2018年に創立100周年を迎え、東京都墨田区を中心に施設展開をしている社会福祉法人賛育会。同法人では2004年から外国人採用を開始し、現在では約30名の外国人スタッフが活躍しています(2020年6月現在)。外国人採用をするなかで取り組んできた日本語教育支援や地域ぐるみでの活動内容について、法人事務局の薄井様にお伺いしました。

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プロフィール

外国人採用における「日本語教育」の重要性とは?-社会福祉法人賛育会-
薄井 佳代 様

社会福祉法人賛育会 法人事務局 ミッションサポート部 係長

2016年に社会福祉法人賛育会へ入職。特別養護老人ホーム東京清風園にて介護職員として現場業務を経験し、2018年6月より法人事務局へ異動。日本語教育支援に携わる。

外国人採用で見えてきた課題

――外国人採用を始めたきっかけは何でしょうか?

2004年ごろから介護職員の確保が難しくなり、求人広告を出しても問い合わせすらない状態が続いていました。そんな時にある特別養護老人ホームの施設長より、ホームヘルパー2級養成課程を修了しても就職先がないフィリピン人女性を紹介していただいたのがきっかけです。当法人は墨田区にありますが、墨田区には多くの「働きたいけど働けない」フィリピン人が在住していました。このことをきっかけに現在では法人内で31名ほどの外国人スタッフが勤務しています。

――受け入れ当初、施設職員や利用者様の反応はいかがでしたか?

利用者様やそのご家族、職員に対して、外国人スタッフは日常会話ができることや介護の資格を持っていることを事前に説明していました。利用者様や職員からクレームはなかったです。外国人スタッフの持ち前の明るさや利用者様に対するやさしい接し方などに触れることで、すぐに現場でも受け入れられましたね。

――外国人スタッフと働くなかで見えてきた「課題」はありましたか?

外国人スタッフを採用して2か月くらい経ってから、スタッフの「日本語能力」に課題が見つかりました。日常会話に不自由はなくとも、複雑な指示や介護業務独自の言い回しを理解できなかったり、読み書きができずに記録や申し送りがスムーズにいかなかったりしました。

仕事に関する指示や言い回しに関しては、意味が伝わっていなければ日本人職員が伝え方を変更し、理解度を繰り返し確認することでお互いの思い込みや意見の行き違いを最小限に抑えるよう工夫しました。

さらに、ひらがなやカタカナの違いなどの「日本語の読み書き」もマスターすれば、より活躍できる人材になるのではないかと考え、日本語教育に取り組もうと決意しました。

すみだ日本語教育支援の会とは?

――具体的にどのような日本語教育支援を始められたのでしょうか?

「すみだ日本語教育支援の会」を発足し、日本語教室を開講しました。すみだ日本語教育支援の会は、介護現場・墨田区・早稲田大学大学院の日本語研究科の産官学連携を行い、東京都墨田区の認可を受けて2008年よりスタートした事業です。「外国人事業者が職場で必要な日本語能力の向上を地域全体で支援すること、地域の福祉事業を活性化させること」を目的とし、日本語教育支援を行っています。当法人の外国人スタッフだけでなく、墨田区に在住・在職の外国籍の方にも利用できるようにしており、延べ149名の支援をしてきました。

 日本語教室は、①読解クラス(初級の読み書き)、②漢字クラス(中級の読み書き)、③プロ養成クラス(介護福祉士国家試験受験対策)の3つのコースがあり、それぞれ日本語講師2名と地域のボランティアの方約5名によってレッスンが行なわれています。受講生によって日本語能力にばらつきがあるので、ボランティアであるてーねん・どすこい倶楽部の方たちはマンツーマンでサポートをしてくださっています。

――取り組みの効果はいかがですか?

取り組みから10年以上経ち、初任者研修資格や実務者研修資格を取得する方もいらっしゃいます。これまでに、介護福祉士資格に合格した外国人スタッフは6名いますね。現在の日本語教室参加者の中には資格取得を目指し勉強をしたり、読み書きをマスターしたうえで介護知識を身につけ業務に励んだり、がんばっている外国人の方がたくさんいらっしゃいます。また、自分たちの日本語学習を支えてくれている地域に恩返しがしたいと「アボット・カマイ」という有志のフィリピン人ボランティア団体もできました。現在では福祉施設などで母国の伝統舞踊を披露するなどの活動をしています。

――運営をしていくなかで、新たに見つかった課題はありましたか?

最近、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が始まったことで、学ぶ環境の整備も大変だと改めて気づかされましたね。日本人ボランティアの方や外国人の方のなかには、パソコンやスマートフォンを扱うことが苦手な方もおり、「どういう風に支援する体制を整えるか」など方法を見直す機会になりました。現在ではオンラインの整備も進み、教室に参加できる方も増えてきましたね。

外国人採用における「日本語教育」の重要性とは?-社会福祉法人賛育会-
▲てーねん・どすこい倶楽部のボランティアと受講生が一緒にクラスに参加します。

日本語教育を通しての貢献

――今後の日本語教育支援の展望はありますか?

施設で働く外国人スタッフへの教育だけでなく、地域との関わりをより強めた日本語教育をしていきたいと思っています。実際に関わっているてーねん・どすこい倶楽部の皆さんは、墨田区の地域ボランティアの方たちがほとんどです。ボランティアの方からは、外国人の方へ日本語教育をするなかで、自身の介護知識も豊富になり、教える傍らで学びがあるという声をいただくこともあります。日本語教育支援を通して、地域の方との交流ができるような環境づくりを今後もしていきたいですね。

――法人として今後取り組んでいきたい活動を教えてください。

日本語教育にも繋がりますが、留学生支援も力を入れていきたいと考えています。今までも4名の受け入れを行ってきました。とても熱心な方が多く、「ここで力をつけて、母国でも自分がリーダーシップを取って貢献していきたい」とモチベーション高く業務に励んでいます。前向きに業務に取り組む姿を見て、現場の日本人職員にも良い刺激になっていますね。将来的にリーダーシップを取って活躍できる人を育てていきたいと考えています。

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