優秀な人材を確保するには、適切なタイミングでの採用活動が重要です。しかし、新型コロナウイルスの影響で採用活動の中止を余儀なくされた事業所様も多いのではないでしょうか。そんななか、コロナ禍の採用活動としてオンラインでの面接や説明会の実施が注目されています。医療・介護業界における採用活動のオンライン化にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は、現在オンライン選考行っている「社会医療法人杏嶺会」人事部の長谷部様と、実際にオンライン選考を受けた求職者にお話を伺いました。

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プロフィール

社会医療法人杏嶺会 肩書 人事部 係長
長谷部 太 様

社会医療法人杏嶺会 人事部 係長

約10年間、人事部として法人全体の採用を担当し、介護職・看護職合わせて年間約150名の採用を続けている。採用方法を柔軟に変化させ、オンラインでの採用方法を開始した。

オンラインでの採用活動の開始

―― オンラインでの採用活動を始めたきっかけは何ですか?

新型コロナウイルス感染症が流行し始め、患者様への面会の制限をしなければならない状況だったため、当院の採用活動に伴う面接や見学も一時的に停止せざるを得ませんでした。ただ、流行し始めた3、4月は来年度の新卒の採用活動を始めなくてはならず、より良い人材確保のためには逃せない時期でした。そこで、「オンライン」での見学や面接を上層部に提案し、開始することになりました。

―― 今までの採用活動はどのように行っていたのですか?

私が担当していた看護部の採用では、求職者には2度来院してもらっていました。見学後に入職の意志が固まってから面接に来ていただく流れです。見学の際には書面にて病院説明をし、院内見学を行っていました。面接では看護部長と私が面接官となり、対面で実施していました。

オンライン採用の実施方法

―― オンライン採用を開始する際に購入したもの、準備したことは何ですか?

見学用にキーボードが取り外せるパソコンを購入しました。また、テレビ会議と同様にZOOMをダウンロードし、病院説明の資料をパワーポイントで作成し直しました。時間制限があったので、面接時に必ず聞く質問項目を洗い出し、漏れがないように整えました。さらに求職者にもパソコンかスマートフォンへ同じZOOMをダウンロードしてもらいました。

―― オンラインでの見学はどのように行いましたか?

タブレットPCのカメラで院内の様子を映し、リアルタイムで見てもらいました。事前に撮影して視聴ができるようにする方法も考えましたが、求職者によって配属病棟が変わりますし、一人ひとりの気になるポイントは異なるので、臨機応変に対応できるようにしました。

―― オンラインでの面接はどのように行いましたか?

オンライン用アプリに個別でログインできるIDを一人一つ作成し、求職者へ事前に送付しました。面接開始10分前にそのIDにログインしてもらい、接続に不具合がないか確認し、面接を開始しました。画面に表示される経過時間を意識しながら用意していた質問を漏れなく聞くことができ、公平に審査ができたと思います。次の求職者を待たせず進めることもできました。

オンラインでの求職者の印象

―― 対面と比べて求職者の気持ちのくみ取り方に違いはありましたか?

オンラインでは会話に多少のタイムラグがあるものの、思いを伝えたいという姿勢は画面越しでも確認できます。また、そのタイムラグによって声が重ならないように自然と気をつけるので、対面と比べて話を遮ってしまうことは少なくなったと感じました。求職者の気持ちをより理解できたように感じます。

―― 対面での面接と比較して、求職者の印象に変化はありますか?

自分の家で受けていたので安心感があったのか、素が出ていたように感じました。特に初めて面接を受ける学生は、緊張して本来の人柄が見えにくいこともありますが、オンラインでは朗らかな表情で受け答えができている人が多かったです。直接会うよりも本音を聞けた面接になりました。

また、求職者によっては家の様子が映り込むこともあります。几帳面な人はきちんと整理整頓されており気にならないのですが、なかにはカーテンが半分空いていたり、布団が整頓されていなかったりする人もいて人柄がでるなと感じました。

オンライン採用のメリット

―― 新卒採用を行う上でどのような影響がありましたか?

例年に比べて応募人数が多かったです。周辺の病院が採用活動自体を中止している状況で、当院はオンラインでの採用活動を4月からスタートさせ、多い日は1日で60名の面接を実施することができました。柔軟に対応したことによって弊社が求める人材を採用することができたと感じています。

―― 県外などの遠い求職者の採用にどんな影響がありましたか?

