高齢化が進む現代において、医療職と介護職の連携はより重要になってきます。ただ、連携の大切さは分かっていても、どうしたらうまくできるようになるのか、悩みを持つ事業所の方も多いのではないでしょうか。サンビレッジ岐阜では、岐阜県内の医療福祉従事者を対象として、多職種連携のために自分の専門職以外の職場体験をする“ごちゃまぜ研修”を実施しています。常務理事の川瀬様と訪問看護師の永井様に研修のノウハウや効果について伺いました。
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プロフィール

社会福祉法人新生会 常務理事
病院での勤務を経て、2007年に社会福祉法人新生会に入職。訪問看護ステーションの運営やサンビレッジ岐阜の責任者を担当。2010年にごちゃまぜ研修を企画し、以来、研修の運営や研修コーディネーターの育成に携わっている。
社会福祉法人新生会 訪問看護師(認定看護師)
2019年に社会福祉法人新生会に入職。入職後はサンビレッジ岐阜のシティタワー・訪問看護ステーションで勤務。2020年10月開催のごちゃまぜ研修では、研修コーディネーターとして、プログラムの考案や運営を担当している。
多職種連携の第一歩として、ごちゃまぜ研修をスタート
――ごちゃまぜ研修とはどんな研修なのでしょうか?
医療職と介護職が自分の専門職以外の職場体験を通して、多職種間の連携強化につなげることを目的とした研修です。研修には医師・看護師・介護職員・リハビリスタッフなどの各専門職が1名ずつ計4~5人が参加し、2日間、職場体験やディスカッションを通じて他職種への理解を深めます。研修の最後には、3か月以内に実行したいことを書くアクションプランを作成してもらうことで、現場にもしっかり成果が反映されるような仕組みとなっています。
ごちゃまぜ研修は1年に5~6回の頻度で実施しており、岐阜県内の医療福祉従事者は希望すれば誰でも参加できます。
――ごちゃまぜ研修を始めるきっかけとなった出来事を教えてください。
研修を始めたきっかけは、サンビレッジ岐阜の施設形態と大きく関係しています。
サンビレッジ岐阜は、JR「岐阜」駅西に位置する複合タワー「岐阜シティ・タワー43」内にある事業所です。3階の医療福祉フロア「サンサンタウン」では、通所介護・訪問看護・住宅型有料老人ホームを運営しており、6階から14階のサービス付き高齢者賃貸住宅にお住まいの方に向けたサービスを提供しています。
サンサンタウンには、サンビレッジ岐阜以外にも診療所や歯科など、ほかの会社が運営する事業所が多く入っていますが、シティ・タワーがオープンしたばかりの頃はそれぞれが運営で手一杯になっていたこともあり、ほとんど接点がありませんでした。しかし、このままではスムーズな連携ができないと感じ、その打開策として他職種の仕事が体験できる研修を開始しました。
はじめに実施した研修はただ他職種の仕事を体験してみるというものでしたが、より良い連携のためにグループワークやディスカッションの時間も設けるようにしました。そうしてできたのが現在の「ごちゃまぜ研修」です。当初は法人内でのみ実施していたごちゃまぜ研修ですが、徐々にサンサンタウン内でご協力いただける医療福祉機関が増えました。そこで、もっと多くの職種の方と関わり、外部の方にも広げていければと思い、現在のような希望すれば誰でも参加できる研修にしています。
――参加者はどのように集めていますか?
チラシや口コミで研修のことを知って参加する方が多いです。
岐阜県の助成を受けて運営しているので、参加者は基本的に岐阜県内在勤・在住の医療福祉事業者や医学生、研修医に限定しています。そのため、岐阜県内の各事業所にチラシを配って、募集をかけています。チラシのほか、すでに参加した方から研修のことを聞いて申し込まれる方もいますね。
参加を希望する方は、介護職の方が圧倒的に多いです。参加者の職種が偏るとごちゃまぜ研修の意味がなくなってしまうので、介護職の希望人数が多すぎる場合は、次回ご参加いただいたり、医療職が少ない場合は法人内の医師や看護師に参加してもらったりして、各職種の人数を調整しています。

他職種の視点から見える、これまでとは違った世界
――研修を実施するうえで、1番大変なことは何ですか?
研修のプログラムを考えることです。毎回、研修参加者に事前にアンケートを取り、研修コーディネーターがその方の希望や課題に合った職場体験ができるプログラムを組んでいます。
たとえば、ケアマネージャーのアンケートに「医師と話すことに苦手意識がある」と書いてある場合は医師の往診に同行できるプログラムを組みますし、「訪問介護では何をしているか分からないので知りたい」と希望する医師がいれば訪問介護の現場を体験できるようにしています。
参加者の希望や課題を汲み取ったうえで、1人の利用者様を中心に他職種の視点で体験できるように、サンサンタウン内にある各医療福祉機関の予定を確認して、スケジュールを調整しています。

