訪問介護事業所では、紙で記録のやりとりをすることが多く、記録の受け渡しには事務所への行き来が必須です。業務の効率化を考えるとICTの導入が理想ですが、なかなか電子化に踏み切れない事業所が少なくありません。その理由は、「年配の職員が使いこなせない」ことが多いのではないでしょうか。2017年にICT機器を導入したアシストケアサービスでは、当初導入に反対する職員が多かったものの、今では使いこなしている方ばかりです。今回は、アシストケアサービスの秋田様と谷村様に、導入の際のポイントを伺いました。

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株式会社アシスト取締役秋田様と統括マネージャー谷村様

プロフィール

秋田 善晴 様(写真右)

株式会社アシスト 取締役

老健にて経験を積んだ後、2013年に株式会社アシストに入社。訪問介護や介護タクシー、デイサービスなどの事業運営に携わり、2017年のICT導入を担当。2019年に取締役に就任。様々な事業経験があるため、現場からの信頼も厚い。

谷村 泰樹 様(写真左)

株式会社アシスト 統括マネージャー

2012年株式会社エブリーに入社。2017年より株式会社エブリーから兄弟会社である株式会社アシストへ出向。現在は事業推進部グループ長でありながら、人事・広報なども担当。積極的な相談を心がけることにより、現場職員と良好な関係を構築している。

作業効率を意識した新たな挑戦

――導入の目的やきっかけは何でしたか?

秋田様: 一番の目的は、事務作業の効率化です。訪問介護職員の人数は25名ほどいますが、職員は毎日大量の記録の処理に時間がかかっていました。ペーパレスでのやり取りのほうが圧倒的に早く処理できると考え、2017年の夏に導入に踏み切りました。
介護業界でなかなかペーパレス化が進んでいないのは、「高齢の職員が多い」ことが理由の一つにあるかと思います。当社にも、年配のヘルパーさんが多いのですが、世の中の流れを感じていただくためにも必要だと感じ、新しいことにチャレンジしようと思いましたね。

――導入してみてどれくらい便利になりましたか?

谷村様:同じ利用者様を複数人で対応する際に、履歴を確認しやすくなりましたね。前回どうだったか、前々回どうだったかというのを遡って確認できるところが便利です。細かいところでいうと食材の残りを事前に把握できるので、予め献立を考えられるため調理がしやすくなりました。

秋田様:あとは何より、何度も記録を持ってくる事がなくなるので移動効率はかなり上がっていますね。短時間で続けて訪問する際に、職員の「記録はまだですか?」というような催促もなくなりました。
紙で記録していたときは、事務所に予定表を取りに来ないといけなかったですし、記録の確認も必要でした。訪問後には記録を出してもらっていますが、期日までに提出してくれないこともあり、「出した」「出してない」「勘違いでした」というようなこともありましたね。ICT導入後は、入力を行うと即データとして飛んでくるので、すぐに状況が分かり、進捗状況の管理がしやすくなりました。

「ICTを導入するなら辞めます」反発への対処法とは

――職員の方は導入に賛成でしたか?

秋田様:実は導入前は、職員は全く前向きではありませんでした。「ICTを導入するなら辞めます」という声が上がっていたほどです。特に50代~70代の方の反発はかなり大きかったですね。しかし、しっかり説明をすることで、なんとか導入できました。また、結果的には、ICT機器導入が原因で辞めた方は誰一人いません。「絶対に嫌だ」と言っていた方も、今では音声入力機能を活用して使いこなしていますよ。

――どのようにして納得してもらいましたか?

秋田様:機器を渡して任せるだけにするのではなく、使いこなせるようにしっかりとフォローしましたね。
まず導入前は、ソフトを扱っている会社の営業担当の方に事業所へ来ていただき、ヘルパー向けのレクチャーを2、3回ほど行ないました。ICT化と聞くと「パソコンは苦手」とイメージする職員も多かったのですが、実際にタブレットの画面を見て「押していくだけで、操作はとても簡単」というのを体感してもらいましたね。触ってみたことで、職員も「これならできそう」と感じてくれたようです。実際にタブレットが手元に届いてからも、スマホすら持ったことがない方のために、まずは電源の入れ方から教えていきました。

――他にも普段から、年上の方への伝え方で気をつけていることはありますか?

谷村様:「相・報・連」の順番を意識しています。一般的には「報告、連絡、相談」の順番ですが、まず「相談」をして、どう思うか意見を聞いてから巻き込んでいくように意識していますね。たとえば、ICT化の場合だと、まず職員には「タブレットを導入しようと考えている」と「相談」を心がける。どんなところがネックになるか情報収集をした上で、しっかりレクチャーしながら「導入決定を報告」する。こういった順序を踏んだことが安心と定着に繋がったのかなと思います。実際、ほとんどの人が年上なので伝え方については日々勉強させてもらっていますね。

訪問介護事業所でのICT導入事例
▲実際に画面に触れて簡単さを体感してもらうことが重要

今後の展望と課題は

――導入後、採用率の変化はありましたか?

秋田様:実は、採用時点では、ICT機器の話を全面に出していません。採用の段階で「タブレットを使っている」と伝えてしまったら、あまり人が来てくれないという状況もあるんですよね。紙のやりとりの大変さを知っている経験者や、新卒の方には効果的かもしれませんが、登録ヘルパーの中には年配の方も多いのでICT機器の話は控えています。ICT機器の導入は、訪問介護の採用においてあまり効果的ではないかもしれませんね。

――ICT機器の導入を検討している方に伝えたいことはありますか?

谷村様:ICTを導入する際にコミュニケーションの減少が危惧されると思いますが、そんなことはないです。
当社では、コミュニケーションを減らさないように、出勤時や訪問前に必ず事務所に電話するように義務付けています。電話の量はかなり多いですね。とてもシンプルですが、「チームで働いている」という意識を持ってもらうために大切にしていますね。また、口頭で伝えた後もデータが残っているので、二重で確認できるのは大きなメリットです。

秋田様:機械導入のコストはかかりますが、その分の効率化は十分見込めると思います。テキストだけでのやり取りだと、効率化ができても関係性が薄れていきますが、当社では電話によって声を聞く温かみも残せていますね。

――今後も継続的に、ICT機器の活用ができそうですか?

秋田様:今年はコロナウイルスが流行していますが、ICTを取り入れていたことによって、人との接触を減らすことできたかなと感じています。以前のように記録を紙ベースで取っていたら、職員同士が触れ合う機会が多かったと思いますね。職員は、事務所にはあまり寄らず、ほぼ直行直帰で勤務できていたのは、よかったことの一つだと思います。
まだまだICTの機能を最大限に活かせていない部分もあるので、効率化できるところは改善していきたいですね。

※この取材は緊急事態宣言解除後に行いました

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