利用者様のできることを減らさないため、なるべくトイレでの排せつにこだわっている介護老人福祉施設寒川ホーム。従来型のバケツ式ポータブルトイレの使用には「匂いが気になる」や「設置に手間がかかる」という問題がありましたが、水洗式ポータブルトイレ「流せるポータくん3号」の導入により、解決できたといいます。副施設長の今村様と介護現場責任者の鈴木様に導入のメリットや介護ロボットを取り入れる際の注意点について伺いました。

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プロフィール

できることを減らさない!介護ロボットを活用した排せつ支援の取り組み-社会福祉法人吉祥会 介護老人福祉施設寒川ホーム-
今村 真 様

社会福祉法人吉祥会 介護老人福祉施設寒川ホーム 副施設長・介護老人福祉施設 管理者

2001年介護老人福祉施設寒川ホームに入職。介護職員として10年、生活相談員・ケアマネージャーとして5年勤務した後、2017年から介護老人福祉施設管理者に就任。職員の教育・採用のほか、補助金の申請などに携わっている。

鈴木 健吾 様

介護現場責任者

2009年介護老人福祉施設寒川ホームに入職。介護職員として9年勤務した後、現在は生活相談員・ケアマネージャー兼介護現場責任者を務めている。

「トイレでの排せつ」へのこだわりが介護ロボット導入のきっかけに

――排せつ支援にあたって大切にしている考えを教えてください。

極力おむつやパッドを使わずに、日中はトイレで排せつしてもらうことです。正直、介助する側にとっては、トイレに誘導するよりベッドの上でおむつを替える方が楽だと思います。それでも、利用者様の「トイレで排泄したい」という希望は尊重したいですし、少しでもできる動作を増やして元気になってもらいたいので、トイレの使用にはこだわっていますね。

寒川ホームでは日中の時間帯におむつを使っているのは64名中、わずか15名ほどです。夜になるとおむつを使う方の人数は増えますが、それでも約8名の方は夜間もトイレで排せつをしており、昼間は共用のトイレ、夜間は居室にあるバケツ式のポータブルトイレと使い分けてもらっていました。

――従来のバケツ式ポータブルトイレを使用するのにはどんな課題がありましたか?

まず、夜間のみ使うので、毎日夕方に保管庫から取り出して設置する必要があります。設置後は、夜間、利用者様が用を足すたびに汚物室まで持って行って掃除しなければなりません。当施設は多床室なので、洗わないとあっという間に居室に匂いが充満してしまいます。洗っている最中でも、ナースコールが鳴れば作業を中断して、利用者様のところに向かう必要があります。

夜勤は3人体制ではありますが、ほかの職員が仮眠している時間帯は1人で対応をしなければなりません。その時間帯に汚物室で掃除をしていると、目が行き届いていない間に利用者様が転倒していないか、困ったことが起きていないか不安になってしまう職員もいました。

――水洗式ポータブルトイレ「流せるポータくん3号」を知ったきっかけは何ですか?

直接のきっかけは、神奈川福祉サービス振興会から介護ロボットの委員会を立ち上げるので、実証実験に協力してほしいと依頼があったことです。介護ロボットの種類はいくつか選ぶことができたのですが、水洗式ポータブルトイレ「流せるポータくん3号」は排せつに関する課題を解決できることと、ほかのロボットと違って操作が簡単であり、職員の指導が必要ないので、初めて介護ロボットを扱うのにはちょうどいいと考えました。

できることを減らさない!介護ロボットを活用した排せつ支援の取り組み-社会福祉法人吉祥会 介護老人福祉施設寒川ホーム-
▲従来からトイレでの排せつ支援に取り組んできた寒川ホーム。トイレでしっかり排せつすることで、利用者様の食事量も増えるといいます

トイレ洗浄の手間が省け、夜勤の時間にゆとりが生まれた

――導入にあたって取り組んだことはありますか?

ハード面の準備は配管工事のみで、施設側としては特に準備することはありませんでした。

導入にあたっては、もともとバケツ式ポータブルトイレを利用していた人の中から、夜間トイレの回数が多い2名を対象に導入して、それぞれの方のベッド脇に1台ずつ設置しました。1日中使うと部屋から出る機会がなくなってしまうので、利用者様には日中は共用トイレを使い、夜間のみ居室の水洗式ポータブルトイレを利用してもらうようにしています。

――水洗式ポータブルトイレを使うメリットはどんなところでしょうか?

