近年、SNSを活用したソーシャルリクルーティングに取り組む企業が増えています。ソーシャルリクルーティングは、コストがかからないことや簡単に始められることから、中小企業でも導入しやすい採用手法です。中小企業が多い介護事業所にも適した採用手法だと言えるでしょう。この記事ではソーシャルリクルーティングのメリットやデメリット、採用に適したSNSなどを紹介します。

ソーシャルリクルーティングとは何か

ソーシャルリクルーティングとはFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeなどのSNSを活用した採用手法のことを指します。日本では2010年頃から新卒採用の手法として広まり始め、今では中途採用にも導入されています。
プライベートで使う人が多いSNSを採用に取り入れることで、多くの人と接点を持ち、アプローチがしやすくなります。

介護業界でソーシャルリクルーティングが注目されている背景

介護業界でソーシャルリクルーティングが注目されている背景のひとつは、やはり人手不足が挙げられます。厚生労働省が発表した 職業別一般職業紹介状況の参考統計表によれば、2021年6月の介護業界の有効求人倍率(正社員)は2.98倍でした。これは、全職業の有効求人倍率(正社員)の1.03倍と比べて高い値であり、業界全体として売り手市場であると言えます。売り手市場の状況では、求人情報を掲載するだけの待ちの姿勢では人が集まりません。介護業界は中小企業が多く、大企業のように知名度を活かした採用が難しいため、特にその傾向が強いと言えるでしょう。

人材を確保するには、事業所側から求職者に積極的にアプローチして採用につなげたり、すぐには転職を考えていない人も含めて広く自社の認知度を上げていったりする必要があります。そのための手段としてソーシャルリクルーティングは有効です。利用者の多いSNSを活用することで、効果的に認知度の向上や採用に取り組むことができます。

SNSを活用した採用のメリット

SNSを活用した採用には多くのメリットがあります。特に中小企業が多い介護事業所にとって、メリットとなる点を紹介します。

幅広い年代へのアプローチ

SNSは利用者が多いうえ、拡散力があるため、幅広い層にアプローチできるのが特徴です。2021年度の総務省の情報通信白書によると、SNSを利用している人の割合は2019年には69.8%でしたが、2020年には73.8%まで増加しており、すべての年齢層で利用率が上昇しています。また、SNSは拡散力があり、ユーザーが投稿をシェアすれば、ほかのユーザーにも投稿を見てもらうことができるので、自社サイトや採用サイトよりも幅広い層に向けて情報発信することができます。

採用活動のコスト削減

Facebook、Twitter、Instagram、YouTubeなどのSNSはすべて無料で利用できます。ほかの採用手法と比べるとコストが削減できるので、採用にコストをかけられない事業所にとっては大きなメリットです。

自社の雰囲気を伝えやすい

SNSでは写真や動画、文章を通して、現場の様子や職員の人柄など、自社の雰囲気をライトに伝えやすいところがメリットです。求人広告や採用媒体では伝えられる情報の項目が決まっており、規模やハード面で他社と比べられやすくなりますが、SNSではそれ以外の自社の良さを伝えることができます。そのため、中小企業が多い介護事業所には適した採用手段だと言えるでしょう。

運用が比較的簡単

SNSは誰でも使えるように、簡単に登録や投稿ができる仕組みになっています。後述するように長期的な運用は必要になりますが、運用の方法自体はシンプルで自社の採用サイトを作るよりも手軽に運用し始められるのが特徴です。Facebook、Twitter、InstagramといったSNSであれば、スマートフォンから簡単に更新できるため、気軽に始めることができます。

求職者のスクリーニングが可能

求職者をスカウトしたり、選考に進んだりする前に求職者のスクリーニングができるのはSNSを活用する大きなメリットです。通常の選考であれば、企業側は履歴書・職務経歴書や数回の面接で話した印象など限られた情報でしか、求職者を判断できません。

SNSを活用することにより、プロフィールや日常的に発信している内容から、その人の経歴や人柄、日常生活を知ることができます。通常の選考よりも多くの情報から判断ができるため、ミスマッチを減らすことにもつながります。

