東日本大震災から10年の節目を迎え、防災への意識をより高めている事業所も多いのではないでしょうか。2020年には新型コロナウイルスが流行し、より災害や感染症への備えが必要となってきています。そのような中で他法人と連携し、防災意識の改革に向けた取り組みをいち早く実践してきた「社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園」の役務部長である中村様にお話をお伺いしました。

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プロフィール

「防災意識の改革を」今こそ必要な危機管理意識向上と地域連携-社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園-
中村 直人 様

社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園(役務部長)

病院や施設で言語聴覚士として勤務後、2016年に社会福祉法人亀鶴会へ入職。機能訓練指導員として施設のリハビリテーション業務などを行い、管理業務も経験。2019年より役務部長へ就任。園長である兄と共に現場への危機管理意識の構築や体制づくりに従事している。

きっかけは東日本大震災、社会福祉法人恵寿会との応援協定締結

――社会福祉法人恵寿会と応援協定を結んだきっかけを教えてください。

一番のきっかけは2011年に起きた東日本大震災ですね。防災への取り組みの進みにくさを以前より課題に感じていましたが、実際に大きな被害を受けている地域の状況を目の当たりにして、備えることの重要さを実感しました。羽村市内は大きな被害がなかったものの、震災により施設のエレベーターが止まったり、計画停電による長時間の停電を施設内で経験したりしました。今まで経験したことのない非常事態を経験し、今後起こるかもしれない非常時に備えたBCP策定や、対策構築が急務だと考えました。

ただ、実効性があるものがなかなか見つからず試行錯誤していた中、2016年に熊本地震が起こりました。この地震によってかねてからFacebookにて親交のあった「社会福祉法人恵寿会 老人総合福祉施設グリーンヒルみふね」が被災し、何か支援できることはないかと考えた結果が2017年に締結した「応援協定」です。

――「応援協定」とはどのような内容ですか?

どちらかの施設が災害などで被災した際に、人員補充や支援をもう片方の施設が対応することを前提としたものが応援協定です。協定を結んだだけでは実際に支援に行く際に戸惑いが生じることを考え、年に1回、1週間程度の職員交換研修を実施しています。それぞれの施設で勤務し、顔なじみの関係性になることで、いざというときでもお互いを理解した上で支援ができます。各施設のケアの特徴や取り組みを知ることで、自施設で新たにケアの改善を促すことができるなど、質の向上にも繋がっていますね。また、グリーンヒルみふねの被災体験も共有してもらい、「実際に同じ状況が起こった際にどう対処すればいいのか」なども話し合っています。

――応援協定を結んだ上でのメリットやデメリットは何ですか?

メリットは、「顔の見える関係の施設があること」だと思います。特に当施設のような一法人、一施設という形態では、ほかの法人などの繋がりがなければ実際に何か起こったときに人員派遣の応援など頼めないのが現状です。連携が取れる施設があることで、現場への安心感は大きいと思います。デメリットは今のところ感じていないですね。2017年に応援協定を結んでから3年程経ちますが、良い関係性を構築できていることが徐々に上手く活かされ始めています。

危機管理意識構築の必要性を実感。共通の課題解決に向けて

――現在、そのほかに応援協定を結んでいる施設はありますか?

グリーンヒルみふねとの応援協定と同じタイミングで、東京都羽村市内の「社会福祉法人園盛会 特別養護老人ホーム多摩の里むさしの園」、「社会福祉法人東京武尊会 特別養護老人ホーム羽村園」の2施設とも応援協定を締結しました。この2施設とは、それぞれの施設で防災対策に対する同様の課題を感じていたため、防災管理者が集まって行う毎月のミーティングや備蓄品の内容共有に加え、3施設合同での研修もしています。もし災害が起きた場合には法人の枠を超えた人材派遣や物資支援ができる体制を整えています。そのほかにも、Facebook上に非公開グループ「羽村市特養震災ネット」を作成し、会議録や連絡網なども蓄積しています。一方で、3施設合同で管理者による防災に向けた取り組みは推進できていましたが、現場職員への危機管理の意識付けはあまりできておらず、課題に感じていました。

――職員の防災意識を高めるために3施設合同で取り組んでいることは何ですか?

