職員の定着率を上げるためにも、ワーク・ライフ・バランス充実の取り組みを充実させたいと考える事業所は多いのではないでしょうか。社会福祉法人善心会は、かつて職員の高い離職率に悩んでいたものの今では「プラチナくるみんマーク」をはじめ、「岐阜ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業認定」や「ぎふ・いきいき介護事業所グレード1認定」など多数の認定を取得するまでになり、離職率低減にも繋がっています。統括施設長を務める小島様に、認定取得の目標設定や組織マネジメントの秘訣についてお伺いしました。

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プロフィール

ワーク・ライフ・バランス実現! 認定取得と定着率向上を叶える組織設計-社会福祉法人善心会-
小島 隆之介 様

社会福祉法人善心会 統括施設長

大学卒業後の平成10年に長野県の医療法人に事務職として入職。平成14年の特別養護老人ホームラックの立ち上げをきっかけに、地元である岐阜県に戻り社会福祉法人善心会に入職。平成26年に事務長に就任した後、平成31年に「地域密着型複合施設 りんどう」と「特別養護老人ホーム ラック」の統括施設長に就任され、働きやすい職場を目指して奮闘している。

人員不足を解消し、「働きたい」と選ばれる事業所を目指して

――課題に感じていたことは何ですか?

一番の課題は慢性的に人員が不足していたことです。

当時の職場は離職率が20%にものぼるほどでした。20%という離職率は、5年間ですべての職員が入れ替わってしまう計算で、4月にいたメンバーの5分1が年度末の3月にはいない、毎月誰かが退職するといった具合です。この状態では常に採用が必要なため、採用基準を下げざるを得ません。そうすると人数は確保できても、常に職員に教育負担がかかり、結果介護どころではなくなってしまいます。実際、当時はその悪循環に陥ってしまっていました。

また、事務長として勤務していたときから、新卒採用に注力したいと考えていました。「新卒に選ばれる」「職員が辞めない」「ずっと働きたいと思ってもらえる」といった理想の職場を実現するためには、時間外労働の削減や有給休暇の取得奨励など、ワーク・ライフ・バランスの保ちやすい職場づくりに取り組むことが重要だと思いました。

――どんなことから取り組み始めましたか?

確実に成果を出すためには、施設長だけではなく、管理職皆で取り組んでいくことが大事だと考え、ワーク・ライフ・バランス推進委員会を立ち上げました。この委員会には施設長・副施設長・事務部長・業務部長を務めているメンバーが参加しています。かつて、「より良くしたい」と思っていても、直属の上司の理解が得られなければ実現が難しいと感じたことがあったので、管理職全員で同じ方向を向くことを意識しました。

認定で必要なものは、職場に足りないものと同じだった

――ワーク・ライフ・バランス推進委員会ではどんなことをしましたか?

まずは、取り組みが職員の望んでいるものと乖離しないように、アンケートを実施しました。さまざまな意見が出ましたが、その中でも特に気になったのは「有給休暇を取得できる雰囲気ではない」という意見です。本来、有給休暇は目的を問わず取得できるものですが、「理由に関わらず有給消化で休むのは申し訳ない」という風潮があることが浮き彫りになりました。義務化されている有給取得が気持ちよく取得できないことは問題だと感じ、一番先に改善すべきポイントだと判断しました。

その対策として、有給休暇を取得しやすくなるようにまずは、法人独自の人員体制基準の明文化と、「勤続年数に応じた有休連続取得制度」「育児参加休暇」「配偶者出産休暇」という休暇制度を新たに作りました。さらに、制度が浸透するようにタイムカード前に掲示板を設置し、常に「ワーク・ライフ・バランスの達成目標」「活用してほしい支援制度」が目に入るようにしました。また、口頭でも管理職から積極的な休暇取得を促すことで、「消化しやすい」雰囲気を作り、遠慮し過ぎることなく休みが取れるようにしましたね。

また、職員が人手不足を気にせず休暇を取れるように、人員体制基準に基づき職員を追加採用しました。職員が足りない状況で休暇の取得を促しても現実味がなく、職員には聞き入れてもらえません。休んでも現場が困らないように追加採用したり、「新しく◯名入るよ」など、職員に常に状況を共有したりすることで、休暇取得に本気で取り組むことを理解してもらえるようにしました。

――改善効果が見えるようにするために、どのように工夫しましたか?

