慢性的な人手不足が続きがちな介護業界において、介護未経験者を戦力化していくためにどうすればいいか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。株式会社アースでは「未経験から介護のプロを育てます」と銘打ち、介護業界未経験者を積極的に採用しています。今回は常務取締役の村上様に、教育制度の設計方法や未経験者採用のメリットについて、お話を伺いました。

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プロフィール

「介護未経験者」をプロに育成 継続的な応募者を獲得するには -株式会社アース-
村上 秀一様

株式会社アース 経営管理部 常務取締役

9年前に誘いを受けたことをきっかけに、飲食業から株式会社アースへ、介護業界未経験でご転職。サービス向上を目指して社員教育に注力していた前職での経験を活かし、介護業界未経験者への教育制度の設計をしている。現在は常務取締役として、人事や経理、総務をご担当。

他社にはない強みとして「介護未経験者」の育成に着手

――未経験者の採用に取り組んだきっかけは何ですか?

慢性的に人手が不足している業界だと実感したことがきっかけです。特に5~6年前に人材不足が顕著で、通り一遍の求人活動をしているだけでは、人員はまず充足することはないと気づきました。今後、労働人口が減少していくことを考えると、ますますこの状態が激化するのではないかと危機感を覚えましたね。

一方で、介護業界は社会性が高いので「人に喜んでもらえる仕事がしたい」と考えている方は、一定数いることも確かでした。それなら経験に対する採用ハードルを下げて、介護に対する思いがある方を社内で教育していく方が確実に人材確保できるのではないかと考えました。また、志がある方を採用することで、利用者さまにより心のこもったサービスの提供ができ、質の向上に繋がるのではという狙いもありましたね。

――「未経験者採用」について現場の反応はいかがでしたか?

現場の施設長は、意外にもすぐに賛同してくれました。1から教えることは大変じゃないかと思っていましたが、意欲のある未経験者は飲み込みが早く、教えがいがあるという意見が多かったです。新規オープンの施設では教育リソースを割くことは難しいですが、ある程度経験者が揃っている施設なら未経験者を教育できると、本部と現場の管理職で意見を合わせることができました。こうして認識を合わせられたことで「未経験から介護のプロを育てます」をキャッチコピーとして、未経験者の教育サポートを弊社の強みとしてスムーズに打ち出すことができました。

――「介護のプロ」とはどんな人でしょうか?

答えを求めるのではなく、自ら適正なケアを考えることができる「知識」と「技術」を兼ね備えた人材のことです。弊社では、知識の指標は「介護福祉士」資格の有無、技術の指標は一般社団法人シルバーサービス振興会が主催する「キャリア段位制度」のレベルとし、介護職員としての知識・スキルレベルを可視化できるようにしています。なお、キャリア段位の2-2以上を取得し、かつ介護福祉士の取得をすることが「介護のプロ」を称する上での一つのゴールと定めています。

「介護未経験者」をプロに育成 継続的な応募者を獲得するには -株式会社アース-
▲人材開発室が中心となり、介護技術研修を実施。座学から移乗や移動の実技まで内容はさまざま

本部と現場で、継続的にフォローできる体制を構築

――未経験者の方にどんなキャリアパスを用意していますか?

1年目はまず社内教育で介護の基礎を学びます。2年目で実務者研修を受講し、3年目でキャリア段位の2-2を取得、4年目で介護福祉士を取得するのがスムーズに進んだ場合のキャリアパスのイメージです。実際は、施設内の受講希望者同士のシフトの兼ね合いで受講が前後する方がいて、全ての人がこのイメージ通りに進むわけではありませんが、概ね4年くらいで「介護のプロ」として一人前になることを想定しています。

――入社後のフォロー内容について教えてください。

法人本部で教育を担当する人材開発室の職員によるフォローに加え、現場の上司との1on1面談を実施しています。

人材開発室は教育専門の職員2名体制です。定期的な合同の基礎研修のほかに、毎月テーマに沿った研修の機会を設けています。入社2週間以内に行われる1回目の研修では、会社の理念や制度、福利厚生についての説明を行うだけでなく、基礎研修の必要度を把握するため、対話を元に経験やスキルの確認を行います。2回目の研修は入社半年~1年を目処に実施しており、ここでは改めて理念や制度の話をするようにしていますね。内容は1回目の研修とさほど変わりませんが、現場の業務に慣れてきたタイミングで改めて理念や制度の話をすることで、入社したての頃よりも職員の納得度が高くなると考えています。

1on1面談は、管理責任者やリーダーなど直属の上司と月に1回30分、1対1で話す時間を設けるものです。何か悩みや問題があれば引き出して、場合によっては本部の人材開発室にサポートを依頼することもあります。1on1面談は新入職員だけでなく、全ての正社員に実施しており、継続的に上司が部下の話を聞き、目標や成果について振り返る機会を設け、人事評価にも繋げています。

――介護福祉士取得後のキャリアについてはいかがでしょうか?

