福祉業界では、職員の目標設定や学ぶための仕組みづくりに悩む事業所は少なくありません。そんななか、特別養護老人ホームなごみの郷では、職員自身が主体的に研修に取り組む仕組みづくりに注力。その結果、広島市が介護技術標準化のために設定した「ひろしま介護マイスター」取得の取り組みでは、取得者が38名と、広島市全体の258名の1割以上を占めています(※2020年5月31日現在)。事務長の矢矧様に、資格取得者が多い理由や、職員が楽しく学ぶ組織づくりについて、お話をお伺いしました。

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プロフィール

学ぶことが楽しみに繋がる!介護職員が自発的に目標を持つ組織設計とは
矢矧 秀樹 (やはぎひでき)様

社会福祉法人 正仁会 特別養護老人ホームなごみの郷 事務長

2002年のなごみの郷開設時に社会福祉法人正仁会に入職。デイサービスや短期入所の現場業務に関わりながら管理業務をご担当。5年前より現場での経験を活かして事務長としてご活躍されている。

「教育」にこだわり、新しいことにも先陣をきって取り組む

——ひろしま介護マイスターとは、どのような制度でしょうか?

介護職員のスキルを標準化するための制度で、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」が元になっています。その職員がどんなことができるかを確認し、アセッサー(評価者)が2-1、2-2…といったようにレベルを認定していきます。レベルを可視化することにより、介護職員は転職先でも明確な段位を提示して自分のスキルを証明することができるようになります。レベルは何でもいいのですが、職員に対してレベル認定すると広島市から「ひろしま介護マイスター養成実績」として認められます。3~4年前に始まったものですが、広島市としても介護人材の普及や定着のために狙っているものだと思いますね。現在では法人内で38名ほどが認定を受けています。

——どうしてこの制度に取り組もうと思ったのですか?

当法人には、新しいものや良いものは取り入れていこうという風土があるので、制度が発表されてからすぐに取り掛かりましたね。また、認定後一定期間内に申請すると1人あたり10万円の奨励金が支給されるということも大きかったですね。広島市としても奨励金はキャリアパスの構築や、人材育成に活かすようにと旗を振ってくれているので、我々も職員教育の一環として教育費に充てています。当法人では研修・教育費には結構費用かけているので、とてもありがたいですね。

——職員は抵抗なくついてきてくれましたか?

「順番で受けていこう」というように声をかけていくと、みんな抵抗なく受けてくれましたね。もともと当法人は、本人が気になる研修や学びたい気持ちを応援する雰囲気なので、自然な流れだったと思います。「にのみやラーニング・チャレンジ」「ポイント制度」「にのみやマイスター制度」といったオリジナルの育成制度もあり、学ぶことに関してとてもいい環境だと言ってくれる職員が多いですね。

「楽しく学ぶ」につながるポイントカード制

——オリジナルの研修制度「にのみやラーニングチャレンジ」とはどんなものですか?

各部門が開催する専門的な研修制度です。医療法人恵正会と社会福祉法人正仁会がにのみやグループとして合同で開催しており、研修委員会が年間計画を立てて開催しています。かつては年間100回ほど行っていましたが、ここ数年は参加状況を考慮して年間50回ほどに凝縮して開催するようになりました。研修内容は、外部講師を招いて看取りや感染症対策について講義してもらうものもあれば、接遇や苦情処理といったマナー系研修、グループ内の相互理解を深めるための施設見学など多岐に渡っています。グループ内には介護職だけでなく、看護職やリハビリ職もいるので、職種に関係なく受けられるものも用意するように工夫していますね。他にも研修参加に応じてポイントが貯まる制度も用意しています。

——「ポイント制度」とはどのようなものですか?

入社したときに全員に1枚ポイントカードを支給しています。ショッピングしたときに店舗で付けてくれるような、ポイント数が表面に印字されているリライト式のカードです。にのみやラーニングチャレンジの研修に参加すると◯ポイント、外部に向けて講義を行うと◯ポイントといった風にポイントを付与していますね。ポイントを貯めることを楽しみにしている職員も多く、研修時にはポイントを付けてもらうためにカードリーダーの前に行列ができていますよ。

学ぶことが楽しみに繋がる!介護職員が自発的に目標を持つ組織設計とは
ポイントカードにはリライト式カードを利用。現在のポイント数がひと目で分かる

——貯めたポイントはどんなものに利用できますか?

貯めたポイントは1ポイント1円に換算して、自己研鑽に利用することができます。書籍やDVDの購入、外部での研修などに交換していますね。活動の仕方によってはどんどん貯めていくこともできるので、たくさん貯めて北海道の研修に行った職員もいますね。あくまで研修のためですので、ポイント交換できる範囲であれば、基本的に使い道は自由にしています。個人的には頑張って貯めたポイントなので、気分転換に研修と旅行を兼ねてもらうのもいいと思いますね。

——「にのみやマイスター制度」とはどのようなものですか?

にのみやマイスター制度は「介護のプロフェッショナルとしてキャリアアップの楽しさ・やりがいを感じ、高いモチベーションを保ち続ける」ということを目的とした制度です。介護スキル、理念浸透といったスピリット、接遇マナーの3項目を実技・筆記試験で審査しています。レベルは5段階に分かれていて、経験年数と資格によって受けられるレベルが異なります。試験は1年に1回ですが、合格するとポイントもしくは毎月の給与に手当が加算される仕組みになっているので、職員のモチベーションにつながっていますね。グループ内の試験ですが、願書と受験票を作っていて「本格的な試験」と意気込めるような工夫もしています。

成長のためにはまず「素直に取り組む」こと

——制度設計の前と後で変わったことはありますか?

昨年度の離職率が7%程度と、過去の多かったときに比べて半数以上減っています。はっきり因果関係は検証できていませんが、少しずつ定着率が良くなっている実感はありますね。研修制度や福利厚生、賃金制度など評価に関しては力を入れているので、辞めた職員が「辞めなければ良かったな」と言っているというような声も聞きますね。

——今後の目標はどんなところでしょうか?

ひろしま介護マイスター制度の認定を受けている職員がたくさんいるので、その職員たちが介護職員のレベルを底上げしていけるように啓発していってほしいなと思っています。積極的に学びを続けて認定の名前以上に価値が出せる人材が集まる組織になりたいですね。

——職員の方にはどんなことを伝えていますか?

職員には「素直にやろう」「謙虚にやろう」ということはいつも伝えるようにしていますね。素直にやっていれば、色々なものが吸収でき、至らないところに気づき、成長に繋げられるためです。私自身も驕らないように気をつけて、常に悩みながら新しい発見はないか考えています。何でも素直な心で受け止める、今後もそういう思いで続けていきたいですね。

学ぶことが楽しみに繋がる!介護職員が自発的に目標を持つ組織設計とは
▲研修は職種に関わらず合同で実施。矢矧様も講師として登壇

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