「介護の仕事は休めないのは当たり前」「海外旅行なんて夢のまた夢」と思っていませんか?特別養護老人ホームしょうじゅの里小野では、「介護をもっと休める仕事にしたい」という明確なビジョンを持って、週休3日制を導入しています。どのように運用しているか、週休3日制にはどんなメリットがあるのか、副施設長の長山様に伺いました。

※きらケア研究所は、介護の求人サービス「きらケア」が運営する介護人事に特化した情報サイトです。

プロフィール

介護をもっと休める仕事に 週休3日で理想のワークライフバランスを叶える-社会福祉法人兼愛会 特別養護老人ホームしょうじゅの里小野-
長山 愛香 様

社会福祉法人兼愛会 特別養護老人ホームしょうじゅの里小野 副施設長

2018年5月に社会福祉法人兼愛会に入職。生活相談員を経て、2018年8月から副施設長に就任。施設の運営や人事採用に携わっている。

ワークライフバランスを重視し、オープンと同時に週休3日制を導入

――週休3日制の仕組みについて教えてください。

「1日10時間勤務・週休3日制」と「1日8時間勤務・週休2日制」の2つの勤務体系があり、職員は希望する方を自由に選択できるようになっています。どちらを選んでも基本給や賞与、夜勤手当の額など、待遇面に一切差はつきません。

週休3日の場合、当施設では勤務中に中抜けの時間が入ります。たとえば7~12時まで勤務した後、間を空けて16~21時に再度勤務するなど、中抜けを挟みつつ、10時間勤務してもらう仕組みです。現在は、8割程度の職員が週休3日制を選んでいます。2~3か月に1度、各ユニットのリーダーを通して、週休3日制を継続するかどうか、職員それぞれの意思を確認しています。

――どうして週休3日制を導入しようと思ったのですか?

新しい働き方を取り入れて、介護のイメージを変えたいと思ったためです。

もともと、開設当時の施設長がほかの介護施設に勤務していたとき、週休3日制を導入しており、残業時間の削減や休日の確保、入職する職員の増加などに一定の効果を得られていました。当施設でも週休3日制を取り入れることで「休めない」という介護業界のイメージが変われば、介護の仕事に興味を持ってくれる方が増えるのではないかと考えました。そこで、当施設では2018年のオープンと同時に、週休3日制を導入しています。

自分たちに合った運用方法とは何か?模索しながら挑んだルールづくり

――どのように運用のルールを決めていきましたか?

前施設長の勤務していた施設を参考に、現状に合わせて自分たちで変えていきました。実は、当施設は最初から中抜けありの勤務だったわけではありません。オープン当初は休憩1時間を挟み、通しで1日10時間勤務にしていました。休日数は1年単位で調整し、給与は毎月一定額を支払う仕組みです。

しかし、この運用により、ある問題が出てきました。月によって休日数に差が出てくるので、月単位で見ると、就業日数と給与の額が合わなくなっていたのです。年度途中で退職する方がいる場合、就業日数に対して給与が多くなることがあり、対応に困っていました。

この問題を解決するため、オープン後から1年後にルールを変更しました。月単位で一定の休日数を確保できるようにし、シフトの組み方も見直しました。月単位で休日数を一定にするとなると、どうしても人員配置が難しくなりますが、中抜けのシフトを作ることで、必要な時間帯に人員を配置できるようにしました。たとえば、7時~12時まで勤務した後、間を空けて16~21時に勤務すると、日勤と遅番に必要な人員を1人でまかなえます。パート勤務の方が多い日中と比べ、夕方以降や早朝の時間帯は手薄になりがちでしたが、中抜けを取り入れたことにより、人員配置に融通を利かせやすくなりました。

――制度の運用を進めてから、難しさを感じたことはありますか?

有休の付与の仕方には難しさを感じました。有休は法律上、1日8時間勤務を前提として規定日数が割り振られています。1日10時間勤務の場合、休みの単位を8時間とするのか、10時間とするのかは施設によって対応が分かれるところです。

当施設の場合は、法人内で週休3日制を導入している施設がほかにないので、足並みをそろえる目的で、休みの単位を8時間にしています。職員には有休を1日取得したら、そのぶんほかの日に合計2時間多く勤務してもらうことで、8時間勤務の場合と同じ扱いで計算することが可能です。

一方、週休3日制を導入している他法人では、有休は10時間単位で取ってもらい、施設側で取得時間の合計を調整しているところもあると聞いています。やり方は一つではなく、施設の事情に合わせた方法を選んでいけばいいと思います。

――週休3日制に関して、職員からの反応はいかがでしょうか?

職員からは「休みを取りやすい」「今後も週休3日制を継続して使っていきたい」という意見が出ており、評判が良いです。「休みがたくさんあって、何に使ったらいいか分からないほどです」といううれしい悲鳴も挙がっています。

制度の運用を変えたときは難色を示す職員もいましたが「週休3日制を継続できるならかまわない」と理解してもらうことができました。当施設の職員は近隣に住んでいる方が多く、中抜けの時間に家に帰ることができるので、問題なく対応できているのだと思います。最初の1か月、2か月は生活リズムが変わるので「疲れる」という声が挙がっていたものの、身体が慣れてきてからはむしろ快適に過ごしてもらえているようです。

介護をもっと休める仕事に 週休3日で理想のワークライフバランスを叶える-社会福祉法人兼愛会 特別養護老人ホームしょうじゅの里小野-
▲オープン時から週休3日制を導入しているので、休みやすさに魅力を感じて働いている職員が多いです

介護を“当たり前のように休める仕事”へ

――週休3日制のメリットはどんなところでしょうか?

残業ほぼゼロを実現できることと、連休を取得しやすいことです。

週休3日制を取り入れると、週休2日制に比べて複数名の職員が勤務している時間帯が多くなり、協力して作業を行えるので、残業を減らすことができます。加えて、本来なら残業とみなす時間でも、有休の差分の2時間を充てられるため、総労働時間は長くなりません。連休については、1か月に1度は3連休が取得できています。調整すれば5連休も取れます。

――採用における効果があれば教えてください。

介護未経験の方を含め、人が集まりやすく、採用における効果は大きいと感じています。ホームページや求人票でも週休3日制を打ち出しているので、面接時に開口一番「週休3日制を見ました」と言っていただけることもあります。

また、週休3日制は外国人雇用を進める場合にも有効です。週休3日制は連休が取りやすいため、お休みを利用して一時帰国を希望する外国人職員の意向とマッチしています。在留外国人が全職員の約35%を占める当施設でも、週休3日制の導入はプラスになっていると感じますね。

――ほかの介護施設の方に伝えたいことはありますか?

今後、介護業界全体の意識が変わり、介護が“当たり前のように休める仕事”になっていけばいいなと思います。介護職はシフト勤務を採用している都合上、どうしても長期休暇の取得が難しい仕事ではあります。休みづらさに加え、思いを尽くして仕事をしても、結果が見えづらいこともあり、なかにはバーンアウトしてしまう人もいるでしょう。

しかし、休めないことを「仕方がない」と受け止めるのではなく、大変な仕事だからこそしっかり休み、心身ともにリフレッシュすることを大切にしていってほしいです。そのための手段の一つとして、週休3日制は有効であり、興味があるなら導入を検討するのもいいと思います。

採用ご担当者様へ

医療・介護の分野で成果を出し続けてきた弊社のノウハウとネットワークを、御社の課題解決にぜひともご活用ください 。
掲載に関するお問い合わせや、採用についてのお悩みなどはこちらから。