「人の手で行えるリハビリには限りがある」と思っていても、自立支援のための介護ロボットを導入することに、踏み出せない事業所の方も多いのではないでしょうか。リハビリのための介護ロボットを11種類導入している介護老人保健施設ほほえみ三戸の諏訪内様に介護ロボット導入による介護度の改善への効果や、経営面のノウハウについて伺いました。
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プロフィール

社会福祉法人仁正会 理事長
1992年社会福祉法人仁正会に入職。評議員、理事を経て2018年に理事長に就任。介護ロボットの導入に携わり、日本各地の介護施設からの視察を受け入れているほか、講演活動も行っている。
「歩けない人が歩けるようになる」HALに感じた無限の可能性
――介護老人保健施設ほほえみ三戸様が介護ロボットの導入を始めた経緯を教えてください。
当施設は、「職員の幸福なしに、利用者様の満足なし。利用者様の満足なしに、施設の発展はない」という理念を掲げています。施設のさらなる発展のためには、利用者様の満足度を上げることが不可欠だと考えていました。
そのための手段の一つとして考えたのが、利用者様の自立支援のために介護ロボットを導入することです。最初に導入するロボットをHALと決めたのは、2009年の日本経済新聞に掲載されていた記事がきっかけです。そこではHALの有用性が紹介されていました。
HALは歩行困難者向けに下肢の機能を維持・向上させる装着型のロボットです。HALを使えば立てない人が立てる可能性があり、歩けない方が歩ける可能性もあります。その可能性は、まさにリハビリの原点であると感じました。HALの使用にあたってのレンタル料は安くはありませんでしたが、「利用者様が歩けるようになるなら高い買い物ではない」と導入を決めました。
――HALの導入にあたって、職員の方の反応はいかがでしたか?
残念ながら、リハビリスタッフの多くは、導入に積極的ではありませんでした。初めてHALを使ったとき、装着に30分以上にかかったこともあり、「ロボットを使うくらいなら自分の手で機能訓練を行った方が早い」と拒否反応を起こしていたのです。
HALの活用には複数人の協力が必要です。HALの効果に疑問を持っているスタッフに無理に活用してもらおうとすると、「やりたくない」という気持ちがチームに広がり、全体のモチベーションを下げることになってしまいます。そこで、HALの導入に前向きな一部のリハビリスタッフと補助スタッフの事務員とで「HALチーム」を結成し、HALを使ったリハビリを始めました。
半年間で介護ロボットに否定的なスタッフの意識を改革
――HALを導入してみてどんな効果が得られましたか?
HALを使ったリハビリを始めた半年後、半身まひのために車いすを使用していた町会議員の方が杖歩行へと移行することができました。難しいと思われていた次の選挙に出馬できただけでなく、要介護度が3から2まで下がったのです。
すると、その評判を聞きつけて、施設より30km離れたところから、通所サービスでHALを用いた機能訓練をしたいという方が現れました。そこで、15時以降は空いていた機能訓練室をフル活用し、利用者様の都合に合わせ、通所で1~2時間ほど集中してリハビリを行うサービスを始めました。
各方面でHALの導入による成果が出始めると、以前は否定的だったリハビリスタッフの意識に変化が起きました。利用者様に「なぜあなたは介護ロボットを操作できないの?」と聞かれたリハビリスタッフたちから「HALを取り扱うための講習を受けさせてもらえませんか」とお願いされました。こうして紆余曲折を経て、ようやく介護ロボットへの意識改革が実現できたのです。
――HALを導入してみて気づいたことはありますか?
HALはもちろんすばらしい機器ですが、「すべての方に効果があるわけではなく、使いこなすのが非常に難しい」ということです。装着にも手間がかかるので、リハビリへの意志が強い人でないとなかなか効果を実感するところまでは至りません。そこで、HALのほかに自立支援用の介護ロボットをこれまでに10種類導入しました。
HALに限らず、特定のロボットを単体で使用した場合、10人のうち1~2割程度の利用者様に効果が発揮されますが、さらに複数のロボットを組み合わせることで、10人のうち5~6割の方に有効になります。また、組み合わせて使用するだけでなく、例えばHALを導入して歩けるようになった利用者様が次のステップとして、HONDAの歩行アシストを使って安定した歩行ができるように練習するなど、「1つの介護ロボットを通してできる動作が増えた後に、次のロボットでさらに別の訓練をする」という使い方もできます。
――介護ロボットを導入したことで、どんな変化がありましたか?
一連の介護ロボットの導入により、通所者の18%、入所者の20%の介護度が下がりました。もちろん、リハビリをするご本人の意欲があってこそ実現できたことですが、すごい結果だと思っています。
また、利用者様の満足度が上がることで、職員のモチベーションも上がっていると感じます。ご家族に「ほほえみ三戸に入所させてよかった。皆さんありがとう」と声をかけていただくこともあり、職員の笑顔が増えたように思いますね。
――介護ロボットの導入により、経営面での効果はいかがでしたか?
当施設では、介護ロボット導入前の通所利用者は1日平均約60名でしたが、導入後は約75名以上に増えました。
自立支援以外の用途の介護ロボットも含め、2011年から2019年9月に導入した15種類のロボットの総費用は5,300万円ほどかかりました。自立支援型のロボットは補助金の対象外なので、莫大な費用がかかりましたが、私は介護ロボットの導入を先行投資だと思っています。最初に設備投資をすればその施設の評判が広まり、介護ロボットの有用性に興味をもった利用者様がたくさん集まります。目先の出費に気をとらわれずに長い目で考えていくことが大切です。

介護ロボットの使いこなし方にマニュアルはない
――今、課題に感じていることを教えてください。
介護ロボットの活用によって利用者様の介護度が下がるのは喜ばしいことですが、現在の介護保険制度では、介護度が下がるほど、介護報酬が下がる仕組みになっています。そんな中、東京都品川区と神奈川県では、独自に介護度が改善した介護施設に報奨金を出す制度が設けられました。全国にこのような制度が普及すれば、介護度改善への意識が高まり、介護ロボットの導入を検討する施設が増えていくのではないかと感じています。
――介護ロボットに興味を持っているほかの事業所の方に伝えたいことはありますか?
ほかの施設の導入事例を聞いて感じるのは、いくら有効な介護ロボットであっても扱う側の職員が「面倒くさい」という意識を持ってしまっては、成果は出せないということです。HALも使いこなせば最強の最強のロボットになりますが、使いこなせなければただの高価なオブジェになってしまいます。
介護ロボットをどう使いこなすかは事業所次第であり、新しい取り組みへチャレンジすることにマニュアルはありません。イノベーションを生み出すのは「利用者様に良くなってほしい」という思いの強さです。介護ロボットを導入することは大変かもしれませんが、これまでの介護の方法にとらわれず、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。
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