withコロナという時代への突入は介護・医療業界でも無視できない問題です。病院での対応も病床数の確保が危ぶまれるなか、在宅での対応が求められています。対象の患者様の対応を開始した訪問看護ステーションでの「感染防止の工夫とスタッフの心理状況」について株式会社FOOTAGE代表取締役の大串様へお話をお伺いしました。

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プロフィール

大串 優太 様

株式会社FOOTAGE(フッテージ)代表取締役

看護師免許取得後、病院勤務を経て、サービス付き高齢者向け住宅の立ち上げと施設長を務める。医療依存度の高い利用者さまを受け入れることができる訪問看護ステーションの少なさを感じ、起業を視野に訪問看護ステーションへ転職。自宅で看護や介護のサービスを受け、最期を安心して迎えてほしい、スタッフがプライドを持って働ける環境の提供を考え、2018年株式会社FOOTAGE起業。現在代表取締役として2つの訪問看護ステーション運営に携わる。

「コロナ対応の専門チーム」を結成した背景と事前準備

―― 新型コロナウイルス感染の疑いがある患者様の受け入れを開始したきっかけは何でしょうか?

新型コロナウイルスの流行が騒がれ始め、4月の中旬から下旬にかけて医療機関から「コロナ感染の疑いがある患者様の在宅看護の対応をしてほしい」と声がかかったことがきっかけでした。患者様の状態は「PCR検査を受けておらず陽性者と判定はされていないが、濃厚接触にあたる方」ということでしたが、「熱発していて呼吸器症状があり陽性の疑いがある方」の受け入れをしていくとなると、既存の利用者様、スタッフや家族になるべく心配をかけないようにしていく必要があると感じました。そこで、対応者を絞ることで拡大も防げると考え、『コロナ対応の専門チーム』を結成しました。

―― 受け入れ前に既存の利用者様やご家族へどのように説明をされましたか?

主に次の2点を文章でまとめ、しっかりと説明させていただきました。1つ目はスタッフと既存の利用者様への感染防止策として『コロナ対応の専門チーム』を結成したこと、2つ目は「患者様への細かな対応」についてです。極力人との接触を少なくしたいと、利用を一時的に止める方はいましたが、ほとんどの利用者様にご理解いただけました。同時期に病院や同じ在宅サービスでは利用者様が減っているという話も聞いていましたが、取り組みを知った医療機関やケアマネさんからは棲み分けがしっかりできていると信頼していただき、一般の利用者様のご紹介が増えたので職員の仕事量が減るなどといった変化はありませんでした。

―― 患者様から感染拡大を防ぐためにどのような工夫をされましたか?

実際に対応をしたコロナ感染の疑いのある患者様は今のところ2名で、熱発38.5以上で肺炎の症状が見られる方でした。結局陽性か陰性かどうかは分からないままでしたが、現在は状態が落ち着いてきたので往診医と相談をし訪問を終了しています。

飛沫感染を防ぐためのマスク、消毒用のアルコール次亜塩素酸を購入し、入手困難だったガウンやフェイスシールドは手作りしました。ガウンはゴミ袋を上下にカットして繋ぎ目を補強、フェイスシールドはスポンジが額に来るように下敷きを組み合わせて代用しました。また、コロナ対応専用にした社用車もいつも以上に念入りに消毒をしました。自宅での対応は感染のリスクが高い「危険ゾーン」と身を守る「清潔なゾーン」で分け、体温計、血圧計、聴診器など、測定するものは全て患者様専用として自宅に置かせてもらい、自宅だけで感染リスクが完結するように注意しました。さらに、患者が発熱していた場合、当時の平均潜伏期間および解熱後の感染期間の統計を参考に、本人と家族に対してリスク要因として接することを徹底しました。

また、対応チームには感染拡大防止のため自主隔離の場所も用意しました。チーム全員が対応する場合はマンションを借りて寝泊まりをする予定でしたが、患者様が2名だったのでホテルの一室を借りて対応しました。4月20日頃に依頼が入り、その日のうちに家族に説明、ホテルの予約、次の日の朝から訪問という流れでした。まずは私のみで患者様宅とホテルの往復の生活を始め、11日間続けました。さらに、チームの所属に限らず職員全員が出勤前に体温を測定、咳がでたら訪問停止、少しでも体調不良なら早退を徹底し、事務所に出勤せず直行直帰ができるステーションはオンラインで情報共有をしました。

▲利用者様と職員の普段の様子。心の距離感を大切に

withコロナがもたらした、職員のモチベーション変化

―― 患者様の受け入れはどのように決まったのですか?

