1990年に設立され、入所支援・通所支援・相談支援を軸とした事業所運営を行ってきた社会福祉法人友愛会。2011年の東日本大震災の際には、5年間の施設閉鎖を余儀なくされました。2016年の再スタートを期に掲げた、「職員の働きやすい職場づくり」のために取り組んだキャリアパス制度、人事考課制度策定の取り組みを、理事である新妻様にお伺いしました。
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プロフィール

社会福祉法人友愛会 (理事兼事務局長)
光洋愛成園開所準備から携わり、事務職として従事。現在は理事兼事務局長として現場の業務改善や人材育成のために尽力している。
「働き続けられる」魅力的な職場環境を目指して
——キャリアパス制度、人事考課制度導入を始めたきっかけは何でしょうか?
2011年の東日本大震災・原子力災害により、群馬県の国立のぞみの園へ避難を強いられていましたが、新たに事業所を建設し、2016年から本拠地である福島県で事業再開を開始したのがきっかけです。事業再開時には、震災前に在職していた職員の約半数が退職し、新しい職員が入職することになりました。事業再開と共に法人として新しいスタートを切る必要があったため、避難中にできなかった「キャリアパス制度・人事考課制度」を策定し、今いる職員がより働きやすく、かつ定着できる組織作りが必要だと考えました。ちょうどそのタイミングで知った福島県の人材定着専門家派遣事業のサポートも受けながら、プロジェクトチームを発足し、制度の策定に取り掛かりました。
——実際にどのような取り組みを行ったのでしょうか?
大きく4つの取り組みを行いました。1つ目は「キャリアパス制度の見直し」です。もともと制度として策定はされていましたが、うまく機能していませんでした。新しいキャリアパスを「自分たちで決めてしっかりやろう」という気持ちが持てるように、管理層だけでなくリーダー層にまで幅広く意見収集し策定しました。具体的には等級制度を見直し、一般職であれば2等級までだったところを、業務内容を明確化し3等級体制へ変更し、内容も大きく見直しました。
2つ目は「職員育成・評価シートの作成」です。完成したキャリアパス制度の各等級ごとに評価要素や着眼点を明確にし、キャリアパスの各等級に求められている業務レベルを職員が達成できているかを確認できるようなシートを作成しました。
3つ目は「人事考課制度とその手引きの作成」です。属人的な評価や不公平感のある評価にならないように規程と手引きの作成を行いました。当法人ではこれまで年に数回の面談のみ実施し、人事考課制度は設けていませんでした。人材育成の観点からも人事考課制度の導入が必要だと考え、作成しました。具体的には、目標や対象、評価方法、評価結果の活用方法など、人事考課に関する詳細なルールを作成しています。人事考課制度では「職員に点数をつける」「職員の粗探しをする」のではなく、職員がお互いを理解し、評価し合うことで個々の努力が認められるような仕組みづくりを目指しました。
4つ目は「人事考課を反映した給与規程の見直し」を行いました。人事考課を基に評価次第で昇級金額に差をつけられるようにしました。もともと年功序列の給与制度であったため、人事考課を反映できる給与体系をつくることが必要でした。
これらの点を踏まえて、実際の現場とプロジェクトチームが考える理想の姿に乖離が生まれないように策定を進めていきました。
大切なのは「制度の浸透」
——制度策定後、どのように運用を進めましたか?
まずは実際の給与には反映させず、策定したキャリアパスや人事考課制度の仕組みが上手く機能するかを確かめるための試行運用を行いました。1年ほど試行運用をしてみると、「この規定はこうしたほうがいい」「この基準はどう判断したらいいのかわからない」など、評価者だけでなく職員からも改善点が挙がりました。意見を反映させながら修整を重ね、2年後の2020年4月から本格導入し始めました。
——2年間の試行運用で大きく改善してきた点とは何でしょうか?
2年間の試行運用では「職員育成・評価シート」の改善に多くの時間をかけました。具体的には理念の理解度に基づいた評価ができる仕様に変更しました。複数の項目がありますが、その中でも「法人理念への理解度や実際の利用者支援への反映具合」を見極める項目の点数配分を大きくしました。理念が浸透することで、利用者様へのより良い支援の提供ができるようになったり、職員のモチベーションアップに繋がったりするなど、法人全体で良い効果を生み出しましたね。
——試行運用後や本格導入後、職員からの反応はありましたか?
試行運用後、若手職員からは「事業運営に自分の意見が反映されている」と実感している職員が増えましたね。当法人の中では震災により40代の中間層の職員がおらず、30代の経験5年から10年程度の若手職員が多く勤務しています。若手を育てる意味でも、2年程運用期間はかかりましたが、仕組みが上手く機能できるような土台作りができたと実感しています。

5年後、10年後の法人を担う職員育成のために
——今後、どのように運用をしていく予定ですか?
2020年4月に本格運用を始めたこともあり、まずは9月と3月の人事考課の結果がどのように職員に影響をするのか見極めたいと考えています。「なぜ評価が低いのか」「この規程について再度教えてほしい」などさまざまな声が挙がる可能性もあるため、評価される側だけでなく、人事考課担当者へのフォローなども含めて運用していきたいですね。
——今後の展望を教えてください。
5年後、10年後を担う若手職員の育成にも力を入れていきたいと考えています。現在、若手職員で構成したプロジェクトチームにおいて「一人前基準」や「独り立ち基準」などを作成中です。若手職員の育成に関する体制を整えることで、キャリアパス制度や人事考課制度にも良い影響があると思っています。より働きやすい環境を作れるよう、若手職員と一緒に一つずつ形にしていきたいですね。
——他事業者へのアドバイスをお願いします。
キャリアパス制度や人事考課制度は今後、法人の事業を安定的に継続させていくためには重要な制度だと考えています。社会福祉法人の中には経営的なノウハウやマネジメントにあまり関心をもたないところもありますが、職員定着やモチベーションの向上には法人自体が職員へキャリアの道を示してあげることが必要です。そのためにも職員と一緒に考えて動いていけるような組織作りが大切です。制度の策定は最初とても大変ですが、導入するメリットはたくさんあるので、是非挑戦してほしいと思います。
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