特定処遇改善加算の新設などで病院での介護士の確保が難しくなっているなか、「介護福祉士」のみの採用・職員定着に成功している船橋市立リハビリテーション病院様。「自ら学び働くスタッフを育成する」をスローガンに掲げ活動される同院の教育研修部の実際の取り組みについて、チーフの磯部様にお話をお伺いしました。

磯部 香奈子 様 医療法人社団 輝生会 船橋市立リハビリテーション病院  教育研修部 ナース・ケアワーカー部門チーフ ケアワーカー

プロフィール

磯部 香奈子 様

医療法人社団 輝生会 船橋市立リハビリテーション病院

教育研修部 ナース・ケアワーカー部門チーフ ケアワーカー

ケアワーカーとして通所介護で約3年間勤務し、2008年に同病院のオープンニングメンバーとして入社。介護士として現場経験を積んだ後に教育研修部へ異動。現在は採用活動に加えてスタッフの面談や研修の企画、介護福祉士の教育等、人事業務全般を担当する。

質の高いケアを提供するために、介護福祉士にこだわった採用を

——病院での介護職の採用が難しくなっていると思いますが、どのように人材の確保をしているのでしょうか?

当院は、オープンしてからずっと介護福祉士にこだわって採用しています。少し前までは、それを強みにしていたのですが、最近は本当に人材確保が難しくなってきたので、意欲があれば介護福祉士でなくても採用していかなければならないと考えています。これまでは経験とスキル重視だったのですが、最近は採用時の考え方も変わってきています。

その分サービスの質が落ちないよう補っていく手段として、研修をより充実させていく必要があります。だからこそ私たち教育研究部が、非常に当院の強みになっています。教育研修部では採用から研修まで一貫しているので、求職者一人ひとりのことを見ることができるんです。例えば、採用時に「この方は過介助になってしまう傾向があるかもしれないから、指導時に自立支援に基づいた介助について伝えてあげよう」と思ったことを研修につなげていけるので、職員一人ひとりの教育にも活きています。

——介護福祉士にこだわり続けている理由は何でしょうか?

やはり国家資格だからですね。介護福祉士になるまでの教育課程を見た時に、当たり前ですが授業数が他の資格と比べると全然違うんです。介護技術等必要な部分にしっかり時間を費やせているので、他の資格と比べても入社時のスタートラインもちがいますし、サービスを提供する上でも非常に安心できます。

その理論だと本当は4年制大学卒業が理想的ですが、2年間でもしっかりと学校で学びを得ているので、介護福祉士の資格があれば採用しています。やはり質の高いケアを提供していきたいという思いが強くあるので、学びの量の違いが資格にこだわる一番大きな理由です。

——病院で介護福祉士だけを採用するのは難しいと思いますが、どのように母集団形成されてるのでしょうか?

毎年のように色々な学校に訪問をしていますね。千葉県の学校を中心に、卒業生がいる学校や大きめの大学に訪問し、生徒さんの就職状況をお伺いする営業を4〜5年前から行っています。もちろん多くの学校に求人の発送もしていますが、顔の見える関係作りを地道に行なっていますね。

年間数10校ほど回って20〜30分先生とお話をした上で資料をお渡しします。当院の強みを言葉で伝えることは出来てもそれを確認できる物がなかったので、教育カリキュラム等をまとめた冊子を作成し始めました。介護福祉士に特化した養成課程をカリキュラム別にして、うちで学べることを更に可視化して伝えられれば、学校訪問の際にもより分かりやすく伝えられるのではないかと思っています。

あとは、生徒さん達にとっては実習がなく働くイメージがつきづらいので、体験や見学もしています。夏休みや冬休みには、半日から1日スタッフが見学に来た生徒さんに専属で付いて、病院の業務を紹介できる体制を整えています。

磯部さんが自身で作成した学校訪問用の資料
▲磯部さんが自身で作成した学校訪問用の資料

創業から教育にこだわり続けたことで、人材の確保に成功

——介護士が介護施設でなく病院で働く魅力は何でしょうか?

