介護ロボットは使いこなせれば便利ですが、「何から導入したらいいか分からない」「どのように活用したらいいのかな」と悩む事業所も多いのではないでしょうか。鈴鹿グリーンホームでは、複数のロボットを活用した新しい介護のあり方を追求。従来のやり方にとらわれず、柔軟な発想で挑戦を続けています。活用方法の工夫や今後のプランなどを施設長の服部様と生活相談員の原田様にお伺いしました。
プロフィール

社会福祉法人鈴鹿福祉会 特別養護老人ホーム鈴鹿グリーンホーム 施設長
管理栄養士としての勤務を経て、1999年に社会福祉法人鈴鹿福祉会に入職。2011年に施設長に就任。施設・法人の運営に携わり、介護ロボットの導入を積極的に進めている。

社会福祉法人鈴鹿福祉会 特別養護老人ホーム鈴鹿グリーンホーム 生活相談員
2012年社会福祉法人鈴鹿福祉会に入職。現在は特別養護老人ホームやショートステイの生活相談員として勤務している。
迫りくる深刻な人手不足への対策が介護ロボットの導入のきっかけに
――介護ロボットを導入したきっかけを教えてください。
将来的な人手不足を解決するための手段の一つとして、介護ロボットを導入しました。当施設のある三重県鈴鹿市は高齢化と働き手不足が進む地域です。一説によると、この地域の高齢者の割合と生産年齢人口は、2030年の日本の状況を示しているともいわれています。今のケアの質を維持するためには、将来的に特別養護老人ホームでは約1.3倍の人手、または人員が確保できなかった場合は職員1人あたり1日11時間労働が必要になると分かりました。
そこで、人員確保や介護予防にも取り組みつつ、人手不足への対策として、2016年からICTや介護ロボットを導入し始めました。
――具体的にはどんな機器を導入していますか?
装着型・非装着型移乗介護機器や排せつ予測デバイス、入浴支援機器、見守りシステム、記録システム、コミュニケーションロボットなどを導入しています。なるべく幅広い分野の介護ロボットを取り入れるようにしていますね。理由は2つあって、1つは多岐に渡る分野の情報収集ができるからです。見守りシステムなら入居者様の睡眠の深さや状態変化といった、それぞれの機器ならではの情報が集められますし、介護ロボットへの理解や知識も深められます。もう1つは、職員にICTや介護ロボットを使いこなせる人材になってもらうべく、普段から多くの機器に触れてほしいと考えているからです。
複数の機器を組み合わせることで広がる可能性
――職員の方は介護ロボットの導入に関して抵抗感はなかったのでしょうか?
全くありませんでした。職員が普段から新しい価値観・新しいものを取り入れるのに慣れているからだと思いますね。実は、当施設は従来型の特養でしたが、2014年にユニット型に改修した経緯があります。入居者様に施設を利用していただきつつ、改修を進めたので、日々業務内容やオペレーションが変わってしまう状態でした。結果、そのとき職員に臨機応変に対応する力を身に付けてもらうことができ、介護ロボットや新しい制度を導入するときも、「じゃあやってみましょうか」とすっと受け入れてもらえるようになりました。やはり、日頃から新しいことを取り入れるのに慣れている状態だと変化にも対応しやすいと感じますね。積極的な職員が多く、新しい介護ロボットを導入したときにどんな風に活用するかも職員同士で話し合って決められています。
――活用方法についてどんな工夫をしていますか?
介護ロボットを単体で使うだけではなく、複数の機器を組み合わせて使うようにしています。たとえば、当施設では排せつ予測デバイス、見守りシステム、記録システムを連動させた排せつ支援に取り組んでいます。
以前から「入居者様に夜間安眠してもらいつつ、トイレに行きたいタイミングで排せつ介助をする」ことは課題としてありました。しかし、眠りが浅くなるタイミングとトイレに行きたくなるタイミングは必ずしも同じになるとは限らず、どのタイミングで支援するのが一番適切なのかは、経験や勘だけで乗り越えられない壁となっていました。そこで、排せつ予測デバイスと見守りシステムを連動させて記録システムに自動記録することで、入居者様の眠りが浅いかつ尿をしたいタイミングで排せつ支援ができるようになりました。ただ、入居者様の身体つきによって、5~9割と精度に差があるので、改善方法を模索している最中です。
間接的な連動になってしまっているほかの機器に関しても、機器同士を直接連動させられるようにするなど、モノとモノがインターネットを通してつながるIoT化のさらなる拡大に向けて、取り組んでいます。私たちだけでは実現が難しいこともあるので、メーカーにお願いすることもありますね。さらに、使ってみるなかで「こんな機能があったら便利だな」と思ったことは随時メーカーに提案しています。
――介護ロボットを導入したことで、採用や定着に効果はありましたか?
一定の効果はあると思います。採用に関しては、定期的に人員確保ができています。介護ロボットのことはホームページで詳しく紹介しているので、確認したうえで応募してくださる方がほとんどです。新しいことを学びたいと入職される方の割合も多いのかなと思っていますね。
定着に関しては、職員に「介護ロボットを使う前に状態に戻れる?」と聞くと「戻れないです」と答える方がほとんどなので、ある程度職員の働きやすさや定着にも効果はあると考えています。介護ロボットの導入だけではなく、複合的な要因にはなりますが、離職率は10%未満と低く抑えられています。

介護をイノベーティブでクリエイティブな領域へ
――今後の介護ロボットの活用方法について考えていることを教えてください。
今後は、モノとモノがつながるIoT化がどんどん進んでいけばいいなと思います。介護ロボットが自動で動き、その動きを記録システムによって自動で記録して、リアルタイムで職員に通知が来て、という風に完結するのが理想です。
あとは、介護ロボットやICTの活用によって、時間と場所にとらわれずに介護業務ができるようになると考えています。たとえば、在宅でも見守りシステムから送られたデータを見ることができれば、一部の業務を担える可能性があります。既存のやり方にとらわれずに、テクノロジーを活用した新しい介護のあり方を追求していきたいです。
介護業界ではまだ「現場で仕事をすることが100%」と考えられている部分があるので、そこの見直しをしていけたらいいなと思いますね。会議への参加や記録業務を自宅にいながらオンラインで行えるようにするなど、テクノロジーの活用の仕方次第で、さまざまな展開が可能だと思っています。
――介護ロボットの導入を検討しているほかの介護事業所に伝えたいことはありますか?
施設形態や利用者様のADLにもよりますが、まずは記録システムや見守りシステムから導入し始めると、職員の方に介護ロボットの利便性を分かりやすく感じていただきやすいのかなと思います。あわせてインカムも取り入れると、見守りシステムで何か異変があったときにすぐにほかのスタッフに応援を頼めるので便利です。
介護ロボットの活用の仕方に正解はありません。トライ&エラーの精神で、さまざまな方法を試し、それぞれの施設に合った方法を見つけていただくと良いと思います。なかには「今までのやり方を変えたくない」という方もいるかもしれませんが、新しいことにチャレンジするのは楽しいですし、業務の負担も減り、ゆとりが出る分介護の質を上げることもできます。介護ロボットやICTにより、介護のイメージが「イノベーティブでクリエイティブでおもしろいもの」になっていくというポジティブな側面を一緒に感じていただけらうれしいです。
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