睡眠状態や状態変化を感知できる見守りシステム「まもる~の」。導入により、リアルタイムで利用者様の状態をモニタリングできるだけでなく、睡眠のデータを活かして日中のケアを改善できるという大きな可能性を秘めています。全床にまもる~のを設置し「睡眠特化型特養」として、特別養護老人ホームつるかめの縁をオープンさせた施設長の伊藤さんに活用の仕方やメリットについてお伺いしました。

※きらケア研究所は、介護の求人サービス「きらケア」が運営する介護人事に特化した情報サイトです。

プロフィール

眠りからケアを変える!見守りシステム「まもる~の」の導入事例 -社会福祉法人つるかめ 特別養護老人ホームつるかめの縁-
伊藤 順哉 様

社会福祉法人つるかめ 特別養護老人ホーム つるかめの縁  施設長

1995年から介護業務に従事。2004年に株式会社つるかめに入職し、2017年に社会福祉法人つるかめを立ち上げ、2018年に特別養護老人ホームつるかめの縁を開設。施設長として利用者様の自立支援のためのリハビリや見守りシステムの共同開発などに幅広く携わっている。

睡眠のデータから見えてきた利用者様の本当の姿

——まもる~のを導入するまでの経緯を教えてください。

もともと特別養護老人ホームつるかめの縁をオープンさせる前から、法人内の他施設で夜間帯の巡視に課題を感じていました。夜、利用者様の様子を確認するために明かりの消えた個室に入り、きちんと呼吸できているか、具合が悪くなっていないか、お顔のすぐそばまで近づいて確認すると、中には目を覚ましてしまう方もいます。

利用者様に夜間ぐっすり眠っていただくため、見守りシステムの導入を検討していたときに、企業の方からまもる~のの実証実験に携わってみないかとお誘いいただきました。今でこそ、スマートウォッチなど睡眠のデータを計測できる端末が当たり前に使われていますが、2016年当時は睡眠状態を可視化できること自体が画期的でした。

さっそく法人内のグループホームや小規模多機能型居宅介護支援事業所で導入してみると、「よく眠れない」と言ってきた利用者様が、実は深く眠れていることが睡眠データから分かりました。その利用者様は、朝早く目覚めることで、よく眠れなかったと勘違いしていたようです。これはただ職員の負担を減らすだけではないな、とこの機械の可能性を感じましたね。

そこで、2018年新たにオープンさせる特別養護老人ホームつるかめの縁には「睡眠特化型特養」というコンセプトを打ち出し、全床にまもる~のを導入することに決めました。

——導入するときに気を付けたことはありますか?

活用の仕方について職員とよく話し合いました。職員からは「まもる~のがあるから夜間の巡視をしなくてもいいのではないか」という意見も出ましたが、まもる~のはあくまで機械であり、100%頼るのにはリスクがあります。機器の活用と巡視を組み合わせることで、最も効率的に利用者様の見守りができると考え、ルールを決めました。

また、利用者様ご家族へ「どんな機械なのか」「なぜ導入するのか」をしっかりお話ししました。「カメラで撮られるのですか?」とプライバシーについて心配している方が多くいましたが、まもる~のはカメラではなく、センサーであることを説明し、全員のご家族から同意を得られています。

眠りからケアを変える!見守りシステム「まもる~の」の導入事例 -社会福祉法人つるかめ 特別養護老人ホームつるかめの縁-
▲2018年にオープンした特別養護老人ホームつるかめの縁には、カフェや映画館もあり、利用者様が自発的に動きたくなるような工夫がされています

部屋に入らなくても、中の様子が分かる安心感

——まもる~のはどのような仕組みですか?

マットレスの下に取り付けられた高感度のセンサーが、利用者様の眠りの状態や呼吸数、脈拍数、部屋の温度・湿度などの環境、離床・起床などの状態変化を感知します。それらのデータはパソコンと各職員が持っているスマートフォンに送信され、異変があれば通知が出る仕組みです。

——具体的にはどのように活用していますか?

夜間、巡視と並行して活用しています。利用者様の様子はパソコンとスマートフォンに表示されるデータで確認できるので、巡視の際はベッド脇まで行かずに、部屋の入口で布団がはだけていないか、足が布団から落ちてしまっていないかだけ確認していますね。

このほか、状態変化があったときに通知を見ています。「異常」と判断する心拍数や状態の変化は人によって細かく設定を変え、通知が鳴りすぎることのないようにしています。

見守りシステムの活用で医師との連携もスムーズに

——まもる~のを導入したことで利用者様にどんなメリットがありましたか?