九州に住んでいる学生や海上自衛隊で看護師への復帰を希望する中途の求職者の面接をすることができました。コロナ感染の心配はありませんし、船の中からでも場所を問わず面接が可能になりました。また、移動時間が削減されて面接のスケジュールを合わせ合居やすくなりますし、留学中の求職者も海外にいながらの面接が可能です。場所や時間の枠が広がったことは採用活動を行ううえでは大きなメリットだと感じました。

オンライン採用を行う際に気をつけること

―― オンライン見学を開始して応募者の層は変わりましたか?

特に中途看護師の見学では、対面と比較して気軽さを感じたのか、志望理由や退職理由が浅く志望度の高さは対面よりも下がっているように感じました。採用者側の深ぼって質問していく力や見極める力がより問われると思いました。

―― オンライン見学時に気をつけたことはありましたか? 

画面に患者様を映さないように気をつけました。もちろん本部の許可を得ていましたが、患者様やご家族が不快な気持ちにならないように、すれ違うときはカメラの方向を変えたりと気を遣いました。

また、求職者に対してはその都度質問に柔軟に答えるようにしました。例えば、患者層や医療機器などを聞かれれば近くにいた看護師に直接話しかけてもらうなど、リアルタイムで行っていることを活かしその場で疑問解消ができるようにしました。

―― 従来通りの対面での採用方法が良い場合はありますか?

役職者や認定看護師を採用する場合は対面でないと難しいと感じました。採用枠が狭く、ハードルが高いこともありますが、深いところまでしっかりとすり合わせが必要だからです。特定のポジションを目指している人はやりたいことやビジョンが定まっているケースが多いので、それが当院で叶えられるのか、周りの職員への影響がある人物としての人柄はどうかなど、働き方も含めて細かな所まで話していきます。オンラインを活用する場合でも少なくとも一度は対面するべきだと感じました。

―― 通信に時間制限があることに対して気をつけたことはありますか?

現在試用しているアプリは無料なのですが、1回の通信に対して時間制限があるので、タイムスケジュールの管理が難しかったです。特に見学の際は話が盛り上がっていてもう少し時間がほしい場合も終わらないといけないこともありました。求職者と時間をお互いに確認するなど、制限がある中でもさらに満足感のある見学を目指していきたいです。

今後のオンライン採用の活用方法

―― 今後のオンラインでの採用活動についてどう考えますか?

さまざまなメリットがあるのでオンラインでの採用活動は継続していきたいと考えています。ただ、今回オンラインのみで採用をした求職者はまだ入職をしていないので、マッチングについては対面よりも多少心配な点はあります。見学は対面、面接はオンラインで行うなど、求職者のニーズに応じてお互いに不安なく納得感を持った方法を実施していきたいです。

オンライン採用を受けた求職者からの印象

実際に同法人のオンライン選考を受けた求職者にヒアリングをしました。

Mさん(33歳・女性)
経験:三次救急病院を2か所経験

―― オンラインでの見学・面接を受けてみていかがでしたか?

オンラインで採用試験を受けるのは初めてで不安でした。しかし、画面越しでも伝わってくる採用担当の方の信頼できる人柄が決め手になり、結果的に「この病院で働きたい」という意志を固めることができました。私は今まで三次救急病院に勤めていたのですが、「三次から二次への転職はギャップに苦労する人もいる」など、入社後のデメリットも正直に話してくれました。

―― オンライン採用を受ける際の準備や気をつけたことは何ですか?

事前準備で大切なことは、受ける病院をしっかりと調べておくことです。公式サイトでは病院情報や看護部の取り組み、採用情報が充実していたので事前に情報収集をすることができました。どんな病院なのかをある程度確認でき、質問したい内容も明確になり、時間に限りがあるなかでも聞きたいことをしっかり聞くことができました。そのため、オンライン選考を受ける場合は事前に情報収集をするための公式サイトがどれだけ充実しているかがとても大切になると感じました。

―― オンラインでの選考方法の活用についてどう思いますか?

もっと広まってほしいと思いました。オンラインの方がリラックスして話をすることが出来ましたし、移動時間や交通費の削減にもなるので、選考を受ける側としてはありがたいです。ただし、オンライン見学は軽い気持ちで受けてしまうと、なんとなくしか分からなかったという状態で終了する可能性があります。求職者側が事業所の下調べをきちんと行ない、知りたいことや見たい場所などを担当の方に伝えてからスタートすると納得感のある見学になると感じました。

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