各種認定の取得を目標にしました。認定が取得できれば「みんなが頑張った結果、認定が取れたよ」と伝えられ、職員が効果を実感しやすくなります。また、認定を得るために必要なチェック項目が、当時施設で不足しているものばかりだったことも認定の取得を目標にした理由の一つですね。認定取得を目標にすることで「この認定を目指しているから協力してね」と職員に根拠を示すこともできます。

認定は似ている項目も多いので、当事業所の場合、

 「ぎふ・いきいき介護事業所グレード2認定」

 「岐阜ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業認定」

 「ぎふ・いきいき介護事業所グレード1認定」

 「プラチナくるみんマーク取得」

と取得していきましたが、同時進行で進めていったものが多かったです。

――取り組みの中で失敗したことはありますか?

現場の状況や職員の思いを理解しきれておらず、反発があったことがあります。

男性職員のためにも産後休暇制度を制定しようと、「配偶者出産休暇」を作りました。この休暇は、出産後1週間の間であれば、出産立ち会い、退院のタイミングなど3日間好きな日にちに休んでいいというものでした。ただ、リーダー達は出産や育児経験がない人が多いこともあり、「シフトをどうやって穴埋めするのか?」「夜勤明けの人にまた出勤を頼むなんてできない」と言われてしまいました。そのこともあり、現場の職員がどのような状況や思いで働いているかを正確に把握する必要性を痛感しましたね。

ワーク・ライフ・バランス実現! 認定取得と定着率向上を叶える組織設計-社会福祉法人善心会-
▲プラチナくるみん認定企業は、2020年現在岐阜県内で3件のみ。

1人ではできないからこそ、現場がついてきているか確認することが重要

――職場環境改善の効果は出ましたか?

平成26~27年度の有給消化率は10%台でしたが、昨年度は50%以上でした。今年度は70%を目標に掲げており、達成する見込みです。年次有給休暇の計画的付与分も含まれていますが、リフレッシュ休暇や連休の取得を推奨している効果もかなり大きいと思います。

離職率は、5年ほど前は約20%だったのに対し、昨年度は4%台まで下がりましたね。今年度も離職者は少ないので、同程度の見込みです。職場環境が改善し、各種の認定を取れたことは採用時の武器にもなっていると思います。

――目標達成を目指し取り組む中で、気をつけていることは何ですか?

まず1つ目は、1人では出来ないので仲間を作るようにすることです。今回でいうとワーク・ライフ・バランス委員会を作ったときに管理職を巻き込みました。

2つ目は焦らないことです。私もやりたいことは沢山ありますが、周りの理解が得られないと独りよがりになってしまいます。私は管理職として、3年後や5年後を見据えて方針や制度を設計をますが、現場の職員は目の前の利用者様への対応が重要な任務です。焦らずに現場が目標に対して納得しているかを確認するようにしていますね。

「言っていたから」ではなく、自分の言葉で発信してほしい

――今後の課題や目標について教えてください。

指導職の育成と新卒の採用数・定着率の向上が目標です。

管理職候補でもある指導職が施設(法人)の方針を理解して発信してくれないと、現場の理解が進みません。そのため、月に1回のリーダー会に私も参加して、現場の意見を聞いて労いながら、会社の方向性や目標を伝えるようにしています。リーダーたちには現場職員に対して「施設長が言っているから」「制度だから」と伝えるのではなく、広い視点で物事を見て自分の言葉で発信してほしいなと思っていますね。

また、私が施設長になってから8人の新卒が入職し、来年度はさらに2人が入職予定です。その新卒たちには、10年以上働いてもらい、施設の中核を担うような人材になってほしいと思っており、今後はさらに育成や研修の制度も整備する必要があると考えています。育成・研修制度の充実と同時に、若者の定着への取り組みを評価するユースエール認定も狙っています。実は、ユースエール認定の基準の中には、今目標として掲げている「有給消化率70%」があるんです。先回りして準備していて、まだ職員には言っていないのですが、そろそろ「今後ユースエール認定を狙っている」という話を職員にしようと考えているところです。

ワーク・ライフ・バランス実現! 認定取得と定着率向上を叶える組織設計-社会福祉法人善心会-

※認定資格詳細
「ぎふ・いきいき介護事業所グレード2認定」
『職員から信頼される法人運営』、『介護人材の積極的な育成』『人材の定着のために働きやすい職場作り』に取り組んでいる事業所に認定される。(岐阜県認定)
「岐阜ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業認定」
仕事と家庭の両立支援に取り組む『岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業登録』を行っている事業所のうち、特に優良で、他社の規範となる独自の取り組みを行う企業に認定される。(岐阜県認定)
「ぎふ・いきいき介護事業所グレード1認定」
『ぎふ・いきいき介護事業所グレード2認定』を取得の事業所のうち、さらに高い基準をクリアした事業所に認定される。(岐阜県認定) 
「プラチナくるみんマーク取得」
くるみんマークを取得している企業のうち、さらに仕事と子育ての両立支援が進んでいる企業が認定される。(厚生労働省認定)

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