SNSを活用した採用のデメリット

SNSは簡単に始められる一方で、こまめな更新や長期的な運用が必要になるなど、デメリットもあります。デメリットとなる点は下記の通りです。

運用に手間と時間がかかる

SNSはホームページのように一度作ったらある程度の期間運用できるというものではなく、継続的な発信が必要になります。また、日々多くの投稿が流れている中で見ている人に興味を持ってフォローしてもらったり、既存のフォロワーに関心を持ち続けてもらったりするためには、投稿の質を維持することも大切です。

当然、質を担保した投稿を継続的に行うのは、時間や手間がかかります。介護事業所の場合、採用担当者や職員が日常業務に加えてSNSの運用も担当するのは負担が大きくなる可能性があります。

炎上する可能性がある

SNSを活用するにあたって気を付けるべきことは炎上です。SNSではちょっとしたことで、発信の意図とは異なる解釈をされたり、事業所内では当たり前の考え方が批判の対象になったりするリスクがあります。拡散力があることがマイナスに働き、悪い情報もあっという間に広まってしまいます。不適切な内容や言葉遣いに注意するのはもちろん、利用者さまの写真を掲載する際は本人やご家族に許可を取るなど、個人情報の取り扱いにも十分注意しましょう。

フォロワーを確保しないと効果が薄い

特に中小企業が多い介護事業所がSNSを活用して情報発信するには、まずはある程度のフォロワーを確保しなければいけません。フォロワーを増やすためには前述のように、継続的に見る人を飽きさせないコンテンツを提供し、地道に取り組んでいく必要があるでしょう。

企業SNSの活用方法

SNSの活用方法は1つではなく、まず企業の公式アカウントで広く情報発信して認知度の向上につなげたり、採用に特化したアカウントを作って採用関連の情報を発信したりとさまざまな使い方があります。目的に応じて使い分けましょう。

認知度を上げるためのツールとして活用する

まずは企業の公式アカウントを使って、企業の情報を発信し、認知度向上を図っていく手段があります。介護事業所であれば、イベントやレクリエーション、利用者さまの様子など事業所のトピックスに加え、施設見学会や中途採用の選考情報など採用関連の情報を発信するとよいでしょう。採用専門のアカウントではなく、公式アカウントで幅広い内容を載せていくことで、今すぐには転職を考えていない人にも自社のことを知ってもらうことができます。ただし、自社の認知度を向上させてもすぐに採用につながるわけではないので、長期的な目線で効果を考えていく必要があります。

採用に特化したメディアとして活用する

公式アカウントとは異なり、採用専用のアカウントを作り、採用に特化した情報を発信していく方法もあります。このアカウントでは、募集要項や職員のインタビュー、中途採用の選考の情報などを載せます。SNSでの採用に注力している事業所の場合は、この方法を使うのもおすすめです。

求職者と直接やりとりするためのツールとして活用する

LINEやInstagramのDMを使い、求職者と直接やりとりするという方法もあります。コミュニケーションツールとしてはメールよりもLINEなどの方が身近であるケースが多く、目にしてもらいやすいことや、メールよりもカジュアルにコミュニケーションが取れるといったメリットがあるでしょう。

採用に効果的なSNSの種類

採用に効果的なSNSの種類とそれぞれの特徴を紹介します。特徴を踏まえたうえで自社に合うものを選んでみてください。

Facebook(フェイスブック)

Facebookは実名制で、利用者は顔写真、年齢、職業、学歴などを登録しています。そのため、企業側にとっては求職者の詳細なプロフィールを把握したうえでアプローチできるのがメリットです。広告を出す際にも年齢、地域、性別、学歴、職歴など詳細に設定したうえで、届けたい層に向けて出稿(広告を出すこと)することができます。採用したい人の属性を絞って活動したい企業に最適なSNSだといえるでしょう。また、利用者は30代以上が多いので、キャリアのある人へアプローチしたい企業にも向いています。

Instagram(インスタグラム)

若年層に人気があり、ほかのSNSと比較して女性の利用率が高いのがInstagramです。Instagramの強みは、写真や動画といった視覚的にユーザーに訴えかける投稿をしやすいところ。職場の雰囲気や職員の様子などを知ってもらうのに適しています。また、投稿にはテキストを2200字まで入力できるので、写真や動画と併せて文章でも魅力をアピールしたり、ハッシュタグをつけてタグ検索でヒットしやすくなるようにしたりと工夫次第で活用方法は広がります。

