やスキルによって、レベルを分けたうえで次に学ぶべき内容を示す必要があると考えましたね。

具体的な行動計画を立て、複数人の視点から振り返る

——らくゆう会のキャリアパス制度はどのような内容ですか?

キャリアパスとは「職務経歴上の道筋」のことで、施設の中で自ら進むべき方向を明確にして努力するための指標です。らくゆう会のキャリアパスモデルでは、職員レベルをステップⅠからⅣに分けています。ステップごとに習得すべきスキルや資格、参加すべき研修、就ける役職などが細かく決められているので、今現在の自分のレベルだけでなく、目標達成のためにすべきことが把握できます。また、「昇格を目指すには何ができるようになればいいか」も示して、次のステップへの目標を立てやすくしています。このキャリアパスのステップにより、業務手当が10,000円から70,000円まで変動する仕組みです。経験年数だけでなく、日々の頑張りや目標達成、資格の取得により給与アップを目指せるので、モチベーションの維持にもつながっています。

——各個人が次のステップに進むための目標はどのように決めていますか?

年度始めや中途入職したタイミングで「目標管理シート」を記入するようにしています。目標管理シートには、1年で達成したい目標を記載します。目標はいくつでもよく、必ずしも難しい目標を立てる必要はありません。チャレンジしてみたいこと、頑張ってみたいことを書くように伝えています。たとえば、入職したばかりの職員であれば「今年1年は入居者様の名前を覚えて、安全安心なケアができるように努める」という目標でも大丈夫です。目標が決まったら、それを達成するための具体的な行動計画を立てます。この目標の場合、「毎朝訪問予定表を見て、自分が担当する入居者様に挨拶に行く。そして、その日の体調をお伺いする」といった具合です。上司だけでなく自分自身でも評価しやすいように具体的な行動も記載するようにしていて、立てた目標をどのくらい達成できたか年度途中と年度末に振り返っています。

——最終的な評価はどのように行っていますか?

「目標管理シートの多面的評価」と「成長報告書の提出」をもとに決めています。

多面的評価というのは、上司だけでなく、部下からも評価してもらうシステムのことです。らくゆう会では、目標管理シートの自己評価に対して、施設長と自分の1つ下のステップの職員が評価コメントをするようにしています。最終的に昇格・昇給の判断をするのは法人本部なのですが、現場でどんな風に働いているかを複数の立場の人からのコメントで伝えられるようにすることで、普段の頑張りを見落とさないようにしていますね。

成長報告書に関しては、1年で成長したこと、頑張ったことを箇条書きにするものです。職場以外のことでもいいので、ポジティブに自分自身を褒めてあげながら書いてほしいと伝えていますね。興味に合わせたアドバイスがしやすくなるので、成長報告書は評価のときだけでなく、次年度の目標を立てるときにも活用しています。

最高教育責任者(CLO)が考える 介護職員が自信を持って働けるキャリアパスとは -株式会社グリーンケア らくゆう会 メープルコートまつばら-
▲目標と研修受講記録を蓄積。キャリアパスや学んだ内容をいつでも手にとって確認できる

学ぶことに前向きな人材の応募数が増加

——制度導入後、現場での変化はありましたか?

評価者側からは、「実際に判断基準が可視化できるようになったことで、評価しやすくなった」という声がありますね。評価される側からも、「評価基準が分かるので納得感が高まった」という声を聞きます。目標管理シートを活用し始めた当初は、記入が大変だと感じる職員が多くいましたが、できたことやできなかったこと、その理由をシンプルに考えるように伝えることで定着してきました。

また、次にやることや目指すところが明確になることで、資格の受講希望者が増えました。昨年度は介護福祉士の受験者が2名、今年は実務者研修の受講者が施設内だけで3名出ました。ほかにも民間資格の取得を目指す人も増えましたね。資格の内容は、介護技術に関する資格や認知症に関する資格、レクリエーションに関する資格、耳の聞こえない入居者様とコミュニケーションを取るための手話資格などさまざまです。職員一人ひとりの興味や関心に合わせて、アドバイスしながら一緒に目標を決められたことが大きかったと思います。

——採用面での変化はありましたか?

教育制度やキャリアパスについて、ホームページに掲載するようになってから応募者が増えましたね。履歴書の志望動機の欄にも制度のことを書いてくれる方が多くなりました。また、面接時に制度の話をすることにより内定の承諾率も上がっています。ここ最近は若手の入職希望者が多くなりましたね。キャリアパスや資格取得支援、年功序列ではなくきっちり仕事をすれば手当が上がるといった評価制度が当施設を選ぶ決め手となっているようです。「なんとなく働いて月給が稼げたらいい」といった方には合わないかもしれませんが、学ぶことに前向きな方を採用できていると思います。

最高教育責任者(CLO)が考える 介護職員が自信を持って働けるキャリアパスとは -株式会社グリーンケア らくゆう会 メープルコートまつばら-
▲目標設定から振り返りまで、明るくアドバイス。今後取りたい資格の相談も

自信を持って介護に取り組める人材を1人でも増やしたい

——教育や評価制度の設計を検討している事業所の方に伝えたいことはありますか?

何でも可視化できるものを作ってあげることが大切ですね。「なぜその評価をしたのか」「なぜこの役職・ポジションなのか」を聞かれたときに、指導教育者として明確な根拠を持ってきちんと答えられるようにする。そして、目標設定するときには「これができれば将来的にどんなレベルが目指せるか」、振り返るときには「弱点を克服すればどうなるか」、近い将来を提示してフィードバックすることが大切です。普段の業務をしっかり言語化したり可視化したりしてくれる人がいることで、職員はやりがいや納得感をもって働けると思います。

——今後の課題や展望はありますか?

評価をするコメントや、評価制度の部分に関してはもっと掘り下げていろいろなものを取り入れていきたいですね。また、現在当施設では中途採用のみ行っているのですが、今後は新卒も採用したいと考えています。学校のシラバスや学習内容を、受け入れる側がしっかり理解しておかないと新卒者は現場で働き始めたときにギャップを感じてしまうはずです。現場に出た後、疲弊して辞めてしまう人たちを今までたくさん見てきたので、そういう人を1人でも減らしたいと考えています。学校で学んだことを現場に落とし込んで、間違いではなかったことを認識してもらい、学んだことが上手く現場と繋がるように指導教育者として手助けしていきたいですね。

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