人手不足の介護現場での見守り業務は、職員に負担をかけているのが実態です。このような中で、職員や利用者さんが快適に過ごせるよう、見守りシステムを導入している介護施設も増えています。

この記事では、職員の負担軽減のためにICT機器導入を検討されている介護施設の担当者様向けに、見守りシステムの種類や導入のメリット、事例をご紹介。見守りシステムを活用している介護現場の声を参考に、導入を検討してみましょう。

介護施設の見守りシステムとは?

介護施設で使用される見守りシステムとは、利用者さんの見守りをサポートする機器を指します。利用者さんが安心安全に毎日を過ごせるよう、居室やベッドに設置されるシステムです。種類によっては利用者さんの状態に変化があった場合にナースコールやアラームが起動したり、職員が持つ端末に通知されたりするため、迅速な対応を実現できます。

介護施設で使用される見守りシステムの種類

見守りシステムには、荷重による感知や赤外線、超音波、画像による識別などさまざまな種類があります。下記では、見守りシステムの種類をまとめました。

マットセンサー

マットセンサーは、利用者さんの体重を検知するタイプの見守りシステムです。利用者さんがベッドから降りるときやベッド柵をつかむとき、上体を起こすときなど、マットの荷重の有無によってセンサーが反応します。転倒や転落、徘徊の恐れがあるときに役立つセンサーです。

赤外線センサー

赤外線センサーは、照射範囲にいる利用者さんの体温を検知します。上体を起こしたり、部屋から出ようとしたりする際に反応するため、体調変化や入退室の状況確認が可能です。利用者さんの視野に入りにくいので、機器を導入しやすいのもポイントといえます。

超音波センサー

超音波センサーは、照射範囲にいる利用者さんの動きを検知するシステムです。赤外線と同様、利用者さんがベッドから降りたり部屋から出たりするときに超音波センサーが反応します。非接触型でプライバシーにも配慮されているのが強みの機器です。

画像センサー

画像センサーは、カメラが撮影した画像に変化があった際に報知されます。利用者さんの居室から離れていても、画像が端末に映るので状況判断をしやすいのが強みです。居室内の状況をリアルタイムで確認できるので、利用者さんの行動を予測して迅速な対応をしやすくなります。

出典
厚生労働省
介護ロボット重点分野別 – 講師養成テキスト – 第4章 見守り支援機器(介護施設)
https://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/chotatu/wto-kobetu/2017/02/dl/wt0227-04_08.pdf

介護施設で見守りシステムを導入する4つのメリット

介護施設で見守りシステムを導入すれば、業務効率の向上や事故防止につながります。ここでは、見守りシステムを取り入れる4つのメリットを解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.業務効率が向上する

介護施設の利用者数が多かったり業務負担が大きかったりすると、介護職員だけで見守りを徹底するのは難しいでしょう。見守りシステムを活用すれば、日夜問わず利用者さんの動きをチェックできるため、最適なタイミングで介護サービスを提供できます。また、介護記録の記入や別の時間帯で働く職員への引き継ぎによる手間が軽減するのも、業務効率化における大きなメリットです。

2.利用者さんの事故防止につながる

見守りシステムは利用者さんの状況をリアルタイムで把握できるので、事故・転倒・転落などの防止に役立ちます。見守りシステムを併用することで雑務が減り、個別ケアにあたる時間を増やせる可能性も考えられるでしょう。見守りと介護サービスが充実すれば、これまで以上に利用者さんの快適な生活をサポートできます。

3.職員の心身負担を軽減できる

見守り業務のすべてを介護職員に任せてしまうと、疲労やストレスに影響する恐れも。利用者さんの転倒や怪我、ヒヤリハットを経験すると、必要以上にプレッシャーを感じ、「自分は介護職に向いていないのでは」「辞めたい」と感じる職員もいます。見守りシステムを取り入れて利用者さんが問題なく過ごせていることを簡単に確認できれば、職員の負担が軽減し、離職防止につながります。

4.人材の確保や定着につながる

見守りシステムを有効活用し、職員が安心して働ける環境が整うことで、定着率向上や、求職者による応募増加に繋がります。介護が必要な高齢者の増加と労働力人口の減少にともない、無理なく働ける環境整備による人材確保はますます重要になっていくでしょう。

介護施設の見守りシステムにおける課題

見守りシステムの導入は、費用や時間といった課題があります。見守りシステムにおける課題を理解したうえで導入を検討しましょう。

初期費用

見守りシステムの導入には、初期費用がかかります。なるべく費用を抑えたいというのが本音かもしれませんが、見守りシステムは値段で決めるのではなく、経営課題や現場の状況に合わせて必要なものを取り入れるようにしましょう。また、インターネットが接続されていない介護施設では、システム機器以外にも通信環境の整備が必要です。

導入による費用はかかりますが、費用対効果を考えると見守りシステムを取り入れたほうが安心安全の経営につながるでしょう。

現場に浸透するまでの時間

見守りシステムの導入にあたり、操作練習や勉強会、ガイドラインの作成、職員全体が共通認識を持つことなどが求められます。故障や誤作動が起きたときの対処方法についてもまとめることが重要です。インターネットや機械の操作に不慣れな職員がいることも考えられるため、介護施設で見守りシステムをスムーズに運用できるまでには時間を要するでしょう。

導入による手間はありますが、利用者さんや職員が快適に過ごせるようにするためにも、見守りシステムのメリットは大きいと言えます。

介護施設における見守りシステムの導入事例

ここでは、実際に介護施設で見守りシステムを導入した事例をご紹介します。見守りシステムによって改善された現場の声を知り、導入検討の参考にしてください。

社会福祉法人  青森社会福祉振興団

介護施設の見守りシステムとは?導入メリットや事例

社会福祉法人青森社会福祉振興団は、データに基づいた介護の必要性を感じてICT化に取り組みました。利用者さん一人ひとりの排泄量や排泄時間をデータ化し、割合の高い時間帯におむつ交換をすることで効率的な排泄ケアを実現しています。

