新型コロナウイルス感染拡大の影響により、仕事を失う人や休業を余儀なくされる人が増えています。そんななか、社会福祉法人伸こう福祉会では休業・失業した異業種の方の受け入れを開始。これまでに約20人に雇用の機会を提供しています。コロナ禍における採用のノウハウや、異業種出身者を受け入れるメリットについて社会福祉法人伸こう福祉会の勘里様にお伺いしました。
※きらケア研究所は、介護の求人サービス「きらケア」が運営する介護人事に特化した情報サイトです。
社会福祉法人伸こう福祉会 品質推進室
2009年社会福祉法人伸こう福祉会に入職。地域密着型特別養護老人ホームクロスハート野七里・栄など介護現場での勤務を経て、現在は品質推進室で広報や事故の再発防止の取り組みなどに携わっている。
コロナ禍で仕事に困っている方に雇用のチャンスを提供
――新型コロナウイルス感染拡大下の採用において、どんな取り組みを始めましたか?
大きく2つの取り組みを始めました。1つ目は業務縮小中の異業種他社からの出向者の受け入れ、2つ目は失業した異業種経験者の方の雇用です。
介護現場では感染防止対策のため、徹底したバイタルチェックや消毒、ご家族とのオンライン面会の設定など、平時よりも業務が増えています。コロナウイルスの影響で休業、失業した方への雇用機会を提供することは、双方にメリットがあると思っています。
――このような取り組みを始めたきっかけは何ですか?
以前、広報活動の一環として、一般の方向けに「介護」を題材としたミュージカルを上演したことがあったんです。そのときに知り合った演出家の方から、コロナウイルスの感染拡大後に劇団員の方が失業して困っていると聞きました。何か力になれないかと思い、2020年6月から当法人で働いてもらうことにしたのが、最初のきっかけです。
また、時を同じくして、居酒屋チェーン大手のワタミ株式会社の方からも同様の話がありました。ワタミ株式会社は店舗休業中の期間のみ、従業員の就業先を確保したいとのことだったので、出向という形で受け入れを始めました。
――具体的な制度の仕組みを教えてください。
業務縮小中の異業種他社の場合は法人同士の出向契約を結び、出向者を受け入れています。出向者には伸こう福祉会で一定期間就業してもらった後、自社の勤務状況が整い次第、復職してもらう仕組みです。給与は伸こう福祉会の設定給与分を出向契約会社に払い、本来の給与との差額を出向契約会社が負担して、本人に支払います。
失業した異業種経験者の場合は、1年未満の有期雇用契約で非常勤として伸こう福祉会内で業務に従事していただきます。一定期間就業後、希望職種への転職を希望する方は、目途が立ち次第転職してもらい、伸こう福祉会への入職を希望する方に関しては面接のうえ、正規雇用しています。
なお、失業者の中で初めから正規雇用を希望する方には、通常の中途採用と同じように面接を行い、採用しています。正規雇用に関しては「新型コロナウイルスの影響による失業者」専用の窓口は作っていません。
丁寧な教育で介護未経験の方の不安を払拭
――どのように受け入れる方を決めていますか?
募集方法については、これまで特別なことは行っておらず、ワタミ株式会社の方や劇団員の方など、当法人と関わりのあった方を中心に、希望する方は全員受け入れてきました。就業後、正規雇用を望む場合は面接を行い、条件が合わなければお断りすることもありますが、それ以外では選考活動は設けていません。
2020年9月までに、ワタミ株式会社から計14人の出向者を受け入れ、うち3人は自社に復職しています。失業者の方に関しては、1年未満の雇用で劇団員の方を3人受け入れ、うち1人が後に正規雇用で伸こう福祉会に入職しました。受け入れた方々は伸こう福祉会内の特別養護老人ホーム、グループホームなど10施設に配属されています。
――異業種・未経験の方を受け入れた後の教育方法について教えてください。
初めに経験者・未経験者に限らず、全員に「新入職者研修」を行い、法人の理念や施設の概要などについて説明します。その後、未経験の方のみを対象として「介護技術基礎研修」を実施し、ベテランの介護職員が介護技術を指導します。配属後はOJTでの指導を行い、介護未経験の方が不安なく就業できるように努めていますね。

異業種の方の採用で、これまでにない視点を取り入れる
――この取り組みに関して、現場の方の反応はいかがでしたか?
正直、最初はかなり反発がありました。ワタミ株式会社の場合、出向期間を3カ月として設定し、順次延長する取り決めで勤務してもらっていたので、現場からは「そんな短い期間だけ来てもらってどうするんだ」という意見もありました。
しかし、実際に受け入れてみるとすごく一生懸命に働いてくださる方ばかりだったので、ネガティブな意見は自然となくなりましたね。
――今回に限らず、異業種の方を受け入れるメリットはどんなところだと思いますか?
長年、介護の仕事をしていると、良くも悪くも慣れてしまう部分がありますが、異業種の方が加わることで、新たな視点を取り入れられると感じています。
たとえば、ワタミ株式会社の方が刻み食でもおいしく見える食事の盛り付け方を教えてくださったことがあります。同じメニューでも、盛り付け方でここまで違うのかと感動しました。また、「もしかしたらこれが入居者様の最後の食事になるかもしれないから、毎回の食事を大切にしたい」と食事への思いを語るのを聞いて、はっとさせられたことがあります。劇団員の方は、介護職としての役割を完璧に演じるプロ意識が素晴らしいです。
ほかにも、園芸関係の仕事をしていた方が庭造りで入居者様を喜ばせてくださったり、音楽関係の仕事をしていた方がレクリエーションで演奏を披露してくださったり、それぞれの得意分野を活かして仕事をしていただいていると感じます。介助のやり方は入職してきてからいくらでも覚えられるので、こうした人としての引き出しの多さがあることは強みだと思います。
――今後の採用活動について考えていることはありますか?
今後は当法人と関わりがある方以外でも、業務縮小で困っている会社や個人の方に対応したいと考えています。新型コロナウイルスの感染拡大により、何かと大変な世の中ではありますが、休業・失業した方に雇用の機会を提供することで、少しでも力になりたいですね。
採用ご担当者様へ
医療・介護の分野で成果を出し続けてきた弊社のノウハウとネットワークを、御社の課題解決にぜひともご活用ください 。
掲載に関するお問い合わせや、採用についてのお悩みなどはこちらから。
お問い合わせは「レバウェル介護」まで
よろしくお願いします。