「介護人材が約38万人不足する」と言われている2025年に向けて、積極的な採用が必要だと思いつつも、「人材確保」に苦戦をしている事業所も多いのではないでしょうか。社会福祉法人さくらぎ会 特別養護老人ホームこもれびの郷では、迫る人材不足に向けて多様な働き方を採用し、人材育成の仕組みをつくることで職員定着と人材確保のための挑戦をしてきました。今回は具体的な取り組み内容を施設長の宮林様へお伺いしました。

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プロフィール

社会福祉法人さくらぎ会 特別養護老人ホームこもれびの郷(施設長)宮林 大輔様
宮林 大輔様

社会福祉法人さくらぎ会 特別養護老人ホームこもれびの郷(施設長)

1998年入職。ケアワーカーや相談員、主任などの管理職を経て2006年より施設長へ就任。現在も現場との連携を第一に考え、施設運営に携わっている。

「働く人の視点」を大切にした職員育成プログラムの構築

――人材確保に注力し始めたきっかけは何でしょうか?

2008年ごろから介護職員の採用が本格的に難航し始めたことがきっかけです。もともと当施設では1人でマルチに仕事をこなせる人材や、柔軟性が高い新卒者の採用に力をいれていました。経験があり、能力の高い方はライフスタイルの関係でパート職員を希望されることが多く、正職員採用をメインで行っていた当施設に応募してくれる方はごく少数でした。また、2000年ごろまでは、社会福祉系専門学校の卒業予定者を一定数採用できていましたが、「介護は大変だ」というイメージがあるためか介護業界を目指す学生が年々減り、新卒者の確保も難しくなってきたんです。十分な数の人材を確保するためには採用の仕方や社内の仕組みを変える必要があると考えました。

――具体的にどのように取り組みを進めていきましたか?

応募者が減った分、まずは現在働いている職員の定着率を上げる必要があると考え、退職希望者が出た際にその理由を詳しくヒアリングするようにしました。

退職希望者へ辞めようと決断した理由を聞くと、結婚や転居での転職以外にも「尊敬できる先輩がいなかった」「教育体制が整っていなかった」などスキルに関する意見が多いことがわかりました。運営側からは気づきにくい部分でもあったため、より働きやすい職場を目指すには、働く人の視点を大事にした仕組みづくりが必要だと気付かされましたね。3年後に同じ思いを抱く人を出さないため、当施設では現在のスキルや目指すべきレベルを見える化するピラミッドを作成しました。ピラミッドを作成したら職員それぞれのスキルレベルやスキルアップのために習得すべき知識・技術がはっきりわかるようになり、自然と人材育成プログラムが整備できたんです。

「業務細分化」による教育体制の整備・採用強化の実現

――ピラミッドを作る際のレベル分けはどのように考えましたか?

はじめに、特別養護老人ホーム内での仕事をざっくり108個にグループ分けし、さらにその業務の難易度をみんなで決めました。ランクは1~9まで設定し、108個の業務を振り分けていったところ、ピラミッドが組み上がりました。このピラミッドの項目は毎年少しだけ変わっていて、現在は105個設定されています。

――ピラミッドを生かした教育方法について教えてください。

各スキルと各ランクには点数設定がされているので、職員には次のランクに上がるために必要なポイント数の獲得を目指してもらっています。たとえば、ランク1の「シーツ交換スキル」であれば、あらかじめ決められている約10個の手順を全てクリアすることでポイントがもらえ、次のスキルの習得に進めるといった流れです。習得したスキルは「獲得スキルポイント」としてカウントし、ランク分けの判断基準とするだけでなく、給与にも反映させています。だいたい「ランク5」に上がるまでに平均3年くらいかかるのですが、この3年という年数は介護福祉士国家試験の要件として設定されている実務経験年数と一致します。職員には日頃からランクアップを目指してもらうことで、3年後には名実ともに介護のプロになれるプログラムとなっています。

――採用方法や応募者層の変化について教えてください。

今まで「正職員」や「有資格者」の採用にこだわっていましたが、業務を細分化したことで無資格・未経験でもできる仕事が多いことが分かったため、未経験者の採用も積極的に行うようになりました。「短い時間だけ働きたい」という人にも入職してもらえるよう、「2時間勤務」や「4時間勤務」など2時間単位で希望勤務時間が出せるようにし、勤務日数も週1回から可能としています。経験が必要なく、拘束時間も短いため、今では近所の方も気軽に応募してくださっています。希望の働き方が叶うと口コミでも広がり、結構な応募者数が集まるようになりましたね。

社会福祉法人さくらぎ会 特別養護老人ホームこもれびの郷のランク別スキル表
▲スキルの見える化により、職員のモチベーションもアップ。目指すスキルが明確化しました。

採用や定着、組織課題に合わせた対策を立てる重要性

――採用・定着への取り組みを行ったことでどのような効果がありましたか?

スキルを「見える化」したことによって職員の業務に対するモチベーションが向上したと感じています。育成プログラムをスキル獲得のポイント制にしたことで、「あとこのスキルを習得すれば、〇ポイント獲得でき、次のランクへ進むことができる」など、現在のスキルと目標達成のための課題把握が各自でできるようになり、ステップアップを目指す職員が多くなりました。

また、ポイントが処遇に反映されることもあり、人事考課にも良い影響がでていますね。人事考課の回数は職員の雇用形態によってさまざまですが、面談の際に「あなたはこのランクまできていて、次の課題はここだよ」といったように、次に何をすべきか明確に提示することができるようになりました。職員の目指すところを共有し、同じ目線を持って話すことができています。働きやすさが口コミで広がり、東京都「働きやすい福祉の職場 」にも第1号で認定されました。

――採用・定着への取り組みで必要なことは何だと思いますか?

現在介護業界全体で、人材確保が難しい時代に突入しています。人材確保が難しい時代に生き残るためには、組織課題に合わせた対策を取ることが必要です。当施設では、業務の細分化を行い職員の採用や定着に取り組んできました。今後は職員の副業を認めたり、週休3日制を取り入れたりするなど、さらにさまざまな取り組みを考えていく必要があると考えています。組織課題に合わせた対策を立てて、この時代を乗り越えて行く準備をすることが重要なのではないでしょうか。

社会福祉法人さくらぎ会 特別養護老人ホームこもれびの郷のスタッフと利用者さまの様子
▲多様な働き方を採用し、職員定着へ。利用者様へのケアにもより時間をかけられるようになりました。

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