介護事業所の需要が高まる一方で介護職の人材が不足している水戸市では、高齢者サロンの運営や高齢者支援センターの設置など、地域で高齢者を支える仕組みを設計しています。ボランティアの活用や、介護を予防することで、介護事業所の負担を軽減する取り組みを行う水戸市に、高齢者を支える地域づくりについてお伺いしました。

プロフィール

水戸市長 高橋 靖 様

人手不足に苦しむ姿を見て、早期に処遇改善を実施

——水戸市における、介護事業所に向けた支援を教えてください。

介護職の処遇改善には力を入れています。水戸市ではいち早く介護報酬単価を上乗せするために地域区分を見直し、去年から上乗せ割合を10%にアップして、働きやすい環境づくりの後押しをさせて頂いています。水戸市は特に特別養護老人ホームの需要が高かったので、少なくとも私が就任してからは毎年のように事業所を建ててきたのですが、せっかく作っても人材が集まらずに手が回らないところも多いんですよね。実際に人手不足に苦しむ姿を見て、賃金を中心とした処遇改善が人材確保に繋がればとの思いから、早めに報酬の見直しをいたしました。

水戸市は人口比率に比べて介護事業所が多く、介護保険料は茨城県内でも高い方ではありますが、それなりにサービスは充実させているつもりです。だからこそ、茨城県内の他の自治体よりも人材を確保しなければならないという課題があるので、できるだけ処遇改善をしていきたいと考えています。

また、事業所からの要望によって介護事業所の安全性を確保するために、防火・防犯の設備に対して補助金を給付しています。それでエアコンの改修やブロック塀の修繕、スプリンクラーの設置など、防犯面、防火面、安全面で設備に不具合があれば補助金を活用していただいています。

——介護人材確保のための取り組みは他にありますか?

介護事業者を対象とした集団指導や勉強会、意見交換会を開催しています。介護サービスの質の向上を目的として始めましたが、事業所の皆様と直接お会いできる場で意見を聞いたり、私たちの取り組みをお伝えしたりすることで、人材育成や事業改善、組織づくりも支援していけたらと思っています。2018度の実績では、 集団指導は2回開催して476人が参加、勉強会は2回開催して128人が参加、 意見交換会は4回開催して160人が参加されています。今のところ、人材育成のお手伝いは勉強会を通してお手伝いさせていただいていますが、メンタルケアや組織づくりなどの参考になるような民間企業のノウハウや知恵があれば積極的に取り入れていきたいです。

——介護助手の活用はされていますか?

ほとんどの事業所が清掃員や話し相手としてボランティアを活用しているようですが、作業のお手伝いばかりではなく、事業所を回って歌や踊りを披露して高齢者の方々が喜ぶようなことを自主的にやってくださる方々もいらっしゃるようです。本市として具体的な取り組みはこれからですが、市で行った調査結果からその必要性や有効性は感じています。すでにボランティアを活用している事業所に向けたアンケート調査によりますと、4分の3程度が「ボランティアは有効である」と回答しており、ボランティアが介護士の助けになっているという結果が出ていますので、積極的に取り組みたいと考えています。

地域で高齢者の「過ごし方改革」を

——地域で高齢者を支えるための取り組みはありますか?

高齢者支援センターを水戸市の各地域に配置し、高齢者に関する問題を当事者が主体的に解決できるよう、専門職が支援しています。 現在8ヶ所設置しており、1つは市の直営ですが、あとは社会福祉法人などに担っていただいています。今のところ、対応も非常に丁寧で、介護の手続きや施設、ケアマネの紹介など高齢者に関する大体のことはそこで解決できると地域住民の方から高い評価をいただいています。また、月に1回高齢者支援センターの所長を全員集めて、各センターで行っている取り組みやノウハウなどの意見交換会を開催しています。高齢者支援センターが一番地域に密着しているので、互いに勉強し合えるし、スキルアップできるので非常に良い取り組みだと思うんですよね。

また、今後は認知症の総合対策なども担ってもらいたいと思っています。今の所、認知症すごろくを独自で開発したり、バーチャルリアリティで認知症を体験することで認知症の方への接し方や、認知症予防の勉強会をしたりしてくださっているような高齢者支援センターも出てきてるんですよね。ただ、地域によってサービスにばらつきが出てきてしまうので、ある程度私たちが作ったスキームを取り入れることで、各地域で高齢者を支えていける仕組みを作ることが大切だと思っています。

——高齢者を支える取り組みについて、今後の具体的なお考えはありますか?

地域包括ケアのシステムをしっかり作って総合事業を行っていきたいと思っています。例えば今までデイサービスセンターに行っていた方々が、地域での習い事や高齢者サロンなど、地域のコミュニティの中で過ごして頂けるような地域包括ケアシステムを作っていきたいと思ってるんですよね。地域における高齢者の「働き方改革」ならぬ「過ごし方改革」をしていただきたいと思っています。私も実際に見に行ったのですが、水戸市に高齢者サロンを営んでくださっているボランティアの方がいるんです。車庫だったところを改造して地域の高齢者10人ぐらいを集めて、工作や音楽を楽しんだり、会話したりということを自発的にやってくださっています。このような高齢者サロンや市民センターや老人福祉センターを利用することで既に介護予防になっている方もいるんですよ。

もちろん、介護施設でも心穏やかに過ごして頂けると思いますが、やっぱり近所のよく知っている方々といれば、もっと安心感が出てくるんじゃないかなと思っているんです。今後は介護従事者の確保だけでなく、地域介護の担い手であるボランティア人材を育てていくことが地域包括ケアシステムの大きな課題になってくると思うので、地域包括ケアシステムを細かく作って、 地域の中で過ごせるような体制、環境を整えていこうと思っています。

介護事業は「人」の力で成り立つからこそ、働く人を大切に

——高齢者の介護を予防するために、具体的な対策は何か考えていますか?

水戸市においては、介護保険でなく生涯学習の観点からすでに介護予防や健康増進のための政策を行っています。生涯学習都市宣言をして、34の地区に一つずつ市民センターを配置しており、そこで文化的な活動やスポーツ活動、高齢者クラブの芸能活動を通して地域のコミュニティで健康増進を図っています。

来年水戸市が茨城県で初めて中核市になり保健所を持つことを契機に、水戸市として健康増進に関する都市宣言をして新たな健康増進施策を展開していきたいと思っています。 各地域に 食生活改善推進員や保健推進員を300名単位で各組織に配置しているので、その方々が市民センターを活用して健康指導や「健康診断を受けましょう」などの啓発活動をもっときめ細かくやっていこうと思っています。

——最後に水戸市の介護事業所の経営者、もしくは人事の方に対して何かお伝えしたいことはありますか?

互いに顔の見える距離感を保ち、意見を言い合える関係でいたいと思っています。これまでも実施してきた意見交換会や水戸市の職員と事業所の職員合同でのグループワークのような活動を通して、サービスをより良くするために協力していきたいと思っています。

おかげさまで、水戸の事業所は今のところ廃業するところはごくわずかですが、それは事業所のみなさんがそれぞれ努力されてきた結果だと思っています。ただ、介護事業はやはり「人」によって持続可能なものになると思っていますので、今後もサービスの質を確保していただきながら働く方々を大切にして頂きたいです。その中で経営上、人材育成確保上の悩みや問題があれば、私たちにできることはお手伝いいたしますので、なんなりとご相談頂ければと思っています。