私自身は会社として地域の力になりたいと思っているが、働いている当事者である皆の意思を尊重したいと話をし、意見を押し付けず、対応したときのメリットとデメリットを全員で話し合いました。
対応したときのメリットは、「病院の退院調整の助けになる」「在宅療養の患者様のサポートができる」「コロナ禍での対応が会社への信頼に繋がる」ということが主でした。デメリットは「自分や家族への感染リスク、偏見にさらされる」「自主隔離(ホテル・マンション)、勤務が変則的になりストレスを感じる」ということでした。
ほとんどのスタッフが地域の力になりたいという前向きな気持ちでいてくれたので、さらに、どうしたらデメリットを解消できるかを話し合いました。感染リスクを極力減らすための物資の確保・製作、マンションやホテル費用の会社負担、利用者様や家族への説明、対応するスタッフへの危険手当・入院保険・罹患して欠勤となった場合の給料保証を整えました。

―― スタッフの家族への伝え方と反応を教えてください。

会社として受け入れる方向性は全員一致で決まりましたが、対応チームに所属するか否かは有志を募る形で強制はしませんでした。所属したい人は家族の了解を得て会議に参加をしてもらい、結果11人中5名が対応チームに所属しました。家族と話をしてもらう際には、会社でできる最大限の保証と有志で結成することを伝えてもらいました。
私は結婚していて奥さんも看護師なのですが、泣かれてしまいました…。医療従事者として理解をしているなかでもすぐには受け入れられない様子でした。ただ、このようなときに対応しなければならない職種だと覚悟をしていたと応援してくれました。断念したスタッフもいましたが、所属した5名中3名が既婚者でした。

―― 受け入れ開始後の大串様やスタッフのメンタル面について教えてください。

私が一番もどかしく感じたのは「患者様との距離」でした。普段私は状態確認のために身体に触れたり、ハイタッチをしたりとスキンシップを取れる距離感で接しています。ですが、ガウン越しでも極力触れないようにし、会話をする場合は2メートルほどの距離を空けることを余儀なくなれました。バイタル測定など、できることはご家族やご本人にお願いしたり、身体介助はなるべく少なくしたり、物理的にも心理的にも距離を感じながら「また来るね」と声をかけることしかできませんでした。コロナ感染の疑い、余生が短いという宣告をされた患者様に対して一定の距離を取らなければならない状況は、とてももどかしい気持ちでした。また、万が一私が感染してしまったときのために会社や家族への遺書の作成をしました。運営についてや、奥さんの将来のことなど…。本気で考えました。家族やスタッフにも一切会えない隔離の状況はとても孤独で、スタッフと電話で会話をしたり、リモート飲み会をしたりして気分を紛らわしていました。

ただ、私の対応が始まってから、スタッフのモチベーションは上がっているように感じました。よりよい体制づくりや、利用者様と職員の安全についてなど、各人がコミュニケーションを活発に取るようになりました。もちろん恐怖心がない訳ではありませんが、大きな問題に直面し、自分たちに何ができるのかを一丸となって考え、同じ方向を向くことができたことはある意味いいきっかけになりました。

より人柄を大切にした採用へ

―― スタッフの採用への影響はありましたか?

特にマイナスな変化はありませんでした。むしろSNSで取り組みを見た方からの問い合わせや、近所の事業所から紹介の声がかかるなどプラスなことがありました。対応するチームに所属するか否かはご本人の意志次第のため、求人票にはコロナの患者様の対応が発生することは明記せず、面接で直接お会いしたときにしっかりと説明をしました。

―― 採用基準の変化はありましたか?

採用基準についても以前と変えていません。コロナ感染の患者様の対応は、高いスキルよりも患者様の味方だという想いや周囲からの偏見にさらされたときにどう支持的な態度を取れるかが大切です。実際に「病院では人間扱いされなかった」と言っていた患者様もいたので「尊重している」という気持ちが伝わるように声掛けを心がけていました。元々重要視してきた「人柄」をより大切にした採用をしていく必要があると感じました。

今後のwithコロナ時代在宅看護・介護のあり方

―― オンラインでの患者様対応についてどう感じますか?

対応をしてみて在宅での看護のオンライン化は難しいと感じました。バイタルサインのチェックは機器が置いてあればオンラインでもできるかもしれませんが、触診や聴診をして感じられる情報もあります。生活が一人でできない方はおむつ交換をしたり、吸引の対応が必要だったり、医療処置が必要になることもあるので、オンラインだけだと難しいと改めて痛感しました。

―― 医療・介護業界の位置付けはどのように変化していくと思いますか?

医療・介護業界全体で仕事に誇りを持って胸を張れる世の中に変わっていくのではないかと感じます。今回のことで周囲からの冷たい視線を感じた人がいる一方で、温かい視線を感じた人もいるでしょう。キツい、汚いというイメージが先行しているなかでがんばっている人たちがいることを改めて知ってもらえたと思います。また、働く環境の整備をするのは当事者である私たちだと考えた人も多いはずです。社会的な立ち位置の再認識と当事者意識によって業界全体が良い方向に進んで行くのではないかと感じています。

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