Twitter(ツイッター)

Twitterは140字以内の文章と画像、映像を発信できるサービスです。限られた文字数の中で伝えたいことをシンプルに表現するため、長文は読みづらいと感じる若者にもアプローチしやすいのが強みです。また、ほかのSNSと比べて拡散力が強く、他人の投稿をリツイートする機能により、内容が広まりやすいという特徴があります。「ホームページとは違う親しみやすい投稿でまずは自社の認知度を上げたい」「新卒や第二新卒などの若年層にアプローチしたい」という企業に適したツールです。

Youtube(ユーチューブ)

Youtubeは登録すれば誰でも自由に動画を投稿・閲覧することができるサービスです。職員のインタビューや経営者からのメッセージなどを分かりやすく伝えるのに適しているでしょう。また、事前に収録した動画を配信するだけではなく、視聴者とリアルタイムで繋がれるライブ配信も可能。Youtubeは若者に人気のあるツールとして注目を集めており、近年では公式チャンネルを持ち、採用活動に利用する企業も増えています。

企業SNSの運用のコツ

SNSの活用方法や採用に効果的なSNSの種類が分かったところで、運用するためのコツについても紹介します。

目的とターゲットに合ったSNSを選ぶ

大前提として、目的とターゲットに合ったSNSを選ぶことが大切です。たとえば、自社の情報を素早く拡散させたいのであればTwitter、視覚的にユーザーに訴えかける投稿で自社の魅力を伝えたいのであればInstagram、採用したい人の属性を絞って広告を出したり、求職者にアプローチしたりしたいのであればFacebook、動画でメッセージを分かりやすく伝えたいのであればYoutubeなど目的によって最適なSNSは違います。また、30代以上をターゲットとしたいならFacebook、20代の若年層ならTwitterやInstagramとターゲットの年齢層によって使い分けるのもいいでしょう。

求職者が知りたい情報を発信する

目的とターゲットが明確になったら、今度はそのターゲットが知りたいと思うような情報を発信することが大切です。たとえばキャリアのある人の採用を考えているなら、SNSには若手ではなく、中堅・ベテラン職員のインタビューを載せるというように、ターゲットに合ったコンテンツを用意しましょう。

インターネットリテラシーのある担当者を配置する

今までお伝えしてきたように、SNSには炎上のリスクがあります。自社のアピールをしようと思うがあまり、一般的な価値観から外れた投稿をしてしまうこともあるかもしれません。たった一度の失敗でも、自社の信用を失うことにもつながります。そのため、普段からSNSを利用している方やSNSの運用に知見のある方を担当者として専任で配置することをおすすめします。

ソーシャルリクルーティングで成功した介護事業所の事例

実際にソーシャルリクルーティングにより、認知度向上や応募者数増加につながった事業所の例をSNSの種類別に紹介します。

Instagram(インスタグラム)を活用した事例

社会福祉法人誠正会 特別養護老人ホームいちご

SNSで介護の魅力を発信!フォロワー2.7万人のインスタグラム活用術-社会福祉法人誠正会 特別養護老人ホームいちご-
出典:https://job.kiracare.jp

社会福祉法人誠正会特別養護老人ホームいちごでは、介護職という仕事へのマイナスイメージを払拭し、介護の魅力を伝えるためにSNSでの発信を開始しました。当初はホームページやFacebook、Twitterでの発信を続けていましたが、施設の認知度がまだ低かったことから、見てもらえる機会が少なくなかなかうまくいかなかったと言います。しかし、Instagramは始めてから1年ほどで利用者さまとの日常を切り取った1本の動画がきっかけとして再生回数が増え、フォロワーも2.7万人(2021年4月時点)にまでなりました。施設の認知度も上がり、施設見学者や利用者の増加につながったほか、採用面では県外から就職してくれる人も出てきたそうです。
詳しくは「SNSで介護の魅力を発信!フォロワー2.7万人のインスタグラム活用術-社会福祉法人誠正会 特別養護老人ホームいちご-」をご覧ください。