利用者様にぐっすり眠っていただけるようになったことと、睡眠のデータに基づいて睡眠導入剤の減薬ができるようになったことです。

眠りの重要性については言うまでもありませんが、特に高齢の方は夜きちんと眠れていないと、日中眠気のあまりふらついて転倒したり、薬を飲むはずの時間に起きられなかったりすることがあります。そのため、ただ長く眠るだけではなく、質の高い眠りを取ってもらうことが重要です。

——どのように睡眠の質を改善させましたか?

睡眠の質を改善できた要因はいくつかあるのですが、眠りを妨げずに巡視ができるようになったことに加え、排泄介助で利用者様を起こしてしまうことがなくなったことが挙げられます。定まった時間に排泄介助をするのではなく、データを見て眠りが浅いタイミングや睡眠に支障が出ない範囲の回数で行うようにしています。たとえば、尿失禁があって夜間3回の排泄介助を行っていた方の場合、睡眠のデータを見るとトイレに行くたびに、その後1時間半から2時間程度眠れなくなってしまうことが分かりました。そこで、尿量が少ない2回目の時間帯の排泄介助をやめて吸収量の多いオムツを使ってもらうようにしたところ、現在は朝までぐっすり眠れるようになっています。

また、データを見て睡眠が浅い状態が続いている場合は、日中の活動量を増やしたり、寝る前に足を温めたりすることで、深い眠りが実現できるようになりました。

——睡眠導入剤の減薬はどのように実現していますか?

医師と相談のうえ、睡眠導入剤を服薬した場合と投薬量を減らした場合の睡眠状態の変化を確認し、大きな差がないときは減薬しています。本来は薬なしで眠れる方であっても、施設入居前にご家族から主治医へ「あまり眠れていないようです」と意見が寄せられた場合など、何らかの原因で睡眠導入剤の処方がされ続けている場合があります。一度出された薬の処方を中止するのは簡単ではありませんが、データで根拠を明確に示せれば減薬、またはどうしても眠れないときのみの服用への切り替えるなどの対応が可能です。

睡眠導入剤は長期的に飲み続けると、日中もぼんやりしてしまったり、眠気のあまりふらついて転倒したりするリスクがあります。当施設では約50%の利用者様が睡眠導入剤を服用していましたが、睡眠データを活用することで約25%まで減らせました。薬を減らすことで、利用者様の日中に活動性も大幅に向上しています。

「もう見守りシステムがないところでは働けない」

——職員側へのメリットはどんなところでしょうか?

多くの職員が「つるかめを辞めたとしても、もう見守りシステムがないところでは働けない」と言っています。そのくらい働く側にとっても、便利でメリットの多い機械だといえます。

実際、まもる~のを活用することで、巡視の回数が半分程度になりました。巡視の際も、ベッド脇まで行かず、入口からの確認で済むようになったので、1回あたりの巡視にかける時間も約3分の1に減りました。

また、職員の精神的な負担軽減にも効果がありました。個室に入るとき、利用者様が無事に呼吸をしているか近くに行くまで分からなかったのが、まもる~のによって中に入らなくても確認できるようになったことから、心理的に楽になったと思います。排泄介助も睡眠が浅いタイミングで行えるため、ぐっすり眠っているところを起こして抵抗されてしまうこともなくなりました。

——採用・定着面への効果はありましたか?

当施設をオープンするときは「見守りシステムのある睡眠特化型特養」という触れ込みで募集したので、定員の2.5倍もの応募がありました。その後も「見守りシステムがあるところで働きたいです」と言って入職してくる人が多いです。

ただ、どこの施設でも見守りシステムを導入するようになった場合、差別化は難しくなるので、導入時期が早い方が採用・定着面へのメリットは大きいと感じています。

在宅でも見守りシステムが当たり前になる社会へ

——見守りシステムの導入を検討している事業所の方に伝えたいことはありますか?

利用者様にとっても職員の方にとってもメリットがある機械だと思っています。利用者様が気付かない間に亡くなってしまっていたということもないので、施設側の事故防止にも有効です。

さらに、睡眠のデータを日中のケアに活かせるという意味で「介護のやり方を変えることができる」のはほかの介護機器にはない魅力だと思っています。当施設では睡眠を見える化したことで、改善できたことが多くありました。ただ「見守る」だけではない、たくさんの可能性を持った機械だということはお伝えしておきたいです。

また、これからは施設のみならず、在宅の方にも見守りシステムが普及する時代になってくると思います。当施設では、ご家族と離れて一人暮らしをする高齢者の方のために「まもる~のHOME」を企業と共同開発しました。在宅の方、介護施設ともに見守りシステムをうまく活用することで、高齢の方の暮らしを変えていけるのではないかと思っています。

採用ご担当者様へ

医療・介護の分野で成果を出し続けてきた弊社のノウハウとネットワークを、御社の課題解決にぜひともご活用ください 。 掲載に関するお問い合わせや、採用についてのお悩みなどはこちらから。