今まで「職員の方に汚物を片づけてもらうのが申し訳ない」「部屋に匂いが充満してしまうとほかの人に迷惑がかかる」と水分の摂取を遠慮していた利用者様が、気にせずに水分を摂れるようになりました。水分量が増えたことで、自分から積極的にトイレに行くことができています。流すときも、手か足でボタンを押すだけでできるので、麻痺のある方でもできる動作が増えました。

一方、職員にとってもトイレ設置と掃除の手間が省けて、時間にゆとりができたのはメリットだと思っています。だいたい一晩5~6回用を足される方が多いので、30分ほどの時間削減につながり、慌ただしい夜間帯に少し余裕を持てるようになりました。

――デメリットはありますか?

設置には配管工事が必要なので、取り外しや再設置が簡単にできないことです。水洗式ポータブルトイレを使わなくなった場合、トイレ本体を外すと配管がむき出しになるのですが、そのままだと利用者様がつまずいてしまいます。配管ごと取ってしまうと、次に使いたい人が出てきたときにまた設置のための工事をしなければいけません。

あとは、水を流す音がわりと大きく、多床室に響いてしまいます。トイレのふたを閉めて水を流せば多少音が小さくなるのですが、自立度の高い方でないとなかなか難しいようですね。

できることを減らさない!介護ロボットを活用した排せつ支援の取り組み-社会福祉法人吉祥会 介護老人福祉施設寒川ホーム-
▲水洗ポータブルトイレは利用者様のベッド脇に設置して、夜間すぐ利用できるようにしています

「介護ロボットは使えない」と決めつけるのはもったいない

――今後の活用方法について考えていることを教えてください。

寒川ホームではおむつを使う人は減っているものの、トイレの数が少ないので、今後は水洗式ポータブルトイレをもっとたくさんの方に使っていただきたいと思っています。しかし、むやみに台数を増やすと使わなくなる可能性があるため、流すポンプのみを置いて必要な場合に本体を取りつけたり、居室にある洗面台を使って簡易的に設置したりするなど工夫していきたいです。

――介護ロボットの導入を検討しているほかの事業所の方に伝えたいことはありますか?

排せつ支援ロボットに限ったことではありませんが、施設形態や利用者様の特徴に合った介護ロボットを選ぶことが大切です。例えば、今回の水洗式ポータブルトイレは介助を受けながらトイレでの排せつにチャレンジしている方がいる施設にはマッチしますが、自分で歩いてトイレに行ける方が多い施設には適しません。逆に、コミュニケーションロボットは耳が遠く、目の不自由な方が多い当法人のような特別養護老人ホームでは使いこなすことができませんが、自立度が高い方が多い施設にとっては有効なロボットだと思います。

時々、介護ロボットを導入する前から「どうせ使えないでしょ」という声を耳にすることがありますが、これまでいろんな機械を見てきた経験からいうと、介護ロボット自体は現場を熟知した方が作っているので、お世辞抜きによくできていると思います。使いこなすかどうかは施設次第ですから、「使えない」と決めつけてしまうのはもったいないです。寒川ホームではレンタルで使ってみたものの返却した機械もたくさんありますが、それは機械が良くなかったからではなく、先のコミュニケーションロボットのように、利用者様にマッチしなかったからです。

「合わない機械を導入してしまう」という事態を避けるためには、現場の職員と話し合いながら、「どんな問題があるか、誰が必要としているか、そのためにはどの機械が必要か」という点を明確にして介護ロボットを選ぶことが重要です。当施設では、さらに介護ロボットを決めた後もすぐには導入せず、レンタルして検証の期間を設け、効果を実感できたもののみを取り入れるようにしています。現場の意見を聞いて施設のニーズに合った介護ロボットを導入すれば、利用者様・職員双方にメリットがあるはずです。介護ロボットに対して先入観を持たずに、現場の職員と話し合いながら機械に任せる部分を作っていけたら、より良い施設運営をしていけると思います。

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