役割等級制度を定めて、志向に合わせて選べるようにキャリアパスを示しています。大きく分けると、リーダーになり部門管理者を目指す「管理職コース」と、専門資格を取得して特定の分野のスペシャリストを目指す「専門職コース」の二通りです。昇給モデルも同時に提示して、自分の興味に合わせて目標を持てるように工夫しています。

求人への応募数は、制度設計前の1.5倍に増加

――制度設計の際に気をつけたことは何ですか?

「基礎研修を受けていない既存職員」と「標準化した基礎研修を受けている新入職員」それぞれのモチベーションが崩れないように進めていくように注意しました。

5~6年前に未経験者向けの制度設計を始めましたが、既存社員は基礎研修を受けていません。しかし、既存職員に対して、今までのやり方を否定しては現場が回らなくなってしまいます。まずは、施設長やリーダーといった管理職としっかり「未経験者のキャリアパス」に関して方向性を合わせました。そのうえで、既存職員とも1on1でコミュニケーションを取り、会社の採用の方向性や教育目標などを職員全員に理解してもらうように進めていったのが気をつけた点です。

――「未経験者採用」の制度設計で生まれた効果はいかがでしょうか?

求人への応募数が1.5倍に増えました。リクルートサイトで教育について打ち出していることもあり、面接時に志望理由を聞くと「制度や研修がしっかりしているから」と答えてくださる方が多いです。「介護業界で頑張りたい」「介護福祉士取得を目指したい」といった、元々ターゲットにしていた“介護を学びたい意欲のある方”の採用につながっていると感じます。毎月求人への応募が50~60件ほどあり、仕組みに対して共感してくださってる方が多いのは非常に嬉しいですね。

「介護未経験者」をプロに育成 継続的な応募者を獲得するには -株式会社アース-
▲資格取得に対する支援を手厚くし、費用でスキルアップを諦めないように工夫しているのも応募者に人気のポイント

このままで人材確保できるのか?まずは現実を知るところからスタート

――今後の課題について教えてください。

未経験者の入職後3ヶ月以内の離職をなくすことと、1on1面談の質を上げることです。

介護未経験者は、言葉では分かっていても実際経験してみると「やっぱり自分にはできない」と言って短期間で離職してしまう方も少なくありません。特に弊社は未経験者の採用に注力していることもあり、残念ながら業務へのギャップによる3ヶ月以内の退職が発生してしまっています。以前は、実際に現場で体験をしてもらっていましたが、現状コロナ禍で実施できていません。また、体験時にはその場の雰囲気で「できる」と言ってしまっている方も少なくないと感じています。最近はYoutubeのような動画を見る方が多いので、未経験の方にも介護のイメージが湧きやすいように動画コンテンツの制作を考えています。入職後のフォローに力を入れていても、介護に対する本人の気持ちはコントロールできないので、動画を見て1度「自分にできるか」を考えてもらえる機会を提供したいです。

1on1面談については、介護業界ではこういった風習がないため、始めた当初はどうしても現場での業務を優先にしてしまいがちで実施されていないこともありました。最近は、1on1面談が定着してきて、部下と理解し合えたり、ほかの職員の考え方を知れたりする貴重な機会になっているという声も挙がっています。今後は、施設長やリーダーが一般職員へさらに寄り添って、もっと質の高い面談ができるようにしたいですね。

――未経験者の採用に悩んでいる方へ一言お願いします。

まずは、今後の情勢を考えたときに「経験者だけを採用し続けられるのか」をじっくり考えて現実を知る必要があります。現実を知ったうえで、代表や施設長だけでなく職場全体で、どうすれば未経験の方を育てられるかを考えることが重要です。新入職員は自分が歓迎されているかどうかを敏感に感じ取るので、歓迎されてないことが伝わると、自信をなくしてすぐに離職に繋がってしまいます。未経験者の教育の重要性を一人ひとりが理解して、現場で育てることができる組織づくりができるかどうかが、人材確保に大きく差が出るポイントではないでしょうか。

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