また、同法人では利用者さんが安心して睡眠を取れるよう「安眠プロジェクト」も始動しました。見守りセンサーの導入によって巡回業務が減り、職員の精神的負担を軽減しています。就寝中の利用者さんが最適な姿勢を保ったり、褥創を防止したりするため、ICTマットレスも取り入れています。

人でなくても対応できる業務をICT機器に任せることで、業務負担が減り、利用者さんとのコミュニケーション時間を確保できることがメリットです。

▶詳しくはこちら

ICT化で現場がクリアに!「安眠プロジェクト」で疲弊させない介護へ-社会福祉法人 青森社会福祉振興団

特別養護老人ホームつるかめの縁

介護施設の見守りシステムとは?導入メリットや事例

社会福祉法人つるかめ特別養護老人ホームつるかめの縁では、利用者さんの睡眠状態や状態変化を感知できる見守りシステムを導入しました。すべてを機械に任せるのではなく、見守りシステムと巡視を組み合わせることで業務の効率化を目指しています。

また、カメラではなくセンサータイプの見守りシステムを選ぶことで、利用者さんのプライバシーにも配慮しています。高感度のセンサーが利用者さんの呼吸や脈拍数、部屋の室温度、離床状態などを感知し、異変があれば職員の端末に通知がされる仕組みです。ベッドのそばまで行くと起きてしまう利用者さんもいるため、就寝状況はデータで確認し、部屋の入口で布団のはだけや足が布団から出ていないかを確認しています。

実際に見守りシステムを活用することで、睡眠導入剤の使用を減らすころに成功し、職員側も「見守りシステムがないところでは働けない」という意見が出るほど、負担軽減の効果がありました。

▶詳しくはこちら

眠りからケアを変える!見守りシステム「まもる~の」の導入事例 -社会福祉法人つるかめ 特別養護老人ホームつるかめの縁- きらケア研究所

特別養護老人ホームもみじ館

介護施設の見守りシステムとは?導入メリットや事例

社会福祉法人北養会特別養護老人ホームもみじ館では、積極的にICT機器の活用を推進してきました。見守りシステムは利用者さんごとに設定を変え、通知を絞ることで職員が効率的に動けるようにしています。たとえば、転倒リスクの高い方には身体を起こした時点で通知される設定をすることで、トラブルを未然に防げるよう注力しています。

また、心拍数や呼吸、睡眠の状態を確認できる機能を活用し、巡視の負担軽減も実現しました。見守りシステムの導入で巡視の回数は以前の半分ほどに減り、職員がゆとりを持って夜勤に携われるようになったと語っています。同法人は、見守りシステムを日中のケア改善にも活用していきたいと考えています。

▶詳しくはこちら

職員の負担軽減と利用者さまの安全確保が叶う!見守りシステムの活用術-社会福祉法人北養会 特別養護老人ホームもみじ館

特別養護老人ホーム鈴鹿グリーンホーム

介護施設の見守りシステムとは?導入メリットや事例

社会福祉法人鈴鹿福祉会特別養護老人ホーム鈴鹿グリーンホームでは、将来的な人手不足解消の手段として介護ロボットを導入しました。具体的には、見守りシステムや記録システム、入浴支援機器などです。複数の機器を組み合わせることで、利用者さんにとって最適なタイミングでの支援が可能になりました。

また、同法人には、見守りシステムなどのICT機器を導入していることを確認したうえで応募してくれる求職者もいるようです。実際に働く職員へ見守りシステムのない状態に戻れるかどうかを聞いてみると、「戻れない」の回答がほとんどという結果になりました。このような背景から、見守りシステムを取り入れることで、ある程度の働きやすさや定着に効果があると考えています。

▶詳しくはこちら

介護ロボット・ICTの連携で次世代の介護を実現した方法とは?-社会福祉法人鈴鹿福祉会 特別養護老人ホーム鈴鹿グリーンホーム

グループホームひまわりの場合

介護施設の見守りシステムとは?導入メリットや事例

社会福祉法人信愛報恩会グループホームひまわりでは、業務効率化や職員の負担軽減、生産性向上を目指して居室すべてに見守りシステムを導入しました。見守りシステムの導入によって利用者さんの状況を常に把握できるようになり、職員の「いつ何があるかわからない」という不安軽減を実感しています。

また、部屋に行かなくても状態確認が可能なため、夜間2時間おきに行っていた見回りが不要になりました。見守りシステムのおかげでほかのユニットの状況がわかるようになり、協力して業務を進められるようになった効果も見られています。

同法人では、見守りシステムの導入で空いた時間をどのように活用していくかが今後の課題となっているようです。

▶詳しくはこちら

ICT活用で効果を実感!導入半年で業務効率化と負担軽減を実現した活用術-社会福祉法人信愛報恩会 グループホームひまわり- きらケア研究所

まとめ

介護施設で使用される見守りシステムとは、利用者さんの見守りをサポートする機器のことです。居室やベッドに設置されるシステムで、利用者さんの異変を感知したら通知がされるよう設定されています。見守りシステムの種類は、荷重を検知するものや赤外線センサー、超音波センサー、画像センサーなどさまざまです。介護施設で見守りシステムを導入すれば、職員の業務効率が向上したり心身負担を軽減できたりします。また、利用者さんの事故防止や人材の確保および定着につなげられるでしょう。実際の導入事例については、きらケア研究所のページをご確認ください。

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