防災や危機管理に意識を向けられている職員が少なかったため、災害連想ゲームを取り入れて意識改革を進めました。職員向けには「NPO法人高齢者住まいる研究所」理事の寺西さんが開発した「KIZUKI」を実施しています。KIZUKIとは、3人1組のチームに分かれて対戦する災害想定ゲームです。「入居者様が怪我をしている」、「建物内が損壊している」といった、災害時に起きそうなアクシデントが記載されたカードを先攻チームがめくり、後攻チームはそのアクシデントへの対応の必要性を判断したり、問題を解決するためには何人でどのアイテムが必要かを考えたりします。参加する職員が実際の現場を想定し、楽しみながらも防災意識を高められるようなゲームです。対象は3施設の全職員で、順番にこのゲームを体験できるようにしました。

3施設の管理者レベルの職員には静岡県で開発された避難所運営ゲーム「HUG」を実施しています。実際に自施設が災害時の避難所になったと想定し、どう運営していくかを模擬体験しながら進めていきます。避難所内のゾーニングや人員配置、物品の共有方法などを考えながら進めていくカードゲームです。当法人ではこの2つのゲームを法人独自の研修にも組み込み、職員の意識向上へ役立てています。

――職員からの反応はいかがでしたか?

職員からは「KIZUKI」のゲームを通して、備蓄品の名前や保管場所、備蓄量や使用方法などの、状況把握の重要性を改めて実感したという声が多かったですね。また、災害時には正しい判断、瞬時に判断することが非常に難しく、日頃から災害に備えておく各自の危機管理意識が必要だといった声もありました。そのほかにも、夜勤時を想定してゲームを行った職員は、上司や管理者がいないような状況において自分たちだけで対応を決定していかなければならない難しさを実感したようです。また、災害時の動き方や人の動かし方を難しく感じ、日々の連携の重要性が分かったという職員もいます。職員にとっても、改めて危機管理意識を高めていく必要があるという意識づくりができたと感じています。

「防災意識の改革を」今こそ必要な危機管理意識向上と地域連携-社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園-
▲実際の「KIZUKI」実施風景。職員それぞれが意見を出しながら災害時を想定し考えていきます。

「災害への備えを一緒に」近隣地域を巻き込んだ連携構築へ

――一連の取り組みを通じて感じた課題はありますか?

危機管理の意識向上や応援協定を結んでいても、実際に被災したことはないため、想定外のことが起こりうる可能性もあります。たとえば当施設が、羽村市内で大きな地震や感染症に襲われた時、市内の協定施設から実際に応援の派遣ができるか、というとできない可能性も十分あります。同じ市内であれば、同じような被害に合っている可能性も高いためです。そのような事態に備え、市外の施設とも協定を結んでおく必要があると考えています。すでに市外のグリーンヒルみふねと協力関係にありますが、あらゆる事態に備えるため今後は関東圏など中間距離にある施設とも応援協定を結んでいきたいですね。

あとは、地震などの災害時には、被災地域以外から人員派遣をすることで解決できることが多いと思いますが、新型コロナウイルスなどの感染症が流行した際には、自施設もダメージを受けていることが想定されるので、お互いどこまで協力が可能なのかといった所を今後見直していく必要があると感じています。

――現在新たに取り組んでいることはありますか?

グリーンヒルみふねの吉本施設長を中心に当園園長も参画し「日本福祉防災楽会」という会を開設するために動いています。これまでの応援協定や防災への取り組みを踏まえて参画いただける法人を増やし、連携を取れる組織づくりに着手しています。一方私の方では、防災に関する施設のBCP見直しを進めています。今までは災害と感染症は別のこととして捉えられていましたが、今回の新型コロナウイルス感染症流行を機に、感染症対策を盛り込んだBCP作成を進めています。なかなか難しいですが、今年度中には形にしていきたいと考えています。

――他事業者に向けて伝えたいことはありますか?

防災に向けた取り組みは今から始めても遅くないと思います。現段階で施設の備蓄品がどれくらいあるか、動線は確保できるか、非常時に人員はどれぐらい動かせそうかなど、今の施設状況を把握して対策を打ったり、他施設との協力関係を築いたりするなど、普段から準備しておくことが大切です。その中で自施設に沿うやり方を見つけ、工夫をしていけるといいですね。

「防災意識の改革を」今こそ必要な危機管理意識向上と地域連携-社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園-
▲施設内の避難者用の備蓄内容。このほかにも防災倉庫へたくさんの備蓄品を保管しています。

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