一般企業で多く取り入れられているSDGs。医療・介護業界では、まだ取り組み事例が少ないなか、和光会ではいち早くSDGsの考えに基づいた運営を開始。グループの考える地域包括ケアの実現を目指し、SDGsの目標を介してグループとしての指針を策定しました。SDGsの考えを法人施策に組み込み、どうやって浸透をさせてきたのか、同グループの秘書広報課課長である安藤様にお話をお伺いしました。

プロフィール

「SDGs」を介護領域で取り組むために必要なこととは‐和光会グループ‐
安藤 恵子様

和光会グループ 秘書広報課課長

3つの医療・介護法人にて、秘書業務や医療事務、採用や企画広報業務を経験。2017年より和光会グループへ入職。秘書広報課にてグループの広報活動やSDGsの浸透に向けたプロジェクト推進に従事している。

グループの目指す地域包括ケア実現へ向けて、「SDGs」を活用

――なぜ「SDGs」を取り入れようと考えたのでしょうか?

SDGsとは2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている17の国際目標のことです。SDGsの掲げる「誰一人取り残されない世界」と、和光会グループ掲げる地域包括ケアシステムの「誰もが住み慣れた街で安心して住み続ける」という考え方は非常に親和性が高いと考えました。

また、1925年のグループ開設当時から現在まで、医療・介護サービスだけでなく、子育て支援や外国人採用、地域への貢献など、地域に根差した活動を幅広く続けてきましたが、そういった取り組みをSDGsの枠組みを通して整理することが出来るのではないかと思ったことも、取り組みを始めたきっかけです。

「SDGs」を介護領域で取り組むために必要なこととは‐和光会グループ‐
▲SDGsの掲げる17の目標。それぞれの枠組みにあてはめながら取り組みを整理しました。

――実際に取り入れるまでに準備したことは何ですか?

2019年にSDGsを取り入れると決めた時には、介護・医療法人で取り入れているところはほとんどなく、まずは情報収集からスタートしました。「そもそもSDGsって何なのか?」という所から情報を集め、その当時地域で開催されていたSDGsに関する研修会や講演会に参加したり、書籍を読むなどして、知見を深めることに力を入れてきました。そこからグループとしてどう取り組んでいくべきか幹部会議で検討し、プロジェクトを発足して取り組むことになりました。

グループ活動をSDGsで整理。5つのテーマに沿った指針を決定

――具体的にはどのようにSDGsを取り入れたのでしょうか?

2020年1月にプロジェクトチームを発足し、約80施設あるグループ内の関連施設から25名のメンバーを招集しました。和光会グループでは医療・介護・障害者福祉事業・子育て支援事業など大きく4つの事業を運営しています。その中から看護師や介護職員、保育士、事務員など多様な人材を集めました。

まず、チームのメンバーがSDGsの内容を理解できるよう、プロジェクトのキックオフミーティングでSDGsのカードゲームを用いたグループワークを行ないました。その後、複数の会議を経て、和光会グループで最初に取り組む7つの目標ごとの分科会に分けることを決定しました。それぞれの分科会ごとにミーティングを行い、方針策定や取り組みの整理を進めていきました。プロジェクトチームが発足した2か月後には、分科会で整理した取り組みを、「医療・介護・福祉事業」、「環境・資源対策」、「健康経営」、「人材育成」、「地域貢献」の5つのテーマに沿って、和光会グループオリジナルの「SDGsの基本が良く分かるオリジナルブックレット」としてまとめることもしましたね。グループ内研修でブックレットを活用するなど、和光会グループ全体での浸透に向けて動き出しました。

――5つのテーマのうち、特に医療・介護分野の職員に関わるテーマについて教えてください。

医療・介護分野の職員に大きく関わるテーマとして「人材育成」があげられます。SDGsの目標では「8:働きがいも経済成長も」に当てはまる部分です。

「人材育成」では、職員のキャリアアップや育成の場を支援するための取り組みをまとめましたキャリアアップの支援としては和光会キャリアカレッジ、研修センターなどの運営が該当します。「人材育成」という点では、和光会グループとして、岐阜県介護人材育成事業者認定制度の最上級位「グレード1」を取得しています。また、県や自治体と連携して、介護人材育成のために法人内から講師を派遣したり、講演会に参加したりしていますね。そのほかにも、外国人人材やシニア人材の雇用などもしています。どのような雇用形態の職員でもキャリアアップを支援し、働きやすい環境をつくることを進めています。

「健康経営」も大きく関わるテーマの1つです。このテーマも、「8:働き甲斐も経済成長も」に当てはまります。すべての職員が生きがいや働きがいを持って勤務できる場を提供してくことを目指しています。その1つとして、岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業認定など、職員の働く環境の支援を進めてきました。今後も、職員が子育てや家族の介護など、さまざまなライフイベントがあった際にも、多様な働き方ができる雇用機会の実現を目指しています。

――テーマに沿った指針を策定するうえで大変だったことはありますか?

SDGsが掲げる17の目標のどの指標がグループの取り組みに当てはまるのか整理することは大変でしたね。1つの目標に対して、複数の取り組みが当てはまったり、逆も然りで、グループの取り組みが2つの目標に当てはまったりするなど、組み分けパズルのようでした。SDGsを勉強し、知識を深めながらでないと判断が難しいと感じました。まだ全ての取り組みを拾い切れていない部分もあるため、引き続きブラッシュアップしていきたいと考えています。

SDGsの考えを経営指標へ。さらなる活用を目指して

――SDGsを取り入れる上でのメリット・デメリットは何だと思いますか?

メリットは、SDGsを共通言語に、異業種との交流や連携が深まったことです。2020年春には岐阜県SGDs推進ネットワークに加入しました。SDGsに取り組んでる企業、団体、個人など多くの方が参画しており、今まで付き合いのなかった企業や団体とSDGsを通して、縁ができたことはとても良かったと思っています。その縁から、地元の高校でSDGsの探究学習に参画させてもらったり、ラジオ番組で取り組みを紹介したりもしました。象徴的なことでは、岐阜市内の6つのアパレル会社が共同でマスク制作をする際に、当グループ内のこども園でユニフォーム代わりに利用し地場産業を支援するという取り組みもできました。医療・介護だけにとどまらない連携ができていると感じています。

デメリットはないと思いますね。SDGsを知る前から現在まで続けているグループでの取り組みを、SDGsという枠組みを利用することによってさらに深められますし、整理もできる点を考えると、取り組まない理由がないのではと感じています。SDGsの枠組みで整理することで、「こんな取り組みをやっていたな」「さらにこうしたらより良くなるのではないか」と初めて気づくこともあると思います。

――今後グループとして、SDGsを通して取り組んでいきたいことはありますか?

2020年12月に小学生向けに開催したSDGsこどもミーティングは、今後も継続していきたいと思っています。未来を担うこども達と社会の課題を共に考え、SDGsを“自分ごと化”する活動です。

SDGsの考えや取り組みは事業そのものにとって重要なことだと考えています。SDGsはグループの経営方針や中期計画などに関わる点も多いため、今後数値目標やKPIを策定して経営指標に落とし込んでいきたいですね。医療・介護事業で積極的に取り組んでいる企業も少ないので、指針となるような活動ができればいいですね。

「SDGs」を介護領域で取り組むために必要なこととは‐和光会グループ‐
▲SDGsこどもミーティングの様子。今後も活動を継続していく予定です。

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