平成28年に統合運営支援ソフト「ICTリハ」を開発。「ICTリハ」などICTを活用した新しいデイサービス運営に挑戦している株式会社エムダブルエス日高。普段の運営でのICT活用方法やコロナなどの非常事態での活用、そのメソッドを代表取締役の北嶋様にお伺いしました。

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プロフィール

株式会社エムダブルエス日高(代表取締役社長)北嶋史誉様
北嶋 史誉 様

株式会社エムダブルエス日高(代表取締役社長)

医療法人社団日高会日高病院の社会福祉課にて医療ソーシャルワーカーとして勤務後、1997年より関連法人である株式会社エムダブルエス日高へ移籍。事業部長を経て、2011年10月より代表取締役社長に就任。現在も現場の声を大事にしながら、ICT開発に取り組んでいる。

職員の声から生まれた自社開発ソフト「ICTリハ」

――なぜ「ICTリハ」という統合運営支援ソフトを開発したのでしょうか?

「業務の効率化」に会社として課題を感じていたためです。大小合わせて13のデイサービスを運営する当社では、職員の75%が非常勤勤務の職員です。勤務時間が限られる中で、業務効率化ができる仕組づくりが必要でした。デイサービスの中で1番大変な仕事は「記録業務」です。血圧を測る際など、職員はその場で結果をメモに書き、そのデータを今度は連絡ノートと介護記録に記入します。1度の検査で同じデータを3回も書くことになるので、その分ほかの業務を圧迫してしまいます。さらに、連絡ノートは利用者様ごとに異なる帰宅時間を考慮しながら書く必要があり、それもまた職員の大きな負担になっていました。時間に余裕がないと職場内の雰囲気がピリピリしてしまい、相談したいこともできない環境になってしまいます。「利用者様の情報を手で書くことなく記録できるシステムがあれば、本来の業務に集中できるようになるのではないか」と考え、自社内でソフト開発に取り組み始めました。

もともと当社は、施設運営などの介護保険事業のほかにも、介護保険外事業としてシステム開発といった介護現場をより便利にしていくための事業にも取り組んでいます。システム部門にエンジニアが在籍しており、現場の声を反映したシステムにできるように開発を進めていきました。

――「ICTリハ」の活用方法とは?

2つの活用方法があります。1つは、「ペーパレス化による職員の業務効率を上げる機能」です。利用者様には施設内にいる間、バーコード付きの名札をつけてもらい、何かデータを取るときは職員が都度「ピッ」と読み取ります。バーコードを読み取るとその利用者様のデータが出てくるので、職員はそこに検査値やお身体の状態を入力します。データを入力すると、利用者様の連絡ノートや施設のカルテにも同じ情報が自動で記録され、午後3時半になると連絡ノートの内容が自動的に紙に印刷される仕組みです。利用者様が帰宅されるときは、データが印刷された紙をお渡しするだけなので、入館から退館まで職員が「書く」ことはほぼありません。

このシステムのおかげで、職員の記録業務の時間が大幅に短縮され、残業もほとんどすることなく帰宅できる状態が作れています。また、記録時間が短縮することで、リハビリやケアにより多くの時間を割けるため、職員だけでなく利用者様にとっても大きなメリットだと思います。

もう1つは、「利用者様の介護度を改善するための情報蓄積や解析機能」です。ICTリハには、ICTリハを利用している他法人も含めて全国約60施設、約2,000万人分の利用者様データが蓄積されています。膨大なデータが蓄積されていることで、新規の利用者様がいらしたときに、同じ病状かつ回復した方のデータを参考にしたリハビリメニューを提案できます。リハビリの内容は人工知能が実際にあった過去のデータを元に計算したものであり、最も回復が期待できるメニューです。筋トレメニューを提案すると「好きじゃないからやりたくない」と言われてしまうこともあるのですが、過去に回復した方と同じメニューであることを説明するとみなさん前向きに取り組んでくださるので、介護度の改善率も非常に高くなりました。

――職員の方からの反応はいかがでしたか?

就業時間内に業務が終わることで、負担の偏りが少なくなったと喜ばれていますね。お子さんがいる方は基本的に定時で退勤しなければお迎えに行けないため、終わらなかった業務は常勤職員が対応することになります。ICTリハを取り入れたことで就業時間内に業務が終わるようになり、常勤職員の負担が減らせました。ワークライフバランスが保ちやすくなったという声もありましたね。

システム開発のエンジニアが社内に約8名在籍しており、職員からの改善要望にもすぐ答え、現場に則したシステムづくりができているのも当社の特徴です。エンジニアには実際に現場で業務をする機会を設け、現場職員とのスムーズなコミュニケーションが取れるようにしています。

▲ICTリハのリハビリ選択画面。利用者様の状態に合わせて最適なリハビリを選択します。

「データの蓄積」がもたらした非常時での活用方法

――コロナ禍のような非常時には、どのように活用していましたか?

