「職員教育にもっと力をいれたい」「介護技術のレベルアップを図りたい」と考えているものの、今一歩踏み出せない事業所の方も多いのではないでしょうか。2017年から職員教育のために翻訳字幕付き教育動画を作成し、職員の技術平準化に取り組んでいる社会福祉法人一燈会の高山様に、動画作成による育成方法や活用ノウハウについて伺いました。

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プロフィール

社会福祉法人一燈会の育成担当高山真弓様(たかやままゆみ さま)
高山 真弓様

社会福祉法人一燈会 (育成担当)

約12年の介護職員経験を経て、2018年に同法人へ入職。入職後から職員育成や研修プログラムの作成、OJT動画作成プロジェクトに参画。法人内の職員技術の向上などを担っている。

教育効率化の必要性

——OJT動画を撮影し、活用しようと考えた背景は何でしょうか?

大きく分けて2つの理由があります。1つ目は人材不足により、「教育できる人材」の定着や確保が困難になってきているためです。新人職員の入職時に、一対一で丁寧に教育していくことが今後難しくなってくると考え、「教育を効率化できるツールを作りたい」と考えました。2つ目は、外国人人材の教育時に言葉の壁を感じていたためです。外国人人材の採用を積極的に進めていましたが、教育時に「ニュアンスが伝わらない」「言葉の意味が上手く理解できない」などの問題点が上がっていました。これら2つの理由から「人材教育を効率的に行え、かつ外国人人材への教育にも対応できるツール」として、翻訳や動画作成を行っているエヌ・エイ・アイ株式会社と協力し、オリジナル翻訳字幕付きOJT動画の作成を始めました

——具体的にどのように動画の作成を進めましたか?

視聴することで基本的な介護技術が身に着く動画にするため、現場を理解している当法人と、編集のノウハウがあるエヌ・エイ・アイ株式会社とで、役割を分けて作業を行いました。当法人では、介護ケアの項目ごとのシナリオ作成や脚本制作、出演者の選定や撮影場所の確保、実際の動画撮影までを担当し、エヌ・エイ・アイ株式会社では、動画の編集作業やシステム構築、翻訳作業を担当してもらいました。動画撮影は全て法人内の施設を利用し、業務時間後やケアの合間を縫って撮影を進めましたね。リアルな介護ケアの実践方法が伝わるように何度も撮り直し、修正を重ね、約1年をかけて1本10分程度の動画を約150本作成しました。

——動画作成で大変な作業はありましたか?

「手の位置は本当にここでいいのか」「この角度の撮影はこのケアでは必要か」など、撮影を重ねるごとに細かい修正点がでてきていたため、何度も撮影し直すのは大変でしたね。出演した法人の施設職員も、全員が100%の介護技術を習得できているわけではありません。また、介護ケアの項目を細かく分けていたため、一つひとつのニュアンスをどう伝えればいいのかなど苦労した点は多かったです。例えば、左半身麻痺の方への介助動画があれば、もちろん右半身麻痺の方への介助動画も必要です。介護ケアは利用者様によっても違うため、「どんなケアパターンが必要なのか」を踏まえてどんな動画を撮影するか考えることも作成当初は大変でした

介護現場でのOJT動画撮影風景
▲実際の動画撮影風景。職員同士協力し、少しずつ撮影を進めて行きました。

「技術の平準化」を一燈会のスタンダードへ

——OJT動画の利用対象や活用方法を教えてください。

新卒職員や、中途職員の中でも経験の浅い入社1年目の方は必ず視聴できるようにしています。動画をe-ラーニングで視聴できるように、全員にアカウントを発行しました。パソコンだけでなく携帯電話などで自由に利用できるシステムを取り入れたため、自宅でも介護ケアの復習が可能です。さらに、動画視聴をキャリアアップシステムの1つに取り入れ、新人職員には視聴後にテストを行うなど、ケアのスキルアップができるようにしています。管理者側は視聴状況やテスト結果を常に確認できるため、習熟度の把握にも繋がっていますね。また、動画を中国語、ミャンマー語、ベトナム語など多言語に翻訳しているため、外国人職員も業務の中で分からない部分は動画を使って復習し、現場で活かしています。

——OJT動画を活用後、職員からの反応はありましたか?

職員からは「業務を教えてもらっている中で聞けないことがあっても、動画で基本的なケアを確認することができている」、また教育者からは「改めて基本的なケア方法を確認し、自分の介護ケアの見直しにも繋がっている」という声が挙がっています。特に教育者は自分が今まで行ってきたケア方法に固執して教えがちですが、改めて新人教育をする際に介護方法の見直しをすることで自身の振り返りもできているようですね。OJT動画は介護ケアに必要な基本的な部分を網羅しているため、今後は動画の活用を当法人のスタンダードとして、職員に技術を身に着けて行ってほしいと思っています。

——動画活用時のメリットやデメリットについて教えてください。

メリットは教育者が変わっても基本的な介護技術の提示が継続して可能なことです。教育者に聞きにくい点があった際に動画を視聴することで解消できることに加え、技術の振り返りが各個人でできるため、経験が浅い職員からベテラン職員まで幅広く活用ができます。また、介護技術レベルの把握がしやすいため、新人職員の技術の平準化がしやすいと考えています。デメリットとしては、基本技術は習得できるものの、応用技術までは対応できていないことです。実際の介護現場に入ると、利用者様の疾患や生活歴がそれぞれ違うため、どうしても基本的な技術だけでは補い切れない場面がでてきます。基本的な技術だけでなく、現場でのフォローや経験が必要な場面では活かしきれていない部分もあると感じています。

今後を見据えた動画活用方法とは

——今後の展望を教えてください。

今後はOJT動画の「応用編」を作成していきたいと考えています。現在の基本的なケア技術だけでなく、認知症など心のケアへの対応方法など、レベルを上げた動画作成もしていきたいですね。また、外国人人材の介護士資格取得に向けた動画教材の作成も考えています。今後、外国人人材の受け入れはさらに盛んになることが予想されます。介護士としての技術だけでなく、必要な知識習得を多言語化して伝えられるツールが今後必要になってくるのではと考えています。

——他事業者へのアドバイスをお願いいたします。

OJT動画は、エヌ・エイ・アイ株式会社が動画教材として販売を行っています。動画をどう利用していくのかは法人次第ですが、ぜひ職員教育に活かして欲しいですね。今後、日本でも外国人人材の受け入れもどんどん増えてくると思うので、外国人人材の教育ツールとしても利用が増えることを期待しています。

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