多職種連携ですね。以前より、介護職にも多職種連携が必要だと強く言われています。病院は介護士以外の職種の人たちと働けるので、身に付けられる知識の幅が広く、多職種の中での介護福祉士の役割が見られます。介護施設だと働く人達は介護士の一職種なので、そういった経験はできないのかなと思います。今は介護職には多職種連携が必要だと言われていますが、病院にはその全てが集約されています。

——中でも貴院が求職者に選ばれる理由は何でしょうか?

最近ではしっかり教育してもらえるからという理由で入職してこられる方が増えていますね。1年中何かしらの研修があり、特に入社3年目までの教育はかなり充実してると自負しています。また、キャリアが長いスタッフには年度初めに個人目標と部門目標を立ててもらいます。 半期に一度、進捗確認や振り返りを行いPDCAを回すことで、スキルアップや教育に繋げています。その努力もあり、当院の介護福祉士は定着率が良いのではないかと考えています。

また、当院では「屋根瓦方式」という教育方法を取り入れており、自分ができたら今度は次の世代に自分が教えるという教育体制を作っています。自分ができたことを誰かに伝えられて初めてその人の財産になると思っているので、そこまでの人材に育てることが教育研修部のゴールでもあります。

——教育の質を担保し続けるためにはどんな工夫をしていますか?

各病棟に、それぞれの職種のサブマネジャーと呼ばれるスタッフがいるので、月に2回彼らとと必ず会議を行い、現状の課題とその改善策を常に話すようにしてるんです。会議で話した内容を実際の現場に持ち帰ってもらって、課題が改善されたかを常に繰り返しています。これは、この法人が創業してからずっと取り組んでいます。

実はこの教育研修部を立ち上げる時、採算が取れないから教育研修部に人材を配置するよりも病棟に補充したほうが合理的なのではないかという議論もあったようです。ただ、今の会長の「教育がなければ専門性は確立できない」との思いから、今もなお教育を担当する専属の部署を置き続けてるんです。

法人全体として教育に対する強いこだわりがあるので、この法人が目指す姿を実現できるよう、教育研修部である私たちがその思いに応えていかなければいけないと思っています。 

磯部 香奈子 様 医療法人社団 輝生会 船橋市立リハビリテーション病院  教育研修部 ナース・ケアワーカー部門チーフ ケアワーカー

教育者自らが学び続けることで、人材が育つ

——職員が長く働ける環境を作るために、どんな工夫をされていますか?

個人的には、出勤したら全部の病棟を回ってみんなに声をかけるように意識しています。何かあった時に常に声をかけやすい存在でありたいと思っているので、時間があれば極力病棟に行くようにしていますね。かしこまった場では言いたいことも言えなくなると思うので、普段何気ない会話の中で話を聞くことで関係性を構築することを大事にしています。

また、日々顔を合わせていると気持ちの変化にも気づけるんです。声をかけることで「実は…」と話してくれることもあるので、待つより先にこちらからアクションを起こしたほうが少しでも早く対応をしてあげられるんですよね。そういった小さな心がけも長く働ける理由につながると思っています。

——人材確保がより難しくなっていく中で今後の戦略はありますか?

本当に採用が難しくなってきているので、高校生の介護福祉士の採用も行っていきたいと思っています。実は去年初めて1人採用したのですが、専門学校卒業の子たちと遜色なく成長を遂げているので、今後は高校生の枠を広げて採用をしていくことも考えていきたいなと思っています。

そして、更に教育を強化するため、将来的には資格取得の支援制度も作りたいと考えています。法人全体としてバックアップ体制を作るため、今よりも教育体制を整備していきたいと考えています。

また、私たちはずっとここで働いてほしいというよりも、ある程度のスキルを身につけてもらったら当院で会得したスキルを他の職場に広めてもらいたいと思っています。当院で教育されればしっかりスキルが付くというイメージを作っていきたいです。

——磯部さんが思う、教育をする上で最も大切なことは何ですか?

人材の教育において一番重要なのは、まず自分が学ぶことです。いざ教える立場になった時に、自らが学んでいないと十分に伝えることが出来ないと実感したんですよね。この病院に入ってからは常に、専門職は常に自らが学び続ける姿勢が大事だと言われています。 現場を退き教育をする立場になったとしても、自分自身がしっかり学び、その姿を後輩たちに見せていくことが教育者の役割だと思っています。