利用者様の利用状況から、必要な職員比率を割り出し、最適な人数のシフト作成などに活用していました。実際に新型コロナウイルスが流行りだした2020年3月からデイサービスの「利用控え」が始まり、大規模通所介護事業所である「日高デイトレセンター」では、320名の定員に対して実際の利用者数は半分ほどになりました。利用者様の数が半減した場合、職員数も通常の半分で十分ですが、非常時は正確な人数を予測しきれません。だからといって、毎日必要以上に職員を配置すると大赤字になってしまいます。そのような事態を避けるため、当社ではICTリハを活用し、1日に必要な職員数を割り出しました。

ICTリハには利用者様のデータが全て入っているため、どの利用者様がいつデイサービスに来るのかなどを分析し、1日に必要な職員数を算出することが可能です。また、全職員のデータを「職員マスタ」として蓄積しており、出勤日などもすぐにわかります。

実際に利用控えがあった「日高デイトレセンター」の4月のデータを見てみると、もともと382時間分の職員勤務時間が必要でしたが、ICTリハで算出したところ320時間で十分ということがわかりました。62時間分の職員の勤務時間が余分であることが判明したため、シフトの調整を行いました。蓄積されたデータを活用することで、少し先の利用状況も予測できます。あらかじめ適切な職員数を割り出すことで、予測しにくい状況でも赤字を回避できて、かつ業務がスムーズにまわるシフトの作成に成功しました。

出勤日数が減ることで、給与面が懸念されるところですが、雇用調整助成金制度を活用し、給与を満額保障することができました。「勤務調整をさせてもらうけど、給与はきちんと担保するよ」と伝えていたので、配置人数を減らしながら職員の雇用も守れています。また、事業所としては人件費の一部を助成金でまかなうことができたため、経営にも大きな打撃はほぼありませんでした。

ICTをさらに活用した「ハイブリッドデイサービス」の運営を目指して

――ほかにICTの活用方法について考えていることはありますか?

ICTリハ以外にも、ICTを活用したサービスをしていきたいと考えています。実際に当社では、通わなくても安心感を持ってもらえるオンラインサービス「ハイブリッドデイサービス」の運用を開始しています。普段は通っていただきますが、コロナやインフルエンザなどの流行時にはオンラインでデイサービスに参加することが可能です。自宅にいながらリハビリに参加できたり、バイタルなども画面越しで確認できたりします。普段のように通えない状況になっても、ハイブリッドデイサービスを利用すれば、施設の職員と利用者様の繋がりを保つことができるはずです。

もともと当社では「かかりつけデイサービス」という概念を作り出していて、デイサービスが「ハブ」の役割をすることで利用者様の孤立が防げると考えています。「かかりつけ医」や「かかりつけ薬局」が決まっている方はたくさんいますが、病院や薬局よりも高頻度で通うのはデイサービスです。さらに、デイサービスには、看護師や介護師、機能訓練士、相談員などあらゆる視点から集められた利用者様の情報が蓄積されています。現在の介護度に関わらず「かかりつけデイサービス」との繋がりを大切にしていただくことで、利用者様の求めるサービスが的確に提供できるようになると考えています。まだ改善の余地はありますが、体制が整えられれば非常事態の際にもスムーズに介護サービスが提供できるシステムになると思います。

▲ハイブリッドデイサービスでのデモ画面。施設とつなぎ一緒にリハビリに参加できます。

――今後ICT化を検討している事業者へ伝えたいことは何でしょうか?

まずは「ICTに触れてみる」ということに挑戦してほしいですね。「うちではできない」と決めつけるのではなく、まずはやってみることが1番大切なことではないでしょうか。ICTリハなどソフトを開発するとなると、誰にでもできるわけではないので、今活用されているICTをまずは試して見てほしいですね。施設の運営状況や、課題に合わせた解決方法として取り入れることも1つの方法だと思います。介護業界全体だけでなく、特にデイサービスではICTにまだまだ馴染みがありません。まずは使ってみて、効果を実感してから取り入れることをおすすめしますね。

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