――実際に参加した職員の方からはどのような声が挙がっていますか?
「ほかの職種の仕事を見て、こんなすごいことをやっているんだと尊敬の気持ちが芽生えた」「ほかの職種の人は自分たちの知らない利用者様の姿を知っているということを初めて知った」という声が挙がっています。
具体的には、普段往診している医師が「診療するときに見る利用者様は具合の悪そうな姿が多かったけれど、通所介護の職場体験で元気に趣味を楽しんでいる姿を見て驚いた」という感想を述べていました。病院勤務の看護師の中には「訪問看護の現場を体験したときに訪問看護師は短時間のうちに利用者様のことを看て、医師や家族ともコミュニケーションを取っていることが分かり、すごいと思った」という方もいました。
研修終了後のアクションプランには、「もっとほかの職種の意見を聞きたいと思った」「他職種の人と話すときは、方法だけでなく背景も伝えるようにしたい」などコミュニケーションに関する内容を書く方が多いですね。
――研修を行ったことでどんな効果がありましたか?
参加者の他職種理解の促進と、モチベーションアップには効果があると思います。
ごちゃまぜ研修を受けて他職種を理解することで、相手がどんなことに注意しながら仕事をしていて、どういった情報を必要としているのかが分かるので、自然とスムーズに連携できるようになります。
また、参加者が自分の仕事を見直すことで、改めて自分の職種の良さに気づくこともあるはずです。法人内では、このような意欲向上の効果を期待して、中堅職員や経験が2~3年以上くらいの方の参加を奨励しています。2~3年目はちょうど仕事にも慣れてきて、「この仕事向いていないのかな」「もっとほかにおもしろい仕事があるんじゃないかな」と悩む時期です。実際、「研修で他職種の人と話すことで自分の仕事を見つめ直すことができた」、「当たり前だと思っていたことを他職種の方にすごいと言ってもらえて、自信がついた」という声を聞きます。ごちゃまぜ研修で受けた刺激が今後の行動を変えるきっかけにはなっているのかなと感じます。

都市部以外でも研修を実施できる体制づくりが課題
――今後の課題は何ですか?
サンサンタウンで長年ごちゃまぜ研修を続けてきたノウハウを活かし、法人内の別事業所でも同様のレベルの研修ができるようにすることです。実際、法人本部のある揖斐郡池田町ですでに数回研修を実施しているものの、都市部と比べて運営やスケジュール調整が難しいと感じます。
サンサンタウンは1フロアに医療福祉機関が集まっているので、参加者に何か困ったことがあっても、すぐに研修コーディネーターがサポートできます。一方、本部では協力してもらえる医療福祉機関のある場所が離れているため、サポートが難しく、研修参加者を受け入れる側や参加する方が研修の趣旨を理解しないまま、職場体験を終えてしまうことがありました。そこで、事前に参加者を集めてオリエンテーションで目的をしっかり伝えることで、徐々にうまくいくようになっています。今後はより安定して運営できるようになればと思っています。
――多職種連携に悩みを持つ事業所へメッセージをお願いします。
ごちゃまぜ研修は一見簡単そうに見えますが、研修に協力してもらえる医療福祉機関を探したり、プログラムを考えたりする必要があるため、実施するのにはなかなか労力が要る研修です。研修コーディネーターは、通常の仕事をこなしつつ、研修のスケジュール調整や研修生への配慮などをしているので、体制的にも余力がないとできません。
しかし、周囲のスタッフや事業所と協力し、サポートを受けながら研修を運営することは、研修コーディネーターにとって、身をもって多職種連携を学ぶ貴重な機会となります。事業所全体としても研修を通して周辺事業所とスムーズに連携できるようになるというメリットがあります。実際、サンビレッジ岐阜でも、研修を通して周辺事業所と情報交換し合えるようになったり、ちょっとしたことでお礼を言い合ったりする関係になれました。
主催者にかぎらず、研修生を受け入れる事業所は、自事業所のことを説明し、何を大切に仕事しているのか伝える機会を得ることができますし、研修の参加者は普段と違う世界を体験して学ぶことができます。ごちゃまぜ研修は、研修を実施する側も参加する側も、双方に学びのある研修だと考えています。まずは気軽に岐阜シティ・タワー43へお越しください。いつでも見学は可能です。
採用ご担当者様へ
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