HIDAMARI GROUP

SNSを使った採用に成功! 求職者の心に響くSNSの活用方法とは?-HIDAMARI GROUP-
出典:https://job.kiracare.jp

HIDAMARI GROUPでは、人材不足の状況下でより多くの人の目に止まる募集方法を追求し、SNSの運用を始めました。採用したいターゲットに合わせ、SNSの中では若年層のユーザーが多いInstagramを主に活用しており、新規オープンの事業所がない限り「募集」という言葉は使わず、あくまで会社を知ってもらうツールとして使っています。それにも関わらず、発信をし続けたことで、会社の考えに共感した人から「今、募集していますか?」とInstagramのDMやホームページのチャットから問い合わせが来るようになったそうです。HIDAMARI GROUPではこの方法で、2017年以前には3~4名だった応募者がSNS運用開始2年後の2019年には80名まで増えました。単に応募者数が増加しただけではなく、会社の考えに共感してくれたうえで応募する人が増えたことで、ミスマッチの防止にも効果があったと言います。
詳しくは、「SNSを使った採用に成功! 求職者の心に響くSNSの活用方法とは?-HIDAMARI GROUP-」をご覧ください。

YouTubeを活用した事例

社会福祉法人すこやか福祉会

YouTube動画を活用した採用戦略 若手職員のアイデアで採用活性化-社会福祉法人すこやか福祉会-
出典:https://job.kiracare.jp/lab

社会福祉法人すこやか福祉会では、若手人材の確保に向けて若手職員が介護の魅力を発信する「ケアワーカー魅力発信委員会」を発足しました。情報発信にあたっては、時代の流れに合わせてツールを取り入れることが大切だと考え、YouTubeでの動画配信に力を入れています。YouTubeで扱っているのは、職員の介護現場でのリアルな姿や実際の業務内容、取り組みなどです。採用への効果はこれから検証する段階ですが、面接に来る学生や求職者から「YouTubeを見ました」という声が挙がるようになったそうです。
詳しくは、「YouTube動画を活用した採用戦略 若手職員のアイデアで採用活性化-社会福祉法人すこやか福祉会-」をご覧ください。

複数のSNSを活用した事例

社会福祉法人基弘会

SNS活用で「採用・集客」アップ! 介護事業所における広報の役割とは?-社会福祉法人基弘会-
出典:https://job.kiracare.jp

社会福祉法人基弘会では、広報戦略室が主導となり、複数のSNSを使った情報発信を行っています。各SNSは目的別に使い分けており、Twitterは若年層のユーザーが多いので、新卒採用の応募者増加につながるように親しみやすい内容を投稿する、Facebookではブランディングを目的に他SNSの情報を随時アップするというように活用しています。SNSの運用を始めてから、面接設定後のキャンセルがほぼゼロになりました。ホームページやSNSを見てある程度イメージを把握したうえで応募する人が増えたため、キャンセルの減少につながっています。
詳しくは、「SNS活用で「採用・集客」アップ! 介護事業所における広報の役割とは?-社会福祉法人基弘会-」をご覧ください。

社会福祉法人弘仁会 特別養護老人ホーム美里ヒルズ

SNSの活用で認知度が向上!“美里ブランド”を作り上げた運用方法とは-社会福祉法人弘仁会 特別養護老人ホーム美里ヒルズ-
出典:https://job.kiracare.jp

社会福祉法人弘仁会特別養護老人ホーム美里ヒルズでは、施設の認知度向上や人材確保のためにInstagramやFacebookを活用しています。投稿する内容はイベントの写真など、普段の利用者さまや職員の様子が伝わりやすいものを選んでいます。SNSは採用だけに特化したものではありませんが、SNSをきっかけに美里ヒルズの方針に共感して応募してくれる人が増えたそうです。ホームページでは更新の頻度を上げても認知度がないと見てくれる人は増えませんが、SNSの投稿は施設のことを知らない人の目に触れることも多いため、認知度が向上しやすいのがメリットだと言います。
詳しくは、「SNSの活用で認知度が向上!“美里ブランド”を作り上げた運用方法とは-社会福祉法人弘仁会 特別養護老人ホーム美里ヒルズ-」をご覧ください。

まとめ

SNSを活用したソーシャルリクルーティングは今後ますます増えていくことが予想されます。SNSの持つ情報拡散力を利用すれば、中小企業の多い介護事業所でも認知度の向上や応募者の増加につなげることができるはずです。他事業所の例も参考にしながら、自社のターゲットや目的に合わせて効果的にSNSを活用していきましょう。

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